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【ADHDおすすめ本】大人・子ども別に読んでよかった名著30選【ADHDに悩むすべての人へ/発達障害・職場・マンガ】

この記事でADHD(注意欠如・多動症)の本を30冊厳選し、実際に読んで使えたポイントもまとめる。結論は〈特性の再定義→環境と手順の再設計→言語化して合意〉の順が効く。詳しくは紹介した本を読んでもらうことをおすすめする。

 

ADHDとは?意味と正式名称

ADHDは「Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder(注意欠如・多動症)」の略称だ。
注意力が続きにくい「不注意」、じっとしていられない「多動」、衝動的に行動してしまう「衝動性」などの特徴をもつ神経発達症のひとつとされる。

近年では子どもだけでなく、大人(成人期ADHD)にも見られることが知られており、職場や人間関係、日常生活の中で「集中できない」「忘れ物が多い」「段取りが苦手」などの悩みとして現れることが多い。

医学的には「発達障害」のひとつに分類されるが、適切な理解と対処によって、特性を強みに変えることもできる。この記事では、その理解と実践の助けになる本を紹介していく。

 

おすすめ本30選

〈大人実務〉— 先延ばし・凡ミス・段取りを“設計”で解決

1. すごいADHD特性の使い方 人生が本当にラクになるコツ

 

 

衝動性・過集中・新奇追求――“困りごと”とされがちな特性を、設計次第の資源に変換する実用書だ。やることはシンプルで、①タスクを3分割(着手/展開/締め)し、②着手だけを最短で終える“点火ルール”を固定、③報酬(面白み)を早期に仕込む。注意の切り替えに弱い自覚があるほど、開始の摩擦をゼロ化する発想が刺さる。著者の語りは軽快だが、やっていることは行動分析と実行機能の補助に忠実。自分はこの本を機に「5分だけメール下書き→送信は後で」の二段起動に切り替え、先延ばしの総量が落ちた。

刺さる読者像:始めるまでが重い/気がそれやすい/面白くない作業が続かない。
おすすめポイント:“面白さを先に置く”・“着火だけ済ます”・“締めは別スロット”という三つの設計。
実装ポイント:「点火タスク表」を作り、すべての仕事を“5分の着火”に分解して手帳の先頭へ固定する。

2. 多動脳―ADHDの真実―(新潮新書)

 

 

最新研究と臨床の視点で、ADHDの生物学・発達・社会的適合を“神話抜き”で解きほぐす。刺激探索や遅延割引などのメカニズムが、行動上のクセ(先延ばし・飽きやすさ・新しい刺激への偏り)と直結して理解できる構成だ。医療的介入の位置づけもフェアで、薬物療法と環境調整・スキルトレーニングの両輪を強調。読後には「根性論では回らない」ことが明確になる。仕事の設計や家庭内ルールを変える説得材料にもなる。

刺さる読者像:科学的な全体像を短時間で掴みたい人/家族や上司を説得したい人。
おすすめポイント:“脳のクセ→生活設計”の橋渡しが明快。
実装ポイント:会議や学習の時間を45–50分で区切り、“刺激の休憩”を予定に組み込む(立つ・歩く・水を飲む)。

3. 「普通」ができないADHD脳のトリセツ 凡ミスを徹底的になくすライフハック67

 

 

“凡ミス”の発生源を〈注意の分散/ワーキングメモリの容量/切り替えコスト〉に分解し、やらかしを設計で潰す具体策が並ぶ。チェックリストの作り方が特に秀逸で、抽象語禁止・動詞始まり・動線順という3ルールでエラー率が激減する。デジタル×アナログの使い分け(通知と紙の見える化)も現実的。自分は“送信前の3秒指さし読み”“鍵・財布・社員証の定位置ボックス”で翌週から遅刻ゼロになった。

刺さる読者像:提出ミス・持ち物忘れ・ダブルブッキングで消耗している。
おすすめポイント:67の小技がすべて行動の再設計に落ちる。
実装ポイント:「出発前の3点指さし」「メール送信の3秒停止」「鍵ボックス位置固定」を今日決める。

