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【比較教育学おすすめ本】各国の教育制度を学ぶ独学・学び直しの入門書と定番20選

比較教育学を学び直したいと思っても、海外の教育事情を紹介する本と、そもそも何をどう比べるのかを考える本が混ざりやすく、最初の一冊でつまずきやすい。この記事では、入門・理論・国際比較・教育改革比較の流れが自然につながるおすすめ本を20冊、独学しやすい順を意識して紹介する。

 

まず全体像をつかみたいなら1〜3から入ると迷いにくい。比較の方法や学問としての骨格を押さえたいなら5〜10が効く。日本の教育を世界の中で見直したいなら11〜15、国際教育開発や政策比較まで視野を広げたいなら16以降へ進むと、比較教育学の広がりがすっとつながる。

比較教育学は、教育を「当たり前」から引きはがす学問だ

比較教育学のおもしろさは、外国の学校制度を知ること自体よりも、自分が育ってきた教育の常識を揺らしてくれるところにある。なぜ同じ「学力」を重視しているのに、国によって授業の風景が違うのか。なぜ改革の言葉は似ていても、教室で起きることは同じにならないのか。そうしたずれを、制度、文化、歴史、政策、家庭、地域まで含めて考えるのがこの分野だ。

だから比較教育学は、単なる海外事例集ではない。比較の軸をつくる力、制度を文化の中で読む感覚、改革の言葉に飛びつかず背景を見る目を育てる学問でもある。教育関係者はもちろん、教育政策、国際協力、学校改革、多文化共生に関心がある人にも効く。目の前の学校をそのまま前提にしなくなるだけで、教育の見え方はかなり変わる。

迷ったらこの順で読むと入りやすい

最初の五冊を選ぶなら、1→2→5→13→16の流れがきれいだ。まず1で分野全体の輪郭をつかみ、2で論点を整理する。そこで5に進むと、「何をどう比べるのか」という比較教育学の核心が見えてくる。そのあと13で各国の教育改革の現在地を眺め、16で国際教育開発へ接続すると、比較教育学が研究室の中だけの学問ではなく、社会や政策に開かれた知だと実感しやすい。

まずは全体像をつかむ6冊

1. 比較教育学原論(協同出版/単行本)

比較教育学という分野に最初の一歩を置くなら、やはりこの本は外しにくい。題名が示すとおり、分野名そのものを正面から引き受けた本で、比較教育学とは何か、なぜ比較するのか、どこまでを射程に入れるのかという骨組みがぶれずに立ち上がる。独学の出発点で欲しいのは、派手な事例より先に、分野の地図だ。その役割をきちんと果たしてくれる。

読み味は、流行語で教育を語る本とは少し違う。足元を固める感じがある。制度、歴史、文化、政策がどう絡み合うのかを落ち着いて追っていくので、読み進めるうちに「教育を比べる」とは単純な優劣づけではないのだとわかってくる。外国の制度を見てすぐに日本へ当てはめたくなる気持ちを、一度静かに引き戻してくれるのがいい。

比較教育学の代表的な入門としてすすめやすいのは、知識が増えるだけでなく、見方の癖が矯正されるからだ。教育ニュースを読んでも、改革のスローガンだけで判断しなくなる。いま教育学を学び直したい人にも、学校現場にいて他国比較をきちんと自分の言葉で考えたい人にも向く。最初の一冊に迷っているなら、ここから入るのがいちばん堅い。

2. 基礎から学ぶ比較教育学(学文社・早稲田教育叢書/単行本)

比較教育学に興味はあるが、いきなり専門用語が多い本に入るのは重い。そう感じるとき、この本はちょうどよい傾斜をつくってくれる。題名どおり、基礎から積み上げるつくりが意識されていて、分野の入口に立つ人を置き去りにしにくい。学び直しの本としての使いやすさがある。

よさは、比較教育学を大げさに神秘化しないところだ。比較とは何か、各国の教育を見る意味はどこにあるか、その問いを過不足なく整理しながら、徐々に分野の輪郭を見せてくれる。夜に机へ向かって少しずつ読むタイプの本で、読みながらノートに「自分なら何を比較したいか」を書いていくと、理解が一段深まる。

