外交史を学び直したいと思っても、日本外交史から入るべきか、ヨーロッパ外交史や冷戦史まで広げるべきかで迷いやすい。そんなときは、まず通史で背骨をつくり、次に地域史や戦後秩序へ枝を伸ばすと理解が崩れにくい。この記事では、独学の入口として使いやすい定番を中心に、外交史の流れが手の中でつながっていく20冊を順に紹介する。
- 外交史は、国家の意思決定だけを追う学問ではない
- 迷ったらこの順で読む
- まず日本外交史の背骨をつくる本
- 日本外交史の論点を横に広げる本
- ヨーロッパとアメリカから国際秩序の型を見る本
- 世界大戦と冷戦の割れ目を読む本
- 東アジアの外交史を広げる本
- 関連グッズ・サービス
- まとめ
- FAQ
- 関連記事
読み始める位置に迷ったら、先に自分の関心を決めておくと入りやすい。
- 全体像をつかみたいなら、まず1、2、3で日本外交史の縦の流れを通す。
- 国際秩序の型から入りたいなら、8、9、12、14へ進む。
- いまの東アジアや安全保障の手触りに近づきたいなら、4、18、19、20が効く。
外交史は、国家の意思決定だけを追う学問ではない
外交史というと、条約、会談、戦争回避、国益といった硬い言葉が並ぶ。だが、実際に読み始めると見えてくるのは、もっと人間くさい逡巡だ。譲れないと思っていた線が、国内政治の圧力で揺らぐ。理念で動いているように見えた政策が、実は経済や軍事の不安に押されていたとわかる。あるいは、一つの誤算が数十年単位の対立を生むこともある。
だから外交史の面白さは、事件名を暗記することにはない。なぜその時点でそう動いたのか、その選択は何を残し、何を失わせたのかをたどるところにある。日本外交史を読むだけでも、開国、帝国、敗戦、占領、同盟、経済大国化、歴史問題と、国の姿勢が何度も組み替わっているのが見える。そこにヨーロッパ外交史や冷戦史、中国外交史を重ねると、日本だけ見ていたときには平面的だった出来事が、急に立体になる。独学ではまず、その立体感をつくれる本を選ぶのが大事だ。
迷ったらこの順で読む
外交史の本は、面白いものほど時代や地域に深く潜る。そのぶん、最初の順番を間違えると知識が点で散りやすい。この記事では、まず日本外交史の通史で背骨を作り、そのあとヨーロッパ、アメリカ、冷戦、東アジアへと広げる流れを軸にしている。最短で全体像をつかみたいなら、1→2→3→8→12の順がいちばんきれいだ。日本の近代化、戦後秩序、欧州の国家体系、アメリカ外交、冷戦の世界地図がつながると、新聞で見かける外交ニュースの温度が変わってくる。
まず日本外交史の背骨をつくる本
1. 日本外交史講義 新版(岩波テキストブックス)
日本外交史をこれから読み始めるなら、この本はかなり頼りになる。幕末から現代までをただ時系列で並べるのではなく、各時代にどんな問いが立っていたのかを意識させながら進むので、出来事の名前だけが頭の中を滑っていかない。読んでいると、外交とは外に向けた政策であると同時に、国内の制度や世論の揺れに強く縛られた営みでもあるとわかってくる。
この本のいいところは、読み手を置いていかないことだ。専門書にありがちな威圧感が薄く、論点の置き方がまっすぐだから、学び直しの最初の一冊として息がしやすい。条約や戦争の節目も出てくるが、それ以上に、なぜその方向へ日本が傾いていったのかを考えさせる。通史を読んでいるのに、単なる年表の追跡にならない。
外交史を一からつかみたい人、大学で少しかじったが記憶が薄れている人、ニュースで出てくる歴史問題の前提をきちんと押さえたい人に向く。机で静かに線を引きながら読むのもいいが、夜に少しずつ読み進めると、自分の中で近代日本の輪郭がじわじわ固まっていく感覚がある。最初の一冊でつまずきたくないときに選びたい本だ。
2. 近代日本外交史 幕末の開国から太平洋戦争まで(中公新書)
黒船来航から敗戦までを、新書一冊で縦に通して読める本は貴重だ。近代日本外交史は、開国と条約改正、日清・日露戦争、第一次世界大戦、ワシントン体制、満洲事変、日中戦争、太平洋戦争と、大きな山が続く。その一つひとつをつまみ食いすると、いつのまにか「日本はなぜそう動いたのか」が見えなくなる。この本は、その断絶を埋める一本の道になる。
