増井光子が関わった本を読みたいとき、入口になるのは「写真の強さ」だ。作品一覧をたどると、動物の体や子育て、そして人と動物の距離まで、同じ線でつながって見えてくる。ここでは新品購入できる版だけを集め、ページの手触りごと確かめるように紹介する。
増井光子とは
増井光子の名前が入った本は、動物を「かわいい」だけで終わらせない。体のつくりの理由、成長の手順、治療の手際、野生の厳しさまでを、子どもが受け取れる温度に落として届ける。監修という立ち位置は黒子に見えるのに、ページをめくるたびに視線の導き方がはっきりしている。写真の迫力に流されそうなところで、言葉が要点をすくい上げ、学びを残す。動物の世界へ入っていく導線を、静かに、でも確実に作る人だ。
本を読む前に
偕成社の「どうぶつのからだ」は、体の一部分の写真から当てるクイズと、その形になった理由の説明が軸になる。遊びながら観察の焦点が合っていき、答え合わせの瞬間に「なぜ?」が立ち上がる。
金の星社の「どうぶつの赤ちゃん」は、生まれる場所、食べ物、過ごし方、そして大きくなるまでを写真で追い、比べる視点を育てるシリーズだ。同じ“赤ちゃん”でも、守られ方も成長の速さも違う。そこが面白い。
福音館書店の『どうぶつえんの おいしゃさん』は、動物園の獣医の一日を具体的な作業として描く。見回り、薬、縫合。命に触れる仕事が、子どもにも届く言葉で並ぶ。
集英社の「フレッシュ版シートン動物記」は、物語として読める名作の束であり、野生を見つめる眼差しを身につける読書でもある。短編が積み重なるほど、動物の姿が寓話ではなく“現実”の輪郭を帯びてくる。
おすすめ本10選
1. どうぶつの目(偕成社/単行本)
最初に覗くのは、目だ。動物を見分けるとき、私たちは無意識に目の位置や形を探している。だからこの巻は、観察のスイッチをいちばん早く入れてくれる。
ページのはじめは、目のどアップが出てくる。まつげの長さ、瞳孔の形、光をはね返す艶。写真が大きいので、視線が逃げない。子どもが「これ、なに?」と言い出すまでが早い。
次のページで全身が現れ、当てっこが終わる。終わった瞬間に、理由の話が始まる。見える範囲が広いのか、暗いところに強いのか、獲物を見つけるためなのか。目の形が生活そのものだと分かってくる。
読んでいるうちに、動物園の檻の前での立ち方が変わる。かわいい顔を見るだけでは足りなくなり、目線がどこを切り取っているのかを想像したくなる。
親子で読むなら、声に出して「この目は、何を見つける目だろう」と言ってみるといい。答えを急がなくていい。考える時間そのものが、観察の訓練になる。
写真が強いぶん、説明は必要最小限で、テンポが落ちない。読み聞かせでも、自分読みでも進む。図鑑ほど重くなく、絵本よりも“学び”が残る、その中間の気持ちよさがある。
読み終えたあと、窓の外の鳥を見たときに、目の位置を探してしまう。その小さな癖が、この巻のいちばんの成果だ。
2. どうぶつの鼻(偕成社/単行本)
鼻は、呼吸の入口であり、匂いの世界の入口でもある。目よりも分かりにくいぶん、「違い」を掘り当てたときの快感が大きい。
この巻の気持ちよさは、写真の切り取り方にある。鼻先だけを見せられると、知っている動物でも案外当てられない。次のページで全身が出た瞬間、子どもが悔しそうに笑う。
そして、なぜその鼻なのかが語られる。長い鼻、くちばしの先の鼻、湿った鼻、乾いた鼻。生活環境と結びついて、形が“必要”だったことが見えてくる。
読みながら、思わず自分の鼻を触ってしまう。人間の鼻は、動物の中ではどんな立ち位置だろう。そんな問いが自然に生まれる。
親子で楽しむなら、「匂いで見つけるもの」を想像してみると広がる。草の匂い、仲間の匂い、敵の匂い。目で見えない情報が、鼻の中に集まってくる。
説明の量は多すぎず、写真の説得力が先に立つ。理屈を押しつけないから、子どもが自分の言葉で言い直せる。そこが監修本としての上手さだ。
外に出たとき、雨上がりの匂いを吸い込むだけで、この巻のページがよみがえる。鼻の感覚が、読書と結びつくのが面白い。
