1歳の絵本選びは、物語を理解できるかよりも、笑う、まねする、指さす、返事する、といった反応が返ってくるかで考えると選びやすい。親ハブの絵本棚からもう一歩進んで、ここでは1歳の生活と体の動きに合うおすすめ本を、読み聞かせの場面ごとに並べていく。
- 読む目的別の入口
- 1歳の絵本は「読む」より「一緒に起きる」ものとして選ぶ
- まず反応を引き出す絵本
- 指さし・探す・当てる楽しさへ進む絵本
- 返事・予測・からだの感覚を広げる絵本
- 関連グッズ・サービス
- まとめ:1歳絵本は、反応が返ってくる瞬間を中心に選ぶ
- FAQ
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読む目的別の入口
1歳の絵本は、月齢よりも「いま何に反応しているか」で選ぶほうが失敗しにくい。声を出して笑う時期、同じページを何度も見たがる時期、食べものや乗り物に目が向く時期で、合う本は少しずつ変わる。
- まず笑う・まねする反応を見たいなら、1. だるまさんが、2. いないいないばあ、8. ぴょーんから入るとよい。
- 指さしや「どこ?」遊びが増えてきたなら、6. きんぎょが にげた、12. たまごのあかちゃんが合う。
- 食事・おふろ・寝る前の流れにつなげたいなら、7. くだもの、14. おふろでちゃぷちゃぷ、9. おつきさまこんばんはを置いておくと使いやすい。
1歳の絵本は「読む」より「一緒に起きる」ものとして選ぶ
0歳のころは、色の強さ、音のくり返し、顔の近さが中心になる。もちろん1歳でもその楽しみは残るが、少しずつ変わってくるのは、絵本の中の出来事に子ども自身が参加し始めることだ。
ページをめくる前から笑う。大人の声の調子を待つ。絵を指さして「あ」と言う。体を揺らす。知っているものが出ると、急に顔を近づける。1歳絵本の棚は、そういう小さな反応を拾いやすい本で作るといい。
この時期に無理に「最後まで聞かせる」必要はない。途中で閉じてもいいし、同じページだけを何度も読んでもいい。むしろ、その偏りの中に、その子が今つかみかけている言葉や動きが見えることがある。
ここで選ぶ16冊は、反応が返ってきやすい本から、指さし、生活習慣、1歳後半から2歳前の簡単な物語へ進める本までを並べている。最初の数冊で笑いを作り、中盤で探す・当てる楽しさを育て、後半で食事やおふろ、寝る前の時間へ戻す流れだ。
まず反応を引き出す絵本
1. だるまさんが(ブロンズ新社)
1歳の絵本棚を作るなら、『だるまさんが』はかなり早い段階で置きたい。理由ははっきりしている。物語を追わなくても、ページを開いた瞬間に体が反応しやすいからだ。
だるまさんが、ただそこにいる。丸くて、赤くて、少しとぼけていて、次のページで体の形を変える。その変化が、1歳の子どもには大きな事件になる。大人が「だ・る・ま・さ・ん・が」とゆっくり声を伸ばすと、ページをめくる前に笑い始める子もいる。まだ言葉にならなくても、次に何かが起きることはわかっている。
この本のよさは、読み聞かせが上手でなくても成立するところにある。声を張らなくてもいい。演技をしすぎなくてもいい。ただ少し間を置いて、だるまさんの動きに合わせて体を揺らすだけで、部屋の空気が変わる。昼間の明るい時間に読むと、笑いが広がりやすい。眠る直前よりも、親子で遊ぶ時間に向いている。
反対に、静かに落ち着かせたい夜には少し元気が出すぎることもある。寝る前の本として固定するより、「今日は笑って終わりたい」というタイミングで出すほうが合う。
1歳は、絵本の意味を説明するより、先に体で覚える時期だ。『だるまさんが』は、その入口を作ってくれる。読んだあと、子どもがだるまさんの動きをまねしたり、大人の顔を見て次の声を待ったりするなら、その時点でもう十分に読めている。
2. いないいないばあ(童心社)
