この記事ではAmazonで買える「障害心理学」のおすすめ本を20冊、学術と実務の橋渡しができる順に厳選して紹介する。医療・教育・福祉・就労の現場で、評価(アセスメント)から支援(インターベンション)、チーム連携、権利擁護までを通しで設計できることを重視した。自分はこれらで〈ICF(国際生活機能分類)×社会モデル×個人の物語〉を同時に扱うコツを掴み、ケース会議や保護者説明の質が確実に上がった。
- はじめに:障害心理学とは?
- おすすめ本20選
- 1. 障害者・障害児心理学(公認心理師スタンダードテキストシリーズ 13)
- 2. 障害者心理学(シリーズ心理学と仕事 15)
- 3. 第13巻 障害者・障害児心理学(公認心理師の基礎と実践)
- 4. 障害者・障害児心理学(放送大学教材 1644)
- 5. これからの障害心理学:〈わたし〉と〈社会〉を問う(y-knot)
- 6. 知的障害の心理学:発達支援からの理解
- 7. 障害者・障害児心理学 ― アセスメントと心理支援の実際(改訂版を含む)
- 8. 脳の働きに障害を持つ人の理解と支援:高次脳機能障害の実際と心理学の役割(心理学叢書)
- 9. 聴覚障害児の学習と指導――発達と心理学的基礎
- 10. 障害という経験を理解する:社会と個人へのアプローチ
- 11. 障害児・障害者心理学特論〔改訂新版〕: 福祉分野に関する理論と支援の展開(放送大学大学院教材)
- 12. 障害者心理学: 障害児者の特性理解と具体的支援方法
- 13. 心理学でわかる発達障害「グレーゾーン」の子の保育
- 14. 公認心理師のための「発達障害」講義(臨床心理フロンティア)
- 15. 発達障害の臨床心理学
- 16. 発達障害の精神病理 II
- 17. 知的障害のある人への心理支援
- 18. 知的障害・発達障害における「行為」の心理学――ソヴィエト心理学の視座と特別支援教育
- 19. 障碍児心理学ものがたり 小さな秩序系の記録 1
- 20. 精神障害を哲学する:分類から対話へ
- 障害心理学/障害者・障害児心理学とは
- 用語・人物ガイド(最短で押さえる共通言語)
- 読み方ガイド:基礎→実装→領域特化→倫理
- 関連グッズ・サービス
- まとめ:今のあなたに合う一冊
- よくある質問(FAQ)
はじめに:障害心理学とは?
障害心理学は、障害を「個人の機能」だけでなく「環境」「参加」の相互作用としてとらえ、評価(何が起きているか)→仮説(なぜ起きるか)→支援(どう変えるか)→評価(どう変わったか)の循環で生活を良くしていく学問だ。医療モデルと社会モデルの往復、ICFによる共通言語、当事者中心(意思決定支援・ピアの視点)が柱になる。この記事は、基礎→実装→領域特化→倫理と文化、の流れで読むと負荷が低い。
おすすめ本20選
1. 障害者・障害児心理学(公認心理師スタンダードテキストシリーズ 13)
公認心理師の標準カリキュラムに沿い、発達・感覚・知的・精神・高次脳など主要領域を横断する“地図の本”。ICFの観点(心身機能・活動・参加、環境因子)で構成が貫かれ、症状語→生活語への言い換えが自然に身につく。章末の「評価→連携→支援」チェックが実務的で、ケース記録をこの見出しに合わせるだけで、多職種と話が通る。学生・新人だけでなく、異動者の速習にも心強い。
刺さる読者像:まず共通言語を作りたい/院内・校内の研修テキストを探している/ケース会議のフォーマットを整えたい。
おすすめポイント:自分は面接メモを「心身機能/活動・参加/環境因子」の3段で書く運用に変えた。会議が短く深くなった。
2. 障害者心理学(シリーズ心理学と仕事 15)
“障害と仕事”の接点にピントを合わせた実務志向の一冊。就労支援、合理的配慮、職場のアクセシビリティ、当事者のキャリア形成など、働く生活に焦点を当てることで、心理支援が雇用や制度と結びつく。支援者の言語(配慮事項、合意形成、評価指標)が具体で、企業側との打ち合わせにもそのまま持ち込める。社会モデルの語彙で“できない人”の話を“できる環境”の設計へ反転させたい人に刺さる。