3. どうぶつの口(偕成社/単行本)
口は食べる場所で、同時に生き方の宣言でもある。食べ物が違えば、噛み方も、舌も、口の開き方も変わる。この巻はそこを、見て分かる形にしてくれる。
くちばしの袋のような形、豪快に開く口、細い口。写真は「部位」から始まり、当てたあとに理由がくっきり出る。生活の場面が、形の背景に透けて見える。
子どもは「この口、こわい」と言うかもしれない。そこで終わらせずに、「こわいのは、何をする口だからだろう」と一歩だけ進める。感情から理解へ、自然に橋がかかる。
食べることは、命をつなぐことだ。だから口の話は、どこか倫理にも触れる。食べる側、食べられる側。ページをめくると、軽い冗談では済まない現実が、写真の奥にある。
それでも読後感が暗くならないのは、説明が生活に戻してくれるからだ。動物はそうやって暮らしている、と静かに言い切る。子どもにとっては、その落ち着きが安心になる。
読み聞かせで盛り上がるのは、当てっこよりも「この口で何ができる?」のほうだったりする。噛む、ちぎる、すくう、運ぶ。動きの言葉が増える。
食事の時間に、箸やスプーンの持ち方を叱る前に、この巻を思い出すといい。人間の“口と手”の連携も、動物の延長線にある。
4. どうぶつの耳(偕成社/単行本)
耳は、見えない情報を集める器官だ。だからこの巻を読むと、世界が少し静かになる。音を聞く動物の気配を、こちらが聞こうとし始める。
写真の耳は、ただの形ではなく、方向を持っている。左右別々に動く耳、長い耳、薄い耳。そこに「何を拾うためか」という理由が添えられる。
子どもは、耳の大きさを面白がる。そこで「大きい=よく聞こえる」だけではないと気づくのが、この巻の良さだ。熱を逃がすため、砂が入らないため。耳は暮らしの部品だ。
読んでいる途中で、家の中の音が気になってくる。冷蔵庫の低い唸り、遠い車の音。動物はこれをどう聞いているのだろう、と想像が働く。
親子で読むなら、読み終えたあとに一分だけ黙ってみるといい。静けさの中で、聞こえてくる音が増える。その体験が、本の内容を身体に残す。
耳の話は、注意深さの話でもある。危険を避けるため、仲間を見つけるため、獲物を探すため。聞く力は、生き延びる力だと分かる。
図鑑だと情報が散らばるところを、この巻は耳だけに絞って深く潜る。焦点を合わせる学びが、きれいに起きる。
5. どうぶつの手と足(偕成社/単行本)
動物の手足を見ると、その一歩がどこへ向かうのかが分かる。走る、登る、掘る、泳ぐ。手と足は動詞の集合体だ。
この巻も、部位のクローズアップから始まる。毛が生えた足裏、ぎざぎざの裏。見慣れない質感が、ページのこちら側に迫ってくる。
次のページで全身が現れると、手足の形が「場所」と結びつく。岩場、樹上、雪原、砂。地面の感触まで想像できるのが写真の強みだ。
子どもは走るのが好きだ。だからこの巻は、読み終えたあとに外へ出たくなる。公園の地面を踏みしめながら、「この靴の裏は、どんな動物の足に近い?」と遊べる。
説明は、生活の理由に戻ってくる。速さのため、滑らないため、音を立てないため。手足の形に、無駄がない。
親としては、運動が苦手な子にも勧めやすい。走ることが得意でなくても、観察は得意になれる。動きを理解する入口が、ここにある。
読み聞かせでは、「この足で何ができる?」と問いかけると会話が増える。答えが正しいかどうかより、動詞が出てくることが大事だ。
6. どうぶつのしっぽ(偕成社/単行本)
しっぽは不思議な部位だ。なくても生きられそうに見えるのに、あると生活が一変する。バランス、推進力、合図。しっぽは“余白”ではない。
平たいしっぽ、力もちのしっぽ。写真の段階で、用途が想像できるように作られている。答え合わせのあと、理由が短く刺さる。
子どもはしっぽが好きだ。だからこの巻は、入りやすく、深くまで行ける。かわいさの入口から、機能の理解へ、自然に滑っていく。
