■あらすじ
[まとめ買い] こちら葛飾区亀有公園前派出所(ジャンプコミックスDIGITAL)(1-50)
基本的には一話完結なのだが、主人公である中年警官の両津勘吉こと両さんが巻き起こす、ドタバタでハチャメチャな下町風情を残す物語となります。亀有公園前派出所に勤務する両さんの元には、部下となる大冨居の中川と秋元麗子、仲の良い後輩兼友人に交通機動隊の本田、そして監視役でもある怖い上司・大原部長が控えています。
これらの人物を中心にした日常を送るもので、誕生日やクリスマス、お正月などの季節ネタ、月給やボーナスなどの給料ネタ、中川や麗子の富豪ネタ、趣味や時事ネタ、奇想天外な人物との交流ネタなどが話の中心となります。そこで、両さんが無茶な事をして失敗するのが毎回お約束のパターンで、爆破や部長にどやされてその回が終了となります。
しかし、これらの定番では飽きがあるのか、それとも社会情勢を配慮したのか過激な終わり方ばかりではなく、他メンバーがメインでの普通の終わり方やハッピーエンド的な終わり方も増えていきます。
警官ものでも基本はギャグ作品なので、警察・刑事漫画に描かれる悲惨な殺人事件などは皆無で泥棒逮捕なども少なく、子供から大人まで楽しめる笑える内容となっているのが最大の特長です。
■登場人物紹介!
両津 勘吉
身長約160センチ、40代前後の設定となる通称”両さん”や”先輩”、”両ちゃん”や”両さま”と呼ばれる主人公です。身長は低くがに股の短足。髪型は剛毛の角刈り、最大の特徴が太く繋がった眉毛。警官なのに仕事中にプラモ作り、飲酒、喫茶店でサボり、昼寝など何でもありで、当然制帽は被らず足元は素足にサンダル。冬でも腕まくりで、どこでも制服で出かけてしまう。競馬や麻雀などギャンブルとお酒が大好きな独身。葛飾署の一般女性警官には嫌われるが、なぜか超美人には好かれて秋元麗子などもその一人。性格は超初期は短気で極悪だが、いつしか下町の良き相談役というか人間味溢れるキャラに変わる。化け物級の体力や腕力を誇り運動神経抜群、ゲームなども得意でおもちゃ全般が大好き。
中川 圭一
長身イケメンで世界有数の大企業の御曹司。超がいくつもつく大金持ちで頭脳明晰なのに、なぜか交番勤務を選び平巡査となる。記念すべき第1巻の第1話から両さんと共に登場する唯一のキャラ。両さんに何十億、何百億と損害を追われても平気なのに、給料からの数万を貸すのは躊躇する謎の金銭感覚。
秋本 麗子
中川同様に超大金持ちの娘で、スタイル抜群の美人。初期はお見合いの回が多く、その都度最後は断る。基本的には両さんのブレーキ役で常識人という設定だが、時々暴走したり無茶をする。
大原 大次郎
巡査部長なので、”大原部長”や”部長”と呼ばれる。両さんより20歳程度の年上で、短身のがっちりした体型。上司となるので常識あるブレーキ役だが、連載中期からは暴走する事もしばしばある。マイホーム主義者で、盆栽やボーリング、アナログレコード、クラシックカーなどが好き。初期では、通勤の片道数時間で千葉の恐竜などが出てくるとんでもない場所にマイホームを購入していた。
本田速人
こち亀の作品転換期を担う重要人物。交通機動隊に所属するバイク隊員で、その腕前はプロ級やそれ以上。何時間でもバイクを運転でき、逆立ちや曲芸もこなす。二重人格でもあり、バイク運転中は凶暴なハイドになり、一旦降りてしまうと顔付きや口調までハイド博士のように大人しくなる。両さんとはゴールデンコンビで、この二人が一緒になると必ずトラブルに巻き込まれる。
■おすすめポイント!
