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【エデンの王 漫画】ネタバレもあり。人類滅亡をスリリングに描くミステリー漫画「エデンの王」を紹介。

 

■長崎尚志の話題作「エデンの王」を紹介!

作者を好きになると、新作の中身を気にせずに購入してしまうのが、よくある漫画ファンの有るべき姿というものです。私にとってその一人が長崎尚志氏で、彼が係わった作品だと売上や評判・評価などは一旦脇に置いて、取りあえず購入するなり読んでみたくなって居ても立ってもいられなくなります。

浦沢直樹氏の「モンスター」や「20世紀少年」など、主に原作として関与したのが長崎氏で、その待望の新作が今回の「エデンの王」です。内容はお得意のミステリー物で、謎を解明する度に謎の死が起こり、謎の人物、謎の出来事、謎の…と、これでもかと言うぐらいに”謎”が満載でお腹いっぱいの作品です。

個人的にはかなり気に入っていますが、「モンスター」や「20世紀少年」のようなインパクトはありませんし、世間の評価からも成功したとは言えないのが実情です。しかし、浦沢作品や長崎作品を読んだ事がなければ、この「エデンの王」で描かれる王道ミステリーはかなり興味深いはずです。

浦沢作品とキャラ設定や人物の描き方は似ていますが、浦沢作品がより顔の個性を強調するのに対し、「エデンの王」はより人間らしい顔で目や鼻を誇張をしないのが特徴です。要するに、隣近所にいるような普通の人が事件や謎に巻き込まれ、それが現実と漫画の垣根をなくならせています。

エデンの王…NTTソルマーレによるコミックブランド「ズズズキュン!」が設立され、「コミックシーモア」などで日本初のデジタル配信の漫画として注目されています。原作・長崎尚志、作画・IGNITOの二人で、単行本は4巻まで発売中。

 

■あらすじ!

スペイン・アンダルシア地方のとある村で、山積みとなった大量の死体が発見される。居合わせた警官が、そこで発見したのは”狼ウィルス”によって狂人と化した化け物の姿だった。その現場は、アジア人男性がいたお陰で被害が食い止められたが…、それは悲劇の序章に過ぎず、世界各地で多発する恐怖の大量死がこれからさらに勢いを増して始まるのであった。

そして一連の大量死に関係する謎の男は、「人類最初の人殺しの話をしよう」と意味深な言葉を残す。人類を救おうと立ち上がったのは、スペインの村を救ったアジア人男性と女性考古学者。この二人が大量死の謎を解明しようとするが、そこには狼ウィルスで事件を操り、世界を混乱と混沌に陥れようと企む謎の男が、またしても浮かび上がる。

世界はこのまま人類滅亡のカウントダウンを数えるしかないのか? 狼ウィルスを防ぐ手段はあるのか?

 

■登場人物の紹介!

ユ・テゼ

主人公で推定年齢30歳前後の韓国籍の男性。Dr.イツキとは小学校時代の同級生。ルーマニアのアレクサンドル・イオンクーザ大学で考古学を専攻していた。ヨーロッパで発生する大量死事件を解明しようと奮闘するが、逆に犯人と疑われている。

Dr.イツキ・ルア

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韓国ソウル大学で古代学を教える考古学博士の女性。父親は日本人で母親は韓国人のハーフ。ウィルス知識の専門家でもある。一見すると小柄で平均的な女性だが、イスラエルの格闘術をマスターした実力者。

東雲アヤ(しののめ あや)

Dr.シノノメの娘で大学で考古学を教える。ユ・テゼとは、ルーマニアの発掘現場で事故に巻き込まれ、生還した間柄。

 

Dr.シノノメ

世界的な考古学者。娘のアヤ、ユ・テゼらと共にルーマニアの採掘現場で事故に遭う。

 

Dr.キャノン

医学博士、考古学博士でもあり世界保健機構に所属。

 

Dr.モーガン

イギリスの王室病院に入院中。発掘作業中に狼ウィルスの恐怖を体験し精神を病んでいる。

 

エドムント・ハース

ユーロポールの警部補。謎の大量死事件を追っている。

 

死の商人

世界を滅亡させる事も可能な「謎のウィルス」(狼ウィルス)を売りさばいているとされる。

 

狼の王

ウピルと呼ばれている? ソ連軍参謀本部情報総局の出身とされる。

 

■おすすめポイント!

