愛する人や慣れ親しんだ土地と離れるとき、寂しくて愛おしくて、別れることがこの世の終わりのような気持ちになります。新しい出発への不安がその想いに拍車をかけ、ずっとここに留まりたいと思うこともあるでしょう。それでも生きている限り、出会いと別れを繰り返していくしかないのです。悲しみを癒すのは悲しみ。
悲しみを知った人だけが、その絶望を知ることができます。そんな別れの辛さを味わっている方、過去にそんな想いを抱いた方におすすめの別れがテーマの本を紹介いたします。心の傷を癒してくれる本を手にとってみてください。
新装版 離婚
色川 武大(著) (文藝春秋)
夫婦という形にこだわるからこそうまくいかない。離婚をしたのに一緒に住む夫婦は結婚の重圧から解放され、すべてがうまくいくように・・・。直木賞受賞作品の表題作のほか、色川作品のなかでも読みやすい娯楽作品「四人」「妻の嫁入り」「少女たち」の短編を収録。ひとことではくくり切れない、複雑で煮え切らない感情と人間関係を描いた作品。前向きな別れを考えさせられます。
少女は卒業しない
朝井 リョウ(著) (集英社)
地方にある取り壊しが決まった高校。卒業の悲しみ、未来への不安。大きな節目に交差する少女たちの過去への想い。青春時代の卒業お別れをテーマに、校舎が取り壊しされる前の一日を描いた連作短編集。目の前に広がる淡くきらめく若さゆえのきらめきと不安定な思春期の心情がみずみずしい文章で綴られています。現役女子高生の方、かつて女子高生だった大人の方におすすめの一冊。恋愛小説としても楽しめます。
君たちに明日はない
垣根 涼介(著) (新潮社)
リストラ請負会社に勤める主人公・真介はクビ切り面接官を担当しています。企業からの依頼を受け、リストラ候補者に自主退職を促す誰もが嫌がるこの仕事にやりがいを感じている真介。登場人物たちの仕事への向き合い方、経営者としての気持ち、ズレていく会社との観念などのそれぞれの立場での考え方。リストラは終わりではない、新たなる再構築をプロデュースするのです。山本周五郎賞受賞作品。爽快な別れの物語です。
別れが悲しいと思うのは、それだけ一生懸命誰かを、どこかを愛した証拠でもあります。思い出は決して薄れることなく、いつまでもあなたの心のなかで寄り添ってくれ、未来への希望を抱かせてくれることもあるのです。大切な思い出を胸に抱き、過去の出会いに感謝し、今そばにいてくれる人を大切にしてください。