秋本治の仕事術 『こち亀』作者が40年間休まず週刊連載を続けられた理由
こち亀は単行本が全200巻もあるので、その節目節目がポイントと言うか分岐点となります。私を含めた昔ながらのこち亀ファンは、初期や中期までを好みますし、女性や最近ファンになった人は後期のアニメ化を意識したような作品となったこち亀を好みます。
例えば140巻台などは、毎回のように個性的なキャラがこれでもかと登場します。初期では灰汁が強いキャラは、両さんであり例えサブキャラが登場しても、結局は両さんが上回ってしまうオチというのが多かったのですが、いつしかクセが強いキャラが増えすぎて、両さん以上の濃さを発揮するようになったのです。そこが面白いと見るか、寂しいとするかで意見が別れてしまいます。
その理由として、中川と麗子ではネタ切れと、あまりにも超大金持ち設定にしたので、現実の不景気社会があるのでそこを意識した作品として、登場を躊躇わせたと思っています。例えば、擬宝珠家も代々続く一流のお寿司屋で平均的な家庭と比較すると大金持ちですし、京都の磯鷲家もとんでもなく大金持ちです。しかし、これらは評判が悪ければ外すつもりでいたら、思いの外高評価となりそのまま継続したのでしょう。
個人的には初期であり、単行本でなら50巻ぐらいまでがこち亀らしさが全開だと思いますが、あまりにも時代が古く価値観が合わなかったり、アニメ的なこち亀を求めるなら逆に100巻あたりから読み進めるのもありです。
こち亀は40年も連載が続き、昭和後期から平成を駆け抜けた作品です。その時代時代で人気となった物がいくつも登場するので、日本の文化や発展を手軽に知れる教材という面もあります。作品で何度も出てくる携帯やパソコンの進化を見るだけでもタメになるものです。決して大げさな表現でなく、こち亀が未来を予想していた点もいくつもあり、それを探すのも楽しいものです。
■各巻のまとめ感想!
1巻~50巻
[まとめ買い] こちら葛飾区亀有公園前派出所(ジャンプコミックスDIGITAL)(1-50)
平均的な人気作品でも全20巻ぐらいだと思うので、50巻でも2倍以上となります。とにかく圧倒的なボリュームに驚きますが、全話が縦ページとなって掲載されていたり、ちびっこ向けキャラのデフォルメ版こち亀など実験的な意欲作も多く、これこそこち亀のエッセンスが凝縮されていると思います。
51巻~100巻
[まとめ買い] こちら葛飾区亀有公園前派出所(ジャンプコミックスDIGITAL)(51-100)
連載開始が1977年、51巻は1988年発売、100巻は1996年なので20年弱での到達となります。これはワンピース等と同じか、それよりも早いペースなので如何にこち亀の単行本発売が驚異的か分かります。
101巻~150巻
[まとめ買い] こちら葛飾区亀有公園前派出所(ジャンプコミックスDIGITAL)(101-150)
100巻も越えてくると、正確にはその前からですが、有る特徴が出てきます。それは両さんはより小さくがっしり体型、麗子を始めとした美少女キャラも多く皆が巨乳、中川はお笑い系にシフトし、部長は両さん的なキャラになるといった変化です。コンビニ、秋葉系のネタ(スマホ、ゲーム、PC)なども増えて、社会の動きを敏感に取りいれて作品としています。
151巻~200巻
[まとめ買い] こちら葛飾区亀有公園前派出所(ジャンプコミックスDIGITAL)(151-200)
憎き存在とすると語弊がありますが、擬宝珠家の面々がかなりクローズアップされます。両さんの無茶に対し、幼稚園児である檸檬や夏春都が突っ込むシーンが多く、それはかなり複雑でした。また、いくら何でもありのこち亀でも、独身で推定年齢40代の両さんが擬宝珠家に居候(住み込み)をするのは無理があります。これを引っ張り過ぎたのが、こち亀の功罪ではと思ってしまいます。フォローするなら、下町を大事にする両さんでありこち亀なので、より下町らしさを前面に出すなら、警官や派出所よりも寿司屋の方が外国でのウケも良かったのかも知れません。
こちら葛飾区亀有公園前派出所200巻 40周年記念特装版 (ジャンプコミックスDIGITAL)
■大好きであり苦手な漫画が「こち亀」!
