落ち込んだ日や、親子で空気を変えたい日に頼れるのが、声に出して笑える絵本だ。元気が出る絵本は、励ましの言葉を並べるよりも、ふっと力を抜かせてくれる。ここでは、笑える、声に出せる、発想が変わる、という3つの明るさから選んだ。
読む目的別の入り口
元気が出る絵本といっても、ほしい明るさは日によって違う。疲れている日は肩の力が抜ける本を、親子で声を出したい日はリズムのある本を、気分を切り替えたい日は発想が広がる本を選ぶといい。
- 気持ちを軽くしたいときは、まず 1.いいからいいから。何かを解決しなくても、笑って受け流す余白が戻ってくる。
- 親子で声を出して盛り上がりたいときは、4.ねこのピート だいすきなしろいくつ と 6.だるまさんが。読み聞かせの場がそのまま遊びになる。
- 考える方向を変えたいときは、5.りんごかもしれない。しょんぼりした頭の中に、小さな抜け道ができる。
元気が出る絵本は、励ます本だけではない
子どもが落ち込んでいるとき、大人はつい「大丈夫」「元気出して」と言いたくなる。でも、言葉で励まされるほど、かえって元気が出ないこともある。気持ちが沈んでいるときは、正しい言葉よりも、笑いの間合いや、声のリズムや、へんてこな絵のほうが先に届く。
元気が出る絵本のよさは、読んでいるうちに気分が少し動くところにある。大きな悩みが消えるわけではない。けれど、ページをめくるたびに「まあ、いっか」「もう一回読もう」「次は自分で言ってみたい」という小さな反応が生まれる。その反応が、沈んでいた部屋の空気を少し明るくする。
今回は、癒しや静かな安心よりも、明るさとユーモアを軸に選んだ。笑える本、声に出すと楽しい本、発想がひっくり返る本。どれも、親子で読むと読み手の声や間の取り方が加わって、ページの外まで楽しくなる絵本だ。
元気が出る絵本おすすめ6選
1.いいからいいから(絵本館)
『いいからいいから』は、元気を出させようと頑張らないところがいい。雷の親子が家に落ちてきても、おじいちゃんは慌てない。困ったことが起きたはずなのに、「いいからいいから」と受け止めてしまう。そのゆるさが、読んでいる側の肩から力を抜いてくれる。
この絵本の面白さは、問題を解決するより先に、空気を変えてしまうところにある。普通なら大事件になる場面でも、おじいちゃんの反応は大げさではない。怒らない。問い詰めない。怖がりすぎない。その態度に触れていると、子どもだけでなく大人のほうも、少しだけ呼吸がゆっくりになる。
落ち込んでいるときに「元気を出そう」とすると、心がさらに疲れることがある。そんな日にこの本を読むと、元気は無理に出すものではなく、横からふっと戻ってくるものなのだと感じる。失敗した日、叱りすぎた日、予定通りにいかなかった日の夜に向いている。
読み聞かせでは、おじいちゃんの「いいからいいから」をどれくらい力を抜いて読むかで味が変わる。やさしく読んでもいいし、のんびり読んでもいい。声に出すうちに、読み手のほうまでその言葉に助けられていることに気づく。
子どもは、へんてこな出来事の連続を楽しむ。大人は、何が起きても受け止めるおじいちゃんの懐の深さに救われる。親子で同じページを見ているのに、違う場所で笑っている感じがある。
元気が出る絵本の最初に置くなら、この本がいい。爆笑で気分を変えるというより、固くなった気持ちをほどく本だからだ。読む前より少しだけ「まあ、いいか」と思える。その少しが、案外大きい。
2.しろくまのパンツ(ブロンズ新社)
『しろくまのパンツ』は、見た瞬間から子どもの目を引く絵本だ。しろくまがパンツをなくしてしまい、ねずみと一緒に探しに行く。ページをめくるたびに「これは誰のパンツだろう」と考えるつくりで、読む前から遊びが始まっている。