『いないいないばあ』は、赤ちゃん絵本の基本として知られているが、1歳で読むとまた違う強さが出る。0歳のころは顔が見える、消える、また出るという単純な驚きが中心になる。1歳になると、そこに予測が加わる。
隠れている。次に出てくる。きっと「ばあ」が来る。そうわかっているのに、やっぱり笑う。この「わかっているのに楽しい」という感覚は、1歳の読み聞かせにとても合っている。絵本の中の顔と、大人の顔と、子どもの表情が、短い時間の中で行き来する。
ページの余白や絵の静けさも大事だ。にぎやかな絵本ではない。だからこそ、子どもは顔を見る。目を見る。口の形を見る。読み手が少し声を落として「いないいない」と言い、次のページで「ばあ」と開く。その間が親子の遊びになる。
ただし、刺激の強い本を好む時期には、地味に見えることもある。反応が薄い日があっても、合わないと決めなくていい。体調が悪い日、眠る前に抱っこされている時間、少し静かに過ごしたい朝など、ふっと戻ってくる本だ。
この本は、1歳の「返ってくる反応」を見るのに向いている。声を出す、顔を隠す、手でまねする。ページの外に遊びがこぼれ出すとき、絵本はただ読まれるものではなく、親子の合図になる。
3. じゃあじゃあびりびり(偕成社)
『じゃあじゃあびりびり』は、音とものが結びつき始める時期に強い。水、紙、車、犬、赤ちゃん。身近なものが、短い擬音と一緒に出てくる。1歳にとって、この短さはかなり大切だ。
長い説明はいらない。「じどうしゃ ぶーぶーぶー」「みず じゃあじゃあじゃあ」。それだけで、日常の音が絵本の中に入ってくる。外で車を見たとき、洗面所で水の音を聞いたとき、紙を破る音にびっくりしたとき、絵本の言葉が生活へ戻っていく。
ボードブック・改訂版として扱いやすいのも、1歳には大きい。自分でページをめくりたい、なめたい、強くつかみたい。そういう時期に、紙の弱さを気にしすぎると、大人のほうが疲れてしまう。丈夫な本は、子どもが絵本を自分のものとして触る余地を作る。
この本は、声に出して読むほどよさが出る。きれいに読もうとしなくていい。むしろ、少し大げさに音を出したほうが、子どもは反応しやすい。雨の日の室内遊びにも向くし、言葉がまだ少ない子にも渡しやすい。
一方で、物語を求める時期にはあっさり感じるかもしれない。1歳後半で長めの展開に興味が出てきたら、食べものや乗り物の絵本と組み合わせるといい。『じゃあじゃあびりびり』は、言葉の前にある音の楽しさを残してくれる本だ。
4. がたん ごとん がたん ごとん(福音館書店)
『がたん ごとん がたん ごとん』は、くり返しのリズムで子どもを絵本の中へ乗せていく。汽車が走る。身近なものが「のせてくださーい」とやってくる。言葉は少ないのに、ページを進める力がある。
1歳の子は、同じ音が続くと安心する。がたん、ごとん。がたん、ごとん。そのリズムが、膝の上の揺れと重なる。読みながら体を少し揺らすと、絵本の中の汽車と、子どもの体の感覚がつながる。乗り物好きでなくても楽しめるが、電車や車に反応し始めた子には特に入りやすい。
この本で面白いのは、乗ってくるものが特別なキャラクターではなく、哺乳びんやコップ、スプーンなど、子どもの生活に近いものだということだ。絵本を閉じたあと、食卓や台所にあるものが少し違って見える。いつもの道具が、汽車に乗る仲間になる。
ただ、早く次々と刺激がほしい子には、展開がゆっくりに感じられることもある。そういうときは、最後まで読ませようとせず、好きなページだけを何度も読めばいい。くり返しの本は、途中参加でも楽しめる。
『がたん ごとん がたん ごとん』は、音、乗り物、生活道具を一つにまとめる本だ。1歳の読書が、ページの中だけでなく、部屋の中のものへ広がる。その広がりが、この本を長く読ませる。
5. くっついた(こぐま社)
『くっついた』は、読み終わったあとに必ず何かが起きる絵本だ。動物たちがくっつく。親子がくっつく。最後には、読んでいる大人と子どもの距離まで変わる。