4. ADHDの僕が苦手とされる事務にとことん向き合ってみた。

 

 

事務=“退屈でエラーが露呈する最難関”に、ADHD当事者が正面から挑んだ記録。うまくいく工夫だけでなく、つまずきとリカバリーが克明に記され、再起動の技術が手に入る。業務フローの小分け、承認の取り方、ファイル命名、メール定型、締切の“前倒し偽装”など、即日コピーできるテクが豊富だ。読み終えるころには「事務はセンスではなく習慣装置」だと腹に落ちる。

刺さる読者像:経理・総務・研究事務・保険請求など“細かさ×反復”で疲弊している大人。
おすすめポイント:現場の泥臭い工夫=真似しやすい。
実装ポイント:フォルダ階層を2段までに制限し、命名は「日付_動詞_名詞」で固定(例:2025-10-16_請求送付_田中)。

5. 「忘れっぽい」「すぐ怒る」「他人の影響をうけやすい」etc. ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”

 

 

エビデンスの強度は玉石混交だが、感情調整・作業記憶・抑制に効く“短い練習”がまとまっている。コグニティブトレーニング単独で劇的改善は期待しないが、行動介入の“つなぎ”としては有用だ。特に怒りの階段(気づき→時間稼ぎ→言い換え→距離取り)は、家庭・職場で即運用できる。

刺さる読者像:感情の波で後悔しがち/人の顔色に振り回されやすい。
おすすめポイント:“1分でできる”ワークが多く、反すうの入口を塞ぎやすい。
実装ポイント:怒りのIf–Thenを1枚に(例:もし声が大きくなったら→10秒黙る→その場を離れて水を飲む)。デスクに貼る。

6. 発達障害サバイバルガイド 「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47

 

 

当事者視点の“現実解”がずらり。予定の見える化、先延ばしの分割、コミュニケーションでの「事故らない言い回し」まで、やらかし予防の仕掛けが潔い。特に「疲労と感覚過負荷」を先に管理する発想が光る。できない日は最低限ラインが決まっているので自己嫌悪が減る。

刺さる読者像:自己啓発が刺さらない/とにかく生活を回したい大人。
実装ポイント:“災害バッグ”(イヤープラグ・サングラス・予備充電・甘味)を常備、過負荷前に退避。

7. ADHD 2.0 特性をパワーに変える科学的な方法

 

 

最新の神経科学知見を、仕事・学習・人間関係の戦略に翻訳する。〈刺激ニーズ〉と〈退屈耐性の低さ〉を前提に、好奇心ドリブン・短距離・社会的支えの3本柱で回すのが肝だ。薬物療法の併用に関する説明もバランスがよい。

刺さる読者像:理屈を押さえて設計したい大人。
実装ポイント:毎朝“やりたいこと5分”で点火→勢いで苦手タスクへ橋渡し。

8. ADHDタイプの大人のための時間管理ワークブック

 

 

時間感覚のズレを外部化して補うワーク群。予定は“所要時間×1.5”で見積もり、締切は二段構え、通知は“開始5分前のみ”など、過多なリマインドを避ける設計が現実的だ。

刺さる読者像:遅刻・提出遅延で困る社会人。
実装ポイント:朝一に点火タスク3つ、午後は“会議の余白15分”を全件に自動付与。

9. 「大人のADHD」のための段取り力(健康ライブラリー)

 

 

段取り=見通し×順序×予備で構成。電話・会議・出張など場面別に“先にやることリスト”が秀逸だ。メールのテンプレ化・フィルタ・時限送信も現場で刺さる。

刺さる読者像:マルチタスクで迷子になりやすい。
実装ポイント:「今日の終了条件」を朝決め、終わったら仕事を切り上げるシャットダウン儀式を固定。

10. ADHDタイプの【部屋】【時間】【仕事】整理術

 

 

空間・時間・情報の三位一体の片づけ。部屋は“見える収納”に限定、時間は2ブロック制(午前=点火、午後=仕上げ)、仕事は“未着手/進行/完了”の可視化ボードで動かす。片づけられない罪悪感から解放される。