読みながら、犬や猫のしっぽの動きが頭に浮かぶ。身近な動物のしっぽを思い出すと、野生のしっぽとの距離が縮む。
しっぽはコミュニケーションでもある。怒り、警戒、安心。人間の表情ほど分かりやすくないから、こちらが読み取ろうとする姿勢が必要になる。
親子で読むなら、読み終えたあとに動物の動画を少しだけ見るのも相性がいい。しっぽの動きが、ページの知識を現実に接続する。
静かな学びが残る巻だ。しっぽを見る視線は、相手の気持ちを読む練習にもなる。
7. どうぶつえんの おいしゃさん(福音館書店/大型本)
この本が描くのは、動物園の裏側だ。観客のいない場所で、動物たちの体調を見て、薬を与え、時には縫う。仕事の手順が、淡々と並ぶ。
「毎朝の見まわり」から始まる流れがいい。派手な事件から入らない。日常の積み重ねが、命を支えていることが伝わる。
治療の場面は現実的だが、怖がらせるために描かれない。必要なこととして、手を動かす。子どもは驚きながらも、目をそらさずに聞ける。
この本を読むと、動物園での見え方が変わる。展示の向こう側に、健康管理の手間が見える。命を“見せる”には、見えない労力が必要だと分かる。
親子で読むなら、「病気って何だろう」と話すきっかけになる。人間の風邪と同じではない、でも体がつらいのは同じ。その共通点と違いを、丁寧に言葉にできる。
そして、この本は仕事の本でもある。誰かのために働くこと、手際よく段取りを組むこと、怖い場面でも落ち着いていること。そういう背中が描かれている。
読み終えたあと、動物園から帰る道で、少しだけ静かになる。楽しかっただけでは終わらない余韻が残る。
8. どうぶつの赤ちゃん ライオン(金の星社/大型本)
ライオンの赤ちゃん、と言うだけで子どもの目が光る。強い動物の赤ちゃんは、どんなふうに弱く生まれ、どうやって強さへ向かうのか。その道のりを写真で追う巻だ。
このシリーズの良さは、かわいさの先に“手順”があることだ。生まれる場所、守られ方、食べるもの、少しずつ広がる行動範囲。成長が、順番として頭に残る。
読んでいると、親の存在が大きく見えてくる。赤ちゃんだけを切り離さず、周りにいる大人の姿も映る。その構図が、命を現実のものにする。
親子で読むなら、「赤ちゃんの一日って、どんな感じ?」と聞いてみるといい。人間の赤ちゃんと同じところ、違うところが出てくる。
写真は説明より先に胸に入る。毛の柔らかさ、目の潤み、体の小ささ。触れられないのに、触れた気がしてしまう。
その“触れた気”を、言葉が整えていく。かわいい、すごい、こわい。感想が乱れても大丈夫で、ページをめくれば、生活としての動物が戻ってくる。
読み終えたあと、ライオンを見る目が変わる。強さの前に、育つ時間があると分かるからだ。
9. どうぶつの赤ちゃん パンダ(金の星社/大型本)
パンダの赤ちゃんは、見た目の印象が強い。けれどこの巻は、印象を“理解”へ変える。写真が、成長の段階をきちんと並べてくれる。
赤ちゃんの姿だけでなく、成長していく過程、親との距離、食べるものの変化が積み重なる。眺めるだけで終わらず、「前と今の違い」を探したくなる。
子どもは比べるのが好きだ。昨日と今日、去年と今年。だからこの巻は、会話が起きやすい。「この写真、さっきより大きいね」「ここが変わったね」と自然に言葉が出る。
読み聞かせでは、ページを急がないほうがいい。写真を見て、少し黙る。そこから子どもが気づいたことを拾う。説明を足すのは、そのあとでいい。
パンダという人気者を扱いながら、アイドル化しない。生活の動物として写っているから、最後に残るのは“かわいい”より“生きている”だ。
大人にとっても、癒しだけではない読後感がある。守られて育つことの大変さ、時間のかかり方が、写真ににじむ。
見終えたあと、少しだけ丁寧に歩きたくなる。赤ちゃんの速度に、こちらの心が合わせられる。
10. フレッシュ版シートン動物記 全9巻セット(集英社/全集セット)
写真から入ってきた読者が、物語へ移るときに、このセットは橋になる。動物の暮らしを“読む”だけでなく、時間の中で追体験する読書になる。
