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【わかりやすく学ぶ】行動神経科学おすすめ本20選|脳が“行動”を生み出す仕組みを理解する入門書ガイド

 行動神経科学は、脳の生理・化学・回路の働きが、どのように感情・動機づけ・学習・社会行動として現れるかを解き明かす分野だ。心理学を「生物としての人間」という視点から支えるコアであり、臨床・教育・リハビリ・ビジネス応用の土台にもなる。まずは認知神経科学との違いを押さえ、その後で段階的に読める18冊を厚めのレビューで紹介する。

行動神経科学と認知神経科学のちがい

 両者は姉妹分野だが、問いの立て方と主力手法が異なる。行動神経科学は「脳→身体→行動」のダイナミクスを、生理・薬理・電気生理・動物行動のデータで追う。認知神経科学は「脳→心→情報処理」を、fMRIやEEGと認知課題の組み合わせで可視化する。

比較軸 行動神経科学 認知神経科学
研究対象 情動・動機づけ・習慣・学習・社会行動 知覚・注意・記憶・言語・意思決定・意識
主な手法 動物実験、神経薬理、細胞/回路生理、病変研究 fMRI/EEG/MEG、計算モデル、心理課題
問いの焦点 「脳はなぜ/どう行動を起こすか」 「脳はどう情報を表現・処理するか」
応用 リハビリ、運動・依存・ストレス、動物行動、情動調整 教育、神経経済、言語・共感、ヒューマンファクター

 両輪として学ぶと理解が一気に深まる。全体像は姉妹記事の認知神経科学おすすめ本も参照するとよい(情報処理側の地図が手に入る)。

行動神経科学おすすめ本〈基礎を固める〉10選

1. カールソン神経科学テキスト 脳と行動(原書13版)

 

 

 行動神経科学を学ぶ人なら、必ず通るといわれる世界標準の教科書。膨大な神経科学の知見をベースに、感情・動機づけ・学習・依存・ストレスといった「行動を生み出す脳の仕組み」を徹底的に解き明かしている。ひとつの感情や行動を、分子・細胞・神経回路・生理反応という複数レイヤーから分析する構成は圧巻。  特に印象的なのは、脳の異常や損傷、薬物実験など「行動の裏側」にある生物的原因をリアルに描く記述。読むたびに、人間の行動が“意志”だけでなく神経の物理的プロセスの上にあることを実感する。大学・大学院・臨床現場すべてで使える、行動神経科学の原典的存在。

2. カンデル神経科学 第2版

 

カンデル神経科学 第2版

カンデル神経科学 第2版

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 ノーベル賞受賞者エリック・カンデルによる、神経科学のバイブル。学習と記憶の神経機構を分子レベルから紐解き、なぜ「経験」が脳を変え、行動を変えるのかを圧倒的なスケールで描く。  「シナプスの長期増強(LTP)」を中心に、記憶形成の神経生理をここまで精緻に論じた書は他にない。専門的ではあるが、章ごとにストーリー性があり、知的な感動すら覚える。  心理学者・教育者・医療従事者にとっても、脳が“行動を記憶する仕組み”を理解する上で決定的に重要。重厚な一冊だが、一生の財産になる。

3. バイオサイコロジー:脳―心と行動の神経科学

 

 

 「行動を生物学のことばで説明する」ことに挑んだ先駆的テキスト。神経伝達物質やホルモンの働きから、恐怖・依存・睡眠・攻撃性・性行動といった“生きる行動”をつなぎ合わせる。  たとえば、ストレス時に分泌されるコルチゾールが、どのように記憶や感情を変化させるか。ドーパミンが報酬系を刺激し、どのように「習慣」や「依存」を形成するのか。科学的でありながら、どの章も人間ドラマのように読み進められる。  心理学・教育・医療・看護・福祉など、行動を扱うすべての領域の人に読んでほしい。

4. ベアー/コノーズ/パラディーソ 神経科学 脳の探求(カラー版)

 

 

 世界中の大学で愛用される神経科学の決定版。全ページがフルカラーで、脳の解剖・神経伝達・感覚・運動から情動・記憶まで、あらゆる行動をビジュアルで理解できる。  とくに「恐怖」「報酬」「学習」など行動神経科学に直結する章は圧巻で、実験データと脳回路図が完璧に対応している。視覚・聴覚・運動野などの図も美しく、難解な神経生理を“直感で掴む”感覚が得られる。  読むほどに、脳というシステムがどれほど精密に行動を制御しているかが実感できる。学生・研究者・臨床家すべてに推せる、究極のビジュアルテキスト。

5. 脳科学の教科書 神経編(岩波ジュニア新書)

 

 