刺さる読者像:散らかる→焦る→さらに散らかるの負循環。
実装ポイント:玄関・デスク・寝室の3定位置を今日決める。

11 ハーバード式 大人のADHDパーフェクトガイド

 

 

エビデンス準拠で、評価・薬物・心理社会的支援・職場アコモデーションまでフルカバー。セルフモニタリングと目標設計の章が秀逸で、臨床と実生活の橋がかかる。

刺さる読者像:体系的に深く学びたい大人・支援者。
実装ポイント:四半期ごとに「行動目標×3」「環境調整×3」を見直すレビュー日を固定。


〈子ども家庭・学校〉— ペアレンティング/学級づくり/思春期の乗り越え

12. ADHDの子の育て方のコツがわかる本(健康ライブラリースペシャル)

 

 

家庭で今日から使える〈声かけ・環境・手順〉を、ケース別に分解して示す実用書だ。叱責や説教ではなく、行動が起きる“前”に仕掛ける(先行子の調整)発想が徹底している。朝の準備、宿題、片づけ、ゲーム・YouTube、きょうだい関係、外出、就寝――親がつまずきやすいシーンごとに、ダメ出し→置き換えのモデル会話が並ぶ。報酬は“ごほうびカード”のような外的強化だけに依存せず、記述承認(事実を言語化する)や選択肢提示で自己効力感を養う設計もバランスが良い。さらに、学校と連携するための連絡帳テンプレ、配慮を依頼する文例、担任との合意形成の道筋まで具体で、家庭の努力が校内で空回りしない。

誤解を招きやすい“我慢させる訓練”や“厳しくすれば治る”を戒め、課題の刻み方(1分→3分→5分)視覚的段取り(ToDoは動詞で3つ)行動の切り替え合図(タイマー+合言葉)といった認知負荷を下げる道具が豊富だ。パニックやかんしゃくの“なだめ方”は、トリガー除去→共感→身体を落ち着かせる→言い換え→次の一手、の階段で示され、親の“しんどさ”にも寄り添う。医療・療育・薬物療法の説明もフェアで、「薬=最後の手段」ではなく、環境調整・スキルトレとの三位一体として位置づける。

刺さる読者像:小学生〜中学生の保護者/学童・放課後等デイの支援者/担任・養護教諭。
おすすめポイント:“叱らない代替”が台詞レベルで手に入る。学校連携の書き方まで載るので、家庭の工夫が校内に橋渡しされる。
実装ポイント:玄関に出発ボード(動詞3つ:着替える→持つ→出る)と定位置ボックスを設置。宿題は1分点火→3分延長の階段で、成功のたびに記述承認+次の選択肢。連絡帳には「できた・工夫・次の一手」の3行だけを毎日記入して共有する。

13. よくわかる ADHDの子どものペアレンティング 落ち着きのない子を自信をもって育てるために

 

 

認知行動療法(CBT)と応用行動分析(ABA)に基づく王道のペアレンティング本だ。罰ではなく先行子(前ぶれ)と結果の設計で行動を変える原則を、家庭の“あるある場面”に落としている。ほめ方は「具体・即時・短い」。指示は「一文・動詞始まり・選択肢つき」。問題行動の“機能”を見抜くチェックがあり、注意引き・逃避・感覚など、狙い別に介入を選べる。

刺さる読者像:叱っても変わらないと感じる保護者・支援者。
実装ポイント:朝と帰宅後に3コマ視覚スケジュールを貼る。成功は記述承認→選択肢提示で強化。

14. 最新図解 ADHDの子どもたちをサポートする本

 

 

学校・家で使う支援を図と写真で提示。席配置、課題の刻み、テストの配慮、体育や図工での安全配慮まで、学級運営の具体に強い。校内連携の“線引き”(どこまで誰が担うか)も明確だ。