刺さる読者像:就労移行・定着支援/大学の障害学生支援/企業人事・産業保健/インターン受け入れ担当。
おすすめポイント:「業務の本質/非本質」を分けて職務再設計するワークが秀逸。配慮の交渉が具体化する。
3. 第13巻 障害者・障害児心理学(公認心理師の基礎と実践)
“基礎と実践”の名に違わず、テストバッテリーからケース・フォーミュレーション、家族支援、機関連携まで一本の線に。アセスメント→仮説→介入→再評価の循環が章立て自体に埋め込まれ、研修台本にしやすい。心理検査の位置づけを過不足なく扱い、数値を生活へ訳す作法(例:WISCの言語理解→授業の言い回し修正など)が明晰。国試対応にも、現場実装にも効く。
刺さる読者像:検査→授業・支援への翻訳を磨きたい/ケース検討の型をそろえたい/若手を教える立場。
おすすめポイント:会議で「仮説(機能分析)」を1行で明示する習慣がつく。支援の選び方に納得が生まれる。
4. 障害者・障害児心理学(放送大学教材 1644)
放送大学らしい、誠実で視野の広い総合入門。歴史・制度・権利条約から学術・実践まで俯瞰し、医療・教育・福祉の言語を接続する。地域生活・当事者運動・差別解消法などの制度文脈も丁寧で、現場の“背景説明”に強い。知識を偏らせないための土台として必携。
刺さる読者像:制度も含めて全体を短距離で押さえたい/異職種間で共通資料にしたい。
おすすめポイント:保護者説明の資料に、条約や法の根拠をワンフレーズ添えられるようになる。
5. これからの障害心理学:〈わたし〉と〈社会〉を問う(y-knot)
医療モデル/社会モデルの対立を超え、当事者の語りと社会の構造を同時に扱うリフレクティブな一冊。合理的配慮やインクルーシブ教育を“理念”で終わらせないための問いが並ぶ。専門家中心主義への反省、ピアの知の位置づけ、評価の倫理など、実務に直結する視界が開ける。自分の支援が“良いこと”で止まっていないか、チームで読み合わせたい。
刺さる読者像:専門性と当事者性のバランスに悩む/制度と生活のズレを埋めたい/研究と実践を往復したい。
おすすめポイント:ケース記録の主語を「支援者」から「本人」に戻すだけで、支援案が変わることに気づける。
6. 知的障害の心理学:発達支援からの理解
知的障害の発達特徴・評価・教育・地域生活を、発達支援の筋で組み立てた定番。行動・コミュニケーション・遊び・学習の“足場”をどう設計するかが具体で、家庭・学校・福祉サービスを横断して応用できる。できることの見取り図→次の一手の流れが明快で、支援の優先順位付けが上手くなる。
刺さる読者像:LD/ID領域の評価から授業・療育への翻訳を鍛えたい/保護者との合意形成を強くしたい。
おすすめポイント:「成功体験を1日に3回」など、行動活性のミクロ設計が豊富で“翌日から”使える。
7. 障害者・障害児心理学 ― アセスメントと心理支援の実際(改訂版を含む)
タイトル通り、実際にこだわったアセスメント&支援の総覧。観察・面接・尺度・行動評価・機能分析(FBA)から、応用行動分析(ABA)・認知行動アプローチ・ソーシャルスキルトレーニング(SST)・協働的問題解決(CPS)まで、ツール→手順→記録例の粒度で載る。チーム共有の資料が一気に作りやすくなる。
刺さる読者像:評価の“次の一手”で悩む/個別の教育支援計画(IEP)の質を上げたい/若手に手順を教える立場。
おすすめポイント:FBA→介入選択の表が秀逸。BPSDや不適応行動の“意味”を読み違えにくくなる。
8. 脳の働きに障害を持つ人の理解と支援:高次脳機能障害の実際と心理学の役割(心理学叢書)
注意・記憶・遂行機能・社会的認知など、高次脳機能の障害像を心理学の言語で解きほぐす。神経心理学的アセスメントと日常生活(ADL/IADL)を橋渡しし、家族・就労・地域支援へ実装する筋道が明確。“検査で出た弱さ”を環境調整で補う設計に強い。リハ・就労支援・当事者家族に関わる人に必携。
