平成は、事件や政権の名前だけ覚えていても、なぜ「空気」がああなったのかが掴みにくい時代だ。年表で骨格を立て、講義で論点を整理し、生活データで手触りを戻す。そこから都市・テレビ・笑いの視線で同時代の目線を回収すると、平成史が「記憶」から「理解」に切り替わる。
- 平成史を学び直すときに
- おすすめ本14冊(入口→専門へ)
- 1.10代に語る平成史(岩波書店/新書)
- 2.平成時代(岩波書店/電子書籍)
- 3.平成史講義(筑摩書房/電子書籍)
- 4.生活者の平成30年史 データでよむ価値観の変化(日本経済新聞出版/単行本)
- 5.どう変わったか?平成の鉄道(交通新聞社/単行本)
- 6.旅する天皇 平成30年間の旅の記録と秘話(小学館/電子書籍)
- 7.平成の東京 12の貌(文藝春秋/新書)
- 8.テレビが映し出した平成という時代(ディスカヴァー・トゥエンティワン/単行本)
- 9.教養としての平成お笑い史(ディスカヴァー・トゥエンティワン/単行本)
- 10.平成精神史(幻冬舎/新書)
- 11.平成政治史(新書)
- 12.平成史(小学館/文庫)
- 13.平成史【完全版】(河出書房新社/単行本)
- 14.平成史―昨日の世界のすべて(文藝春秋/単行本)
- 関連グッズ・サービス
- まとめ
- FAQ
- 関連リンク
平成史を学び直すときに
平成は長い。しかも「大事件」だけでなく、雇用や消費、メディア、都市のかたちがじわじわ変わり、気づいたときには別の国に住んでいるような感覚になる。だから本選びも、政治史から入って疲れるか、文化から入って全体像が曖昧になるかに割れやすい。
このリストは、入口で年表と空気を同時に掴み、次に論点の整理で思考の足場を作り、データで「生活の平成」を取り戻す。その上で、都市・テレビ・笑いという同時代の視線を通し、最後に政治史と総括で重い骨格を入れる。読むほどに、平成が「自分の時間」として接続されていく並びだ。
おすすめ本14冊(入口→専門へ)
1.10代に語る平成史(岩波書店/新書)
要点:平成の主要イベントを、政治・経済・社会の順で「何が起きたか」を手早く整理する。
読みどころ:説明が短く、論点の切り分けが早いので、記憶の棚卸しに向く。
向く読者:まず年表感覚を取り戻したい人、久々に社会の勉強を再開する人。
平成を学び直す最初の一冊で、いちばん大事なのは「息切れしない」ことだ。事件名や首相名が並ぶだけで脳が拒否するなら、なおさら薄い新書が効く。
この本は、出来事の列を過剰に説明しない代わりに、何を押さえれば次が読めるかをはっきり残す。ページをめくる手が止まらないテンポが、学び直しには強い。
読んでいるうちに、ニュースの記憶が「時期」と一緒に戻ってくる。あの頃の通学路、コンビニの光、テレビの速報テロップの色まで、芋づる式に浮かぶ人もいる。
ただ、年表の再確認で終わらせるのはもったいない。章ごとに「当時の前提」を一行でメモすると、次に読む本の吸収が変わる。
例えば「雇用がこう変わった」「政治がこう動いた」という筋道を、ここでいったん短く言い切れるようにする。うまく言い切れない部分が、次の本で伸びる場所になる。
学び直しは、理解の穴を見つける作業でもある。穴が見えた時点で勝ちだ。ここはその勝ちを早く作ってくれる入口になる。
読み終えたら、1時間だけでいいので、自分の平成の記憶(印象に残る災害、経済、文化)を三つ書き出すといい。次の読書が「自分ごと」になる。
2.平成時代(岩波書店/電子書籍)
要点:平成を「出来事の列」ではなく、社会の気分・制度の疲れ・メディア環境まで含む“時代のまとまり”として描く。
読みどころ:説明が抽象に逃げず、日常の風景から時代像へ接続する。
向く読者:平成を体験したのに、うまく言葉にできない人。
平成の厄介さは、出来事を知っているのに、まとめて語ろうとすると言葉が滑るところにある。体験しているのに輪郭がつかめない。そこに刺さるのが「時代のまとまり」を作る視点だ。
本書は、制度や経済の説明だけで押し切らない。街角の空気、メディアの変質、生活の感覚が、ゆっくり一つの像に集まっていく。
