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審美眼を磨くためのおすすめ本

審美眼を磨くのに最適な小説を紹介

 外見にとらわれず、精神や文化・社会の根底にある揺るくことがない美しさを見抜く多めには審美眼を持つことが必要です。
 美しいか醜いかは当人の趣味趣向によって異なると思われがちですが、美しさの本質は時代を経ても変わらないもの。ギリシャ哲学でも「美」についての考察は多く行われてきました。
 生きることそのものが美しさの根源にあり、それを見い出すことこそ人生の喜び。些細な情報や主観に惑わされない審美眼を持つためには美しいものに多く触れることが大切です。
 今回は審美眼を磨くのに最適な小説を紹介いたします。美の世界を思う存分堪能してくださいね。

 

椿の海の記

椿の海の記 (河出文庫)

 石牟礼 道子 (著) (河出書房新社)
 水俣病の記録小説である「苦海浄土」が有名ですが、こちらは昭和初期、水俣病事件が起こる前の熊本が舞台です。
 4歳の少女みっちんの目線を通して古の神話のように自然と人間が共存して暮らすのどかな不知火の村が描かれています。
 草木や獣たちとの邂逅。どこか浮世離れした神秘の世界と近代化。やわらかな方言の奥底に揺らぐ大人の悪意を機敏に感じ取る少女の揺らぐ気持ち。相反するすべてが混在するこの世の運命。
 美しい日本語で掬い上げられた生きることへの美しき鎮魂歌のような作品です。

 

トニオ・クレーガー

トニオ・クレーガー (光文社古典新訳文庫)

 トーマス マン (著) (光文社)
 生活と芸術は両立できるのかーノーベル文学賞を受賞したトーマス・マンの自伝的小説といわれている古典が読みやすい現代語訳でよみがえりました。
 平凡な食べるための生き方と芸術家として身を削るように作品を生み出す力。相反する力を器用に使いこなせず、社会との距離感に悩むトニオ。友情と恋、性的マイノリティー、郷愁をキーワードに繰り広げられる美の狂演。
 芸術を愛するすべての人に手に取ってもらいたい名作古典です。

 

カンディード

カンディード (光文社古典新訳文庫)

 ヴォルテール (著) (光文社) 
 バーンスタインのミュージカル「キャンディード」でもおなじみの最善説に疑問を投げかけた哲学小説。「すべては最善である」という師匠の教えを信じている主人公のカンディード。リスボンの大地震を皮切りに戦争、盗賊・海賊の襲撃など多くの災難に翻弄されながらも、師の教えを鵜呑みにし立ち向かっていきます。
 コメディタッチに進むテンポの良い展開なので、哲学小説とは思えないほどの面白さ。映画「フォレストガンプ」もこの作品に影響を受けたそうです。
 運命に振り回されながらも懸命に生きるカンディードの生き様に美を見出せるか試してみてはいかがでしょうか。
 


 生きていくことは揺らぐこと。揺らぐことは美しく、ときに運命が人を弄んでいるかのよう。そんななかでも真実を見、美を追窮していく姿が見られる作品です。
 どれも読みやすく心に響く作品です。是非手に取ってみてくださいね。

 

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