頭が疲れている時期にも入りやすい本だ。いまの自分の教育経験を相対化したいけれど、まだ理論の森へ分け入る準備はできていない。そんな状態の人に刺さる。比較教育学のおすすめ本を探している人が最初に求めるのは、難しすぎず浅すぎない一冊だが、その条件にかなり素直に応えてくれる。

3. 比較教育学の基礎(佛教大学教育学叢書/単行本)

この本のよさは、比較教育学の歴史、比較の方法、各国教育の実態と改革という複数の柱を、ひとつの流れとして読ませてくれるところにある。古典寄りのたたずまいはあるが、そのぶん基礎固めとしての安定感が強い。新しさだけを売りにする本ではないからこそ、あとから読み返したときにも効いてくる。

教育を比較するとき、つい制度の表面だけを追いがちになる。だが本当に大事なのは、その制度がどんな社会観、子ども観、国家観の上に立っているかだ。この本は、その当たり前のようで見落としやすい点を、硬すぎないが甘くもない調子で教えてくれる。読んでいると、比較教育学が単なる情報収集ではなく、背景を読む訓練なのだと実感する。

派手な改革論に少し疲れている人にも合う。流行のキーワードより、土台を落ち着いて学びたいときに効く一冊だ。教育の世界では新刊や新制度の話題が前に出やすいが、比較の基礎体力はこうした本で養ったほうが長持ちする。地味だが、あとでじわじわ利いてくるタイプの本である。

4. 比較教育学―越境のレッスン(東信堂/単行本)

比較教育学を、国ごとの制度比較だけでなく、越境という現代的な感覚から捉え直したいならこの本が面白い。国境をまたぐ移動、知の循環、教育モデルの移植と翻訳。そうした動きの中で教育を見る視線が前面に出ていて、比較教育学の風通しを一気によくしてくれる。

読みどころは、比較の対象を固定的に置かないところだ。国と国を並べるだけでなく、学びの文化がどう移動し、どう変形し、どこで抵抗を受けるのかが見えてくる。アジア比較や高等教育にも視野が伸びるので、従来の教科書的な比較教育学に少し物足りなさを感じた人には特にいい。机の上の比較が、急に人の動きや政策の流れとつながり始める。

新しいテーマへ踏み出したい時に読むと効く。教育を世界史や移民、グローバル化の文脈へ開いていきたいなら、かなりよい中継点になる。比較教育学の代表作というより、分野の呼吸を変えてくれる一冊という印象が強い。視界が横へ広がる感覚がある。

5. 比較教育研究 何をどう比較するか(上智大学出版/単行本)

比較教育学で多くの人がつまずくのは、知識不足よりも方法の迷子だ。何を比べるのか。制度か、授業か、家庭か、政策か。国単位で見るのか、地域や階層で切るのか。この本は、そうした方法の迷いに正面から向き合う。題名がそのまま、本書の価値を語っている。

読み進めると、比較とは対象を並べることではなく、問いの立て方を鍛えることだとわかる。似ているもの同士を並べるだけでは足りないし、違いを発見して満足しても浅い。何を比較可能な単位として設定するのか、その前提から考える必要がある。この感覚が身につくと、他の比較教育学の本の読み方まで変わってくる。

卒論やレポートのテーマを考え始めた学生にも、現場で海外事例を参照する立場の人にも向く。比較することに少し怖さを感じるとき、つまり安易な一般化をしたくないと感じているときに読むと強い。方法論の本だが、乾きすぎていないのもよいところで、読後には比較することへの姿勢そのものが整う。

6. 比較教育学の理論と方法(東信堂/単行本)

入門を一通り読んだあと、もう少し腰を据えて理論と方法を押さえたくなる。その段階で手に取りたいのがこの本だ。比較教育学を「わかった気がする」状態から、「自分で考え始める」状態へ進める橋のような本で、理論の必要性が腑に落ちる。

理論はしばしば堅苦しく見えるが、比較教育学では理論がないと、事例の紹介に終わりやすい。この本はそのことを静かに教えてくれる。なぜある改革がある国では定着し、別の国では反発を受けるのか。なぜ同じ学力重視でも教室の空気が異なるのか。そうした問いに対し、背景を読む足場として理論が立ち上がってくる。

少し背筋を伸ばして読みたい本ではある。ただ、その緊張感が心地よい。入門書の次に何を読めばよいか迷ったとき、この一冊を挟むと、その後に読む政策比較や国際教育開発の本が急に立体的になる。比較教育学を学問としてきちんと尊重したい人に向く。

