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【ノイン】ナチスドイツを舞台にした漫画「NeuN(ノイン)」がおすすめ。最新刊紹介、ネタバレあり。

 

ノインで描かれるナチスドイツとは?

[まとめ買い] NeuN

ナチスドイツを舞台

かなりの異色作なので、相当な漫画ファンでないと今作「ノイン」を知らないと思います。しかし、「スカイハイ」で一躍有名になった高橋ツトム氏の新作と聞くと、興味が出た人も多いのではないでしょうか?

拙い記憶を振り絞っても、ナチスドイツを舞台にした漫画がこれまであったのか、まったく思い出せません。映画や書籍では多く扱われたヒトラー、NHKスペシャルの様な番組ではこれまで何度も取り上げられてきた人物ですが、漫画でしかも青年誌となると始めてなのではないでしょうか?

予備知識なくても楽しめる

私が出会ったのは偶然で、ヤンマガを適当に読んでいた時、ノインを数ページ読んでその世界観に一気に惹きこまれてしまったのです。何も戦争やナチス、ヒトラーに興味があった訳でもなく、それどころか平均的(常識的)な予備知識も少ない無知な私を、これほどのめり込ませるのは、純粋に作品が素晴らしいからです。

 

冷え切った世界観

最近の漫画では珍しくなった、冷え切った世界観を描いているのが「ノイン」です。確かに流行そうな要素は皆無ですし、ドラゴンボールやワンピースの様な大人気作になるのも、女性ファンを獲得するのも難しいのが現実です。でも、分かる人にはきっとこの作品が、他のどの作品よりも優れていると理解が出来ています。

因みに、タイトルの「ノイン」は、英語ではナインとなり”9番”を意味する。

 

※「ヤングマガジン」にて絶賛掲載中の「ノイン」(作者:高橋ツトム)は、2019年3月時点で3巻まで発売。

 

あらすじ

1940年の南ドイツ

始まりの舞台は1940年の南ドイツ、ブラウシュテッペ村。ヒトラーが支配する世界では、ナチスの暴虐ぶりが日常茶飯事であった。その悲劇が、主人公の少年フランツ・ノインの元にも起こり、両親と慕っていた夫婦が無残にも殺害されてしまう。

ヒトラーの遺伝子を受け継ぐ子供13人

ナチスはヒトラーの遺伝子を受け継ぐ子供13人を、ドイツ各地で育てる実験? をしていたが、それが中止になり逆に命を狙われる事になる。ノインもその悲しい宿命を背負った一人に、巻き込まれてしまい困惑する。

ノインとテオの二人の逃亡劇

そんな悲しい運命の少年ノインを救ったのが、親衛隊員で警護する命を受けた若きテオ・ベッカー。ノインを守る事に執念を燃やし、ナチス隊員を皆殺しにしいわば身内を裏切ってまで助ける行動の裏には何があるのか。 ノインとテオの二人の逃亡劇と、ヒトラーの子供13人を巡る因縁めいた物語が始まりを告げた。

 

登場人物

フランツ・ノイン

主人公の少年。ヒトラーのDNAを受け継ぎ、それ故に命を狙われる事になる。相手を洗脳する特殊能力を持つ。テオと逃亡をする破目になる。

 

テオ・ベッカー

もう一人の主人公で、ノインを守る任務を与えられた「壁(ヴァント)」の特命隊員。ノインを守るため、ナチス隊員を殺害し逃亡の身となる。

 

アハト

ノイン同様の運命を背負った少年。足に重傷を負っていて、それを守る壁がナオミ。

 

ナオミ・ライジンガー

ナチスでは珍しい女性隊員で、アハトを守る壁。日本刀の達人で、テオ同様にナチス隊員を何人も殺害し逃亡中。

 

Dr.U(ドクトル・ウー)

ナチス親衛隊の医学総監。ヒトラーの子供達を処分する任務を遂行している。テオとは古き知り合い。

 

ゲオルク

メガネが良く似合う少年。ノインを匿った際に、その洗脳能力を見抜いた。

 

ゼクス

ヒトラーの遺伝子を受け継ぐ13人の一人であり、謎の人物。ただ一人の「完成された人種」とされている。ゼクスは”6番”という意味がある。

 

レベッカ・エルフ

黒髪の少女で”11番”にあたる。ナチスを徹底的に憎み嫌っている。

 

ギュンター

レベッカの壁で、彼女を守る際に弾丸を受けて死亡してしまう。

 

女神

13人の子供達の母親とされるが、謎の人物で正体不明。ヒトラーを凌ぐ「選ばれた人種」であり、特別な能力も備えている。

 

おすすめポイント!