刺さる読者像:高次脳・発達×成人移行支援に関わる/学校から就労までの連続支援を組みたい。
おすすめポイント:メモ・ナッジ・手順書など外部化の工夫が豊富。QOLが上がる“仕掛け”をすぐ導入できる。
9. 聴覚障害児の学習と指導――発達と心理学的基礎
早期支援、言語獲得、読書・書記、コミュニケーション様式(音声・手話・筆談・指文字)を、心理学の枠で整理する専門書。AAC(拡大代替コミュニケーション)やUDL(学びのユニバーサルデザイン)への橋渡しができ、学校現場での教材・掲示・評価の見直しが進む。言語のアクセスを保障すると振る舞いが変わる、という実感を得やすい。
刺さる読者像:特別支援教育・難聴学級・通級/ICT活用を進めたい学校・家庭。
おすすめポイント:板書・プリント・発問の“見える化”チェックリストが秀逸。授業が一段クリアになる。
10. 障害という経験を理解する:社会と個人へのアプローチ
当事者の“経験”にレンズを合わせ、差別や排除、スティグマ、規範のまなざしを言語化する。心理支援を“個人の努力”だけに閉じず、環境・制度・文化を変える視点が育つ。支援計画に「社会的障壁の仮説と対策」欄を増やすだけで、実装が変わることに気づける。
刺さる読者像:支援が「頑張れ」に寄りがち/インクルージョンの実務を言語化したい/自治体・企業での施策設計に関わる。
11. 障害児・障害者心理学特論〔改訂新版〕: 福祉分野に関する理論と支援の展開(放送大学大学院教材)
大学院レベルの射程で〈理論→制度→実装〉を橋渡しする“上段の地図”。ICF・社会モデル・差別解消法・権利条約を縦糸に、相談援助・就労・地域生活・ピア支援などの実践を横糸に織り上げる。用語定義が精確で、自治体・教育委員会・医療機関の文書を横断してもブレにくくなる。研究計画の背景整理にも強い。
刺さる読者像:実務の背後にある理論と制度を一気に整理したい/院生・研究職/自治体・法人の企画担当。
おすすめポイント:支援計画のフォームに「社会的障壁」の欄を増やす発想が定着する。議論が“本人の努力”から“環境の設計”へ移る。
12. 障害者心理学: 障害児者の特性理解と具体的支援方法
領域横断の総覧型テキスト。特性理解→アセスメント→支援の手順を、場面(家庭/学校/職場/地域)別に落とし込む。観察の観点や記録例が豊富で、若手の“何を見て、どう書くか”が揃う。合理的配慮の実例も要点主義で、会議にそのまま持ち込める。
刺さる読者像:新人/異動者/学部生の導入/校内・院内の共通テキストが欲しい。
おすすめポイント:行動問題の機能分析(FBA)→PBSの小さな作戦表が現場に刺さる。翌日導入しやすい粒度だ。
13. 心理学でわかる発達障害「グレーゾーン」の子の保育
診断の有無にかかわらず“困り”に出会ったとき、保育現場が何をどう調整するかを具体的に示す。環境調整・視覚的手がかり・移行の工夫・保護者連携まで、写真と事例で“すぐやれる”に落ちている。医療や教育へのつなぎ方も丁寧で、早期の二次的問題を防ぐ一冊だ。
刺さる読者像:保育者・幼稚園教諭・子育て支援/園内の研修担当/保護者説明の言い回しを整えたい。
おすすめポイント:「困りごと→観察→仮説→環境の工夫→ふり返り」の一枚シートがそのまま使える。
14. 公認心理師のための「発達障害」講義(臨床心理フロンティア)
発達障害のアセスメントと支援を、現代の臨床水準で“講義”として束ねたテキスト。診断基準の読み替え、併存症、ライフステージ、家族支援、就学・就労移行など、現場の論点を一冊で横断できる。検査所見の翻訳(数値→支援)と、学校・医療・福祉の連結点が実践的だ。
刺さる読者像:スクール・外来・福祉で横断的に支援する心理職/若手指導に使う教材が欲しい。
おすすめポイント:面接と検査の結果を「授業・職務の変更点」に地続きでつなぐ書き方が身につく。
15. 発達障害の臨床心理学