理論・学問像を深める4冊

7. 比較教育学 伝統・挑戦・新しいパラダイムを求めて(東信堂/単行本)

比較教育学の歴史と現在を、単なる通史ではなく、学問の自己点検として読むことができる本だ。伝統を振り返りながら、その枠組みだけでは捉えきれない新しい課題にどう向き合うかが主題になっている。分野の中でどんな挑戦が続いてきたのかが見えてくる。

面白いのは、過去をなぞる本に終わっていないところだ。比較教育学は何を引き継ぎ、何を更新しなければならないのか。その問いが、教育研究の変化だけでなく、世界の変化と結びついている。グローバル化、多文化化、政策移転、国際評価の広がり。そうした現実に学問がどう応答してきたかを考える時間になる。

比較教育学を専門にしない人でも、分野が自分自身をどう問い直してきたのかを知ると、学問への信頼が深まる。少し本格的に学びたくなった時期、あるいは入門書だけでは物足りなくなった時期に読むといい。分野の背骨に触れる感覚がある。

8. 比較教育学の地平を拓く 多様な学問観と知の共働(東信堂/単行本)

比較教育学の現在地を知りたいなら、この本はかなり頼もしい。学問観そのものが多様化し、研究対象も方法も広がっている現在、比較教育学がどこへ向かっているのかを俯瞰できる。分野の最新の空気を吸いたい人に向く一冊だ。

知の共働という言葉が示すように、教育を理解するには一つの学問だけでは足りない。制度論、文化論、社会学、政策研究、国際関係論。そうした異なる視点が交わるところに、比較教育学の豊かさがある。この本を読むと、比較教育学が境界を閉じる学問ではなく、むしろ境界を開いていく学問だとわかる。

研究の最前線に少し触れてみたい人にもいいし、現場から一歩引いて教育を考え直したい人にもいい。分野の作品一覧を眺めるような気持ちで読むより、いまこの学問がどんな呼吸をしているのかを感じるつもりで読むと面白い。視界が広がる本だ。

9. リーディングス 比較する比較教育学(東信堂/単行本)

入門書のあとに必要なのは、ひとりの著者の整理だけではなく、実際の議論の厚みへ触れることだ。この本はその役割を担う。論文集型の強みがあり、比較教育学でどんなテーマがどう論じられているかを、複数の角度から体感できる。

読みやすさだけを求める本ではない。だが、そのぶん、一つの主張の裏にどれだけ多くの前提や文脈があるかが見えてくる。比較教育学を本当に面白く感じる瞬間は、単純な答えが崩れ、複数の見方が併存することを楽しめるようになった時だ。この本にはその入口がある。

研究っぽい本を読む体力を少しつけたい時期に向く。比較教育学をただのおすすめ本リストとして消費したくない人、議論の手ざわりそのものを味わいたい人に合う。少しずつ読んでもいいし、関心のある章から入ってもいい。読み方に余白があるのも魅力だ。

10. 比較教育社会学へのイマージュ(学文社/単行本)

比較教育学と教育社会学のあいだを往復したいなら、この本はとてもいい橋になる。諸外国の教育政策や事例を、制度だけでなく格差、階層、社会構造の文脈からも見ていくため、教育問題の普遍性と特殊性が同時に立ち上がる。

比較教育学だけを読んでいると、時に国ごとの差異に目が行きすぎる。だが教育社会学の視点が入ると、国が違っても繰り返される問題の輪郭が見えてくる。競争、選抜、家庭背景、機会の不平等。教室の風景が違っても、その奥に似た構造が潜んでいることがある。そうした発見がこの本の読みどころだ。

教育格差や政策の効き方に関心がある人にはとくに向く。制度比較だけでは何か足りない、と感じている時に刺さる本だ。社会の骨組みまで視野を広げた瞬間、比較教育学がぐっと現実に近づいてくる。その感覚をくれる。

日本と世界を見比べる5冊

11. 〈日本型教育〉再考 学びの文化の国際展開は可能か(京都大学学術出版会/単行本)

日本の教育を外から眺めるとき、私たちはしばしば「日本のよさ」か「日本の遅れ」かの二択に陥りやすい。この本は、その浅い二択から距離を取らせてくれる。日本型教育とは何か、それはどこまで移転可能なのか、文化としての学びをどう捉えるべきかを丁寧に考えさせる一冊だ。