読んでいると、平成が「明るい/暗い」みたいな雑な感想から離れて、もっと細いグラデーションに分解される。焦り、諦め、軽さ、苛立ち、そして薄い希望。そういう色の混ざり方で時代を捉え直せる。
とくに、平成の「制度疲労」という言葉が、単なる批判ではなく、生活のだるさとして腑に落ちる瞬間がある。朝の満員電車の湿度みたいに、説明より先に体に残っていたものが言語化される。
この本は、年表の補助というより、年表に血を通す役目を担う。出来事の列に、温度と匂いを戻してくれる。
読み方としては、気になった箇所に付箋を貼るより、「自分の言葉に直す」ほうが向く。自分の平成と照らして一行で言い換えると、他の本が急に読みやすくなる。
平成の「空気」を掴みたい人は、ここを早めに挟むといい。学び直しの速度が上がる。
3.平成史講義(筑摩書房/電子書籍)
要点:複数のテーマを“講義”のテンポでつないで、平成を一度「考え直す」ための土台を作る。
読みどころ:論点の見取り図が残るので、次に何を読めばいいかが見える。
向く読者:入門の次に、少しだけ思考の密度を上げたい人。
「講義本」は、学び直しの真ん中に置くと強い。理由は単純で、問いの立て方を借りられるからだ。平成をどう切るか、その刃の角度が手に入る。
本書は、出来事の羅列ではなく、論点がどう繋がるかを見せる。読むほどに、頭の中に白地図ができ、そこへニュースの断片が落ち着いて配置されていく。
講義のテンポは、思考の速度を整える。速すぎず、遅すぎず、読み手が考える余白が残る。ここが、読みっぱなしを防いでくれる。
平成はテーマが分裂しやすい。政治、経済、災害、メディア、家族。バラバラに読めばバラバラにしか残らない。本書は、その散らばりを「同じ時代の現象」として束ねる助けになる。
おすすめの読み方は、章ごとに「この章の問いは何か」を書き出すことだ。答えより問いを拾う。問いが残ると、次に読む専門書が怖くなくなる。
もし時間がないなら、最初から最後まで丁寧に読まなくてもいい。気になる章だけでも、論点の立て方が手に入る。
学び直しの途中で迷子になったら、ここに戻るといい。地図を見直す場所として機能する。
4.生活者の平成30年史 データでよむ価値観の変化(日本経済新聞出版/単行本)
要点:消費・家族・働き方などをデータで追い、「生活の手触り」がどう変わったかを可視化する。
読みどころ:ニュースの記憶が、統計の変化として腹落ちする瞬間がある。
向く読者:政治史が苦手でも、生活から平成を捉え直したい人。
平成の学び直しでいちばん救いになるのは、「自分の感覚が間違っていなかった」と確認できる瞬間だ。生活の体感は曖昧になりやすいが、データは逃げない。
この本は、消費や家族、働き方の変化を、数字の動きとして淡々と示す。淡々としているのに、読んでいると胸に刺さる。あの頃の節約、あの頃の不安が、統計の折れ線と一致して見えるからだ。
ニュースは派手だが、生活は地味に変わる。だからこそ、平成の本質は生活の側に潜む。ここを押さえると、政治史も文化史も「生活の条件の上に起きたこと」として見えるようになる。
ページをめくりながら、ふと自分の暮らしの匂いが戻ることがある。スーパーの値札、携帯料金の感覚、部屋の広さ。そういう具体が、時代理解の芯になる。
データ本は退屈だと思っている人ほど相性がいい。退屈に見える数字が、実は感情の裏側を支えていたと気づくからだ。
読み終えたら、「自分の生活で一番変わったこと」を一つだけ言語化するといい。雇用、家計、家族、情報。どれでもいい。その一行が、平成史の核になる。
政治の本が苦手でも、ここからなら入れる。むしろ、ここから入ったほうが、平成が立体になる。
5.どう変わったか?平成の鉄道(交通新聞社/単行本)
要点:鉄道というインフラの変化から、都市・通勤・観光の“平成化”を追う。
読みどころ:路線や車両の話が、そのまま社会の変化(郊外、都心回帰、観光の拡大)につながる。
向く読者:制度より先に、身近な変化から時代を掴みたい人。