少年の逃避行だけではない

最初はナチスドイツから逃げる少年の逃避行だと思ったのですが、そんなに甘い(これでも十分興味深いですが)内容ではなく、かなり練り込まれた大人向けの漫画だと、数話を読み込んで理解をしました。「ノイン」はかなり、難解な作品というのが率直な感想です。

それを踏まえた上でポイント解説をすると、これはナチスがテーマではありますが、肝心のヒトラーは重要なキャラではありません。まだ、単行本が3冊なので今後は分かりませんが、それでも多分大きな役割はないでしょう。シンボルとして、恐怖を与える意味として登場しますが、それよりも遺伝子を受け継いだ少年たちが、この作品で扱う根幹です。

この物語を現代に当て嵌めると、不幸な生い立ちを持って生まれ育った人も多いので、その様な点で入ると、実は幅広く受け入れやすいのではと思わせてくれます。

ヒトラーという最悪の独裁者を通じて

ヒトラーという最悪の独裁者を通じて、その背後で本人も露知らずな恐ろしい計画が蠢いていたという物語になります。だから、他の漫画で特殊能力を使える設定だと子供が喜ぶ作品向けと思いますが、それがノインだと何の不思議もなく受け入れている自分がいます。

1940年は第二次世界大戦が始まった最中

1940年は第二次世界大戦が始まった最中で、今後はそれが作中でどのように扱われていくかがもポイントとなります。もしかしたら、ヒトラーやナチスはドイツが敗戦する事を予知し、その為に本人または側近などが子供13人を残す計画を立てたとするのが自然です。一応、世界史的にはヒトラーは1945年に自殺するので、そうなるとノインを始めとした少年達はその後どのようになるのか、或いはその前に処分をされてしまうのか? この辺りが作品の見どころであり、注視するべきポイントです。

 

各巻毎の感想!

1巻:二人の主人公について

NeuN(1) (ヤングマガジンコミックス)

真っ先に最初に感じたのは、絵がとても上手という事です。余計なセリフがなく、画力で中身を語る作者が高橋氏です。第一話だけで、ノインがどのような話なのか全て語っているのも、個人的に気に入っています。少年ノインは徹底的に弱い存在、テオはどこまでも冷静であり最強の守り人と、二人の主人公を対比させるのも上手いです。2話以降から、主人公二人の脇を固める重要キャラ、謎の人物などを出していきます。全体として一コマが大きいので、一巻を読み終えるのは早いですが、それが逆に途切れないテンポを生んでいます。

その一方、実際のナチスは残虐な人体実験なども相当していたので、それを垣間見えるシーンを入れるのも、読者に恐怖を煽る意味で成功しています。それがあるので、余計にノインやテオは逃げなければ、無残な結末しか残っていないと思わせるのです。

 

2巻:”逃亡”という明確なテーマに

NeuN(2) (ヤングマガジンコミックス)

新作の場合、1巻は序章で全体像が掴めない場合が多いですが、ノインはまったくの真逆となります。13人の子供の内、早くも5人ほど登場していますし、”逃亡”という明確なテーマがあります。それより驚くのは、ヒトラーの演説シーンはあまりにも生々しくて躍動感があり、ノインが自らを悪魔の子と認めるところも心に訴えかける熱いものがあります。

ナチス親衛隊は、どこまでも無表情で冷酷。そして、生活に困窮する人々も飢えなどで痩せ細り、生気がまったくない。これが戦時中のドイツの真実の姿なんだと実感したものです。唯一、熱狂や興奮するのがヒトラー演説だけというのは、今の人々には理解できないが、これが真実なのす。

 

3巻:ノインの隠された能力

NeuN(3) (ヤンマガKCスペシャル)

ノインの隠された能力である”洗脳”が、徐々に開花しつつあります。本人もその能力やヒトラーの子である事を受け入れ、良く言えば成長しているのが、逆に悲しくもあります。同じ遺伝子を受け継いだ同士の出会いと別れなど、物語は急にスピードを上げ始めます。

3巻までを通すと、繰り返しになりますが印象に残るのは圧倒的な画力です。飢えや惨殺で亡くなった人々と、ヒトラーの欲望丸出しの姿。この二つを見比べるだけでも、ノインが際立った漫画であると証明をしています。この時代は、大人はナチス以外は、皆が苦しんでいる。それは子供も同じだが、遺伝子を受け継いだ13人もまた、別の意味でもがいている。

そんな背景を噛み締めながら、ノインの作品を平和な環境で読めるのは、とても幸せなんだと気付かされたものです。

 

まとめ

ナチスドイツで起こった、不幸な遺伝子を受け継ぐノインを始めとする少年少女の物語。圧倒的な画力は漫画と軽く呼べず、最早芸術の域であると豪語できるほどです。逃げる者、守る者、能力に目覚め運命を受け入れる選択をする者、自ら死を選ぶ者。そしてあまりにも巨大な存在であるヒトラーと、謎の人物など、サスペンス要素と戦争リアル体験記の様相も含めた「ノイン」は、今この時代だからこそ絶対に読むべき注目作品です。

[まとめ買い] NeuN

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