魅力は、日本を持ち上げる本でも、日本を過剰に相対化して終わる本でもないところにある。学びの文化が持つ固有性と、国際展開の可能性を、冷静に往復しながら読むことができる。比較教育学の中でも、日本を対象に据えた議論としてかなり重要で、教育改革や日本式教育の海外展開に関心がある人には特に面白い。

日本の学校文化を説明しようとして言葉に詰まった経験があるなら、この本は助けになる。いま現場にいて、自分たちの実践を世界の中でどう位置づければよいか考えたい時に効く。読み終えると、日本の教育を語る言葉が少し精密になる。

12. 新グローバル時代に挑む日本の教育 多文化社会を考える比較教育学の視座(東京大学出版会/単行本)

国際化が進んでいるはずなのに、学校の現実はそれほど滑らかに変わらない。そのもどかしさを、日本の多文化化と世界比較の中で考えることができる本だ。比較教育学が現代日本の問題とどう結びつくかを知るには、とてもよい入口になる。

本書の良さは、グローバルという言葉を抽象的な飾りにしないことだ。多文化共生、移民、言語、包摂、教育制度。そうしたテーマが、日本の学校現場の手触りに近いところまで下りてくる。教室の中の静かな違和感と、世界規模の変化が一本の線で結ばれる感じがある。

比較教育学を、いまの日本社会に引き寄せて読みたい人に向く。制度論だけではなく、人が実際に暮らす社会の変化まで見たい時に刺さる。教育が国境の内側だけで閉じなくなっていることを、理屈ではなく実感として教えてくれる一冊だ。

13. 世界の教育はどこへ向かうか 能力・探究・ウェルビーイング(中公新書/新書)

専門書が続いたあとに、この新書を挟むと呼吸がしやすい。能力、探究、ウェルビーイングといった近年のキーワードを軸に、各国の教育改革を見渡せるため、世界の教育がいま何を目指しているのかをつかみやすい。比較教育学の現在を、重すぎない形で知りたい人にはかなりよい。

読みどころは、流行語をただ並べないところだ。なぜその言葉が出てきたのか、各国でどう受け取られているのか、その先にどんな難しさがあるのかが見えてくる。探究やウェルビーイングは、聞こえはやわらかいが、実際には学校の時間割や評価の仕組みまで揺らす言葉でもある。そうした変化の厚みを感じ取れる。

忙しい時期にも読める一冊だ。まず最近の国際動向をざっとつかみたい、でも単なるニュース解説では足りない。そんな気分の時にちょうどいい。比較教育学の定番を読み進める途中で、この本を差し込むと、古典的な理論がいまの政策言語とどうつながるかが見えやすくなる。

14. 諸外国の教育動向2024年度版(明石書店/単行本)

資料として強い本を一冊持っておきたいなら、これはかなり便利だ。米英仏独中韓などの教育政策、行財政、生涯学習、初等中等教育、高等教育、教師といった項目が整理されていて、比較の足場をつくるのに役立つ。研究書というより、堅実な基礎資料として使える。

比較教育学では、イメージだけで外国を語らないことがとても大事だ。この本は、その当たり前を支えてくれる。各国の教育動向を一定の解像度で見比べられるので、ニュースや政策議論を読むときの下敷きになる。机の上に置いて、必要なときに開くタイプの本だが、そういう本こそ長く使える。

読み物として一気に読むより、他の本と往復しながら使うのが向いている。レポートを書く人、授業準備をする人、比較の前提知識を固めたい人におすすめだ。乾いた資料集と思うかもしれないが、こうした本があると比較教育学の議論が急に雑にならなくなる。

15. 読んで旅する、日本と世界の色とりどりの教育(教育開発研究所/単行本)

比較教育学の本棚は、ともすると理論や制度の本ばかりになり、息が詰まることがある。この本は、その緊張を少しゆるめてくれる。日本と世界の教育を生活感のある目線で眺められるので、専門書だけでは拾いきれない温度がある。入口としても、途中の休憩としても使いやすい。

教育を比べるとき、本当は教室の空気や地域の匂いのようなものも大切だ。数字や制度だけでは見えない、その土地の学びの肌ざわりがある。この本にはそうした柔らかさがあり、旅をするように教育を見て回ることができる。軽い本というより、視線をほぐしてくれる本だと感じる。