自然の厳しさは、淡い比喩ではなく現実として置かれる。けれど、冷たく突き放すのではない。野生を見守る視線があり、読者の心が追いつく余白がある。
短編が積み重なると、動物が記号ではなく個体になる。賢さ、臆病さ、慎重さ。人間の感情と似た輪郭が見えて、同時に「同じではない」差も見えてくる。
親子で読むなら、まずは一編だけでいい。寝る前に一本。読み終えたあと、感想をまとめなくていい。翌朝、ふとしたときに話題が戻ってくる本だからだ。
このセットは、年齢の幅が広い。小学生は物語として引き込まれ、中高生は自然観や倫理に触れる。大人は、自分の“優しさ”が時に都合のよいものだったと気づかされる。
動物を守る、という言葉の手前に、動物を知る、という土台がいる。その土台を、長い読書で作ってくれる。
読み終えたとき、動物園の檻の前で考えることが増える。外の自然を想像する力が、確実に伸びる。
偕成社「どうぶつのからだ」を深く楽しむ(残り2冊)
11. どうぶつの口(偕成社/単行本)
10選に入れたが、シリーズで揃える人のために、もう一度だけ押さえておきたい。口の巻は、食べることの話であり、暮らしの話であり、時に恐れの話でもある。
怖いと思ったら、それは自然な反応だ。怖さは危険を避けるセンサーで、動物も同じセンサーで生きている。そこを丁寧に言葉にできると、理解に変わる。
この巻は、写真が「機能」を語る。口の形だけで、何を食べるかが想像できる。想像が外れてもいい。外れたところに学びがある。
読み終えたあと、食卓が少し面白くなる。噛む、飲み込む、味わう。人間の口もまた、生活の中心だと分かるからだ。
シリーズを通読するときは、目→鼻→口の順に読むと、感覚器官の流れが自然に繋がる。呼吸と食事が一本の線になる。
そして、次は耳へ行く。情報を入れる器官から、世界が広がっていく。
繰り返し読んでも古びないのは、写真が“今”の子どもを毎回捕まえるからだ。
12. どうぶつの耳(偕成社/単行本)
耳の巻は、シリーズの中でも静かな熱がある。視覚優位の生活の中で、「聞く」ことをもう一度前に出してくれる。
ページの耳は、形だけではなく方向を持つ。どこへ音を集めるのかが、写真から伝わる。耳が“アンテナ”であることが腑に落ちる。
子どもが集中して聞けない日がある。そんな日にこの巻を読むと、叱るより先に「耳って疲れるんだよね」という話ができる。聞く力も体力だ。
読み終えたあと、外で立ち止まってみる。風の音、鳥の声、遠い工事の音。世界はずっと賑やかで、私たちは普段それを切って生きていると分かる。
動物は切れないことがある。その違いが、生活の違いになる。耳の形は、まさにその違いの結晶だ。
シリーズを揃えるなら、耳の巻は後半に置くと効く。理解が深まったところで、感覚が広がる。
静かな本ほど、あとで強く残る。この巻はそのタイプだ。
金の星社「どうぶつの赤ちゃん」(大型本)を揃える(残り8冊)
13. どうぶつの赤ちゃん シマウマ(金の星社/大型本)
シマウマの赤ちゃんは、模様が“完成”しているようで、実は成長の中で見え方が変わる。その変化を、写真が段階として見せてくれる巻だ。
このシリーズは、赤ちゃんだけを眺める本ではない。生まれる環境、親との距離、食べるもの、動きの広がりが、順番として並ぶ。だから読み終えたときに「物語」ではなく「生活」が残る。
親子で読むなら、ページをめくるたびに「いま何を覚えているところ?」と聞いてみるといい。立つ、走る、食べる。成長は技の獲得だと分かる。
写真の力で、模様の美しさがまず入る。そのあと、模様が暮らしに役立つ意味へ視線が移る。きれい、の次に理由が来る流れが気持ちいい。
比べ読みも向く。パンダやライオンと並べると、守られ方や動きの速さの違いが浮かぶ。違いが見えた瞬間、学びが加速する。
読後、動物園でシマウマを見ると、模様の一本一本が“皮膚の上の情報”に見えてくる。見え方が変わるのは、良い読書の証拠だ。
赤ちゃんの話は、結局、自分たちの生活の話へ戻ってくる。育つことは、時間がかかる。