鉄道は、時代の変化が最もわかりやすく表に出る場所だ。ダイヤ、駅、車両、混雑、観光。毎日の移動が変わると、人の暮らしの形も変わる。
本書は、鉄道の話をしながら、都市の重心がどう動いたかを見せる。郊外の夢、都心回帰、インバウンド、観光列車。平成の「動き方」が見える。
車内の空気を思い出す人もいるはずだ。吊り革の高さ、広告の匂い、スマホの光が増えていく感じ。そういう細部が、平成の時間を呼び戻す。
制度や政治の説明は、どうしても抽象になりやすい。でも鉄道は具体だ。駅前が変わり、路線が延び、乗り換えが変わる。変化が手のひらに乗る。
読んでいると、鉄道が単なる乗り物ではなく、生活の編み目そのものだとわかる。通勤圏の拡大は働き方を変え、観光の拡大は地方の景色を変える。
平成の都市経験を持っている人ほど、腑に落ちる。逆に、地方の視点で読んでも、都市が何を吸い込み、何を押し出してきたかが見える。
「平成って結局なんだったのか」を、身近な線路から掴む一冊だ。重い本が続く前の、気持ちのいい回収にもなる。
6.旅する天皇 平成30年間の旅の記録と秘話(小学館/電子書籍)
要点:平成の皇室を、各地への行幸啓という“移動の記録”で追い直す。
読みどころ:災害や節目の出来事が、土地の記憶として立ち上がる。
向く読者:平成を「国家の出来事」だけでなく、地域の時間としても見たい人。
平成史を「政治と経済」だけで組み立てると、どうしても心が置いていかれる。そこで効くのが、土地の時間として平成を読む視点だ。
本書は、移動の記録から平成を追う。行幸啓の足跡は、出来事の中心ではなく、出来事の周縁に触れる。周縁に触れるからこそ、災害や節目が「地域の痛み」として立ち上がる。
ニュースで見た光景が、別の温度で戻ってくる瞬間がある。画面の向こうの出来事が、地面の上の出来事に変わる。
平成の皇室をめぐる議論は、賛否に引き裂かれやすい。だが、この本はまず記録として積む。その積み方が、考えるための余白になる。
「旅」という形で読むと、平成は点の集合ではなく、線になる。日本の各地が、一本の時代として繋がって見える。
政治の本で疲れたときに挟むといい。視点が変わり、同じ出来事が違う角度から見え始める。
そして、地域の時間に触れると、平成が「自分の国の時間」になる。学び直しの手触りが増す一冊だ。
7.平成の東京 12の貌(文藝春秋/新書)
要点:東京の変貌を複数の切り口で描き、平成の都市経験を言語化する。
読みどころ:オリンピック、再開発、周縁の変化が“東京の顔つき”として連動して見える。
向く読者:平成の実感が東京(または大都市)の風景と結びついている人。
平成の都市は、静かに顔つきが変わった。看板の光、駅の匂い、街の速度。気づけば、同じ場所なのに別の場所になっている。
この本は、その変化を「12の貌」として切り分ける。切り分けることで、ただの懐古ではなく、変化の構造として語れるようになる。
再開発やオリンピックだけが主役ではない。周縁の変化、移動の感覚、商業の更新。東京の変貌は、生活者の視線で読むと説得力が増す。
読んでいると、昔の街の「余白」を思い出す人がいる。少し暗い路地、雑居ビルの階段、寄り道の店。余白が減っていく感覚が、時代の変化として言語化される。
東京の本だが、地方の人にも効く。なぜなら東京は、日本の変化を先に引き受ける場所でもあるからだ。東京が変わると、地方の価値観も少し遅れて揺れる。
平成を「都市の経験」として掴みたい人に向く。政治史の前にこれを挟むと、政策や景気の話が街の風景へ接続しやすい。
そして何より、同時代の自分の足取りが戻る。学び直しが、机上の理解から生活の理解に変わる。
8.テレビが映し出した平成という時代(ディスカヴァー・トゥエンティワン/単行本)
要点:テレビが作った現実、テレビが見落とした現実を材料に、平成の世論と空気を読み直す。
読みどころ:“あの映像”の意味が変わって見える回がある。
向く読者:ニュースやバラエティの記憶が濃い世代、メディアの影響を整理したい人。
