文明の進化はモノづくりとともに発展してきたと言っても過言ではないでしょう。
世界各地にはいろいろな生活必需品が発明、生産され、それが世界中に行き渡り人類の発展に寄与してきたのです。
そんな、今では当たり前になっているものを情熱とともに作ってきた人達の物語です。
『モギ ちいさな焼きもの師』
著・リンダ・スー・パーク
焼きものを集めた美術館にいくと、梅瓶とよばれる青磁の焼きものを見ることができます。優美なかたちの器で、縁でありながら、くもった日の海のように、青、灰、うすい紫などさまざまな色が溶け合っています。梅瓶に一枝の梅の花を生けると、いちだんと美しく見えます。
12世紀・高麗の時代の韓国で、その梅瓶を自分もつくりたいと、つよく思ったのが、モギという名まえの少年でした。家も身よりもなく、橋の下でくらしていましたが、焼きものの親方のもとで働けることになりました。
高麗青磁の美しさにみせられた少年が、名工とよばれる焼きもの師の見習いとして働きながら成長していく物語です。モギを見守る大人たちがさりげなく示す、市井の人びとの深い知恵や、心の温かさにうたれます。
『舟をつくる』
著・前田次郎
これは自然の中で採ったものだけで丸木舟をつくりあげた記録です。材料はもちろん、木を切るための道具も、自分たちでつくります。まず、海岸で120キロもの砂鉄を集めます。アカマツの木を焼いて木炭にして、砂鉄と木炭で鋼をつくります。さらに鋼を鍛えてオノやナタなどの道具をつくりました。その道具で、インドネシアにはえている全長154メートルの大木を切り出したのです。その木を削ると、船の形が現れてきます。
日本列島に人類がやってきた足跡をたどる「新・グレートジャーニー」。その海上ルートを渡るための舟を作成した記録です。プロジェクトに参加した若者たちが、すべてを自分たちで作りだすことに挑戦したようすを、生き生きと伝えています。
『台所のマリアさま』
著・ルーマー・ゴッデン
お手伝いのマルタの故郷ウクライナでは、台所のすみに「いい場所」がありました。そこにマリアさまと幼子イエスの絵を飾ります。ランプに照らされたふたりの顔は幸せそうに光っていたと、マルタはいいます。グレゴリーとジャネットの兄弟は、なんとかしてその絵を作ってあげようと相談します。
ふたりは、新聞でみつけたイエスとマリアの絵に服を着せ、きれいにかざることにします。金色のリボン、ブルーの布、キャンデーの紙。材料がそろうと、グレゴリーは、じっくり考えて、仕事にとりかかります。
自分の内面にとじこもり、人をよせつけないグレゴリーが、マルタのために絵をつくるうちにしだいに心をひらいていくようすを、さえた筆致で描いた秀作です。
世界は誰かの仕事でできている、というのは何かのCMのセリフですが、本当にそうですね。
身の回りのものは、かつて誰かが情熱を持って作り出したからこそ存在しているのです。
そんなことを思うと、何もかもが愛おしくなってきますね。