読み味は引き締まっていて、余計な膨らみが少ない。だからこそ、近代日本外交の癖がよく見える。安全保障への不安、列強の論理への適応、国際協調への接近と逸脱。その往復が、事件の羅列ではなく運動として入ってくる。とくに、近代国家としての日本が、自分の居場所を国際社会の中でどう探っていたかをつかむには強い。
日本外交史講義 新版と組み合わせると、前者で全体の見取り図をつかみ、こちらで近代を深掘りする流れがきれいにできる。明治から昭和前期の空気を、ただ重苦しい過去としてではなく、連続する選択の積み重ねとして見たい人に刺さる。国家の拡張と不安が絡み合う場面を読むとき、歴史は急に遠いものではなくなる。
3. 戦後日本外交史 第3版補訂版(有斐閣アルマ)
戦後日本外交を体系的に学ぶなら、まずこの本を置いておきたい。占領、講和、日米安保、経済外交、冷戦後の国際貢献まで、戦後日本がどのように国際社会の中で位置を取り直してきたのかを、落ち着いた視線で追っていく。戦後という言葉は一括りにされがちだが、読んでいくと、その内側には何度も方向転換がある。
この本の強さは、戦後日本外交を「戦争に負けた国の後始末」としてではなく、新しい制約の中で組み立て直された長い歴史として見せるところにある。安保体制、経済成長、沖縄返還、対米関係、アジア外交。どれか一つだけでは戦後は説明できないと、読んでいるうちに自然に腹へ落ちる。教科書的な安定感がありながら、乾いた要約にはなっていない。
現代日本の外交ニュースが断片に見えてしまう人ほど、この本が効く。いま起きている問題の多くが、戦後の設計図の延長線上にあるとわかるからだ。紙面の向こうの政府声明が、急に歴史の厚みを持ち始める。地味に見えて、独学の土台をかなり強くしてくれる一冊である。
4. 入門講義 戦後日本外交史(慶應義塾大学出版会)
戦後日本外交史を、現代の争点につながる線として読みたいならこの本が向く。憲法、日米安保、沖縄、歴史問題といった論点が、過去の出来事として閉じず、いまなお続いている問いとして開かれている。読むほどに、戦後外交史は終わった歴史ではなく、まだ現在形のまま続いていると感じるはずだ。
題名に「入門講義」とある通り、説明は丁寧だが、内容は薄くない。むしろ、戦後日本の制約と選択を考えるための足場がしっかりしている。なぜ日本はこの形で安全保障を組み立てたのか。なぜ対アジア関係では歴史認識が消えないのか。そうした疑問に対して、短絡的な善悪ではなく、歴史的経緯の層を見せてくれる。
ニュースを見ながら背景を知りたい人に、とくに相性がいい。頭が疲れているときでも、問題の切り口が明確なので読み進めやすい。現代外交の地面を確かめたいとき、この本は思った以上に足元を固めてくれる。
5. 新版日本外交史ハンドブック[第二版] 解説と資料(有信堂高文社)
通読して世界が開ける本というより、机の脇に置いて何度も戻ってくるタイプの一冊だ。外交史を学んでいると、人物、会議、条約、時期が頭の中で絡まり始める。そのときに、年表や資料と一緒に立ち返れる本があると理解のほつれが少なくなる。このハンドブックは、そういう意味で実務的に強い。
読んでいて助かるのは、事項の並びが冷たくないことだ。単なる索引的な便利さではなく、流れの中で参照できる。近代から戦後までを横断しながら、「あの出来事はこの時期だったか」「この政策の前提にはこれがあったのか」と確かめられるのは、独学ではかなり大きい。読むというより、付き合う本である。
まとまった時間が取れない人にも向く。平日は通史を一章読み、週末にこの本で年表や資料を見返すだけで、知識の定着の仕方が変わる。理解を曖昧なまま先へ進めたくない人には、地味だが手放しにくい一冊になる。
日本外交史の論点を横に広げる本
6. ハンドブック近代日本外交史 黒船来航から占領期まで(Minerva KEYWORDS)
近代日本外交史を一度縦に読んだあとで、この本に入ると景色が変わる。通史ではどうしても一本の流れとして理解することになるが、実際の外交史は、帝国、植民地、協調、軍事、国内政治、メディアなど複数の層が重なってできている。この本は、その横の広がりを見せてくれる。