理論書が続いて少し疲れた時に読むといい。比較教育学に興味はあるけれど、最初から堅い本ばかりでは続かないという人にも向く。学び直しは、難しい本を耐えて読むことではなく、関心を途切れさせずに長く続けることでもある。その意味で、この本はよい支えになる。

国際教育開発・テーマ別に深める5冊

16. 国際教育開発論 理論と実践(有斐閣/単行本)

比較教育学から国際教育開発へ進みたいなら、まず押さえたい一冊だ。理論と実践の両方を視野に入れた構成で、教育を国際協力や開発の文脈へ開いていく時の土台になる。抽象論だけでもなく、現場礼賛に流れるわけでもない。そのバランスが強い。

教育開発の議論では、「よい教育」を外から持ち込むことの難しさが常につきまとう。この本を読むと、その難しさが単なる慎重論ではなく、歴史、政治、文化、資源配分の問題として見えてくる。比較教育学で鍛えた視点が、国際教育開発でどう生きるのかがわかる本でもある。

国際協力に関心がある人はもちろん、国内の教育改革を考える人にも役立つ。なぜなら、教育を変えるという営みの複雑さは、国境を越えても共通しているからだ。理想を語るだけでは足りず、現場を尊重するだけでも足りない。そのあいだを歩く感覚が身につく。

17. 国際教育開発入門 フィールドの拡がりと深化(福村出版/単行本)

国際教育開発の世界へ初めて入る人にとって、この本はかなり心強い。入門書としての導線がはっきりしていて、分野の広がりと現場との距離感の両方をつかみやすい。理論をまったく知らない人でも、何が論点で、どこに難しさがあるのかが見えやすい。

読みどころは、フィールドの広がりをただ拡散として描かないところだ。教育協力、政策、学校、地域、子ども、教師。対象が広がるほど、何を見落としてはいけないかも増える。そのことを丁寧に教えてくれるので、国際教育開発を善意だけで理解してしまう危うさから距離を取れる。

将来この分野を学びたい学生にも、教育問題を国際的に考えたい社会人にも向く。新しい領域へ入るときは、世界が広く見えすぎてかえって焦ることがあるが、この本はその広さにきちんと手すりをつけてくれる。落ち着いて前へ進める入門書だ。

18. 国際教育開発への挑戦 これからの教育・社会・理論(東信堂/単行本)

SDGs以後の教育をどう考えるか。そうした現在的な問いに、比較教育学と国際教育開発の両側から迫る本である。教育を国際課題へ接続したい人にとって、かなり刺激的だ。未来志向の言葉が並ぶ本に見えて、実際には足場の確認が丁寧で、浮つきがない。

本書を読むと、「これからの教育」という言葉の重さが変わる。教育は希望の言葉で語られやすいが、その希望を現実の社会の中でどう支えるかは別問題だ。理論、制度、実践の交差点でそのことを考えさせるので、読後には教育を語る言葉が少し慎重になる。同時に、慎重さが諦めではないこともわかる。

いま国際課題に関心が強い人、教育と社会変動を一本で考えたい人に向く。理想だけでは空回りし、現実だけでは視野が狭くなる。そのぎりぎりのところを歩くための本だ。読んだあと、自分が教育に何を期待しているのかを言い直したくなる。

19. 塾・受験指導の国際比較(ユネスコ国際教育政策叢書/単行本)

学校の外側に広がる教育を考えたいなら、この本はとても面白い。塾や受験指導のような「影の教育」を国際比較することで、格差、私的教育投資、受験競争といった現代教育の鋭い問題が浮かび上がる。学校制度の本だけでは見えない教育の現実がある。

比較教育学では、学校制度を中心に議論が進みがちだが、実際には家庭の資源や学校外教育が進路を大きく左右している国も少なくない。この本は、その見えにくい部分を国際比較の形で可視化してくれる。教育の公平を語るなら、学校の内側だけ見ていては足りない。その当たり前を強く突きつけてくる。

受験競争や教育格差に関心がある人にはかなり刺さる。現場感のあるテーマなので、理論書だけでは届きにくい切実さがあるのもいい。夜遅くまで塾へ通う子どもたちの姿や、家計が教育へ傾く感覚まで思い浮かんできて、比較教育学が急に生活の問題として立ち上がる。

20. 才能教育の国際比較(東信堂/単行本)

