失恋をすると心に大きなダメージを受けます。大好きな人を思いだしては涙し、食欲もなくなってしまうことも。人を愛するということはとてもエネルギーがいるもの。そして、そんな大切な人に自分を拒絶されてしまうということは、まるで自分の存在価値がないかのように思えてしまい後悔や二度と会えない寂しさに胸が詰まってしまうような苦しさに苛まれます。そんなときは無理に感情を抑え込もうとせず、傷ついている自分の心をただ静かに観察し、立ち上がれるその日までそっと見守ってあげることが大切です。今回は失恋を描いた小説を紹介いたします。自分の恋と照らし合わせて読んでみるのはいかがですか?
ココの詩
高楼 方子(著) (リブリオ出版)
フィレンツェのウフィツィ美術館が舞台の物語。人形から人間になった純粋なココとやくざなねずみヤスの恋物語。高楼さんは、暖かくほのぼのした児童書が多い印象ですがこれは異色の大人のためのほろ苦いお話です。猫たちが贋作と名画をすり替え荒稼ぎしていることを止める女の子とねずみ。女の子を騙すねずみと、ダメだと分かっていても惹かれてしまう恋心。すっきり割り切れないラストだからこそ、痛みを抱えて前に歩いて行ける勇気をくれる本です。
まってる。
デヴィッド カリ(著) (千倉書房)
いつか来るその日をまっているあなたへ。誰かを、運命を、戦争を。人生のなかで訪れる様々な始まりと終わりを待っていることでしょう。始まりのページにある一本の赤い糸。そこから繋がっているのはどんな未来でしょうか。生まれてから、いつか命を終えるその日まで。個体としての命が終わっても繋がっていく命の尊さ。横長のデザインがオシャレな希望の光があふれる本。そぎ落とされた言葉のなかから、たくさんの優しさが伝わってきます。待つしかないことの不安、待つことの喜びが表現された絵本です。
花宵道中
宮木 あや子(著) (新潮社)
江戸末期、新吉原。心から誰かを愛したことがなかった遊女が本当の恋を手に入れ翻弄されてしまう激しくも哀しい物語です。男性に夢を与えるのが仕事で自分は夢見ることは許されない残酷な現実。暗い過去のなかにも堂々と華憐に咲く一輪の花はより美しく輝きます。生き抜いていく女の強さ、愛情の大切さを感じさせてくれる一冊。R-18文学賞受賞作品です。
失った恋を忘れるためには時間が必要とよく言いますが、苦しい時間を過ごすことに耐え切れないからこそ辛いもの。恋の成就に関係なく、他人をこんなに愛することが自分にはできるんだと自信を持ってください。いつかくる良い出会いに期待するなんて器用なことができないという方は、過去の楽しい思い出に浸ってみるのも恋の楽しさの一つだと思います。