章ごとに論点へ入り直せるので、通史で気になった箇所を再訪するのに向いている。たとえば日英同盟やワシントン体制を、単独の事件としてではなく、近代日本が国際秩序のどこに自分を置こうとしていたかという視点から見直せる。読み終えると、近代外交の輪郭が太くなる。
一冊目向きではないが、独学が少し進んだ頃にかなり効く。歴史の線をなぞるだけでは物足りなくなってきたとき、論点の厚みを与えてくれる。表面だけわかった気になりたくない人に向く本だ。
7. ハンドブック戦後日本外交史 対日講和から密約問題まで(Minerva KEYWORDS)
戦後日本外交史の副読本として、かなり使い勝手がいい。講和、安保、自衛隊、沖縄、貿易摩擦、PKO、密約問題まで、戦後日本外交を構成する主要論点を、通史とは別の角度から整理できる。読んでいると、「戦後」の中身がどれほど多層的だったかが見えてくる。
とくに便利なのは、問題ごとの見通しが立てやすいことだ。戦後外交を通史で読むと、どうしても年代の流れに引っぱられる。だが実際には、ある論点は何十年も形を変えながら続いている。この本は、その持続の感覚をつかませる。ひとつの争点が、国内世論や日米関係、アジアとの関係にどう影を落としていたかも感じ取りやすい。
戦後日本外交史 第3版補訂版を読んだあとに差し込むと理解が締まる。現代日本の外交的な躊躇や身振りに、長い前史があることを確かめたいときに役立つ。論点整理をしながら頭を冷やしたいときにも向いている。
ヨーロッパとアメリカから国際秩序の型を見る本
8. ハンドブックヨーロッパ外交史 ウェストファリアからブレグジットまで(Minerva KEYWORDS)
外交史の土台そのものを考えるなら、ヨーロッパ外交史は避けて通れない。主権国家、勢力均衡、同盟、会議外交、帝国、統合。いま国際政治を語るときに使う言葉の多くは、ヨーロッパの歴史の中で鍛えられてきた。この本は、その長い流れを、重すぎず軽すぎないバランスで見せてくれる。
日本外交史だけを読んでいると、日本の選択が特殊なものに見えやすい。だがヨーロッパ外交史を並行して読むと、国家が不安と均衡の中でどう振る舞うかという型が見えてくる。すると、日本の対外行動も、孤立した例外ではなく、ある程度は世界史の文法の中で理解できるようになる。
国際秩序の基礎体力をつけたい人に向く。頭が散っているときでも、時代ごとの枠組みをつかみやすいので読みやすい。日本の本を読んでいて息苦しくなったとき、視野を広げる一本として入れるとかなり効く。
9. ヨーロッパ国際関係史 繁栄と凋落、そして再生(有斐閣アルマ)
ヨーロッパ外交史をより国際関係史の側から捉えたいなら、この本は良い橋になる。ウェストファリア体制以降の国家間関係だけでなく、戦争、統合、再編の大きな波をたどりながら、ヨーロッパがどのように繁栄し、衰え、再生してきたかを見せる。外交史と国際関係史の境目が、読んでいるうちにやわらかくつながっていく。
この本は、ヨーロッパを一つの完成した秩序としてではなく、何度も壊れ、組み替えられてきた場所として読ませる。だからこそ、EUもまた歴史の終着点ではなく、一つの暫定的な形に見えてくる。外交史を通して、秩序は不変ではないと学びたい人には手応えがある。
少し俯瞰した視点がほしいときに向く。ディテールを積む読書に疲れたころ、この本を挟むと、バラバラだった知識が大きな地図の中へ戻っていく。視界をひらく本である。
10. イギリス外交史(有斐閣アルマ)
編: 佐々木雄太・木畑洋一/ASIN: 4641122539
イギリス外交史を読むと、近代外交の基本動作がよく見える。勢力均衡をどう考えるか、海洋国家としてどこに利害を置くか、帝国の論理と現実政治がどう結びつくか。大きな世界地図の中で、自国の安全と利益をどのように計算していたのかが、かなり具体的に浮かぶ。
この本の面白さは、イギリスをただ覇権国家として描かないところにある。帝国であることの強さと脆さ、欧州との距離感、アメリカとの関係の変化が、時間を追ってにじみ出てくる。外交史は勝者の物語に見えやすいが、実際は迷いと調整の連続だと感じさせる。
