『銀輪の巨人 ジャイアント』
野嶋剛
著者は朝日新聞で社会部、イラクやアフガンでの戦場取材、台湾支局長などを歴任した言わば、非ビジネス分野のエキスパートです。その現役記者が記した本書は事実とインタビューにこだわった読み物風に仕上がっているビジネス書です。経営学特有の流行り言葉の乱発や、無理な盛り付けもなく大変読みやすくなっています。
かつて世界一の自転車輸出国であった日本は凋落し、中国と台湾が台頭し始めたのは20年ほど前からです、しかし中国はともかく台湾は安物を作ることで日本追い込んだわけではありません。
日本製自転車の平均輸出単価は1992年には4万円を超えていました。ところが2000年になると2万円を割り込み、2010年には1万円まで落ち込んでいます。一方台湾の平均単価はだんだん年を追うごとに上昇しているのです。
これは何を意味しているかというと、日本こそが量販店対応の安物しか作れなくなってしまっているという現実を表しています。これは家電業界でも同じような事態が進行中なのかもしれません。
家電メーカーは自社の経験から学ぶより自転車産業という歴史から学ぶべきではないでしょうか。製造業に従事している社会人の皆さんは必読の書と言えるでしょう。
『だまされて。 涙のメイド・イン・チャイナ』
ポールミドラー
世界の工場と呼ばれるまでに成長した中国のものづくり。その現場のリアルな実態を赤裸々にあぶり出した本書は、アメリカで出版されるやいなや大きな反響を呼び、すでに台湾、マレーシア、インドネシアで翻訳出版されています。ご当地中国で出版されていない理由はご想像にお任せします 。
製造業の現実を知るにはもってこいの本ですね。この本のやり取りを目の当たりにしても怖気づかないような方は是非、乗り込んで中国の製造工場の面々と交渉してみてほしいです。本当にカルチャーショックを覚えますから。製造業に限らず出張などで中国に行く方にもオススメの本です。あらかじめ読んでおいたほうがいいと思いますよ。
『FabLife デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」』
FabLife ―デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)
田中浩也
アメリカ東海岸ボストン、マサチューセッツ工科大学 MIT にファブラボの原点があります。そもそもファブラボとはパーソナルファブリケーション(個人的なものづくり少品種少量生産型デザインの可能性)を市民や様々な人と共同で開拓していくための実験工房です。 世界30カ国以上に草の根的に広がっており、各工房が国際的なネットワークを形成しています。著者によればファブラボはいまだ研究段階であり、今後社会にどう適合していくかは誰にも分かりません。このムーブメントは混沌とした黎明期にあります。手探りの実践が続けられ、日々のものづくりと世界中のファブラボ実践者との情報交換を通じて進化し続けているそうです。
ものづくりの未来は間違いなくここにあります。これから製造業、ものづくりを志している大学生は読んでおいた方がいい一冊でしょう 。