平成を生きた多くの人にとって、時代の記憶は「映像」と結びついている。速報のテロップ、ワイドショーの語り口、バラエティの笑い。テレビは、現実の入口でもあり、フィルターでもあった。
本書は、テレビが映した平成を手がかりに、世論と空気の作られ方を追う。懐かしさに寄りかからず、映像の意味を問い直す姿勢が芯になる。
「あの映像」を知っている人ほど、読みながら背中がぞわっとする瞬間がある。見ていたはずなのに、見えていなかったものが浮かぶからだ。
テレビの影響を語ると、単純な善悪に寄りがちだ。でも平成のテレビは、社会の欲望と不安を同時に映していた。本書は、その複雑さをほどく。
ニュースの記憶が濃い人ほど、読み終えたあとに自分の「判断の癖」に気づく。どういう言葉に煽られ、どういう映像で納得してしまうのか。平成史の学び直しが、自己点検にまで伸びる。
一方で、テレビの外側にあった現実にも目が向く。見落とされた声、切り取られた文脈。そこに気づくと、平成の事件や政治が別の角度で見え始める。
メディア環境が変わった今だからこそ、平成のテレビを振り返る意味がある。現在を理解するための、後ろ向きではない読書になる。
9.教養としての平成お笑い史(ディスカヴァー・トゥエンティワン/単行本)
要点:お笑いの変化を「芸の様式」だけでなく、テレビ・ネット・社会の期待の変化として追う。
読みどころ:笑いの流行が、時代の緊張や価値観のズレと結びつく。
向く読者:平成カルチャーを“真面目に”復習したい人。
笑いは、軽い。だから油断していると、時代の核心を持っていかれる。平成のお笑いは、とくに社会の空気と絡み合いながら変わった。
この本は、芸の形式だけでなく、メディア環境と社会の期待の変化として笑いを捉える。すると、流行が単なる流行ではなく、緊張の逃し方、価値観の調整として見えてくる。
「あの頃、なぜそれが笑えたのか」を考え始めると、平成の自己像が見えてくる。笑いは、社会の無意識を映す鏡でもある。
お笑いを真面目に語ると、少し照れる。でも照れを越えると、平成が一気に具体になる。テレビの時間割、学校の休み時間、飲み会の空気。そういう生活の現場に、時代が降りてくる。
平成の価値観のズレや変化は、政治や経済だけでは語り切れない。笑いの変化を追うと、人間関係の距離感や、言葉の境界線まで見えてくる。
文化史は、全体像がぼやけやすい。だからこそ、先にデータや講義で足場を作ってから読むと、文化の話が「浮遊」しない。
読み終えたら、自分にとっての「平成の笑い」を一つ挙げてみるといい。何に救われ、何に傷ついたか。そこに、時代の温度が残っている。
10.平成精神史(幻冬舎/新書)
要点:平成を「思想」や「気分」の側から捉え、社会の自己像がどう揺れたかを追う。
読みどころ:政治経済の説明では残りにくい“空気の変化”が、言葉として残る。
向く読者:出来事は知っているのに、時代の手触りが掴めない人。
平成は「気分の時代」でもあった。景気や政策の説明を読んでも、どうしても残るのは別のものだ。諦め方、怒り方、希望の小ささ。そういう感情の作法が変わった。
本書は、その変化を精神史として追う。精神史は危うい言い切りにもなりやすいが、ここは言葉の扱いが丁寧で、空気が抽象に溶けきらない。
読んでいると、平成が「自分たちの自己像の揺れ」として見えてくる。何を恥じ、何を誇り、何を面倒だと感じたのか。そこに時代の輪郭がある。
政治経済の本で残らない部分が、ここで残る。例えば、同じ出来事でも「受け止め方」がどう変わったかが見えると、ニュースの列が立体になる。
この種の本は、読む側の体験と強く結びつく。刺さり方が人によって違うのは自然だ。だからこそ、読みながら自分の感覚を点検していくといい。
読み方のコツは、共感しすぎないことだ。共感は気持ちいいが、学び直しは距離も必要になる。少し離れて眺めると、平成が落ち着いて見えてくる。
この一冊を挟むと、総括本の「強い断定」に飲まれにくくなる。自分の言葉を持ったまま読み進められる。
11.平成政治史(新書)
要点:政党再編、政権交代、官邸主導などを、制度とプレイヤーの動きとして筋道で追う。