ヨーロッパ外交史を読んだあとに入ると、とても入りやすい。国家ごとの視点に降りてみることで、抽象的だった勢力均衡が急に体温を持ち始める。大国のふるまいの基本形を知りたい人にすすめたい。
11. 独仏関係史 三度の戦争からEUの中核へ(中公新書)
外交史の核心の一つは、対立の歴史がどのように和解へ向かうかにある。この本は、その典型を独仏関係に絞って読ませてくれる。三度の戦争を経験した両国が、なぜ最終的にEUの中核へ変わっていったのか。その過程を追うと、敵対と協調はまったく別のものではなく、歴史の中でつながりうるとわかる。
二国間関係に焦点を当てているぶん、抽象論に逃げない。国民感情、政治指導者の判断、制度の設計、戦後秩序の後押しが、どのように噛み合っていったのかが見えやすい。和解という言葉が、美しい理想ではなく、実際には長くて骨の折れる政治過程だということもよく伝わる。
対立が固定化して見える時代に読むと、かなり考えさせられる。日中関係史や戦後日本外交史と並べて読むと、和解が成立する条件と難しさがよりはっきりする。希望よりも手順を知りたい人に向く本だ。
12. アメリカ外交史(東京大学出版会)
アメリカ外交を本格的に理解したいなら、この本は外しにくい。建国期から21世紀初頭までを、アメリカ国内の政治や社会の変化と結びつけながらたどるので、外交だけが宙に浮かない。孤立主義、介入、覇権、理想主義、現実主義といった語が、実際の歴史の中でどう使い分けられてきたかが見えてくる。
アメリカ外交はしばしば一枚岩に語られるが、この本を読むと、国内の自己理解と対外政策がどれほど複雑に絡んでいるかがわかる。理念を掲げながら力を行使する国の矛盾、その矛盾を抱えたまま世界秩序の中心に座り続ける難しさも、乾いた整理ではなく歴史の運動として入ってくる。
少し腰を据えて読みたい本ではあるが、そのぶん得るものが大きい。戦後日本外交史や冷戦史を読む前後で入れると、アメリカの存在が背景ではなく主役として立ち上がる。大国の論理を雑に理解したくない人に向く。
13. 戦後アメリカ外交史 第3版(有斐閣アルマ)
冷戦以後の世界を理解するうえで、戦後アメリカ外交を整理しておく意味は大きい。この本は、冷戦、ベトナム、デタント、レーガン期、冷戦終結後、オバマ期まで、アメリカが何を守ろうとし、どこで躓いたのかを追いやすくしてくれる。大学テキストらしい安定感があり、構造をつかむのに強い。
魅力は、アメリカ外交を単なる超大国の成功史として見せないところだ。介入と撤退、理想と疲弊、軍事力と国際協調の間で揺れる姿が浮かぶ。だから、日本や東アジアの視点から読んでも面白い。対米関係はいつも相手の事情に影響されるのだと、歴史の向こうから静かに迫ってくる。
情報量はあるが、戦後に範囲が絞られているぶん読みやすい。いまの国際ニュースに近い温度で歴史を押さえたいときにも向いている。現代の米国を、見出しではなく流れで理解したい人に合う一冊だ。
世界大戦と冷戦の割れ目を読む本
14. 冷戦史(上) 第二次世界大戦終結からキューバ危機まで(中公新書)
戦後国際秩序の空気を知るには、冷戦の始まりを丁寧に読む必要がある。この上巻は、第二次世界大戦終結からキューバ危機までを追いながら、戦後の協調がなぜ急速に対立へ転じたのかを、新書の密度で手際よく示してくれる。最初の緊張の立ち上がり方がよくわかる。
読んでいると、冷戦は最初から完成形だったわけではないと感じる。敗戦処理、占領、核、同盟、イデオロギー、相互不信が少しずつ重なり、やがて抜けにくい対立構造になっていく。その過程が見えるので、冷戦を単なる米ソ対立のラベルで終わらせずに済む。
外交史の勉強が少し抽象的になってきたとき、この本は空気を入れ替えてくれる。緊張が濃くなっていく時代を追う感覚があり、読む手が止まりにくい。戦後外交史の地図を鮮明にしたい人にはかなり有効だ。
15. 冷戦史(下) ベトナム戦争からソ連崩壊まで(中公新書)
上巻で始まった緊張が、どのように長期化し、変質し、終わっていったのかをたどるのがこの下巻だ。ベトナム戦争、デタント、新冷戦、ソ連崩壊までを追うと、冷戦は一直線の対立ではなく、膨張と緩和を繰り返す波のようなものだったとわかる。
