戦争って、どういう風にして始まるのでしょう。ある国がある国に宣戦布告をしてスタートするというのは、制度上はりかいできるのですが
現実は、ある日を境にというわけではなく、じわじわと、そういう状況になっていくのです。
そんな空気をリアルに感じることのできる本をご紹介します。
『一九四一黄色い蝶』
著・岩崎京子
日本が戦争をしていたころ、ふつうの子どもたちはどんなくらしをしていたのでしょう?この本は、16歳、14歳、8歳の3人姉妹が主人公です。昭和16年(1941年)のお正月から、12月に真珠湾攻撃でアメリカと戦争をはじめるまでの1年が書かれています。
おせち料理の品数が少なかったり、いとこが戦争にいったり、慰問袋をつくったり、陸軍病院に慰問にいって劇をしたり。少しずつ戦争の影がしのびよってきます。
著者の自伝的小説です。じっさいには長女だが、本書では、次女永子の目をとおして書かれています。戦争がひどくなってからのものは多いが、太平洋戦争が始まる直前のふつうの子どものようすとして、同年代の子にすすめたい1冊です。
『弟の戦争』
著・ロバート・ウェストール
弟のフィギスは心のやさしい子で、傷ついた動物を放っておけない性格でした。湾岸戦争がはじまったとき、かれは12歳でしたが、急にアラビア語をしゃべり、自分はラティーフという名で、イラクの少年兵だと言い出します。
はじめは眠っているときだけでした。でも、だんだんラティーフでいる時間が長くなっていきます。ラティーフは死ぬことを怖がってはいません。ただ、死ぬ前にアメリカ人を何人か殺したいと願っているのです。
弟を思う兄、世間体を気にする両親。人種差別をのりこえた精神科医のラシード先生。この事件で、兄の「ぼく」も成長します。正義の戦争なんてありえない。戦争は、片方が完全な善で、もう一方が完全な悪ということはないという、作者の主張が伝わります。
『ガラスのうさぎ』
著・高木敏子
今からおよそ70年前、日米は戦争をしていました。ヨーロッパではじまった戦争が世界にひろがり、日本はアメリカに宣戦布告、「太平洋戦争」がはじまったのでした。12歳の敏子は、その戦争の中で
「東京大空襲」で、おかあさんとふたりの妹を亡くしました。アメリカ軍の爆撃を受け、東京の街が焼け野原になってしまったのです。さらに、おとうさんも亡くし、敏子のむねは、くやしさと悲しさでいっぱいでした。
そしてなによりも、戦争の無残さとむなしさを感じずにはいられませんでした。
著者の戦争体験を綴った小冊子をもとに、1977年に刊行されて話題となりました。
戦争というと悲惨さを強調するあまり、戦場で傷ついている兵士や破壊された街並み、それに逃げ惑うひとびとが描かれることが多いです。
それも確かに戦争の一面なのですが、一方では普通に生活をしていて、その延長上に戦争という恐ろしいものが覆いかぶさってきたのです。
その変化が分からなければ、今後も戦争を防止することはできないでしょう。