日本人のみならず、翻訳された作品が世界中の人に読まれている小説家の村上春樹。著作の装丁やデザインにもこだわりがあり、自らも製作過程に関わっていることでよく知られています。
そこで私がおすすめしたいのは、村上春樹の作品の装画・挿絵に長く携わっているイラストレーターの作品集です。小説世界の一部として機能し、その世界観をしっかりと支えているイラストの作者が手がけたその他の作品の数々を、ぜひ一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。
安西水丸さん、デザインを教えてください!―安西水丸装丁作品研究会
安西水丸さん、デザインを教えてください!―安西水丸装幀作品研究会
一冊目は「安西水丸さん、デザインを教えてください!―安西水丸装丁作品研究会」(安西水丸装丁作品研究会 著)。“中国行きのスロウボート”“村上朝日堂シリーズ”を始めとしたさまざまな村上作品の装画・挿絵を担当してきた著者。
村上ファンには常識かもしれませんが「安西水丸」は氏のペンネームです。そして、安西氏の“本名”を知って驚くなかれ。実は村上作品に登場する、ある人物と同姓同名なのです。このエピソードだけでも、安西氏と村上春樹との間にある愉快な縁の繋がりを感じる事ができます。
この本では村上作品のみならず、安西氏がかつて手がけてきた様々な本の装丁を一挙に楽しむことができるので、おすすめです。
佐々木マキ:アナーキーなナンセンス詩人
二冊目は「佐々木マキ:アナーキーなナンセンス詩人」(佐々木マキ著・小原央明 編集)村上ファンにはおなじみの、あの“羊男”のイラストで手がけた佐々木マキ氏。女性と誤解されやすいペンネームですが、実は男性です。
村上春樹のデビュー作“風の歌を聴け”の装画は、著者の異色ともいえる漫画作品にほれ込んだ村上春樹が自らオファーしたことによって実現したそうです。
こちらの本では、漫画家・絵本作家・挿絵家と幅広く活躍する著者の作品たちはもちろん、奥様との心温まるプライベートエピソードまでが網羅されており、おすすめです。
Coloring in Wadaland―和田誠カラー作品集
Coloring in Wadaland―和田誠カラー作品集
三冊目は「Coloring in Wadaland―和田誠カラー作品集」(和田誠著)。著者の和田氏は、雑誌“週刊文春”の表紙を1977年から現在に至るまで書き続けていることでも知られる日本屈指のイラストレーターです。
村上作品の中では“村上ソングス”の装画を担当しているほか、ジャズについて書かれた“ポートレイト・イン・ジャズ”という本で村上春樹と共著者として名前を並べています。
こちらのフルカラー作品集には、和田誠氏がこれまで手掛けてきたなんと約1000点もの作品がたっぷりと収録されています。本の装画や挿絵はもちろん、手がけてきたカレンダーやCDジャケットまでもが網羅された大変豪華な一冊です。誰もが一度は目にしたことのあるポップなイラストの数々を、ぜひ一度手に取ってご覧下さい。
以上が、私がおすすめする「村上春樹作品の装画や挿絵を担当したイラストレーターのおすすめ本」です。村上氏のファンにはもちろん、イラストに興味がある大学生や、デザイン系の仕事をしている社会人にもおすすめしたい本ばかりです。ぜひ一度ご覧になって、第一線で活躍してきたイラストレーターたちの仕事に触れてみて下さい。