この本が良いのは、冷戦後半を惰性で扱わないところである。むしろ、後半のほうが世界の多極化や地域紛争、経済の問題が複雑に絡み、現在に近い表情を見せ始める。だから読み終えるころには、戦後世界の見取り図だけでなく、現在へつながる亀裂の位置も見えてくる。
上巻と続けて読むと相当強いが、戦後アメリカ外交史や戦後日本外交史の後に差し込んでも理解しやすい。世界の緊張がどう持続し、どう終わったのかを腰を据えて知りたいとき、この二冊組はかなり頼もしい。
16. 第二次世界大戦外交史(上)(岩波文庫)
入門を越えて、世界大戦に至る外交過程をもっと重い質感で読みたいなら、この本がある。文庫とはいえ中身は軽くない。史料の匂いが残るような筆致で、戦争へ傾いていく国際政治の機微を追っていく。手触りとしては、教科書というより、歴史の現場に近づく読書だ。
ここで見えてくるのは、戦争が突然始まるわけではないという当たり前で、しかし見落とされやすい事実だ。外交交渉のほころび、計算違い、相手の意図の読み誤り、妥協の失敗。それらが幾重にも重なって破局へ至る。この本は、その重みを静かに積み上げてくる。
読むには少し体力がいる。だが、外交史を単なる通史ではなく、一次資料に近い温度で感じてみたいときには代えがたい。歴史の速度が遅くなり、一つの判断の重さが手のひらに残るような読後感がある。
17. 第二次世界大戦外交史(下)(岩波文庫)
上巻で始まった緊張の連なりを、最後まで見届けるのがこの下巻だ。戦争と外交はしばしば対立するものとして語られるが、実際には戦争の最中にも外交は動き続ける。この本を読むと、その絡み合いの深さがよくわかる。戦うことと交渉することは、完全には切り離せない。
下巻まで来ると、人物や国家の判断がよりむき出しになる。理想も大義も掲げられるが、実際には余力、時間、同盟、情報の制約が容赦なくのしかかる。そうした条件の中で何が可能で、何が不可能だったのかを考えさせるところに、この本の厳しさがある。
世界大戦期の外交史を深く読みたい人には外せない。気分が軽いときより、少し集中できる日に読むとよい。読み終えると、戦争史と外交史を分けて考えること自体が、かなり不自然に思えてくるはずだ。
東アジアの外交史を広げる本
18. 中国外交史(東京大学出版会)
1949年以後の中国外交を通史で押さえられる本として、この一冊はかなり有用だ。東アジアの外交を考えるとき、中国を断片的なニュースで追うだけではどうしても足りない。この本は、建国後の中国が国際秩序の中でどのように自らを位置づけ、どのように周辺と関係を築いてきたのかを、長い線で見せてくれる。
読みどころは、中国外交を単純な強硬路線として片づけないところにある。革命国家としての出発、米ソとの距離、改革開放、地域秩序への関与。時期ごとに論理が少しずつ変わり、それでも一貫している部分もある。その連続と変化の両方が見えてくると、現在の東アジアがぐっと理解しやすくなる。
日本外交史の補強として読んでも強い。相手側の時間感覚や自己認識が見えるだけで、二国間関係の見え方はかなり変わる。中国を必要以上に恐れるのでも軽く見るのでもなく、まず歴史の厚みの中で見たい人に向いている。
19. 現代中国外交(岩波書店)
中国外交史よりも、もう少し腰を据えて中国の対外行動の論理を読みたいならこの本がいい。題名の通り現代中国に焦点があり、現在へつながる問題意識が濃い。だから、通史的な整理だけでなく、中国が何を不安に思い、何を目指してきたのかを考えやすい。
この本を読むと、中国外交は強さの演出だけでできているのではなく、歴史認識、体制維持、地域秩序、国際的承認への欲望と警戒が複雑に混ざっていると感じる。そこが見えると、表面的な対立のニュースも少し違って読める。相手の論理を理解することは、同意することとは別だと教えてくれる本でもある。
少し濃い本だが、そのぶん刺さる。東アジアの緊張をただ「いまの問題」として消費したくないときに向く。思考を浅くしたくない日に読むと、かなり残るものがある。
20. 日中関係史(有斐閣アルマ)