臨床の“肌感”を保ちつつ、アセスメント・介入・家族支援・連携を学術レビューで裏打ちする。ASD/ADHD/LDそれぞれの強み・困難のプロファイルを生活場面に翻訳し、SST・行動活性・実行機能支援・感覚過敏への配慮などを設計できる。グレーゾーンや併存の扱いが丁寧で、“ラベルに支配されない見立て”が定着する。
刺さる読者像:スクール・外来・就労で“具体の一手”を増やしたい中堅/ケース会議の説得力を上げたい。
おすすめポイント:本人の語りを中心に据える面接の姿勢が徹底し、支援の納得感が上がる。
16. 発達障害の精神病理 II
併存症(不安・気分・パーソナリティ)、発達と精神病理の交差、薬物療法との協働など、難所に踏み込む専門的論集。分類で思考停止せず、個別の病理過程を“発達の物語”として読む視点が鍛えられる。院外連携や危機対応の合意形成にも資する。
刺さる読者像:医療・心理の中堅以上/合併やリスクの高いケースを扱うチーム/スーパービジョンの土台を強化したい。
おすすめポイント:危機の兆候と介入の窓の見取り図が実務的。ケースの“戻しどころ”を見失わない。
17. 知的障害のある人への心理支援
本人中心計画、意思決定支援、行動支援、地域生活、成人期・高齢期までの継続支援を、心理職の役割に引き寄せて設計する。評価→支援→評価の循環が“生活の語り”で書かれ、支援計画の文章が自然に変わる。虐待予防・権利擁護の視点も強く、法人運営の指針にもなる。
刺さる読者像:知的障害領域の心理・福祉・教育実務者/支援の“合意文書”を磨きたい管理職。
おすすめポイント:SDM(意思決定支援)の具体例が豊富。本人の選択を中心に据える会議運営に切り替わる。
18. 知的障害・発達障害における「行為」の心理学――ソヴィエト心理学の視座と特別支援教育
ヴィゴツキー/レフ・ビゴツキー学派の「行為」「文化歴史的発達」から、特別支援教育を組み立て直す理論的挑戦。できないことを補うのではなく、道具と他者との協同(メディエーション)で活動を再設計する視点が得られる。スキル訓練に偏った支援を、文化的な実践づくりへ更新したい人に刺さる。
刺さる読者像:授業を“活動の再設計”として見直したい教師・療育者/理論に裏打ちされた実践を求める人。
おすすめポイント:板書・役割・道具配置の“活動設計”が授業改善の軸に立つ。UDLと相性が良い。
19. 障碍児心理学ものがたり 小さな秩序系の記録 1
現場の細部をすくい上げる実践記録。子ども一人ひとりの“秩序”がどう立ち上がり、支援者がどう関わりを変えたかが物語として描かれる。理論書では得にくい「温度」と「間」の感覚が身につく。記録の書き方・語彙選び・タイミングの取り方など、技法以前の“態度”が磨かれる。
刺さる読者像:文章で実践を残したい/見立てに“生活の温度”を取り戻したい/若手の記録指導をしたい。
おすすめポイント:記録の主語が常に〈本人〉であることの強さに気づく。会議の空気が変わる。
20. 精神障害を哲学する:分類から対話へ
診断分類を前提としつつ、対話可能性・意味・語りという哲学的論点から臨床を再考する。スティグマ、自己理解、倫理、合意形成など、現場で避けがたい問いを言語化し、〈正しさ〉と〈納得〉のあいだの設計を助ける。DSM/ICDの枠を“道具”として賢く使う態度が身につく。
刺さる読者像:診断と語りのバランスに悩む/倫理カンファを前に言葉を探している/対話の質を上げたい中堅以上。
おすすめポイント:“相手の世界”に入る言葉と限界を見極める視力がつく。説明の説得力が変わる。
おすすめポイント:合意形成の言い回しが豊富。本人・家族・学校・職場の“同じ紙面”が作れるようになる。
障害心理学/障害者・障害児心理学とは
障害心理学は、障害を「個人の機能」だけでなく「環境」「参加(社会とのかかわり)」の相互作用として理解し、評価(アセスメント)と支援(インターベンション)を往復させて生活の質を高める学問だ。とくに教育・医療・福祉・就労の現場で、本人・家族・支援者・制度の四者を結ぶ“共通言語”として機能する。日本の教科書では、子ども期を含めた広い射程を示すために「障害者・障害児心理学」と表記することが多い。名称は違っても、扱う柱は次の三つに収れんする。