刺さる読者像:担任・支援員・スクールカウンセラー。
実装ポイント:教室後方にクールダウン席を常設。課題は「例示→一緒に1問→本人1問」のI do–We do–You doで。

15. 明日からできる! 子どものADHD診療 小児科・一般精神科外来での実践ガイド

 

 

小児科・一般精神科での“明日から”の診療運用。問診の通し方、学校との連携、薬物療法の説明とフォローが実践的だ。ペアレントトレーニングの宿題出しが上手く、短時間でも効果を出す道筋が見える。

刺さる読者像:小児・思春期外来/学校医。
実装ポイント:初診で行動目標を1つに限定→2週でレビュー、成功を共有し次へ。

16. ADHD 注意欠如・多動症の本(育ちあう子育ての本)

 

 

発達段階ごとの現れ方と、保護者・教員の連携フォーマットが使える。課題の難度調整と休憩の挿入で学習を壊さない方針が徹底している。叱らずに軌道修正する“合図”が豊富だ。

刺さる読者像:幼児〜小学生の保護者・教員。
実装ポイント:15分学習→5分自由の“ポモドーロ学習”を家庭と学校で同期。

17. ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本

 

 

学習を〈注意・記憶・実行機能〉に分解し、教材・環境・時間割を変えて得点化する。ノートは“見返す設計”に、暗記はテスト形式で出会う回数を増やす。努力より仕組みの徹底が爽快だ。

刺さる読者像:受験生/高専・大専・社会人の学び直し。
実装ポイント:問題集は“今日解くページに付箋”、復習は前回ミスだけを1枚まとめに。

18. 親子で乗り越える思春期のADHD(親子で理解する特性シリーズ)

 

 

反抗期×ADHDの難局に絞った一本。交渉・境界線・スマホの三大テーマを、親子で読んで合意形成する形式が実用だ。罰ではなく契約で回すのが肝で、破綻したときの“戻り方”も示す。

刺さる読者像:中高生の保護者・養護教諭。
実装ポイント:“スマホ契約書”を共同作成。違反時は没収ではなく利用時間の再交渉に。

19. 子どもが楽しく元気になるための ADHD支援ガイドブック――親と教師が知っておきたい9つのヒント

 

 

“楽しく元気になる”にフォーカスした軽やかな一冊。得意の先出し/役割付与/身体活動の挿入で、学級全体の雰囲気を落とさず支える設計がうまい。

刺さる読者像:小学校低〜中学年の担任・保護者。
実装ポイント:毎朝の係仕事に動きの役割を混ぜる(配布・板書係など)。

20. 笑える魅力があふれてる! ADHDさくちゃんとママの凸凹な毎日

 

 

“困り”だけでなく魅力と笑いに光を当てる育児コミック。家族の視点が柔らかくなり、叱責より設計へ舵を切りやすくなる。学校への伝え方も自然体だ。

刺さる読者像:気持ちが折れがちな保護者。
実装ポイント:家族で“今日よかったこと”を1つずつ言い合う5分儀式。

21. うちの子はADHD 反抗期で超たいへん!(こころライブラリー)

 

 

反抗挑発・過剰な自己主張・拒否で詰まる時期に効く。課題の分離(親の課題/子の課題)と、“負けさせない”交渉術が具体。学校・部活との連携も視野に入る。

刺さる読者像:二次被害(暴言・家出)に不安がある家庭。
実装ポイント:“交渉のルール”を紙にして冷蔵庫へ。感情が荒れる日は議題を延期する合図を用意。


〈職場〉— 合意形成・合理的配慮・仕事設計のテンプレ

22. 大人の発達障害(ADHD、ASD) ― 職場で、家庭で、周囲ができるアドバイスとサポート(別冊NHKきょうの健康)

 

 

当事者<周囲向け>のハンドブック。合理的配慮の実例(席・照明・指示の出し方)と、言い方の“地雷回避”が役立つ。家庭の分担決めもフォーマット化されている。

刺さる読者像:上司・同僚・配偶者。
実装ポイント:仕事指示は「目的→締切→完了基準→添付例」の順で一枚に。


〈マンガ・体験記〉— 家族・同僚と“共有しやすい”翻訳・共感の本

23. マンガでわかる 大人のADHDコントロールガイド

 