外交史を本当に立体で理解したいなら、二国間関係史は強い。この本は、日中という近くて重い関係を通して、日本外交史だけでは見えにくい相互作用を浮かび上がらせる。一方の決定がもう一方の記憶や戦略にどう響くのか。その往復が見えるだけで、歴史の厚みが急に増す。
日中関係は、近代、戦争、戦後、国交正常化、経済協力、歴史問題、安全保障と、いくつもの層が折り重なっている。この本は、その複雑さを安易に単純化しない。だから読後には、関係がこじれている理由だけでなく、なぜ簡単には切れないのかも見えてくる。
日本外交史をひと通り読んだあとに入ると、とても効く。国家と国家の関係は、正しさだけで整理できないと痛感するはずだ。過去の重みと現在の必要が同時にぶつかる場所を知りたい人にすすめたい。
関連グッズ・サービス
本を読んだ後の学びを生活に根づかせるには、生活に取り入れやすいツールやサービスを組み合わせると効果が高まる。
紙の本で通史を読みながら、移動中は電子書籍で参照用の本を開ける形にしておくと、外交史はかなり続けやすい。年表や索引に戻る回数が多い分野なので、読みかけを複数持てる環境は相性がいい。
長時間の通勤や家事の合間に耳から歴史の流れを入れたい人は、音声で先に時代感覚をつかんでから紙に戻ると入りやすい。外交史は固有名詞が多いぶん、まず声で慣れておく方法も案外効く。
もう一つあると便利なのが、薄いノート一冊だ。条約、戦争、政権交代を年表形式で自分の手で並べるだけで、外交史は急に整理される。書き写すというより、自分の頭の中の地図を作る感覚で使うといい。
まとめ
外交史の本を読んでいると、最初は国家どうしの遠い話に思える。だが、日本外交史の通史を通り、ヨーロッパやアメリカの外交史を重ね、冷戦や東アジアの関係史まで広げると、いまの世界の輪郭が少しずつ近づいてくる。前半で日本の背骨をつくり、中盤で国際秩序の型を知り、後半で世界大戦・冷戦・東アジアの緊張へ潜る。そういう読み方をすると、外交史は単なる知識の集積ではなく、世界の見え方を変える学びになる。
- 日本外交史を確実に押さえたいなら、1〜4から始める。
- 国際秩序の型まで知りたいなら、8〜13を重ねる。
- 戦後世界と東アジアの緊張を深く理解したいなら、14〜20へ進む。
遠い歴史のように見えるものほど、いまを照らす光が強い。まず一冊、通史から開くといい。
FAQ
外交史の完全な初学者は、どの5冊から読むのがいいか
いちばん入りやすいのは、1「日本外交史講義 新版」、2「近代日本外交史」、3「戦後日本外交史 第3版補訂版」、8「ハンドブックヨーロッパ外交史」、12「アメリカ外交史」の順だ。最初に日本の流れを通し、そのあとヨーロッパとアメリカを重ねると、国内史として見えていたものが国際秩序の中へ収まっていく。最短で地図を作るならこの並びが安定する。
日本外交史だけ読んでも十分か
入口としては十分だが、途中で必ず視野が窮屈になる。日本の選択を理解するには、相手国の論理や、その背後にある国際秩序の型を知らないと見えない部分が多いからだ。日本外交史を3冊ほど読んだら、少なくともヨーロッパ外交史か冷戦史を一冊差し込むと理解が急に立体になる。外交史は比較しながら読むほど強い。
冷戦史や世界大戦の本は早めに読んだほうがいいか
戦後日本外交やアメリカ外交に関心があるなら、早めに入れてよい。とくに14、15の冷戦史は、日本外交史だけでは見えにくい戦後秩序の前提を補ってくれる。一方で、完全な初学者が最初から16、17へ入ると重く感じることもある。まず通史で地図を作り、その後で冷戦か第二次世界大戦へ深く潜ると、読書の負担が少ない。
ニュースを理解するためには、どの本がいちばん役立つか
現代のニュースとの接続が強いのは、4「入門講義 戦後日本外交史」、13「戦後アメリカ外交史 第3版」、18「中国外交史」、20「日中関係史」だ。歴史問題、安全保障、日米関係、東アジアの緊張は、どれも戦後の設計図や長い相互作用の上に乗っている。見出しだけではわからない前提を持てるようになると、ニュースの読み方がかなり変わる。




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