大人が読みたいナンセンス絵本
どこが面白いのかと聞かれたら回答に困ってしまうけど気に入っている大人向けのナンセンス絵本を紹介いたします。
ナンセンスとはユーモアのなかでも高尚なものといわれています。外国のユーモアを理解するのにコツが必要なように、ナンセンスも読み続けていれば落としどころが分かって面白いもの。起承転結がなく物語展開が少ないので、大人の方のほうが理解しやすいと思います。いろんな社会情勢を反映させるも良し、思う存分お楽しみください。
ワーニー、パリへ行く
フレッド マルチェリーノ (著) (評論社)
エジプトでは神とあがめられていたワニのワーニー。ナイル川でのんびりと気高く暮らしています。ところがある日、ナポレオンがやってきて…。パリに連れていかれたワーニーは見世物として披露されます。どんなときでも気高さは忘れず、過酷な環境ものらりくらりと交わしていく様子はとてもユーモラス。そしてついに、その本性をあらわすときが来るのです。最後のブラックな展開にはドキリとさせられます。
やっぱりおおかみ
佐々木 マキ (著, イラスト) (福音館書店)
漫画雑誌「ガロ」から生まれたおおかみが主人公の絵本。村上春樹さんの小説でイラストを手掛けた佐々木マキさんの作品です。
この世でひとりぼっちのおおかみが仲間を探しに町中を探し歩きますが、ひとりとして似たものがいません。自己の存在とは何か、群とは何かを考えさせられ、ラストは心が軽くなる絵本。「け」としか言わない影絵のようなおおかみの姿が読者の心を惹きつけます。
ジャリおじさん
大竹 伸朗 (著, イラスト) (福音館書店)
現代美術家による不思議なナンセンス絵本。鼻の頭からヒゲが生えているおじさんの名前はジャリおじさん。ジャリおじさんは「ジャリジャリ」としか話せません。海のそばで暮らすジャリおじさんがふと後ろを振り返ると黄色い道が続いているのが見えました。ピンクのワニと一緒に永遠と続く道を歩き続けます。さて、道はどこにつながっているのでしょうか?
予想もつかない展開にいつまでも振り回されるなんだかクセになる絵本。第43回小学館絵画賞受賞作品です。
独特のほろ苦さが魅力のナンセンス。絵本なら風刺画の楽しみのように読み解くことができます。一歩踏み込んだユーモアにきっとはまってしまうこと間違いなしです!