パフォーマンスアーティスト・ミュージシャン・作家・女優・映画監督という多彩な才能を持つミランダ・ジュライ。
2005年、脚本・監督・主演を務めた初の長篇映画「君とボクの虹色の世界」でカンヌ国際映画祭でカメラ・ドールを受賞し、若者層を中心に大きな注目を浴びている方です。
2019年はユニクロのUTのデザインTシャツをコラボと、ますます日本でも人気が高まっているミランダ。
モチーフをとらえるときに、複眼的なとらえ方をしその消化の仕方が何とも言えない独特の文才のある方です。
今回は日本語に翻訳されているミランダの作品を紹介いたします。映画化されている作品もあるので、映像作品と見比べてみるのもミランダの魅力にハマるきっかけになるかもしれません。
村上春樹さんが好きな方は気に入る作風だと思います。是非手に取ってみてください。
あなたを選んでくれるもの
ミランダ ジュライ (著) (新潮社)
脚本家の著者、ミランダは執筆に行き詰まり、郵便受けのなかに入っていた「ペニーセイバー」という無料の小冊子を手に取ります。そこに書かれているのは「革のジャケット20ドル」など不用品を譲る広告。この人はどんな生活を送っているのか、どんな夢を描いて何を恐れているのかと気になったミランダは、次々に売買広告を投稿した人々を訪ねてインタビューを始めます。
売買される物も、それを売る人もそれぞれ個性豊かでエキセントリック。ノンフィクションで淡々とストーリーが進みますが、見知らぬ人々の声に耳を傾けていくうちに、自分の人生を見つめなおしていくミランダの情熱や挫折、不器用さ。それぞれの人々を通してくみせてくれる現代アメリカの姿。フォト・ドキュメンタリー作品とのことで、ところどころに掲載される写真に人物像が投影され、決して出会うはずもなかった人たちの人生にふと心を奪われるという不思議な読書体験ができます。
ミランダの長篇映画「ザ・フューチャー」の原作です。
最初の悪い男
ミランダ ジュライ (著) (新潮社)
少し妄想癖のある中年女性のシェリル・グリックマン。上司から頼まれて、手に負えない今どきの20歳の女の子を預かるところから物語は始まります。人の孤独と孤独が反応しあい、どんどん膨れ上がっていく様子。そのなかで見つけ出す幸せの青い鳥。
個性的な登場人物たちが繰り広げる愛と孤独の物語。激しい怒りや欲望、先の読めないストーリー展開と、とにかく読んでもらいたいエンターテイメント作品。子育てをされている方にもおすすめの一冊です。
いちばんここに似合う人
ミランダ ジュライ (著) (新潮社)
みんなちょっとおかしくて、孤独。それぞれの生き方を貫いているのに、周りから見るとちょっとおかしい。そんな独りぼっちの時間こそ、その人が一番が輝いている瞬間でもある。切なさと安心感が漂う不思議な読後感の16の短編集。フランク・オコナー国際短篇賞受賞作品です。
常に疎外感を感じている方、生きづらさを抱えている方、フランス映画のような雰囲気が好きな方におすすめしたい一冊。Twitterでも感動したという人が続出している話題の本です。
短編でも長編でも、ミランダの小説はまるで映像を見ているかのような感覚に陥ります。ストーリーがあるのかないのかわからないような作品ですが、手に取るようにメッセージがきちんと伝わってくるのです。これからも彼女の作品が日本語に翻訳され、出版してくれると嬉しいです。