三つの柱(この順で見る)
- ICFの視点:心身機能/活動/参加×環境因子で〈何ができていて、どこで困りが出るのか〉を地図化する。症状語を生活語に訳す。
- モデルの往復:医療モデル(機能・症状)だけでなく、社会モデル(社会的障壁・制度・規範)を同じ紙面に載せて検討する。
- 本人中心と合意形成:意思決定支援(SDM)と合理的配慮を前提に、本人の目標と言葉で計画を書く。
対象とスコープ(子ども〜成人・高齢期まで)
- 発達・学習:自閉スペクトラム、ADHD、LD、知的障害、聴覚・視覚・肢体不自由など。
- 医療・リハ:高次脳機能障害、慢性疾患の自己管理、精神疾患との併存。
- 社会参加:学校適応、進学・就労、地域生活、家族支援、権利擁護・差別解消。
評価(アセスメント)の型
評価は「数値を出すこと」ではなく「生活を設計するための仮説づくり」だ。枠組みは次の通り。
- 多面的に集める:観察/面接(本人・家族・担任・上司)/心理検査(必要に応じて)/チェックリスト/医療情報。
- ICFに配置:
・心身機能:注意・記憶・感覚・運動等の特徴
・活動/参加:学習・対人・仕事・家事などの具体行動
・環境因子:教室配置、指示の出し方、職務設計、制度・文化 - 機能分析(FBA):〈先行事象→行動→結果〉で“行動の役割”を仮説化する。
- 本人の語り:困り・得意・目標を本人の言葉で一行ずつ記す(合意形成の核)。
支援(インターベンション)の型
評価から支援へは「仮説→一手→測る」を短周期で回す。次の三層で設計する。
- 環境調整(先に動かす):座席・照明・提示方法・手順書・時間配分・ICT・掲示の見える化・職務再設計(本質/非本質の分離)。
- スキルトレーニング:SST、実行機能支援、言語・コミュニケーション、学習方略(視覚的手がかり、段階課題、リハビリのホームプログラム)。
- 関係と合意:本人中心計画、家族支援、チームでのケース・フォーミュレーション、合理的配慮の明文化。
障害心理学でよく使うキーワード(最短版)
- ICF:共通言語。記録様式・会議・支援計画はこの枠で統一すると速い。
- 合理的配慮:目的は守り、手段を変える調整のこと。本人・組織・第三者で合意する。
- FBA/PBS:行動の機能に基づくアセスメントと、ポジティブ行動支援。
- AAC/UDL:コミュニケーション支援/学びのユニバーサルデザイン。
- SDM:意思決定支援。「理解を助ける工夫→選択→再検討」を前提にする。
具体例(5行でわかる設計の転換)
例:算数の板書が写せず遅れる小学4年
- 観察:注視の途切れ/音声指示のみで混乱/作動記憶の負荷大。
- ICF配置:活動=板書写しで遅れ、参加=授業理解が低下。環境=黒板の情報密度高、口頭指示のみ。
- 仮説(FBA):遅れ→叱責回避/達成感欠如→関与低下。
- 環境調整:板書テンプレ配布、見出しの色分け、ステップ番号化、5分ごとの“確認カード”。
- スキル:視覚的方略の練習、短い単位で成功経験を積む。1週間後に遅延時間と参加発言を指標に再評価。
障害“児”の視点が入る理由
幼児期〜学齢期は、機能差が環境や期待と噛み合わないことで二次的な困難(自尊心低下、不登校、二次障害)が生じやすい。早期から環境調整→成功体験の設計→本人の語りの育成を回すことで、成人期の就学・就労・地域生活に滑らかな接続が生まれる。したがって「障害者・障害児心理学」は、発達線と社会参加の連続性を担保する科目名として機能する。
現場導入の最小セット(今日から)
- 1枚フォーマット:ICF3段+FBA要約+本人の目標(本人の言葉)。
- 会議の型:〈現状→仮説→一手→指標→期日〉を10分で合意。次回レビューを必ず決める。
- 合理的配慮メモ:〈目的/変更する手段/評価方法〉の3行で簡易合意書を作る。
要するに、障害心理学(=障害者・障害児心理学)は「個の特性×環境×参加」を設計する実学だ。数値は出発点であり、生活に訳して初めて意味を持つ。ICFで地図を描き、FBAで仮説を立て、環境とスキルを小さく変え、合意を反復する――この循環が支援の土台になる。