読みどころ:ニュースの断片が「因果関係の列」になる。
向く読者:平成政治を、感想ではなく構造で理解したい人。
平成政治は、見た目のドラマが派手なわりに、筋が見えにくい。政党再編、政権交代、官邸主導。言葉だけ覚えても、何が変わったのかが曖昧になる。
この本は、その曖昧さを制度とプレイヤーの動きとして整える。政治を「気に入る/気に入らない」から切り離し、仕組みとして追えるようになる。
ニュースの断片が因果の列に変わると、当時の報道の見え方も変わる。あのときの熱狂、あのときの失望が、構造の上に置き直される。
平成の政治を理解するうえで大事なのは、「誰が悪い」より「どう動く仕組みだったか」だ。仕組みが見えると、現在の政治も少し落ち着いて眺められる。
読み進めると、政治が生活に与える影響が、じわじわと見えてくる。直接の損得ではなく、制度の疲れ方として生活へ滲む。その接続が作れるのが強みだ。
政治史が苦手な人は、先に生活データや都市・メディアの本を挟んだほうが読みやすい。生活の足場があると、政治の話が空中に浮かばない。
読み終えたら、平成の政治の転機を三つだけ挙げてみるといい。自分の言葉で挙げられれば、すでに骨格は手に入っている。
12.平成史(小学館/文庫)
要点:政治・経済・事件・文化を、同時代の二人が対話で横断し、論点の勘所を拾っていく。
読みどころ:断定よりも“引っかかり”が残り、次に掘るべきテーマが見つかる。向く読者:硬い政治史の前後に、視野を広げる1冊が欲しい人。
対話形式の良さは、思考の揺れが残るところにある。平成を語ると、どうしても断定が増える。断定は便利だが、理解を早く固めすぎる。
この本は、同時代の二人が横断して話すことで、断定より引っかかりを残す。引っかかりは、学び直しの燃料になる。
政治史のように筋道を追う本と、文化史のように空気を読む本の間に、こういう一冊を挟むと視野が広がる。自分の理解が偏っている場所にも気づきやすい。
読みながら、「その論点は確かに当時こう見えていた」と思う瞬間がある。現在の感覚で平成を裁かず、当時の前提へ一度戻る。その戻り方が上手い。
対話は、読者の頭の中にも対話を起こす。自分ならどう言うか、自分は何を見落としていたか。問いが自然に湧く。
読後におすすめなのは、気になったテーマを一つだけ深掘りすることだ。災害でも、外交でも、雇用でもいい。次の専門書へ踏み出す足場になる。
硬い政治史に疲れたとき、逆に文化の本でぼやけたとき、そのどちらにも効く。視点の切り替えとして便利な一冊だ。
13.平成史【完全版】(河出書房新社/単行本)
要点:平成を、社会の変質(雇用、ナショナリズム、制度疲労)としてまとめて掴む大型の総括本。
読みどころ:個別の出来事が「社会の型の変化」に吸い込まれていく感じが出る。
向く読者:1冊に時間をかけて、平成の全体像を作り直したい人。
総括本は、読む側の体力も問う。だが、ここまで積み上げてきた年表・論点・生活の手触りがあるなら、総括本は「確認」ではなく「統合」になる。
本書の強みは、出来事をただ並べず、社会の型の変化へ吸い込ませるところだ。雇用、ナショナリズム、制度疲労。バラバラに見えるものが、同じ方向へ引かれていく感覚がある。
読み進めると、平成が「何が起きたか」ではなく「どう変わったか」で見えてくる。出来事の列の下に、ゆっくり動く地殻変動があると気づく。
一方で、総括は強い言い切りにもなりやすい。だからこそ、ここまでの本で自分の言葉を作ってから入るといい。飲まれるのではなく、照らし合わせられる。
読むときは、最初から完璧に理解しようとしなくていい。章ごとに「この章が言い切っていること」を一行にする。それだけで、平成の像が固まり始める。
読後、平成の「軸」が一本できる。本書は、その軸を太くする役目を果たす。学び直しの終盤にふさわしい重さがある。
時間をかけて、ゆっくり読み返す価値がある。速読ではなく、腹に落とす読書が似合う。
14.平成史―昨日の世界のすべて(文藝春秋/単行本)
要点:平成を“当時の常識”から読み直し、何が失われ、何が置き換わったのかを追う。
