いかにも感動させよう、涙させようと書かれた本はなんだか興ざめしてしまうという方におすすめなのが児童書や絵本。作者には読み手である子どもに向けてのやさしさがあり、どんなとらえかたをしても良いように、そして丁寧に心情を描いています。
今回は親子で楽しめる感動する絵本・児童書を紹介いたします。繰り返し読んでも心に残る作品を集めました。声に出して何度も読んでみてくださいね。
こんとん
夢枕 獏 (著) (偕成社)
中国神話に登場する中国の怪物「渾沌」の伝説をもとにつくられた絵本。
こんとんには名前もなく、目も耳も口も鼻もない。六本の足と六枚の翼を持ち、いつも空を見上げて笑っているみたいな存在。ある日、南と北の海の帝が七つの穴を作ってやることにしたのですが・・・。大人も子どもも楽しめる切ない物語。
「ピンポン」の松本大洋さんがイラストを手掛けています。モノクロのふんわりした筆跡が余韻を残してくれます。
虔十公園林 (ミキハウスの絵本)
宮沢 賢治 (著) (三起商行)
いつでもはあはあ笑っていて、子どもにもバカにされている虔十。いつも物をねだったりしない虔十が杉の苗をお父さんにおねだりしました。そんな土地では何も育たないといわれても、毎日毎日畑に手を入れる虔十。杉はだんだん育ってきて・・・。ほんものの賢さとは何かを考えさせられる作品。虔十の思いはずっとずっと人々の心を温めてくれます。
ガラスの花かご (とっておきのどうわ)
やなぎや けいこ (著) (PHP研究所)
村の雑貨屋さんを営む頑固者のガラス職人のおじいさん。くすりとも笑わず、いつも静かに暮らしていました。店先に飾られたガラスの花かごを譲ってほしいといわれても誰にも売りません。ガラスの花かごに魅せられた無垢な少女との出会いがきっかけとなり、凍てついたおじいさんの心を溶かしてくれる涙ぐんでしまう児童書。子どもの存在が大人を支えてくれるということが実感させられます。
多くの人々が感動するものとは、個人の経験や思考に限定されない人間にとって大切な「こころ」を扱う作品が多いと思います。何よりも大切なものは人と人とのこころの触れ合いなのかもしれません。