本格的なミステリーで、アジア人男女2人によって、世界滅亡を救えるのか毎回ドキドキさせられます。一話毎に世界各地で狼ウィルスによる悲劇が起こるような展開で、一難去ってもまた一難となります。登場人物も実在するようなリアリティがあり、変に漫画だからと個性的なキャラばかりにしないのも好印象です。それが逆にミステリーとして、自分も体感しているような恐怖を読者に与えてくれます。

謎が解明されるスピードも早いので、その小気味良いテンポもせっかちな現代人向けとなります。いくら世界滅亡を謳って早く事件を解明しなければと言った内容で、作中で何度も繰り返されても、肝心の作品自体があまりにも長期連載となると、「世界滅亡に何十年もかかっている」と矛盾が生じるからです。

その点、「エデンの王」は最初から5巻~10巻ぐらいで完結させる予定なのでしょう。主人公が事件に関わるようになった経緯も、無理がなく納得できます。主人公側のキャラは、全員が正義感たっぷりで悪だくみや裏切りなどもないので、構図がハッキリさせているのも、読んでいて勘繰りなどしなくて済みます。

穿った見方をすると、初期の「ジョジョの奇妙な冒険」と「マスターキートン」を足して割ったような作品であり、そこに世界各地の大量死と韓国人主人公を合わせた作品です。それだけで終わらないように、細部は丁寧に作り上げ、物語として一貫性が保てています。

 

■各巻の感想!(1−3巻)

1巻

エデンの王【特装版】 1 (ズズズキュン!)

第一話を読む限りでは、これから「北斗の拳」のような物語が始まると思ったら、少々肩透かしを受けて、ウィルスによる人類滅亡物語と後から気が付きます。普通の漫画だと、徐々に主人公がカッコよくなるのですが、「エデンの王」の場合は今のところは第1巻の第一話がいちばん乱闘シーンなどで様になっています。イケメンでロングコートを羽織り、敵(ウィルス感染した犬や人間)を倒すシーンは、確かこれはミステリー作品だよな、と確認したくなるほどです。

本編とは関係ありませんが気になったのは、この作品はデジタル配信という事で、通常の雑誌に掲載される漫画と比較してページ数が多いです。一話毎に40ページ前後あるので、そこが少し通常スタイルに慣れていると違和感があります。そろそろ、一話が終わるので、何か思わせぶりで終わると期待すると、そのまま続いていき、ちょっと変な感じになります。

 

2巻

 

エデンの王【特装版】 2 (ズズズキュン!)

世界各地で事件が起こるのは、狼ウィルスを商売にしている謎の商人によるものとされる。ユ・テゼ、Dr.イツキが必死になって事件を食い止めるのに奔走しています。1巻や3巻と比較すると全体として単調ですが、少しずつ全容が掴めていける感が出ています。

これで悪側の主要キャストである謎の商人・ウピルも登場し、やっとバランスが取れてきました。これまで、狼ウィルスの背後に”何か”あるとしながらも、その”何が”まったく読者には伝わったこなかったので、なるほど悪い人がいたんだと納得です。

3巻

エデンの王【特装版】 3 (ズズズキュン!)

狼ウィルスはいつ、どこで、誰が発見したのか? その謎が解明されるのが今回の3巻です。通常のミステリー漫画だと、物語全体の最大の謎であり鍵なので、もう少し先延ばしすると思ったら、意外にもあっさりと全貌を公開しています。潔いというべきなのか、エンディングが近いからなのか、それとも更なるどんでん返しがあるのか分かりませんが、この点はミステリー漫画らしからぬ展開となっています。主人公のユ・テゼが、思いっきり関わっているので、これは事件解決に取り組む張本人となって、先頭に立つしかないですね。でも、当初は初心な大学生であるユ・テゼが、なぜ今のような強さを身に付けられたのかは、不明のままです。

最後には、ユ・テゼや東雲親子など4人だけが狼ウィルスに感染しない事が判明され、それが全容解明の糸口になるとされる。

 

■まとめ

ウィルスによる人類滅亡の危機が世界各地で発生し、それを必死で食い止める主人公がイケメン韓国人とハーフの美人日本人。この組み合わせは、これまでの漫画では見られない設定だと思います。日本の漫画も遂に、設定すらグローバル化となったのか、それとも最近の日韓関係に考慮したのか分かりませんが、その観点からは新鮮に読む事ができます。特に政治的な問題は触れず、互いに力を合わせます。

しかし、これが裏目なのか、それとも掲載がネット配信なので宣伝不足なのか、「エデンの王」はスリリングな中身に反して、あまり話題になっていません。読者はミステリーものが嫌いになったのか、それとも物語が凝り過ぎているのが原因なのか分かりません。

人気やセールスでは成功とは言い難いですが、漫画の質がとても高いのは事実ですし、浦沢作品や長崎作品が少しでも好きなら、必ずこの世界観を気に入ります。

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