 

コミックで、仕事・家事・金銭・対人の“つまずき”→“装置化”の流れが視覚的に理解できる。感情の後悔を避ける“間”の作り方、請求・申請系のテンプレ化が特に役立つ。

刺さる読者像:活字が苦手/家族や同僚に共有したい。
実装ポイント:月初5日に“固定業務デー”を予約、チェックリストは動線順でA4一枚に。

24. マンガで分かる心療内科(30) ADHD先延ばし改善編

 

 

先延ばしのメカニズムを笑いで解毒しつつ、最初の一歩を最小化する手を大量投下。逆説的意図・5分ルール・ごほうび先出しが漫画で腹落ちする。

刺さる読者像:理屈はわかったが動けない人。
実装ポイント:“5分だけ”のタイマーをホーム画面一等地へ。完了したら即ごほうび。

25. ADHDの旦那って意外と面白いんよ 本気で発達障害に向き合った夫婦の物語

 

 

当事者×配偶者のリアルな“交渉と和解”の記録。責めずに仕組みを変えるまでの道のりが具体で、家族会議の議題例・契約書の作り方が真似しやすい。笑いとユーモアが救いになる。

刺さる読者像:パートナーとの衝突で疲れている家庭。
実装ポイント:週1の“15分家族会議”を固定、やめる・続ける・始めるを各1個だけ決める。


〈専門・評価〉— 標準ガイドライン/図解総論/入門の“地図”

26. ADHDがわかる本 正しく理解するための入門書(健康ライブラリー・イラスト版)

 

 

医学・心理・生活支援を一望できる“地図”として優秀だ。診断基準(不注意/多動性・衝動性の具体例)から、評価の流れ、薬物療法と非薬物療法(ペアレントトレーニング、学校調整、職場の合理的配慮)まで、イラスト中心で誤解を最小化して解説する。強いのは、〈性差と発達段階〉への目配りだ。幼児・学齢・思春期・成人とライフステージごとに現れ方が変わること、女性/マスクしがちなタイプの見落としがちなサインが丁寧に描かれる。さらに、ASD・学習症・不安/うつなど併存の話を“ある/ない”ではなく“どう絡むか”で説明しており、支援の優先順位を立てやすい。家族・支援者の〈やってはいけない言い方〉の具体例(「ちゃんとしなさい」型の無効性)と、代わりに何と言うかの置き換えが実用だ。読後には「本人の努力不足」という視点が払拭され、“環境と手順を変える”が主戦場だと納得できる。

刺さる読者像:ADHDを初めて体系的に学ぶ家族・教員・職場の同僚/本人に渡す“まずこれ”を探している人。
おすすめポイント:診断・治療・学校/職場対応がワンストップで繋がる。性差・ライフステージ・併存の視点が過不足なく入る。
実装ポイント:巻末のチェック項目を使い、〈生活・学習・職場〉それぞれでやめる3つ/続ける3つ/始める1つを家族や上司と合意。玄関の“定位置ボックス”、授業中の“役割付与”、職場の“15分点火タイム”など、環境×時間のセットで最初の一歩を置く。

27. 注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン 第5版

 

 

診断基準、評価、薬物療法、心理社会的介入の標準。臨床側の拠り所として必携だ。合理的配慮や学校との連携についても章立てされ、制度と実践の接続がしやすい。

刺さる読者像:医療・教育・心理の専門職。
実装ポイント:院内・校内の共通言語として、初回面談のチェックリストをガイドライン準拠に統一。

28. AD/HDのすべてがわかる本

 

 

概説・支援・医療・学校・就労まで横断する定番。併存症とその優先順位(不安・うつ・学習症)を判断する目を養える。家族への説明資料としても使い勝手がよい。

刺さる読者像:体系的に全体像を押さえたい。
実装ポイント:家族会議で“今月やめること”を3つ決め、環境調整から着手。

29. ウルトラ図解 ADHD

 

