寂しさを感じる瞬間は人それぞれ。夜中に急に襲ってくる理由のない淋しさもあれば、自分が世界でたった一人きりのような気持ちになってきてさみしくなったり、友人や友だちと和解できないような喧嘩をしたとき、自分の思うような結果が得られずに落ち込んでしまったとき。簡単に解決できる問題なら、友人に相談したり一晩寝れば治ったりしてさみしさを忘れることで乗り越えていけますが、そうではない類のさみしさに押しつぶされそうなときもあります。そんなときは無理に元気を出そうとあれこれしないで、本のページを開いてみるのがおすすめです。今回はさみしさを和らげてくれる優しい本を紹介いたします。
波うちぎわのシアン
斉藤 倫(著) (偕成社)
港町ラーラにあるひとつきりの丘の上の診療所で拾われた猫、かもめを語り手として綴られる炎に包まれた船のなかで見つかった少年シアンの物語。少年の左手は決して開くことがなく、その手には不思議な力が隠されていました。生まれる前の記憶をめぐるドラマチックなストーリーです。著者が詩をつくる方なので、登場人物の心情の変化が繊細で優しさに満ちて書かれており、温かく、切なく、最後は清々しい気分になれる一冊です。言葉のひとつひとつを深く味わってください。
とびっきりのともだち
エイミー ヘスト(著) (BL出版)
海辺で出会った無垢で元気いっぱいの子犬。なついてくる子犬に、少年は亡くなった犬、オスカーへの想いから子犬の愛情を受け入れきれません。しかし、時間をかけていくうちに少年の心は変化していきます。愛犬を亡くした悲しみを癒してくれたのは偶然出会った子犬でした。喪失を受け入れ、再生していくことの大切さと無理しなくても良いんだと思わせてくれる絵本。心のなかにいるオスカーと、いまそばにいる子犬との両方への愛を抱いて生きていけることは幸せです。
ロボット・イン・ザ・ガーデン
デボラ インストール(著) (小学館)
AIが大活躍する近未来のイギリス。ある日、庭に型遅れのロボットがやってきます。遺産で暮らしている中年男性と弁護士として活躍している妻。崩れかけた家庭のなかにやってきたボロボロのロボットが家族を繋げていく物語です。他人を思いやる心の大切さを学べる温かい物語。AIの倫理や育児の問題についても触れられています。ロボットの表情がとても可愛らしく、映画化が期待されている作品です。
どの本も、さみしさに流されないように、きちんと乗り越えていける勇気を与えてくれる本です。子どもの頃のように、さみしいからと素直に泣けなくなってしまった大人だからこそおすすめしたい本です。是非心の安定剤として傍に置いてくださいね。