読みどころ:平成の出来事が、現在の感覚とは別の文脈で立ち上がる。
向く読者:軽い入門では物足りず、思考の負荷ごと学び直したい人。
「昨日の世界」という言い方が刺さるのは、平成がすでに別の国のように感じられる瞬間があるからだ。常識は、変わったと気づかれないまま変わる。
本書は、当時の常識から平成を読み直す。今の価値観で裁かない。裁かない代わりに、置き換わったものを具体に拾う。その拾い方が鋭い。
読むと、平成の出来事が別の文脈で立ち上がる。「そのときはそう思っていた」という、当時の前提が戻ってくる。戻った前提の上で、失われたものの輪郭が見える。
この本は、読み心地が軽くない。だが、その負荷が学び直しには必要になることがある。楽に理解したつもりになるより、考え込みながら読むほうが残る。
総括本の中でも、とくに「現在の感覚を揺らす」タイプだ。読後に、いま当たり前だと思っているものが少し不安定になる。そこから、自分の視点が増える。
読み進めるコツは、反論しながら読むことだ。「いや、こうも言える」と思ったら、その反論をメモする。反論は理解の証拠になる。
平成を学び直すことは、結局「今」を理解することでもある。本書は、その接続が強い。
関連グッズ・サービス
本を読んだ後の学びを生活に根づかせるには、生活に取り入れやすいツールやサービスを組み合わせると効果が高まる。
年表確認や用語の行き来が多い平成史は、移動中に読み進めたり、気になった箇所へすぐ戻れたりすると失速しにくい。まずは「続けられる環境」を作るのが近道だ。
講義本や新書のテンポを、耳で先に掴むのも相性がいい。映像やメディアの話題は、声で聞くと当時の空気が戻りやすい。
最後に、紙でも電子でも、付箋より「一行メモ」を残せる道具があると効く。ノートでもメモアプリでもいい。平成は長いから、理解を一行で束ねる習慣が武器になる。
まとめ
平成史の学び直しは、記憶の再生ではなく、理解の組み立て直しだ。まず年表で骨格を立て、講義で論点を整え、データで生活の手触りを戻す。そこへ都市・テレビ・笑いの視線を差し込み、最後に政治史と総括で一本の像にする。そうすると平成は、出来事の列ではなく「どう変わったか」の歴史として残る。
- とにかく早く全体像を作りたいなら:1→3→4→11→13
- 空気や同時代感覚から入りたいなら:2→7→8→10→13
- 政治が苦手でも生活から掴みたいなら:4→5→7→11→14
読み終えたあとに残るのは、知識より「自分の言葉」だ。平成を一行で言い切れるようになったら、学び直しはもう身についている。
FAQ
Q1. 平成史の入門で、最初に読むのはどれがいい?
迷ったら『10代に語る平成史』から入るといい。薄い本で年表感覚を戻し、出来事の位置関係を先に整えると、その後の講義本や総括本が読みやすくなる。逆に、空気や気分の言語化から入りたいなら『平成時代』を先に挟むと、理解が生活に接続しやすい。
Q2. 政治史が苦手で、読むと疲れてしまう。
政治の前に、生活データと都市・メディアの本で足場を作るのが効く。『生活者の平成30年史』で生活の変化を掴み、『平成の東京 12の貌』や『テレビが映し出した平成という時代』で同時代の視線を回収してから『平成政治史』へ入ると、政治が空中戦になりにくい。
Q3. 特定テーマ(災害、金融、外交など)をもっと深掘りしたい。
まずは検索語を「平成+テーマ名」に固定し、出版社帯を寄せて探すと読み味が揃う。深掘りを始めたら、戻り先を決めておくのが大事だ。出来事確認は1、論点整理は3、肌感補強は4。戻れる場所があると、専門書に入っても迷子になりにくい。
Q4. 14冊も読み切れる気がしない。どこまでで十分?
目的次第だが、まず「骨格・論点・生活」の三点が揃うと、平成が線になる。具体的には1→3→4で土台ができる。そこに、空気の言語化として2か10を足し、最後に11で政治の筋を入れれば、十分に「語れる」状態になる。総括本(13・14)は、その像を太くしたいときに読む。













