海外ではスポーツとの関わり方は、参加する選手とその他という単純なものではありません。
もちろん日本でだってそうなのですが、より歴史があるというか深い考え方があるのです。
そんなスポーツとの関わり方について書かれた本を紹介します。
『マーク・カベンディッシュ』
著・マーク・カヴェンディッシュ
ツールドフランスのステージ合計26勝を記録しているマン島出身のサイクルロードレーサー、マークカヴェンディッシュの自伝です。
原書は2009年に出版されたものなので、その後のさらなる進撃についての記述はないのですが、それまでのカベンディッシュのレースやイギリスでの自転車選手の育成制度のない点、ロードレース競技の中で若い選手が成長していくこと、チーム内での人間関係についても書かれています。
ロードレースを巡る人間模様はどんなフィクションよりも興奮するノンフィクションだと言えましょう。
『マルコパンターニ海賊の生と死』
著・ベッペ・コンティ
自転車競技のチームの監督パンターニは本当に面白い人です。きつい負傷の療養中の暇つぶしに女装して一般のレースに出たり、愛するイタリアのレースに出られなければ主題歌を依頼されて、歌ったりしかも歌は上手かったし作詞もしたのだそうです。
海賊の二つの名の役割を忠実に演じるために頭にバンダナを巻いて、イヤリングをつけサドルにドクロを描いて鼻にダイヤモンドのピアスをつけていたということからもサービス精神が旺盛な人間性が伺えます。
読者は本を閉じた後、精一杯生きようと思わせてくれるでしょう。それほどまでにマルコパンターニの生涯には痛みと裏腹の生のエネルギーが凝縮されているのです。
生きるのに疲れたなと思っている社会人に読んでほしい本です。
『ぼくのプレミアライフ』
著・ニック・ホーンビィ
イングランドのプレミアリーグについての本です。もっと言えばアーセナルのファンでいることの苦痛と、ほんの少しの歓喜が延々と隙間なく書き綴られた本です。
そんなのは縁がないと思ってるかもしれませんが、これが実はすごく面白いのです。目が覚めるほど論理的にサッカーを見続けることにまつわる惨めさを言語化してひねくれたレトリックはどれもありえない角度から述べられています。
どん底の惨めさと著者を精神的な問題から救い出してしまうことを同時に提供するアーセナルと、著者の数奇な24年が分かります。
読者は自分達は何を必要として何を信頼して生きているのかという問題に立ち戻るでしょう。
特にマルコ・パンターニの本などは人生論として読むと奥深いですね。
自転車が好きというのではなく、愛してるとさえ言っていいような向き合い方に感動するでしょう。