1歳の読み聞かせでは、内容そのものよりも、絵本の後に続く動きが大事になることがある。この本はまさにそうだ。ページの中で「くっついた」が起きるたびに、頬を寄せたり、おでこを合わせたり、ぎゅっと抱っこしたりできる。言葉がまだ出なくても、体で意味がわかる。
絵は明るく、形もわかりやすい。複雑な背景がないので、子どもの視線が迷いにくい。動物の顔と顔が近づく、その単純な変化だけで十分に楽しい。子どもが自分から顔を寄せてくるようになると、この本は一気に親子の定番になる。
向かないタイミングがあるとすれば、大人が疲れ切っていてスキンシップを受け止める余裕がないときだ。無理に明るく読もうとすると、かえってしんどくなることもある。そういう日は、淡々とページをめくるだけでもいい。絵本は、いつも全力で読む必要はない。
それでも『くっついた』が棚にあると、子どもは「本を読む」と「誰かと近づく」を一緒に覚えていく。1歳の絵本にとって、それはとても大きな意味を持つ。
指さし・探す・当てる楽しさへ進む絵本
ここからは、ただ反応するだけでなく、子どもが絵の中を探し始める本に移る。1歳後半に近づくほど、指さしは強くなる。大人が答えを教えるより、「どこかな」と一緒に探すほうが、絵本の時間は長くなる。
6. きんぎょが にげた(福音館書店)
『きんぎょが にげた』は、指さしが始まった子にとって、絵本が遊び場になる一冊だ。金魚鉢から逃げたきんぎょを、部屋の中、カーテンの模様、花、キャンディーの中から探していく。
この本の強さは、探す対象がはっきりしていることにある。赤いきんぎょは小さいが、見つけるとちゃんと嬉しい。大人が「どこ?」と聞き、子どもが「あ」と指を伸ばす。その一瞬で、読んでいる側と聞いている側の役割が少し入れ替わる。子どもが見つける人になるのだ。
五味太郎の絵は、単純に見えて、色と配置がよく考えられている。ごちゃごちゃしすぎず、それでも探す楽しさは残る。1歳前半では大人が見つけてあげることが多いかもしれない。1歳後半になると、子どものほうが先に見つけて得意そうな顔をする。
注意したいのは、毎回すぐに正解を教えすぎないことだ。沈黙が少しあってもいい。子どもがページの上を目で追う時間を待つと、絵本の味が出る。急いで読む本ではない。
『きんぎょが にげた』を読むと、絵を見る力が育っていく。見つけた、わかった、もう一回。そういう小さな達成感を重ねたい時期に、棚の真ん中へ置きたい本だ。
7. くだもの(福音館書店)
『くだもの』は、食べもの絵本の中でも、1歳の生活にとても戻しやすい。りんご、みかん、いちご、すいか。身近なくだものが、落ち着いた絵で描かれ、「さあ どうぞ」と差し出される。
この本は、食べものの名前を覚えるためだけの本ではない。絵本の中のくだものを見て、実際の食卓を思い出す。大人が「どうぞ」と言い、子どもが口を開けるまねをする。絵を食べるふりをする。そこに、言葉と生活の橋ができる。
平山和子のくだものは、写実的でありながら冷たくない。皮の張り、果肉の水分、切った面の明るさがある。1歳の子どもがそこまで細かく見るわけではないかもしれない。でも、大人が見て「おいしそう」と思える絵は、読み聞かせの声を自然に変える。
食が細い子に、食べさせる目的で強く使いすぎるのは避けたい。絵本は食事の訓練ではない。けれど、食卓に向かう前、午後のおやつの前、果物を切る音が台所から聞こえる時間に読むと、生活とぴたりと重なる。
『くだもの』は静かな本だ。大笑いを引き出すタイプではない。そのかわり、絵本を閉じたあと、実物のりんごやみかんを見る目が少し変わる。1歳の「知っている」が増えていく喜びを、丁寧に支えてくれる。
8. ぴょーん(ポプラ社)
『ぴょーん』は、読むというより、体で参加する絵本だ。かえるがぴょーん、こねこがぴょーん、ばったがぴょーん。ページを開くたびに、生きものが跳び上がる。
