世の中には人生の師とも呼ぶべき、おじいちゃんがいます。
親よりも人生経験があり、しかも自分にとって肉親であるという条件は大きな要素でしょう。
そんな大きな存在、祖父について書かれた名作を3冊ご紹介します。
『ハブテトルハブテトラン』
著・中島京子
東京から広島空港に到着したダイスケを迎えたのは、ハセガワさんというおじいさん。
はげあたまに黒いサングラス、アロハシャツを着たハセガワさんは、「でやーすけ、いうんは、おみやーか?」というと、おんぼろ車にダイスケを押しこみました。
わけがあって、ダイスケはしばらくハセガワさんとくらします。家はかたむいているし、天井をネズミが走り高るし、パチンコに連れていかれるしと、さんざんな目に。
でもなぜか、だれにもうちあけられないことを、ハセガワさんにはいえるのでした。
登校拒否になったダイスケが田舎ですごす夏本みと二学期を、ダイスケの語りで描く。個性的な大人や子どもとのつきあいが、ダイスケの常識をつき破っていく過程がおもしろいです。
広島の豊かな方言が上手に生かされているハートウォーミングな作品です。
『ヨーンじいちゃん』
著・ペーター・ヘルトリング
ラウラとヤーコプの家に、ヨーンじいちゃんがやってきました。じいちゃんは、かあさんのおとうさん。年をとったので、いっしょにくらすことになったのです。
「おまえらにあうのをいちばんたのしみにしていたんだ」と、じいちゃんはいいました。独特の、おかしなしゃべりかたです。
じいちゃんは、へやの模様がえをしたり、おかしな三角の布がついた水泳パンツでプールにいったり......。なんといわれようと、なんでも自分の好きなようにやってしまいます。
ドイツの児童文学です。老いや死といった問題を扱ってはいますが、個性的なおじいちゃんの生き方がユーモアたっぷりに描かれ、楽しく読める本になっています。
『ナゲキバト』
著・ラリー・バークダル
ハニバルは、9歳のときに両親を交通事故でなくし、そのあとすぐに、おじいさんにひきとられました。
アメリカ南部のいなか町にひとりで暮らしていたおじいさんは、ハニバルをとてもかわいがり、いろいろなことを教えてくれました。
この物語は、大人になったハニバルが、おじいさんと暮らした日々を回想するかたちで書かれています。たんたんと語られているのに、熱い感動に心をゆさぶられる本です。
アメリカで自費出版されたこの本は、とくに宣伝もしないのに人から人へと感動が伝わり、短期間に多くの売り上げを記録したという。心に残る本を求める子にすすめたいですね。
特に『ナゲキバト』は超がつくほどオススメの本ですよ。
まるで自分が教えを請うているような、なんとも言えない安心感に包まれる名著です。