才能をどう捉え、どう育てるかは、教育思想と政策が交わる場所だ。この本は、その問いを国際比較のかたちで掘り下げる。個人主義と集団主義、選抜と育成、平等と卓越。そうした緊張関係を、多国間比較の中で考えられるのが大きな魅力である。

才能教育というと、一部のエリートのための話に見えるかもしれない。だが実際には、社会が何を能力と見なし、誰にどんな機会を与えるのかという、かなり根本的な問題につながっている。この本を読むと、才能を伸ばす教育は、理念だけでなく制度設計の問題でもあることがわかる。

教育思想と政策の両方を見たい人に向く。とくに、平等を重んじる教育と能力伸長を重んじる教育のあいだで揺れている時に読むと面白い。比較教育学の終盤に置く一冊としてもいい。教育が目指すものは一つではない、その複雑さを静かに引き受ける本だ。

関連グッズ・サービス

本を読んだ後の学びを生活に根づかせるには、生活に取り入れやすいツールやサービスを組み合わせると効果が高まる。

通勤や移動の合間に教育学まわりの本を少しずつ消化したいなら、電子書籍で断続的に読む環境があると続けやすい。比較教育学は資料を往復しながら読む場面が多いので、積読の心理的な重さを減らせるのは大きい。

Kindle Unlimited

耳から入るほうが続く人には、音声で読む習慣も相性がいい。教育そのものの専門書でなくても、周辺の社会論や多文化共生、ウェルビーイングの本を聴いておくと、比較教育学の理解がふくらみやすい。

Audible

もう一つ相性がいいのは、世界地図や各国統計を手元に置くことだ。国名が並ぶだけで終わらず、地理や人口、経済規模、言語状況をざっと見ながら読むと、制度の違いが急に生身の社会の話として入ってくる。比較教育学は、少し横に資料を置くだけで手触りが変わる。

まとめ

比較教育学の本棚は、一見すると外国の教育制度を並べた棚に見える。だが実際には、教育をどう比べるかという方法の棚であり、自分の常識をずらすための棚でもある。前半の入門書で地図をつかみ、中盤の理論書で比較の骨格を整え、後半の日本比較と国際教育開発で現代の課題につなげていくと、この分野の厚みが自然に見えてくる。

  • まず全体像を押さえたいなら、1・2・3から入ると土台がぶれにくい。
  • 比較の方法をきちんと身につけたいなら、5・6・7・8が効く。
  • 日本の教育を世界の中で見直したいなら、11・12・13が読みやすい入口になる。
  • 国際教育開発や政策比較へ進みたいなら、16以降が強い導線になる。

教育を比べることは、外国を知ること以上に、自分の見方を鍛えることでもある。気になる一冊からでいいので、まずは比較の目を手に入れてみてほしい。

FAQ

比較教育学は、教育学の入門がなくても読めるか

読める。ただし、いきなり理論や政策比較の本へ入ると、制度名や研究視点の違いに圧倒されやすい。最初は1〜3のような全体像をつかめる本から入り、次に5や6で比較の方法を押さえると進みやすい。教育学全般の知識が十分でなくても、順番を間違えなければ独学は十分可能だ。

海外の教育制度を知りたいだけなら、比較教育学の本は必要か

制度紹介だけなら資料集や解説記事でも足りることはある。ただ、比較教育学の本を読む価値は、制度の違いを事実として知ることより、その違いがどんな歴史や文化、政策の文脈で生まれているかを考えられる点にある。表面の違いだけでなく、なぜそうなっているのかまで知りたいなら、比較教育学の本はかなり役に立つ。

学校の先生や教育行政に関わる人は、どの本から読むとよいか

現場との往復を意識するなら、1で基礎を押さえたあと、5で比較の方法を学び、13で最近の世界的な教育改革をつかみ、11や12で日本の教育を相対化して見る流れがおすすめだ。海外の成功例をそのまま持ち込むのではなく、自分の現場に何が移せて何が移せないかを考える力がつきやすい。

国際教育開発に関心があるなら、比較教育学から入るべきか

かなり相性がいい。いきなり国際教育協力の実践論へ入るより、比較教育学で制度・文化・政策の違いを見る目を先につくっておくと、現場を単純化しにくくなる。16や17はその接続がしやすい本で、比較教育学で得た視点が、なぜ国際教育開発に必要なのかもわかりやすい。

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