1歳は、座ってじっと聞くより、動きながら楽しむほうが合う日が多い。そんなとき、この本は強い。大人が「ぴょーん」と声を伸ばしながら、子どもの体を少し持ち上げる。子どもが自分で膝を曲げて跳ぶまねをする。絵本が部屋の中の運動になる。
動物の違いも自然に入ってくる。跳べるもの、跳べないもの、意外なもの。単純なくり返しの中に、少しだけ外しがあるので、大人も読み飽きにくい。読むたびに声の高さや間を変えられるのもいい。
寝る前に読むと、元気になりすぎる子もいる。特に体を動かすのが好きな子には、夜より昼間のほうが向いている。雨の日、外遊びが足りない日、家の中で気分を切り替えたいときに出すと効く。
『ぴょーん』は、絵本を「静かに聞くもの」と決めつけない。1歳の読書は、声と体が混ざっていていい。むしろ、その混ざり方こそが、この時期らしい読書体験になる。
9. おつきさまこんばんは(福音館書店)
『おつきさまこんばんは』は、夜の絵本棚に置きたい一冊だ。暗い空に、おつきさまが顔を出す。雲がやってくる。表情が変わる。最後にまた、静かなあいさつへ戻っていく。
1歳の子どもにとって、夜は大人が思う以上に大きな変化だ。部屋の明るさが落ちる。外の音が小さくなる。眠る時間が近づく。そういう空気の中で、この本の黒と黄色はよく映る。派手ではないのに、目が吸い寄せられる。
この本のよさは、あいさつの形をしているところだ。「こんばんは」と言う。顔を見る。雲に隠れる。もう一度出てくる。空の出来事なのに、どこか人と人のやりとりに近い。子どもが月を見つけるようになると、外を歩く時間にも本の記憶が出てくる。
ただし、明るくにぎやかな本が好きな時期には、反応が薄いこともある。そういうときは、寝かしつけの主役にしようとせず、夜の棚に置いておけばいい。ある日、窓の外の月とつながって急に好きになることがある。
『おつきさまこんばんは』は、眠らせるためだけの本ではない。昼の遊びから夜の静けさへ、気持ちをゆっくり移す本だ。読み終わったあと、部屋の照明を少し落としたくなる。
10. しろくまちゃんのほっとけーき(こぐま社)
『しろくまちゃんのほっとけーき』は、1歳後半から2歳前の橋渡しとして置きたい。まだ長い物語は難しくても、作る、焼ける、食べる、片づけるという流れには入りやすい。
特に有名なのは、ほっとけーきが焼けていく場面だ。ぽたあん、どろどろ、ぴちぴち、ぷつぷつ。音が変わり、形が変わり、においまで立ってくるように感じる。1歳の子どもは、料理の手順を理解するというより、その音の連なりに反応する。大人が読む声にも、自然とリズムが出る。
この本は、食べもの絵本であり、生活絵本でもある。作って食べて終わりではなく、最後に片づけるところまである。そこがいい。生活には楽しい部分だけでなく、終わりの動作もある。1歳のうちから、絵本の中でその流れに触れられる。
ただし、まだ短い絵本しか聞けない子には、少し長く感じられるかもしれない。その場合は、焼ける場面だけを読む日があってもいい。全部を通して読めるようになるまで、好きなページを入口にすれば十分だ。
『しろくまちゃんのほっとけーき』は、台所の音を絵本に変える。休日の朝、実際に何かを焼く前に読むと、絵本と生活が重なって、子どもの目が少し台所へ向く。
返事・予測・からだの感覚を広げる絵本
1歳の後半に近づくと、「はーい」と返事をしたり、「次は何が出るかな」と待ったり、歩く・転ぶ・抱っこされる感覚に反応したりする。ここからの本は、赤ちゃん絵本から幼児絵本へ移っていく途中の棚として使いやすい。
11. おべんとうバス(ひさかたチャイルド)
『おべんとうバス』は、返事を楽しむ絵本だ。バスに、おべんとうの具材たちが乗っていく。呼ばれたら「はーい」と返事をする。その単純な流れが、1歳の参加したい気持ちに合う。