 

図解で脳・症状・治療・支援を俯瞰。薬の作用機序と副作用管理が視覚で理解でき、医療への不安が下がる。家族説明にも最適だ。

刺さる読者像:文字が多い本はしんどい/まず全体像を掴みたい。
実装ポイント:図をスマホに保存し、受診時の説明に使う。

30. 児童期・青年期のADHD評価スケール ADHD-RS-5【DSM-5準拠】

 

 

国際的に広く用いられる標準評価ツール。保護者版・教師版の両フォームで、不注意/多動・衝動の各9項目を0〜3点で評定し、合計点と下位尺度点を取得できる。強みは、ベースライン→介入→フォローの連続測定に向くことだ。点数の上下だけで一喜一憂せず、どの項目がどの場面で動いたかを手がかりに、環境調整やペアレントトレーニング、学級での配慮を微調整していける。年齢・性別の標準値(T得点)を参照して解釈する前提や、評定者間の一致を高める“具体例の共有”など、運用のコツも丁寧に解説される。

刺さる読者像:学校・療育・医療の専門職/評価と支援をつなぎたい保護者。
おすすめポイント:親版・教師版で生活場面の差が見える。介入効果の可視化に強い。
実装ポイント:初回受診前に親・教師の両方を記入→3か月ごとに再評定し、点数が高止まりの項目は「先行子・結果」のメモとセットでケース会議に持ち込む。

読み方ガイド(最短ルート)

ケース別ロードマップ(今日やる3ステップ)

〈大人実務〉

  1. 点火の固定: 手帳の先頭に「5分だけ」点火タスクを3つ(メール下書き・請求テンプレ起票・資料1段見出し)。参考:1
  2. 凡ミスの封じ方: 出発前3点指さし/送信前3秒停止/鍵ボックス設置。チェックリストは動線順・動詞始まり。参考:3
  3. 時間の外部化: 予定は所要×1.5、締切は二段構え(内部締切→正式締切)。会議後15分の余白を自動付与。参考:8

〈子ども・学校〉

  1. 視覚スケジュール3コマ: 朝・帰宅後の「やること」を動詞で3つ。成功は記述承認→選択肢提示。参考:12
  2. 学級での安全網: クールダウン席/課題の刻み/I do–We do–You do。参考:14
  3. 学校連携の文例: 連絡帳に「できた・工夫・次の一手」を3行で共有。参考:12

〈職場〉

  1. 指示テンプレ: 「目的→締切→完了基準→添付例」を一枚化。参考:22
  2. 見える化ボード: 未着手/進行/完了の3区分カンバン。参考:10
  3. シャットダウン儀式: 今日の終了条件→達したら業務終了。参考:9

実装テンプレ(コピペOK)

  • If–Then(怒り・衝動): 「もし声が大きくなったら→10秒黙る→席を立って水を飲む→戻って『今は確認だけ』と言う」。参考:517
  • 出発ボード(玄関): 「着替える→持つ→出る」。子どもは写真付き。参考:12
  • 5分点火の型: 「件名だけ/表紙だけ/目次だけ」。完了後に即ごほうび。参考:124
  • メール送信の3秒停止: 件名・宛先・添付の指さし読み→送信。参考:3

関連グッズ・サービス

本の学びを“環境”に落とす補助として。必要に応じて選択を。

  • ポモドーロ・タイマー: 25分集中→5分休憩を機械に任せると注意の切替が楽になる(〈大人実務〉連動)。
  • ノイズ対策: イヤープラグ/ノイズキャンセリングは感覚過負荷を軽減(6の“災害バッグ”発想)。
  • ホワイトボード/カンバン: 未着手/進行/完了の3区分で見える化(10)。
  • チェックリスト・アプリ: 動線順・動詞始まりでテンプレ保存(3)。
  • 読書サポート: スキマ時間での学習にオーディオブックや電子書籍を活用(家族と共有しやすい本は〈マンガ・体験記〉を優先)。

 

 

 

 

 