用語・人物ガイド(最短で押さえる共通言語)
- ICF:心身機能/活動/参加×環境因子の枠。記録・会議・評価に共通語彙を。
- 社会モデル:「できなさ」を個の欠陥ではなく、社会的障壁として捉え直す視点。
- 合理的配慮:本人のニーズに応じた変更・調整。過度の負担でない範囲で義務。
- FBA/PBS:機能に基づく行動アセスメント/ポジティブ行動支援。行動の“役割”を見て環境を設計。
- AAC/UDL:コミュニケーション支援/学びのユニバーサルデザイン。
- SDM:意思決定支援。理解を助ける工夫で“本人の選択”を中心に。
- 主要人物:Vygotsky(文化歴史的発達理論/最近接発達領域)、Goffman(スティグマ)、Bronfenbrenner(生態学的システム論)など。
読み方ガイド:基礎→実装→領域特化→倫理
- 基礎で地図:1・4でICFと制度の全体像。
- 実装の骨:3・7でアセスメント→支援→評価の一連を「一枚フォーマット」に。
- 領域特化:6(知的)・8(高次脳)・9(聴覚)で具体の設計力。
- 倫理と社会:2・5・10で社会的障壁/合理的配慮/当事者の語りを補強。
関連グッズ・サービス
学びを現場に落とす“外部足場”を揃えると、会議と支援が安定する。
- Kindle Unlimited ― ICF・ABA・特別支援教育・インクルーシブの周辺を横断読みし、定義の揺れを減らす。
- Audible ― 通勤で“社会モデル/スティグマ/合理的配慮”章を反復。会議で言語がすぐ出る。
- ― ハイライト→院内・校内メモ→ケース会議の引用元確認が速い。
小技:個別の教育支援計画/個別支援計画のフォームに〈ICF3段〉〈合理的配慮〉〈FBA要約〉の固定欄を追加。情報が自動でそろい、担当替えでも支援が滑らかに続く。
まとめ:今のあなたに合う一冊
障害心理学は「個と社会を同時に設計する学問」だ。まずはICFで地図(1・4)、次にアセスメント→支援→評価の型(3・7)、そして領域の設計力(6・8・9)を足し、最後に社会と倫理(2・5・10)で視野を広げる。読後24時間以内に、フォームや掲示、授業・支援の“ひとコマ”を更新すると定着が速い。
- 地図を作るなら:1『スタンダードテキスト』、4『放送大学教材』
- 実装を強くするなら:3『基礎と実践 第13巻』、7『アセスメントと心理支援の実際』
- 領域特化なら:6『知的障害の心理学』、8『高次脳機能障害』、9『聴覚障害児の学習と指導』
- 社会と権利を押さえるなら:2『心理学と仕事』、5『これからの障害心理学』、10『障害という経験を理解する』
今日の一手:ケース記録の冒頭に「本人の目標(本人の言葉)」を1行追加し、ICFの3段で現状を整理。次回会議で“環境の調整”を最低1項目、実行する。
よくある質問(FAQ)
Q: 医療モデルと社会モデル、どちらが正しい?
A: 対立ではなく往復だ。医療(機能・症状)を評価しつつ、社会(環境・制度)を設計する。ICFで両者を同じ紙面に載せると話が早い。
Q: “行動問題”への最初の一手は?
A: FBAで〈先行→行動→結果〉を記録し、行動の“機能”を仮説化。代替行動の練習と環境調整(求め過ぎの課題削減・手がかりの明確化)をセットで。
Q: 合理的配慮はどこまで?
A: 本人のニーズと業務・学習の本質を見極め、「目的は守り、手段を変える」。過度な負担に当たらない範囲で、本人・組織・第三者で合意形成を。
Q: 検査結果をどう支援につなげる?
A: 数値は出発点。例:作動記憶の弱さ→手順書・視覚手がかり・短い単位での区切り、処理速度の課題→締切の余裕・時間換算の配慮、など“環境の翻訳”に必ず落とす。
Q: 家族との合意が難しい。
A: 「困りごと→観察→仮説→次の一手」を一枚で共有。専門用語は本人・家族の言葉に訳し、選択肢は利点・不利点を対称に提示する。



