この本を読むとき、大人だけが読んで終わる必要はない。名前を呼ぶ。少し待つ。子どもが声を出す、手をあげる、にこっとする。それだけでいい。「はーい」が言えなくても、手が少し動けば、もう参加している。
食べものと乗り物が一緒に出てくるのも強い。おにぎり、えびフライ、トマト。子どもが知っている食べものがバスに乗るという少し不思議な設定が、生活のものを遊びに変える。食卓で見たものが、絵本の中では乗客になる。
注意点としては、返事を無理に言わせる本にしないことだ。「言ってごらん」と迫ると、絵本の楽しさがしぼむことがある。声が出ない日は、大人が楽しそうに返事をすればいい。子どもはその姿を見ている。
『おべんとうバス』は、言葉の練習というより、呼ばれて応える喜びの本だ。保育園や家庭で「はーい」のやりとりが増える時期に読むと、日常の返事まで少し楽しくなる。
12. たまごのあかちゃん(福音館書店)
『たまごのあかちゃん』は、「だあれ?」を楽しむ本だ。たまごの中に誰かがいる。呼びかける。出てくる。子どもはページをめくる前に、何かが現れる気配を感じる。
1歳の読み聞かせでは、この予測の時間が大切だ。すぐにめくらず、少し待つ。子どもがじっと見たり、手を伸ばしたり、声を出したりする。その短い間に、絵本への集中が生まれる。答えを当てるというより、出てくる瞬間を一緒に待つ本だ。
動物たちの姿もわかりやすく、鳴き声や動きへ広げやすい。出てきた動物の声をまねしてもいいし、実物の動物写真とつなげてもいい。まだ知識として覚える必要はない。見たことのない生きものでも、「たまごから出てくる」という出来事そのものが楽しい。
一方で、勢いのある本を好む子には、最初はゆっくりに感じるかもしれない。そういうときは、声に変化をつけると入りやすい。「でておいでよ」の呼びかけを少し柔らかくしたり、動物が出るところで明るくしたりするだけで、印象が変わる。
『たまごのあかちゃん』は、ページをめくる期待を育てる。絵本の中には、まだ見えていないものがある。その感覚は、物語を楽しむ力の手前にある、小さな芽のようなものだ。
13. どんどこ ももんちゃん(童心社)
『どんどこ ももんちゃん』は、1歳の体の感覚に近い絵本だ。ももんちゃんが、どんどこ、どんどこ進んでいく。歩く、走る、ぶつかる、転ぶ。それでも進む。最後に向かう先には、抱っこの安心がある。
歩き始めた子、転ぶことが増えた子、どこへでも行きたがる子に、この本はよく合う。大人から見ると危なっかしい動きも、子どもにとっては世界を広げる大切な行為だ。ももんちゃんの丸い体と前へ進む勢いには、その時期の子どもの気配がある。
文章のリズムもいい。どんどこ、どんどこ。声に出すと、足音のように響く。膝の上で読むと、子どもの体まで少し前のめりになる。静かに眺める本というより、勢いごと受け止める本だ。
ただ、寝る直前に読むと気持ちが上がることもある。夜よりも、午前中や夕方の遊びの時間に向いている。転んで泣いたあと、外から帰ってきたあと、少し甘えたい気配があるときに読むと、最後の抱っこの場面がやさしく効く。
『どんどこ ももんちゃん』は、動くことと戻ることの本だ。子どもは外へ向かい、最後には誰かの腕の中へ戻る。その往復が、1歳の毎日そのものに見えてくる。
14. おふろでちゃぷちゃぷ(童心社)
『おふろでちゃぷちゃぷ』は、おふろの前後に置きたい生活絵本だ。おふろは毎日のことだが、子どもにとっては気分が分かれやすい。入りたくない日もある。出たくない日もある。水の音や湯気、服を脱ぐ動作が、急にいやになることもある。
この本は、そうした生活の流れを、やわらかく絵本の中へ移してくれる。ちゃぷちゃぷという音は、実際のおふろの音に近い。声に出すと、浴室のあたたかさまで少し思い出す。
松谷みよ子のあかちゃんの本らしく、言葉は短く、子どもに近い。いわさきちひろの絵のやわらかさもあって、生活習慣を教え込む感じになりにくい。おふろに入ろう、きれいにしよう、という目的が前に出すぎず、親子の時間として読める。