14. どうぶつの赤ちゃん カンガルー(金の星社/大型本)
カンガルーの赤ちゃんは、育ち方のイメージが独特だ。その“独特”を、驚きだけで終わらせず、順序立てて理解へ運ぶのがこの巻の役目になる。
写真があるから、説明が抽象にならない。小ささ、距離、親子の位置関係。目で見たものが、そのまま知識になる。
読み聞かせでは、子どもが質問を連発するかもしれない。全部答えなくていい。「じゃあ次のページで確かめよう」と、本の中に戻すだけで会話が進む。
この巻を読むと、子育ての“型”が一つではないと分かる。手厚い、放っておく、守る、教える。動物の数だけ方法がある。
人間の常識で測りたくなるが、ここはぐっと堪える。違いを違いのまま見つめる練習になる。そこが監修の仕事の静かな価値だ。
写真絵本は、見た目の可愛さで終わりがちだ。けれどこのシリーズは、生活の仕組みまで連れて行く。読後に「覚えたこと」が残る。
親子で並べて読むと、家庭の会話が少し柔らかくなる。違っていい、という感覚が増えるからだ。
15. どうぶつの赤ちゃん キリン(金の星社/大型本)
キリンは姿が特別で、赤ちゃんもまた特別に見える。その“特別さ”を、体の仕組みと成長の流れとして捉え直す巻だ。
ページをめくるたび、首の長さだけに目が奪われなくなる。脚の長さ、立ち方、移動の仕方。全身のバランスで“キリン”ができていることが分かる。
読み方のコツは、写真の前で一度止まることだ。子どもが気づくポイントは、大人が見落とすところにある。「耳が小さい」「足が細い」など、細部が会話の火種になる。
この巻は、比べ読みが効く。シマウマと並べると、同じ草原でも暮らし方が違うことが見える。違いは、体の形に刻まれている。
読んでいるうちに、“成長”という言葉が現実味を帯びる。大きくなるだけではない。体を使いこなせるようになることが成長だと分かる。
子どもが自分の体を気にし始めたとき、この巻は優しく効く。背が伸びる、動きが変わる。体の変化を、怖がらなくていいと思える。
読み終えたら、鏡の前で首を少し伸ばしてみる。そんな遊びが、体の理解を日常へ戻す。
16. どうぶつの赤ちゃん ペンギン(金の星社/大型本)
ペンギンは水の動物に見えて、陸の時間も長い。赤ちゃんの巻は、その二つの場所の間で育つ様子を、写真で確かめる読書になる。
このシリーズは「どこで生まれ、何を食べ、どう過ごすか」を筋道として追う。だから、写真を眺めているうちに、生活の地図が頭にできる。
読み聞かせでは、温度の想像が効く。寒さ、風、濡れた羽の感触。写真から肌感覚へ移ると、動物が急に近くなる。
ペンギンの赤ちゃんは、守られ方の話にもなる。集団、距離、見守り。親子だけで完結しない子育ての形が見える。
子どもが「寒そう」と言ったら、それを大事にしたい。共感は学びの入口で、ここから生態の理解へ進める。
この巻を読むと、水族館の見え方が変わる。泳ぐ姿の前に、育つ時間がある。展示の一瞬の裏に、長い生活がある。
読後、手を温めるときに、ふとペンギンを思い出す。そんな“連想”が残るのが、良い写真絵本だ。
17. どうぶつの赤ちゃん ゴリラ(金の星社/大型本)
ゴリラの赤ちゃんは、人に近いと感じる瞬間が多い。その近さが、感情だけでなく、生活としての理解へ向かうように作られている巻だ。
写真は、抱え方や距離感まで伝える。赤ちゃんがどこにいて、何を見て、どう落ち着くのか。言葉にしにくい部分が、視覚で入ってくる。
ただし、擬人化しすぎないのが大事だ。「かわいいね」で止めず、「どうしてこうするんだろう」と一つだけ問いを置く。そこから、動物としての暮らしへ戻れる。
読み聞かせでは、親の表情にも注目したい。子どもは赤ちゃんだけを見るが、大人の目には“守る側”の疲れや緊張が見えることがある。その二重の見え方が面白い。
この巻は、命の重さを静かに運ぶ。大げさに道徳を語らず、写真の積み重ねで伝える。結果として、子どもの中に残るのは「大切にしたい」という感覚だ。