秋本治の仕事術 『こち亀』作者が40年間休まず週刊連載を続けられた理由
私事ですが漫画人生にどっぷり嵌まる切っ掛けを与えてくれたのが、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」こと「こち亀」です。今でも全巻保有し、どの漫画よりも一番読み返す事が多く、同時に飛ばす回が多いのもこち亀になります。人情編、少年時代編、晩年の擬宝珠家の寿司屋編、関西下町の大阪編などはかなり苦手で、正直どこにこち亀らしさがあるのか、理解できません。
こち亀とは、両津こと両さんが警官でありながら無茶やバカな事をするか、マニアック路線に走る。その過程と失敗する結末が最高に面白く、それが感じられない回はパワーダウンどころか、同じこち亀であってもまったく別物なのです。
そもそも、簡単な漢字や計算すらもまともにできない、つくだ煮屋のバカ息子。法条という東大卒のキャラに、「小学校卒業で警察官になった」と言われる始末です。近所や周囲に迷惑ばかりかけ、誰も面倒が見切れなくなり、その縁で警官となり公園前派出所に配属されるのに、それがなぜ寿司屋で働く必要があるのでしょう? 確か、飛ばし読みなので曖昧ですが、寿司屋で働くとその分の給料も入るので、お得という事で働き始めたはずですが、これまで何度も大儲けと大損を繰り返してきた男が(お約束ですが)、なぜ寿司屋での月数十万にそこまでしがみ付くのか、これまでと真逆の作風や展開となり納得が出来ません。第一、両さんは短気で辛抱できない。自己中の筆頭でもあり、集団生活でも迷惑ばかりかけ、サボり癖もあるのに、寿司屋で根気よく修業をするのはちょっとないのでは…。多分、作者がお寿司の魅力に嵌まり、それで寿司路線を入れたと勘繰っていますが、真相は不明です。
長期連載で大好きだからこそ、苦手な面がいくつも視界に入りますが、最高に笑わせてくれた”神回”もいくつもあります。それまで、ギャグ漫画で笑う事はありましたが、ハッキリとした中年オヤジが主人公で、ここまでバカバカしいのは初めてでそれが衝撃だったのです。中でも、個人的には20巻から50巻ぐらいまでは、超初期の拳銃を闇雲にぶっ放すバイオレンスのオチを脱却し、きちんと起承転結を一話で完結させ、そこに時事ネタも入れるなど独自のテイストで、これまでの漫画作品にはない新スタイルでした。給料をスグに使い切り、ボーナスは商店街連中の借金取りに奪われ、部長には”警察の恥”と嫌味を言われ、それでも次の回は、いつも通りに派出所の机でプラモを作っている。ハッキリ言ってこんな大バカは存在しないですよね。何より、おもちゃ屋でツケ払いの警官って、一体何者なのでしょう。
その中で、今思い浮かんだ個人的なベストは、30巻前後に掲載された”長崎出張編”となります。確か、初期ではまだ珍しい長編で、珍しく出張する事になった両さんですが、貰った電車代は前日全て飲み代で消え、当日は自転車で行く事になります。しかし、道中で米兵とケンカになり自転車は壊れる。そこで麗子が大阪まで乗せて、その後は本田を呼びつけ二人乗りで長崎に行くという内容です。もう呆れるぐらいにバカバカしく、バイクがガス欠になると本田と交通違反の車からガソリンを奪い、泊まる宿がないので見知らぬ高齢者宅に親戚のフリをして厄介になる度胸。最後は本田だけバイクで帰らせ、両さんは一人飛行機で帰るのに、航空券を無くすという完璧なオチです。他にも、葛飾署や派出所を爆破、中川が運転する高級車のアクセルを助手席から踏み事故、部長や寺井を”マイホーム主義”とバカにする点などは秀逸すぎて文句の付け様がないです。
こち亀の歴史…作者・秋本治によって、1976年から2016年までの40年間に渡り週刊少年ジャンプに掲載され、コミックスの発行巻数がギネス世界記録を塗り替えた記念すべき国民的漫画。単行本は全200巻、アニメ化やアニメ映画化、実写ドラマ化と実写映画化に舞台化、ゲーム化、単行本の他に小説や関連本、さらに亀有駅前の両津銅像など、ドラゴンボールやワンピースやサザエさんの次に位置する日本を代表する娯楽作。
■まとめ
[まとめ買い] こちら葛飾区亀有公園前派出所(ジャンプコミックスDIGITAL)(1-50)
批判めいた事も書き綴りましたが、一番影響を受けた漫画であるのに変わりはありません。何から何まで型破り、自由気ままに生きて、趣味や好きな事に没頭する姿に憧れた中高年は私だけではないでしょう。結構酷い性格なのに、周囲に知り合いや友人が多いのも、何かとフォローしたり助けてあげる優しさが垣間見れるからです。
今から全巻購入や読むのは大変なので、興味を持たれた方は、ベスト版的な人気作を収録したものをおススメします。