ただし、おふろ嫌いを一冊で解決する本ではない。そこを期待しすぎると、大人が焦る。むしろ、おふろの前に少し気持ちをならす本として使うといい。絵本を読んでからタオルを用意する。そんな小さな流れができれば十分だ。
『おふろでちゃぷちゃぷ』は、生活を急がせない。湯気、声、水の音。毎日の慌ただしい時間に、少しだけ絵本の呼吸を入れてくれる。
15. もこ もこもこ(文研出版)
『もこ もこもこ』は、意味を説明しようとすると遠ざかる本だ。もこ、にょき、ぱく、しーん。言葉と形が立ち上がり、変化し、また静かになる。何の話かと聞かれると困る。でも、1歳の子どもは大人より先に楽しむことがある。
この本は、物語の筋ではなく、音と形の変化で読む。ページを開くたびに、何かが生まれたり、ふくらんだり、消えたりする。谷川俊太郎の言葉と元永定正の絵が合わさって、意味になる前の感覚をそのまま置いている。
1歳の読み聞かせでは、こういう本が意外に大事だ。大人はつい、名前を教えられる本、生活につながる本、役に立つ本を選びたくなる。けれど、子どもは意味のない音を何度もまねする。変な形をじっと見る。理由の説明できない笑い方をする。
向かない読者がいるとすれば、絵本にわかりやすい内容や教育的な手応えを求める大人かもしれない。すぐに「これは何を学ぶ本?」と考えると、少しつかみにくい。だが、声に出して読むと印象は変わる。低く読んだり、急に小さくしたり、間を長くしたりできる。
『もこ もこもこ』は、言葉になる前の楽しさを残してくれる。子どもが同じ音だけをくり返したら、その日はそれでいい。意味より先に声が出る。その時間を大切にしたいときの本だ。
16. ボードブック はらぺこあおむし(偕成社)
『ボードブック はらぺこあおむし』は、通常版ではなく、1歳の手に合いやすいボードブックとして置きたい。ページを強くめくる、穴に指を入れる、何度も触る。そういう読み方を受け止めやすい。
あおむしが食べものを食べていき、やがて変化する。色、数、曜日、食べもの、成長といった要素が入っているが、1歳のうちは全部を理解しなくていい。むしろ、穴のあいたページに指を入れたり、いちごやりんごを見つけたりするだけでも十分に楽しい。
エリック・カールの色は、1歳の目にも届きやすい。赤、緑、黄色、青。鮮やかな色が、白いページの上でよく立つ。食べものが並ぶページでは、子どもが好きなものを指さすこともある。そこから実際のおやつや果物の話へつなげやすい。
ただし、最初から全ページをきちんと読もうとすると長く感じることがある。1歳前半なら、好きな食べもののページだけでもいい。穴を触って終わる日があってもいい。物語として通して味わうのは、もう少し後でも遅くない。
この本は、1歳絵本の終点ではなく、次の棚への橋だ。色を楽しみ、食べものを見つけ、穴に触り、やがて成長の物語へ進む。赤ちゃん絵本から幼児絵本へ移っていく途中に、丈夫な形で置いておきたい一冊だ。
関連グッズ・サービス
本を読んだ後の学びを生活に根づかせるには、生活に取り入れやすいツールやサービスを組み合わせると効果が高まる。
絵本そのものは紙で触れる体験が中心になるが、大人が育児書や読み聞かせの本を探すときには、電子書籍の読み放題も使いやすい。子どもが寝たあとの短い時間に、次の棚を試し読みできる。
家事中や移動中に、読み聞かせや子どもの発達に関する本を耳で拾えると、紙の本を開けない日にも読書の流れが途切れにくい。声で聞いたあと、気になった本を紙で買うという使い方もできる。
1歳絵本を置くなら、小さな絵本棚や布製の収納ボックスも相性がいい。子どもの手が届く高さに数冊だけ表紙を見せておくと、自分で選ぶ時間が生まれる。全部を並べるより、今よく読む本だけを入れ替えるほうが続きやすい。
