小さな子供は親の庇護があるうちはいいのですが、いずれは独り立ちをしなければいけません。
そんなときに出会うのが友好的な存在だとは限らないのです。
子供と見知らぬ世界の接点を描いた本を紹介しましょう。
『バンビ森の、ある一生の物語』
著・フェーリクス・ザルテン
森の茂みで生まれた子鹿のバンビは、お母さんのあたたかい舌で体を洗ってもらい、お乳をごくごくと飲みました。お母さんのあとについて、森の小道を歩きながら、バンビはなんでもお母さんに聞きました。自分たち鹿のこと、ほかの生きもののこと、食べ物のこと。お母さんはいつも優しく答えてくれたけれど、「危ないこと」について話すときだけは、真剣になりました。
やがて、バンビはその「危ないこと」と出会います。そいつは、藪の中から鉄砲を突き出していました。
アニメ映画などで知られる『バンビ』とはまったくちがった原作の深い味わい作品です。バンビの生命力、人間と野生動物の関係、自然への賛美などが心に刻まれる名作です。全編から森や草原の香りが立ちのぼってくる味わい深い本です。
『アンディとらいおん』
著・ジェームズ・ドーハーティ
ある朝、アンディは学校へでかけました。すると、岩のかげからライオンがでてきました。アンディもライオンも、びっくりして、逃げだしましたが、ふたりとも岩のまわりをぐるぐるまわるばかり。
とうとう、向き合って座りこんでしまいました。そのとき、らいおんが前足を出しました。太いトゲが刺さっています。アンディは、ポケットから釘抜きを出して、しっかりとげを挟むと、力いっぱいひっぱりました。すぽんと、とトゲは抜けました。
ライオンは、うれしくて、アンディの顔を舐めました。
力強い絵と明確なストーリー展開で、読み聞かせにぴったりな絵本です。アンディが図書館で本を借りる場面から始まるので、図書館を紹介するきっかけとしても使えます。
『イップとヤネケ』
著・アニー・M・G・シュミット
イップは、オランダに住んでいる男の子。ある日、おとなりの家の垣根の穴から、なにかが見えました。それは、小さな口、小さな鼻、青くて小さな目の女の子ヤネケでした。それからは、イップとヤネケは大のなかよし。
楽しいことを思いついて、毎日いっしょにあそびます。鳥の巣をみつけてたまごをそっと見にいったり、花壇に花を植えたり。とげとげのふしぎな動物を見つけたのも、アメリカに行こうと、ベッドに帆を張って船にしたのも2人です。
オランダの家庭で、この本のない子ども部屋はないとまで言われ、長く読みつがれている作品です。
いかがでしょうか。子育て世代にぜひオススメしたい本たちです。
過保護になっちゃいけないと分かってはいても、ついつい危ないことから遠ざけてしまう。
そんなときに適度に知らない世界に触れることの重要性を本から教えてもらえるかもしれませんよ。