 専門書の前に読んでおくと、神経科学がぐっと身近になる名入門書。ニューロンやシナプスの仕組みから、感情・行動・学習へのつながりを、生活の具体例を交えてわかりやすく解説。  たとえば「なぜ緊張すると手が震えるのか」「なぜ怖い映画を見ると眠れないのか」といった日常的疑問を、脳のメカニズムで説明してくれる。語り口は平易だが内容は本格的で、読後には確かな“科学の手応え”が残る。  高校生や文系の社会人にもおすすめ。カールソンやベアーに進む前の「最初の一冊」として理想的。

6. 認識と行動の脳科学(シリーズ脳科学)

 

 

 行動神経科学と認知神経科学の境界を横断する専門書。前頭前野と基底核、小脳を中心とするネットワークを軸に、学習・意思決定・予測誤差・運動制御といった行動の神経基盤を統合的に解説する。  特に、報酬学習におけるドーパミン神経の信号や、誤りを検出する前帯状皮質の役割など、近年の神経計算モデルを踏まえた内容が充実。  「行動がどのように選ばれ、修正されるのか」という行動神経科学の核心を、理論と実験の両面から学べる。研究志向の人に強くすすめたい一冊。

7. 行動の神経生物学

 

 

 動物や人間の行動を「生き残るためのシステム」として捉える重厚な専門書。性行動・攻撃・社会順位・子育て行動など、多様な行動を神経ホルモン・遺伝・脳回路の観点から探る。  特にオキシトシンやバソプレシンなど社会的行動に関わる神経ペプチドの研究が豊富で、「愛情」や「絆」といった抽象的な感情を神経の動きとして理解できる。  実験動物の行動記録や脳画像も多く、行動神経科学の“生物としての人間観”を学ぶには最適。読後は「人の行動は生理的であり、進化的でもある」と実感できる。

8. 共感の社会神経科学

 

 

 他者の痛みを自分のことのように感じる「共感(empathy)」の神経メカニズムを、島皮質・前帯状皮質・扁桃体のネットワークから解き明かす。  脳科学と社会心理学の融合という点で画期的であり、利他行動・道徳判断・協力行動など“社会的行動”を神経回路で説明する。  「なぜ人は助け合うのか」「なぜ他者の不幸に怒りを覚えるのか」という問いに、生理学的答えを与える。医療・教育・カウンセリングなど、人の感情と行動を扱う専門家にとって必読の一冊。

9. 神経科学の最前線とリハビリテーション ― 脳の可塑性と運動

 

 

 行動神経科学の成果をリハビリ現場に応用した実践書。脳の可塑性(plasticity)とは、学習や訓練によって神経回路が再編成される能力のこと。本書では、運動麻痺や言語障害の回復を、可塑性理論から具体的に解説する。  「課題特異的訓練」「ミラーセラピー」「ニューロモデュレーション」など臨床で注目されるアプローチを、科学的根拠とともに整理。  読めば、リハビリや教育が単なる“訓練”ではなく、脳を再設計する行為であることがわかる。OT・PT・心理士必携のテキスト。

10. オールコック・ルーベンスタイン 動物行動学 原書11版

 

 

 行動神経科学の“祖先”ともいえる、動物行動学の決定版。動物の繁殖・縄張り・社会性などを神経・遺伝・進化の観点から総合的に解説する。  特にティンバーゲンの「行動の四つの問い(機能・進化・発達・機構)」を理論の基盤に据え、人間の行動を含めた“生命としての行動”を描き出すスケール感が魅力。  神経科学の研究者が“生き物としての行動”に立ち返るとき、この一冊が羅針盤になる。読後には、行動の背景にある自然選択と神経機構の調和が見えてくる。

行動神経科学おすすめ本〈応用・一般・創発的トピック〉10選

11. 神経経済学と意思決定 ― 心理学・神経科学・行動経済学からの総合的展望

 

 

 「人はなぜ非合理な選択をするのか?」──その答えを神経科学から探るのが本書。報酬を司る腹側線条体、リスクを判断する扁桃体、長期的価値を計算する前頭前野など、意思決定を動かす脳回路を精密に描く。  行動経済学が示す「バイアス」や「損失回避」は、実際には脳の電気信号として観測できるのだと知ると、行動神経科学が一気に身近になる。マーケティングや医療の“選択支援”など現実社会への応用も多く、学際的に読む価値が高い。  ビジネスパーソン・研究者・臨床家すべてにとって、「脳が意思決定をどう下すか」を理解する最良の入門書。

12. 共感の社会神経科学

 

 