まとめ:今のあなたに合う一冊

  • まず動きたい大人: 13(点火と凡ミス封じ)。
  • 保護者・学校: 1214(声かけ・視覚化・校内連携)。
  • 職場の合意形成: 229(指示テンプレ・段取り)。
  • 体系的に深く: 112730(エビデンス→標準→評価)。
  • 家族と共有: 2324(共感→行動)。

ADHDは「努力不足」ではなく、環境と手順の設計課題だ。本で“言い方・やり方・見える化”を一つずつ装置にしていけば、明日からの摩擦は確実に減る。

よくある質問(FAQ)

Q1. 本だけで十分?医療や診断は必須?

生活の困りが強い・二次症状(不安、抑うつ、睡眠障害)が目立つ・学校や職場の適応で継続的に詰まる場合は、医療機関や支援機関と併走が安全だ。本は“言い方・やり方”の引き出しを増やす道具、診断・治療・配慮は“権利と効果の後ろ盾”。

Q2. 薬は怖い。飲むべき?やめ方は?

薬は万能でも悪でもなく、症状の強い局面をならすための補助輪。使用・中止は必ず主治医と計画し、生活の設計(時間・環境・行動)とセットで。参考:1127

Q3. 先延ばしが止まらない。何から?

「5分だけ」点火→“面白さ”を先に置く→二段締切の順で。チェックリストは動線順、送信前3秒停止でエラーを減らす。参考:138

Q4. 子どもが叱っても変わらない

叱責は短期的に止まっても学習は進まない。先行子の調整(合図・準備)結果の設計(記述承認・選択肢)へ。視覚スケジュール3コマとタイマーから始める。参考:1213

Q5. 職場での“合理的配慮”って何をお願いすれば?

席・照明・ノイズ対策、指示の出し方(目的→締切→完了基準→添付例)、見える化ボードと二段締切など、仕事の質を落とさず実装できる配慮が多い。参考:22109

Q6. 評価はどう使えばいい?

ADHD-RS-5などのスケールでベースライン→介入→フォローを定点観測。点数の上下だけでなく「どの項目がどの場面で動いたか」に注目し、家庭・学校・職場の調整へフィードバックする。

Q7. コミックと実務書、どちらから?

家族・同僚と共有したいならコミックで共感→実務書で装置化、が最短。おすすめは 23243

Q8. 反抗期のぶつかり合いが激しい

罰より契約。スマホ・門限などは共同で“ルール表”を作り、破綻したら没収ではなく再交渉へ。参考:189

用語ミニ辞典(ADHDを“設計”で扱うための最低限)

  • 実行機能:目標に向けて〈計画・着手・切替・抑制・記憶(ワーキングメモリ)〉を回す脳の統括機能。ここが渋滞すると“先延ばし・凡ミス・段取り迷子”が起きる。関連:凡ミス対策時間管理
  • 遅延割引:報酬が遅れるほど価値が小さく感じられる傾向。ADHDでは強めに出やすい。だから「ごほうびは早めに・小刻みに」が効く。関連:点火タスク先延ばし改善
  • 過集中:興味にぴたりとはまると時間を忘れて没頭する現象。武器にも事故源にもなる。終了合図(タイマー・人・予定)を外付けする。関連:段取り力
  • タイムブラインドネス:時間の経過や所要の見積りが歪むこと。所要時間×1.5で見積もり、締切は二段構えで補う。関連:時間管理
  • ワーキングメモリ:作業中に頭の中で保持・更新する短期の作業台。情報は“見える化”(紙・ホワイトボード・チェックリスト)で外出しする。関連:凡ミス対策
  • 刺激制御(CBT):ベッド=睡眠、机=作業のように“場所と行動”を再学習させる方法。ADHDの「環境で変える」と親和性が高い。関連:点火設計
  • 先行子/結果(ABA):行動の直前(合図・きっかけ)と直後(結果)を調整して行動を変える枠組み。「叱る前に合図を作る・できた直後に承認」が基本。関連:育て方のコツペアレンティング
  • 記述承認:価値判断でなく“事実を短く言語化して承認”する技法(例:「3分で席に着けたね」)。自己効力感を傷つけず行動を増やせる。関連:育て方のコツ
  • 合理的配慮:仕事や学習で実力を発揮できるよう環境・手順を調整すること(例:指示は書面で、ノイズ対策、優先タスクの見える化)。関連:周囲ができるサポート
  • 二次障害:一次の特性から続発する不安・抑うつ・自己否定など。早めの環境調整と成功体験の設計で予防・軽減する。関連:入門書ハーバード式
  • 視覚スケジュール:やることを“絵・写真・短い動詞”で並べる手順書。言葉の渋滞を回避し、切替を助ける。関連:図解サポート
  • 点火タスク:大タスクの“最初の5分で終わる着手だけ”に切り分けた一手(件名だけ・表紙だけ・1行だけ)。関連:特性の使い方