この本の強さは、説明しなくても楽しさが伝わるところにある。形、色、穴あきの仕掛け、ページをめくる動き。子どもは絵本を読むというより、目で探して、指で追って、次のページを待つ。読み聞かせの場では、答えを急がず、少し間を取るだけで笑いが起きる。
元気が出る絵本として見ると、この本は「考えなくても笑える」側にある。難しい気持ちを言葉にできないときでも、パンツという身近で少しおかしな題材が、親子の距離を縮めてくれる。気まずい空気のあとや、機嫌がなかなか戻らない夕方にも使いやすい。
しろくまの困った顔もいい。大げさに泣き叫ぶわけではないが、ちゃんと困っている。その困り方がかわいく、読者は自然と一緒に探したくなる。子どもは「違う違う」「これじゃない」と参加できるので、受け身にならない。
何度も読むと、子どもは答えを覚える。それでも面白さは減りにくい。むしろ、次に何が出るか知っているからこそ、読み手より先に言いたくなる。覚えていることが自信になり、声が大きくなる。そこに、この絵本の元気がある。
絵本に集中する力が短い時期でも入りやすい。物語の長さで引っ張るのではなく、めくる喜びで進むからだ。笑える絵本を探しているなら、まず候補に入れたい一冊である。
3.パンどろぼう(KADOKAWA)
『パンどろぼう』は、今の子どもたちが笑いやすいテンポをよく知っている絵本だ。パンを愛するどろぼうが、パンに包まれた姿で登場する。その見た目だけで、もうかなり強い。ページを開いた瞬間、子どもが「なにこれ」と顔を近づける力がある。
物語は、ただ奇抜なだけでは終わらない。パンを盗む、食べる、驚く、変わる。その流れに勢いがあり、表情の変化が大きい。とくにパンどろぼうの顔は、感情がそのまま絵になっているようで、読み聞かせの声を自然に引き出す。
元気が出る理由は、失敗や思い込みを笑いに変えてくれるところにある。パンどろぼうは堂々としているが、どこか抜けている。自分では完璧のつもりでも、現実はそううまくいかない。そのずれが愉快で、子どもは安心して笑える。
少し大きくなった子にも届きやすい。赤ちゃん向けの繰り返し絵本では物足りなくなったけれど、長い物語を読むにはまだ気分が乗らない。そんな時期に、この本のテンポとキャラクターの強さはちょうどいい。
親子で読むなら、パンどろぼうのセリフや反応を少し大げさに読むと楽しい。声を作りすぎなくても、絵の表情が助けてくれる。ページをめくるたびに、読み手が笑ってしまう場面があると、子どももつられて笑う。
この本は、落ち込んだ気分をやさしく包むというより、部屋の空気をぱっと変えるタイプだ。朝の支度がうまくいかなかった日、きょうだいげんかのあと、何となく不機嫌な休日の午後に読むといい。パンの匂いまでしてきそうな画面の中で、気持ちが少し前へ動く。
4.ねこのピート だいすきなしろいくつ(ひさかたチャイルド)
『ねこのピート だいすきなしろいくつ』は、声に出すことで元気が出る絵本だ。ピートはお気に入りの白い靴で歩いていく。ところが、靴の色は次々に変わっていく。それでもピートはしょんぼりしすぎない。歌うように歩き続ける。
この絵本がいいのは、前向きさが押しつけにならないところだ。失敗しても気にしない、という教訓だけなら少し硬い。でもピートの場合は、リズムが先にある。読んでいるうちに、考える前に声が出る。声が出るから、気分がついてくる。
子どもにとって、靴が汚れることは身近な出来事だ。白かったものが赤くなり、青くなり、茶色くなる。その変化は困りごとでもあり、遊びでもある。ピートはそれを悲劇にしない。色が変わったなら、その色のまま歩けばいい。その軽さが、日常の小さな失敗に効く。