 社会的行動を神経の言葉で読み解く名著。島皮質や前帯状皮質といった領域が「他者の痛みを自分の痛みとして感じる」際に活動することを示し、共感・協力・利他行動の神経基盤を鮮やかに描き出す。  また、共感疲労・偏見・差別といった負の感情も脳回路の反応として捉える点が興味深い。単なる脳の研究ではなく、「人間が社会で生きるとは何か」という倫理的・哲学的問いにまで踏み込む。  読後には、他者との関係における“脳の責任”を感じるだろう。医療・教育・福祉・心理支援に携わるすべての人に薦めたい。

13. 神経科学の最前線とリハビリテーション ― 脳の可塑性と運動

 

 

 行動神経科学の理論を「人を回復させる科学」へと昇華させた実践的名著。  脳の可塑性(plasticity)とは、訓練や経験によって神経回路が再構築される能力のこと。著者はこの可塑性をもとに、運動学習・課題特異的訓練・ニューロモデュレーションなどの最新リハ手法を体系化する。  「脳は損なわれても、行動によって再生する」──この希望を実証するデータが詰まっている。医療職・セラピスト・教育者にとって、行動神経科学を現場で“使う”ための最良の教材だ。

14. 行動の神経生物学

 

 

 動物や人間の自然な行動を、脳と遺伝子の相互作用から読み解く専門書。攻撃性・性行動・社会順位・養育行動など、「行動の根源」を扱う章の迫力がすさまじい。  特にオキシトシンとバソプレシンというホルモンが社会的行動に与える影響を、細胞レベルから解明している点が見事。生理心理学・動物行動学・進化心理学が交差し、行動神経科学の全体像を浮かび上がらせる。  読むほどに、“生きること=行動すること=脳が動くこと”という実感が湧いてくる。大学院生や研究職にも推奨できる深度を持つ。

15. つむじまがりの神経科学講義

 

 

 “人間らしさ”を軽やかに科学する、ユーモアあふれる脳科学エッセイ。癖、失敗、衝動、自由意志など、行動神経科学の難題をやわらかく語りながら、ドーパミン・扁桃体・前頭前野といった回路をリアルに感じさせてくれる。  特に印象的なのは、「脳は失敗を学ぶ器官だ」という主張。ネガティブな経験すら神経の調整材料になると知れば、日々の行動の見え方が変わる。  学術的な深さと人間的な温かさを両立した稀有な一冊。専門書の合間に読むことで、行動神経科学が“生きる知恵”へと変わる。

16. マンガでわかる神経伝達物質の働き

 

 

 行動神経科学を最も身近に感じられる一冊。ドーパミン(快楽と動機づけ)、セロトニン(安心と抑制)、ノルアドレナリン(覚醒と緊張)など、行動を司る脳内化学物質をマンガで楽しく解説。  感情が変わる瞬間、集中力が高まる瞬間、やる気が出ない瞬間――それらが神経伝達物質の量と速度で説明されていく。読者の“体感”に直結する描き方が秀逸で、科学への興味が自然に湧く。  医療や教育の現場で、脳の仕組みを説明する導入書としても抜群に使いやすい。

17. 脳はこうして学ぶ:学習の神経科学と教育の未来

 

 

 行動神経科学の知見を教育・トレーニング・学習理論に応用した革新的な一冊。  学習とは、脳が環境との相互作用を通じて神経回路を再構築するプロセスであり、注意・報酬・感情・睡眠など、あらゆる要素が学習効率を左右することを科学的に示す。  「脳がどうすれば記憶を定着させるか」「ストレスが学習意欲にどう影響するか」など、教育現場で即使える知見が満載。  神経科学と教育心理学を橋渡しする内容で、教師・トレーナー・学生支援に携わる人に必携。読後、学ぶことそのものが“脳の行動”であると実感できる。

18. 神経学的音楽療法ハンドブック

 

 

 音楽が脳と行動をどう変えるのかを実証的に示した革新的な専門書。拍・リズム・メロディーが運動・言語・情動の回路をどのように刺激するか、臨床研究と神経画像をもとに解説する。  リズムが歩行を整え、旋律が発話を促し、音楽が情動を安定させる――そのプロセスを神経科学で裏付けており、読後には「音楽が人を動かす」ことが文字通り理解できる。  リハビリ・教育・福祉など、人を“動かす”仕事に携わる人すべてに響く。行動神経科学の応用の未来を感じさせる一冊。

19. オールコック・ルーベンスタイン 動物行動学 原書11版

 

 

 人間の行動のルーツを知りたいなら、この古典的名著が欠かせない。ティンバーゲンの「行動の4つの問い(機能・発達・進化・機構)」を軸に、動物の社会性・繁殖・学習を神経・遺伝・環境から総合的に解き明かす。  「人間も動物である」という立脚点を忘れず、神経科学と進化心理学の接点を探る構成が見事。特に社会的順位や親和行動の章は、ヒトの社会性と驚くほど重なる。  行動神経科学の「生物学的根拠」を再確認したい読者におすすめ。読むほどに“脳の進化”が手に取るようにわかる。