相談先リスト(医療・支援・学校・職場)

困りの強さ・年齢・場面に合わせて“併走チーム”を作る。まずは身近な窓口から。

医療(診断・薬物療法・併存の治療)

  • 小児科/小児精神科/児童思春期外来:学齢期の評価と支援計画。必要に応じて学校へ所見提供。
  • 精神科・心療内科(成人):成人ADHDの診断、薬物療法(一般名:メチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシン等)と心理社会的支援の併走。※薬の導入・中止は主治医と計画的に。
  • 臨床心理士・公認心理師:CBT(先延ばし・感情調整・時間管理)やメタ認知トレ、面接による行動計画の伴走。

地域の公的支援

  • 発達障害者支援センター:評価後の生活・就労支援、家族支援、職場・学校との連携調整。初回相談の窓口として有用。
  • 児童発達支援/放課後等デイサービス:未就学・学齢の療育・学習・ソーシャルスキルトレーニング。
  • 就労移行支援/就労定着支援:働くためのスキル練習、職場定着のフォロー。
  • ハローワーク 障害者職業相談:配慮事項を明確化した就労支援、ジョブコーチの利用調整。

学校の支援

  • 担任・学年・特別支援コーディネーター:席配置・課題の刻み・休憩挿入・評価方法の調整など校内配慮を設計。
  • スクールカウンセラー/スクールソーシャルワーカー:本人・保護者面接、学校と家庭の橋渡し。
  • 通級指導/合理的配慮の申請:学習・行動の個別支援を制度として位置づける。

職場の支援

  • 産業医・産業保健スタッフ:勤務時間・業務配分・静音席・指示の出し方の調整提案。
  • 人事・上司:業務フローの標準化、KPTやカンバンで可視化、締切の二段化、会議後の15分余白などの合理的配慮。
  • 地域ジョブコーチ:職場現場での実地支援、上司・同僚への説明と橋渡し。

セルフヘルプ/家族会

  • 当事者会・家族会:感情のガス抜きと“うまくいった工夫”の交換。孤立を防ぎ、実装速度が上がる。

緊急時の目安

  • 自他への切迫した危険や、著しい抑うつ・不眠・自傷のリスクがある場合は、ためらわず救急や地域の24時間相談窓口へ。迷ったら自治体の救急相談や医療機関の時間外窓口に連絡する。

探し方のキーワード例(検索窓にそのまま)

  • 「発達障害者支援センター +(お住まいの都道府県名)」
  • 「児童思春期外来 +(市区名)」/「成人ADHD 外来 +(市区名)」
  • 「就労移行支援 +(市区名) ADHD」/「ジョブコーチ +(都道府県名)」
  • 「スクールカウンセラー 相談 +(市区名)」

ポイントは、本人だけに努力を求めないこと。医療・家庭・学校・職場をつなぐ“設計チーム”で、行動・環境・時間の三点を少しずつ動かせば、明日の摩擦は下がる。必要なら、このミニ辞典と相談先リストを各記事の定番セクションとして常設していく。

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症状や悩みは人それぞれだが、関連するテーマをあわせて読むことで理解が深まる。

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