雨の日がキライという人は多いけど、雨は外のうるさい世界から守ってくれるような安心感があります。雨の降る日は家にひきこもって、規則正しい雨音に耳を澄ませてみるのもセンチメンタルで素敵です。雨をモチーフにした本のなかでもネガティブなものではなく、雨が恋しくなるような本をリストアップしました。
「あめのひ」
(児童書) サム アッシャー・作
雨が降る日は外で遊べないからつまらない、という男の子。おじいちゃん雨がやむまでお待ちなさい、と言われるまま待っていると外に広がった世界はいつもの世界とは違っていて・・・。透明の雨粒、ひとつひとつまで丁寧に描かれ、水たまりにうつる輝く世界までキラキラ光り輝いています。雨の日が好きになる、そんな一冊です。
「かさどろぼう」
シビル ウェッタシンハ・作
スリランカの絵本。コミカルで版画のようなイラストと鮮やかな色彩、曲線の多い可愛らしい一冊です。傘のない村で育った男が何度も傘を買ってもどろぼうされてしまう話です。傘をとられても怒らないほのぼのとしたのどかな時間、裸足の人々。色とりどりの花のような傘がページいっぱいに広がります。生き生きとした表情にこちらもほっこりします。お気に入りの傘を見つけたくなります。
「雨・赤毛」
(新潮文庫―モーム短篇集) サマセット モーム・作
熱帯地方の雨、独特の空気間を味わいたいならこちら。モームの人間観察力は素晴らしく、閉塞された部屋のなかでの人間の熱気と降り注ぐ雨が肌にまとわりつくような熱気を感じます。原始的な環境は人の理性まで奪い去っていくもの。布教活動をするために南洋の小島にした宣教師と同船の客である娼婦を改心させようとするも転がり落ちていくような展開に目が離せない短編小説の傑作です。
しとしとと降り注ぐ雨、激しくたたきつけるような雨。雨は非日常への入り口でもあります。ドラマチックな雨の日を本と共に過ごしてみてください。