動物園でゴリラを見るとき、ガラス越しの距離が少し痛く感じるかもしれない。その痛みは、理解が進んだ証拠でもある。
読後、家族の会話が少し増える。守る、甘える、離れる。その全部が、育つことの一部だと分かるからだ。
18. どうぶつの赤ちゃん コアラ(金の星社/大型本)
コアラは、ゆっくりしたイメージが強い。その印象のままに、赤ちゃんの時間の流れを写真で追える巻になる。
このシリーズは、成長を“連続”として見せる。だから、ページをめくるほど「前と違う」が増えていく。ゆっくり見える動物にも、確かな変化がある。:contentReference[oaicite:20]{index=20}
読み聞かせでは、急がないことが一番のコツだ。写真の静けさに合わせて読むと、子どもの呼吸も整う。寝る前の一冊として相性がいい。
コアラを扱うと、食べ物や生活環境の話が自然に出る。どこで暮らし、何に依存しているのか。依存は弱さではなく、関係性の形だと分かる。
子どもが「いいなあ」と言ったら、その気持ちを拾う。そこから「じゃあ、コアラにとって“いいなあ”は何だろう」と返すと、視点がひっくり返る。
写真はかわいさをくれるが、同時に現実もくれる。その二つを同じページで受け取れるのが、このシリーズの強さだ。
読後、急いでいた心が少し遅くなる。動物の速度に合わせる読書には、そういう効き方がある。
関連グッズ・サービス
本を読んだ後の学びを生活に根づかせるには、生活に取り入れやすいツールやサービスを組み合わせると効果が高まる。
写真絵本や動物の読み物は、親子で「もう一冊」を探したくなる。読み放題の棚があると、比較読みの勢いが途切れにくい。夜に一冊追加して、次の日の会話が増える感覚がある。
物語で動物を読むなら、耳から入れるのも強い。移動中や家事の時間に一編だけ聴くと、紙の読書に戻ったときの入りが深くなる。
フィールドノート(観察メモ用)
本で見つけた「気づき」を、外で一つだけ試す。鳥の目の位置、犬のしっぽ、匂いの強い場所。短いメモがたまるほど、読書が生活へ降りてくる。
まとめ
増井光子が関わった本を並べると、動物は「かわいい」から「暮らしている」へと像を変える。写真で掴み、理由で理解し、物語で時間を歩く。そんな順番が、自然に用意されている。
- 親子で盛り上がりたいなら:偕成社「どうぶつのからだ」シリーズ
- 成長や子育てまで見たいなら:金の星社「どうぶつの赤ちゃん」シリーズ
- 仕事としての命の現場に触れたいなら:『どうぶつえんの おいしゃさん』
- 長く読んで、自然観を育てたいなら:「フレッシュ版シートン動物記」セット
一冊読み終えたら、次は外で一つだけ確かめる。それだけで、本の中の動物がこちら側へ歩いてくる。
FAQ
増井光子の本は、何歳くらいから楽しめる?
写真中心のシリーズは、読み聞かせなら幼児から入りやすい。クイズ形式は年齢が上がるほど「理由」を自分の言葉で言い直せるので、小学校低学年以降も飽きにくい。物語の「シートン動物記」は一編ずつ区切って読めば、学年をまたいで長く付き合える。
図鑑と比べて、写真絵本・科学絵本の良さは?
図鑑は情報が網羅的で、目的の項目へ飛べる強さがある。一方、写真絵本・科学絵本は焦点が絞られていて、観察の“筋トレ”が起きやすい。目だけ、鼻だけ、赤ちゃんだけ。限定されることで、同じ対象を深く見る癖がつく。
シリーズを揃えるなら、読む順番はある?
偕成社「どうぶつのからだ」は、目→鼻→口→耳→手と足→しっぽの順が自然だ。感覚器官から始めると、子どもの日常とも繋がりやすい。金の星社「どうぶつの赤ちゃん」は、好きな動物から入ってかまわない。むしろ「好き」から始めたほうが、比べ読みの意欲が伸びる。
動物園に行く前に読むなら、どれが向く?
現場の見方が変わるのは『どうぶつえんの おいしゃさん』だ。動物の体の見え方を変えたいなら「どうぶつのからだ」。赤ちゃん展示がある園なら「どうぶつの赤ちゃん」を一冊入れておくと、ただ眺める時間が観察の時間に変わる。