読み聞かせでは、同じフレーズを一緒に言えるのが強い。最初は聞いているだけの子も、何度か読むうちに声を重ねてくる。絵本を読んでもらう時間から、いっしょに歌う時間へ変わる。その変化が楽しい。
元気がないとき、子どもは理由を説明できないことが多い。大人も、理由を聞き出そうとして疲れることがある。そんなときは、この本のように、まず声を出せるものが助けになる。言葉で気持ちを整理する前に、リズムで体を少し動かす。
前向きな絵本を探している人には、とくにすすめたい。ただし、静かに眠りへ向かう本ではない。読めば声が出るし、体も揺れる。寝る直前より、朝や昼、気分を立て直したい時間に向いている。読み終えたあと、少しだけ歩幅が大きくなる絵本だ。
5.りんごかもしれない(ブロンズ新社)
『りんごかもしれない』は、笑いの質が少し違う。大きな事件が起きるわけではない。目の前にある一個のりんごを見て、「これは本当にりんごなのか」と考えはじめる。そこから想像がどんどん広がり、ただのりんごが、ただのりんごではなくなっていく。
元気が出る絵本としてこの本を入れたい理由は、気分を変える力があるからだ。落ち込んでいるとき、人は一つの見方に閉じ込められやすい。「もうだめだ」「きっとこうだ」「どうせ変わらない」。そんな固まった頭に、この絵本は別の角度を差し込んでくる。
ヨシタケシンスケの絵本らしく、発想は突飛なのに、読者を置いていかない。むしろ子どものほうがすんなり入っていく。大人が「それはない」と思うところで、子どもは「あるかも」と笑う。その差が面白い。
この本は、爆笑で押し切るタイプではない。にやにやしながら読む本だ。ページをめくるたびに、頭の中で小さな扉が開く。読み終えたあと、机の上のコップや、玄関の靴や、冷蔵庫の卵まで、少し違って見えてくる。
考えるのが好きな子にはもちろん合う。けれど、考えることに疲れている大人にも効く。正解を探すための思考ではなく、可能性を増やすための思考があるのだと、やわらかく思い出させてくれる。
気分が沈んでいるけれど、騒がしい本を読む元気はない。そんな日にちょうどいい。笑い声は大きくなくてもいい。読み終えたあと、「かもしれない」と言える余白が戻れば、それだけで少し前向きになれる。
6.だるまさんが(ブロンズ新社)
『だるまさんが』は、低年齢の子どもと読む元気本として外せない。言葉は少ない。展開もとてもシンプルだ。それなのに、読み聞かせの場では何度も笑いが起きる。だるまさんが、ころんだり、のびたり、ぷしゅーっとなったりする。その動きだけで楽しい。
この絵本の元気は、体に近い。意味を理解して笑うというより、音と動きで笑う。「だ・る・ま・さ・ん・が」と読むときの間。ページをめくる前の期待。次に何が起きるか知っていても、子どもは待つ。その待つ顔が、もう絵本の一部になっている。
赤ちゃんや小さな子に読むときは、声だけでなく体も少し使うといい。だるまさんの動きに合わせて、読み手が揺れたり、止まったりする。すると絵本は、紙の上の物語から、親子の遊びに変わる。
機嫌が悪いときや、泣いたあとにも読みやすい。長い話を聞く余裕がないときでも、この短さなら入れることがある。気持ちを説明しなくても、だるまさんの動きにつられて表情がゆるむ。その瞬間が、この本のいちばん強いところだ。
後半に置いたのは、対象年齢が低いからではない。むしろ、元気が出る絵本の原点のような一冊だからだ。笑いは難しい言葉から生まれるとは限らない。音、間、くり返し、体の動き。そういう根っこの部分で、子どもは元気を取り戻す。
上の年齢の子には簡単すぎることもある。けれど、赤ちゃんや幼児にはこの単純さが大きな力になる。何度も読まされるかもしれない。それは、この本がちゃんと届いている証拠でもある。
関連グッズ・サービス
