ご両親の介護をされている方、福祉職の方、介護におすすめ
医療が進歩したことにより平均寿命が長くなったのは良いことですが、元気で長生きできる人はほんのひとにぎり。たいていの人は病気と共存して生きていくことになります。
そのなかでも問題となっているのが認知症。病気の進行度合いにもよりますが、家族の介護負担も大きな問題となっています。
今回は、認知症をテーマにした小説を紹介いたします。
ご両親の介護をされている方、福祉職の方、介護について考えておきたい方は是非手に取ってください。
百花
川村 元気 (著) (文藝春秋)
認知症になっていく母と、結婚しもうすぐ父親になる息子の物語。
どんどん失っていく記憶、シングルマザーとして息子を育て上げた母親が蒸すkには迷惑をかけたくないと気づかう姿に切なさを覚えます。
愛する家族に「あなた誰?」と言われたらどんなに哀しいでしょうか。限りある命、避けて通れない親の介護問題など、現実的なテーマと失われない親子の絆が描かれています。
著者は映画プロデューサーで「電車男」「告白」などのヒット作を制作してきました。「世界から猫が消えたなら」で小説家デビューし、注目を浴びています。
老乱
久坂部羊 (著) (朝日新聞出版)
医師として在宅医療をみてきた著者によるリアルな認知症小説。
認知症になった側の老いることへの不安、介護をする側である家族の負担の両サイドから本当の幸せの在り方を教えてくれます。
お互いに良かれと思ってとった行動が誤解を与えてしまったり、過度の妄想で死にかけたり…。病を受け入れることの大切さ、人間の尊厳を最期まで守るためにはどうしたら良いかを考えさせられます。
介護中の家族の方や福祉職の方にも読んでもらいたい一冊です。
還れぬ家
佐伯 一麦 (著) (新潮社)
家出同然で上京し、家族と疎遠だったにも関わらず認知症の父を介護した実体験に基づいて書かれた私小説。毎日芸術文学賞受賞作品です。
心身ともにすりへっていく母親の苦労、兄弟間の確執などきれいごとではない介護の苦労がリアルに描かれています。
父の死後、東日本大震災で家を失った人々に接し、家と向き合わざるおえなくなります。
介護問題と震災がリンクした重いテーマですが、それぞれの孤独が身につまされるように感じさせられます。将来、あなたが還りたいと思う家はありますか?それはどんな家でしょうか?
人は生まれた瞬間から死に向かっている生き物。目には見えなくても「老い」は必ずやってきます。
認知症という身近な病は恐れを感じると同時に、ご本人もご家族も大変な苦労を強いられるものです。そこをどう切り抜けていくかということを考えておく必要があります。