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【狂気 小説 おすすめ】狂気を味わう小説。狂気の沙汰ではない。

 日本では、感情は表に出さないように躾けられます。確かに激しい感情は他者や自分も傷つけてしまう危険なもの。

殺人者はサイコパス、元気がなければ鬱病と、何でも精神病というカテゴリーで片付けられてしまいがちな現代ですが、その根底は日常の何気ない事の積み重ねや特殊な環境が人を狂わせたり、その人が狂っているというわけではありません。もしかしたら一般論といわれる多数派の意見が狂気に満ちていることも。

重いテーマですが、一度は味わってほしい熱い狂気を味わえる本を紹介いたします。

 

死の棘

島尾 敏雄(著) (新潮文庫) 
 夫の浮気が原因で、妻が精神崩壊。健気に耐える子供たち、罪をつぐなうかのように寄り添う夫。ただの不倫小説と一括りにはできない、じりじりとした狂気の奈落に突き落とされるような作品です。解説書として出版されている「狂うひとー死の棘の妻・島尾ミホ」も併せて読んでみてください。違った角度で、読むたびに感想が変わる作品です。

 

地獄の季節

ランボオ(著) (岩波文庫) 
 若く美しく儚く散っていった青年詩人というイメージがある著者による青春ならではの熱く燃える情熱の散文詩。熱くマシンガンのようにたたみかける繊細ながら時に狂気に満ちた言葉たち。そこに横たわる虚無感ややるせなさのかけらが垣間見られます。放浪の先に著者が見出したものは燃えたぎるような地獄と光。様々な翻訳がでていますが、まずは金子光晴さんの疾走感あふれる訳で読むことをおすすめします。

 

千年の愉楽

中上 健次(著) (河出文庫―BUNGEI Collection)
 紀州熊野が舞台の路地に生まれ、路地に死んでいく血に翻弄される一族の物語。熱く燃え滾って消えていく儚い命を繋いでいく様を神話のような語り口で村唯一の産婆によって語られていきます。濃密な文体で描かれる荒々しい世界観は、日本版「裸のランチ」のよう。美しさと猥雑さが入交り、不思議な狂気の世界へと誘ってくれます。

 

愛書狂

 G. フローベール (著) (平凡社ライブラリー)
 19世紀末フランスの古本好き、読書家である書痴小説。本好きの方は必ず共感できる一冊ではないでしょうか。本を全く読まない人から見ると、黙々と読書している姿はすでに病にかかっている状態だそうです。これを読んだら古本屋さんに飛んで行きたくなります。例え他人から狂っていると思われても。そして、ふと客観的に自分を見てホラー気分になること間違いありません。

 

 読み終わると、何が普通で何が狂気なのか、その線引きが分からなくなります。しっかり自分を律していくためにも、境界線を踏み越えないように狂気の世界をみてみるのも良いかもしれません。

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