本を読んだ後の楽しさを生活に残すには、読み聞かせの時間を少し整えるだけでも変わる。絵本は紙でめくる楽しさが大きいが、探す、試す、声で楽しむためのサービスを補助的に使うのもいい。
読み放題サービス
気になる絵本や児童書を広く探したいときに向いている。紙の絵本を買う前に、親のほうが作家やシリーズの雰囲気をつかんでおく使い方もしやすい。
音で楽しむ読書サービス
絵本そのものとは別に、移動中や家事中に物語のリズムへ触れたいときに使いやすい。声の調子を聞くと、家で読み聞かせるときの間合いも少し変わる。
読み聞かせ用の小さなマット
絵本を読む場所を決めておくと、子どもが気持ちを切り替えやすい。明るい絵本を読む日は、床に座って体ごと笑えるくらいの距離がちょうどいい。
まとめ
元気が出る絵本は、ひとつの方向だけではない。『いいからいいから』は、気持ちをゆるめる。『しろくまのパンツ』と『パンどろぼう』は、見た目と展開で笑わせてくれる。『ねこのピート だいすきなしろいくつ』は、声のリズムで前を向かせる。『りんごかもしれない』は、考え方の向きを変える。『だるまさんが』は、体に近い笑いで小さな子の表情をほどく。
迷ったら、まずは子どもの今の状態から選ぶといい。
- 疲れていて、静かに気分を軽くしたいなら『いいからいいから』。
- 親子で笑って空気を変えたいなら『しろくまのパンツ』か『パンどろぼう』。
- 声を出して前向きになりたいなら『ねこのピート だいすきなしろいくつ』。
- 発想を広げて気分転換したいなら『りんごかもしれない』。
- 赤ちゃんや幼児と一緒にすぐ笑いたいなら『だるまさんが』。
読む順としては、年齢が低い子なら『だるまさんが』から入り、少し物語を追えるようになったら『しろくまのパンツ』『パンどろぼう』へ進むといい。気持ちが落ち込んだ日には『いいからいいから』をはさむ。考える楽しさが出てきたら『りんごかもしれない』、声に出す楽しさを広げたいなら『ねこのピート だいすきなしろいくつ』がよく合う。
元気は、いつも大きな励ましで戻るわけではない。ページをめくって、声を出して、少し笑う。その小さな時間が、親子の一日を明るいほうへ押してくれる。
FAQ
元気が出る絵本は何歳から楽しめる?
赤ちゃんや幼児なら『だるまさんが』のように、音と動きで楽しめる絵本から入りやすい。2〜4歳頃になると『しろくまのパンツ』のような探す楽しさ、『パンどろぼう』のようなキャラクターの面白さも伝わりやすくなる。年齢だけで決めず、いま声を出したいのか、静かに笑いたいのかで選ぶと失敗しにくい。
落ち込んでいる子には、どの絵本から読むといい?
理由を話したがらないときは、無理に気持ちを聞き出すより『いいからいいから』のように、受け流す明るさのある本が合うことがある。泣いたあとや不機嫌なときは、長い物語より『だるまさんが』のような短く反応しやすい本もいい。笑わせようとしすぎず、同じページを一緒に眺めるくらいの距離がちょうどいい。
親も疲れている日に読みやすい絵本は?
読み手の元気が少ない日は、声を作り込みすぎなくても楽しい本を選ぶといい。『しろくまのパンツ』はページの仕掛けが助けてくれるし、『だるまさんが』は短い言葉と間だけで場が動く。少し気持ちを整えたい夜なら『いいからいいから』も向いている。大人が無理をしなくても、絵本のほうが空気を明るくしてくれる。
寝る前にも読める?
読めるが、盛り上がりやすい本は時間を選んだほうがいい。『ねこのピート だいすきなしろいくつ』や『だるまさんが』は声や体が動きやすいので、寝る直前より夕方や入浴前後に向いている。寝る前なら『いいからいいから』のように、笑いながらも気持ちがゆるむ本を選ぶと落ち着きやすい。
関連記事
明るい絵本を読んだあとに、別の気分へ広げたいときの関連記事をまとめた。