20. カールソン神経科学テキスト 第4版(日本語版)

 

 日本語で最新の神経科学を学びたい人に最適なアップデート版。原書版に比べて訳語が統一され、心理学・医学・教育・看護などの実務に使いやすい。  とくに学習・記憶・動機づけの章が充実しており、実験心理学・臨床心理学・行動経済学の知見ともつながる。  単なる教科書にとどまらず、「人間の行動を脳から説明する」という壮大な挑戦の書。ページをめくるたびに、脳の中に“もう一人の自分”が生きていることを感じる。

関連グッズ・サービス

1. 脳モデル(透明3D立体パズル)

 脳の構造を視覚的に理解できる透明モデル。大脳・小脳・脳幹を分けて学べるため、神経伝達経路や行動制御領域の位置関係が一目でわかる。授業教材としても人気。

 

 

2. EEG(脳波)トレーニングデバイス

 集中・リラックスなどの脳波状態をリアルタイムで可視化するデバイス。行動神経科学の“生理指標”を体感的に学べる。研究や瞑想トレーニングにも応用できる。

 

 

3. アイカメラ/視線分析ツール

 注意や意思決定のメカニズムを測定できる実験ツール。神経経済学・ニューロマーケティングなど行動神経科学の応用研究に欠かせない。大学・企業研究でも使用実績が多い。

4. 科学系YouTubeチャンネル「NeuroScience Explained」

 『カールソン神経科学テキスト』や『カンデル神経科学』をアニメ形式でわかりやすく紹介。英語字幕付きで、脳科学用語のリスニング練習にもなる。

5. Kindle UnlimitedAudible

 行動神経科学・生理心理学関連の専門書を多数カバー。オーディオ学習やスキマ時間の読書にも最適で、神経科学を継続的に学ぶ習慣を支えてくれる。

関連記事・内部リンクで学びを広げる

生理心理学おすすめ本

脳・神経・ホルモンの働きを生理学的に学ぶ分野。行動神経科学の基礎を支える学問領域。

 

www.bookbug.jp

 

動物行動学おすすめ本

進化や社会構造の観点から行動を理解する生物学的分野。行動神経科学との親和性が高い。

 

www.bookbug.jp

 

🔗 関連:認知神経科学とのつながりを深める

 行動神経科学が「脳がどのように行動を生み出すか」を探るのに対し、認知神経科学は「脳がどのように情報を処理し、思考や記憶を生み出すか」を研究する分野だ。 両者はコインの表裏のような関係にあり、行動神経科学を理解するうえで認知神経科学の基礎を押さえることは非常に重要。

  • 👉 認知神経科学の記事では、心理学と脳科学の接点をわかりやすく解説
  • 👉 行動神経科学との違い・共通点を体系的に整理
  • 👉 初心者でも読みやすいおすすめ本を25選で紹介

 詳細はこちら: ▶ 認知神経科学おすすめ本|脳と心のつながりをわかりやすく学ぶ25選

まとめ:脳が「行動する」仕組みを理解する学問

 行動神経科学は、心の働きを「生物としての人間」の視点で説明する学問だ。感情・意欲・社会行動――そのすべてが神経活動の結果として生まれている。認知神経科学が“思考する脳”を描くなら、行動神経科学は“生きる脳”を描く。心理学と神経科学の融合点にあるこの学問を、本でじっくり味わってほしい。

Q&A:行動神経科学の基礎と学び方

Q1. 行動神経科学と認知神経科学の違いは?

 認知神経科学は「知覚・記憶・注意・思考などの内部プロセス」を扱うのに対し、行動神経科学は「感情・動機・習慣・運動などの外的行動」を中心に研究する。脳の“出力側”を重視する点が異なる。

Q2. 行動神経科学は心理学か、生理学か?

 両者の橋渡し的分野。神経細胞やホルモンなどの生理学的要素をベースに、行動という心理的現象を説明する。生理心理学と認知神経科学の中間領域ともいえる。

Q3. 初心者はどの本から学べばよい?

 最初は『脳科学の教科書 神経編』や『ビジュアル図解 脳のしくみがわかる本』で基礎を押さえ、その後『カールソン神経科学テキスト』に進むと理解が深まる。最終的には『カンデル神経科学』で理論を体系化するのがおすすめ。

Q4. 行動神経科学の知識はどんな職業に役立つ?

 臨床心理士、公認心理師、教育者、作業療法士、スポーツトレーナー、マーケター、UXリサーチャーなど、「人の行動を理解・変化させる」すべての職業で応用可能。

Q5. 関連する分野は?

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