まとめ:1歳絵本は、反応が返ってくる瞬間を中心に選ぶ
1歳の絵本選びで大切なのは、難しい物語を早く理解させることではない。笑う、まねする、指さす、返事する、抱っこに戻る。そういう小さな反応を、本の中から拾えるかどうかだ。
最初の入口としては、だるまさんが、いないいないばあ、じゃあじゃあびりびりが使いやすい。声、顔、音への反応が出やすく、絵本に慣れていない子でも入りやすい。
指さしが増えてきたら、きんぎょが にげたやたまごのあかちゃんへ進むといい。大人が読んで聞かせるだけでなく、子どもが見つける、待つ、当てる時間が増えていく。
生活に結びつけるなら、くだもの、おふろでちゃぷちゃぷ、おつきさまこんばんはが頼りになる。食卓、おふろ、夜の部屋へ絵本が戻ってくると、読み聞かせは特別な時間だけでなく、毎日の流れの一部になる。
- 迷ったら最初の1冊は『だるまさんが』。
- 親子のやりとりを増やしたいなら『いないいないばあ』と『くっついた』。
- 指さしを楽しみたいなら『きんぎょが にげた』。
- 1歳後半から2歳前へ進むなら『しろくまちゃんのほっとけーき』と『ボードブック はらぺこあおむし』。
親ハブの絵本おすすめ本へ戻れば、年齢を越えた定番の棚を見渡せる。もっと低月齢からの流れを見たいなら0歳絵本へ、言葉や物語が増えてきたら2歳絵本へ進むといい。
1歳の絵本は、うまく読ませるものではなく、一緒に起きるものだ。今日返ってきた小さな笑いを、次の一冊の目印にすればいい。
FAQ
1歳の絵本は何冊くらい用意すればいいか
最初からたくさんそろえる必要はない。まずは3〜5冊で十分だ。笑う本、音を楽しむ本、指さしできる本、生活に近い本を少しずつ混ぜると使いやすい。同じ本ばかり読みたがる時期もあるが、それは飽きていない証拠でもある。1歳はくり返しの中で、次に起きることを待つ力が育つ。大人が新しい本を増やしたくなっても、子どもが同じ本を選ぶなら、その時間をしばらく大切にしていい。
1歳で最後まで聞けない場合はどうすればいいか
最後まで聞けなくても問題ない。1歳の読書は、最初から最後まで座って聞くことより、ページの一部に反応することのほうが大切だ。好きなページだけを見る、途中で閉じる、同じ音だけまねする。それもその子なりの読み方である。大人が「ちゃんと読ませよう」とすると絵本の時間が重くなる。短く読んで、また戻る。数十秒でも楽しい反応があれば、その日は十分だ。
1歳前半と1歳後半で選ぶ本は変えたほうがいいか
大きく分けるなら、1歳前半は顔、音、体の動きに反応しやすい本が合う。『だるまさんが』『いないいないばあ』『じゃあじゃあびりびり』のように、短くてくり返しのある本が使いやすい。1歳後半になると、指さし、返事、簡単な流れに反応しやすくなる。『きんぎょが にげた』『おべんとうバス』『しろくまちゃんのほっとけーき』のような本へ少しずつ広げるといい。ただし、月齢よりも子どもの反応を優先したい。
寝かしつけに向く1歳絵本はどれか
寝る前には、音や動きが強すぎる本より、気持ちが静かに下りていく本が向いている。『おつきさまこんばんは』は夜の空気に合いやすく、『おふろでちゃぷちゃぷ』はおふろから眠る前の流れに置きやすい。反対に、『だるまさんが』や『ぴょーん』は子どもによって元気が出すぎることもある。寝かしつけ用の本は、楽しいかどうかだけでなく、読み終わったあとに部屋の空気が落ち着くかで選ぶといい。
紙の絵本とボードブックはどちらがいいか
1歳には、丈夫に扱えるボードブックが合う場面も多い。自分でめくる、強くつかむ、何度も触る時期なので、本を守ることに大人が神経を使いすぎると読み聞かせが続きにくい。ただし、すべてをボードブックにする必要はない。紙の絵本には、ページをめくる軽さや絵の余白のよさがある。触って楽しむ本は丈夫な版、落ち着いて読む本は通常の単行本というように分けると使いやすい。















