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【児童書おすすめ本】小学生から中学生まで物語に入る20冊

児童書は、学年だけで選ぶと少しずれる。大事なのは、その子が今どれくらいの長さを読めるか、どれくらい物語の重さを受け止められるかだ。この記事では、低学年の一人読みから高学年、中学生、親子で語り合える児童文学まで、読書段階が見えるようにおすすめ本を並べた。

読む目的別の入り口

まずは、今の読書段階に近いところから入るといい。全部を順番に読む必要はない。短い童話で物語のリズムをつかむ子もいれば、冒険やファンタジーに一気に引き込まれる子もいる。

児童書を選ぶ前に知っておきたいこと

児童書選びで迷うのは、「何年生向けか」という目安が便利なようで、実はかなり粗いからだ。同じ小学三年生でも、短い会話文ならどんどん読める子、絵が多い本なら進める子、長い物語に入ると急に集中する子がいる。学年は入口の目安にはなるが、最後に決めるのは読書の体力である。

ここでいう読書の体力は、難しい言葉を知っているかどうかだけではない。ページ数、章の長さ、登場人物の多さ、悲しみや死の扱い、物語の余白を待てるかどうか。そういうものが少しずつ積み重なって、子どもは長い本へ進んでいく。だから、読書が苦手な子にいきなり重い名作を渡すより、笑えるシリーズや短い章立ての本から入ったほうが、読書の扉は開きやすい。

一方で、子ども向けだから軽いとは限らない。児童文学には、友情、家族、死、孤独、社会、自由、働くこと、時間の使い方まで入っている。大人が読んで胸を突かれるのは、児童書が子どもに合わせて世界を薄めているのではなく、むしろ大事なことだけを残しているからだ。

この記事では、絵本そのものよりも「自分で物語を読む」側に寄せている。まだ絵本に近い本から、長編ファンタジー、海外名作、中学生へつながる物語まで、階段のように並べた。子どもの読書は、急がなくていい。背伸びしすぎた本を途中で閉じても、それは失敗ではない。少し戻って、また別の入口から入ればいい。

絵本卒業後に読みたい児童書

最初の棚には、声に出しても読みやすく、一人で読んでも置いていかれにくい本を置いた。ここで大事なのは、長い本を読ませることではなく、「本の中の時間にしばらくいる」感覚をつくることだ。

1.いやいやえん(福音館書店/福音館創作童話シリーズ・単行本)

『いやいやえん』は、絵本から童話へ進むときの、かなり頼もしい一冊だ。保育園の子どもたちの日常を描きながら、そこに小さな事件や空想が自然に入り込む。大人から見れば困った行動でも、子どもの側には子どもの理屈がある。その理屈が、大人の都合を軽々とひっくり返す。

この本の強さは、子どもを「よい子」に整えすぎないところにある。いやと言う。怒る。ふてくされる。思いつきで動く。だけど、その姿が乱暴に裁かれない。ページをめくるたびに、子どもの世界には子どもの秩序があるのだと感じる。

低学年の子が自分で読むには、物語の長さもちょうどいい。短すぎず、重すぎず、章ごとに気持ちを切り替えられる。読み聞かせから一人読みに移る時期に、親が横で少しだけ助ける読み方にも合う。ひらがなばかりの軽さではなく、物語としての手応えがある。

一方で、教訓がはっきりした本を求めていると、少し落ち着かなく感じるかもしれない。この本は「こうしましょう」とまとめるより、子どもの気分そのものを見せてくる。だから、読後に正解を確認するより、「しげるみたいな気持ちになることある?」と聞くくらいがちょうどいい。

中川李枝子の作品をもっと広く読みたいなら、中川李枝子おすすめ本の棚へ進むといい。『ぐりとぐら』から『いやいやえん』へ移ると、絵本の楽しさがそのまま童話の世界へ伸びていくのがわかる。

2.エルマーのぼうけん(福音館書店/世界傑作童話シリーズ・単行本)

『エルマーのぼうけん』は、はじめての冒険ファンタジーとして今も強い。主人公エルマーが、どうぶつ島に捕まっている竜の子を助けに行く。大きな魔法も、選ばれし勇者の宿命もない。あるのは、リュックに入れた道具と、少しずつ危機を切り抜ける知恵だ。

子どもにとって、この「自分にもできそうな冒険」の感覚は大きい。猛獣が出てくる。道は危ない。けれど、エルマーは力で勝つのではなく、考えて進む。ガム、リボン、ブラシのような小さな道具が、場面ごとに思いがけない働きをする。知恵と道具だけで竜を助けに行く、最初の冒険の快感がここにある。

長い本に不安がある子でも、目的がはっきりしているので追いやすい。竜を助ける、島を進む、動物たちをかわす。その道筋が明るく、次のページへ自然に背中を押してくれる。夜、布団の中で「あと少しだけ」と言いたくなる種類の本だ。

ただし、静かな心理描写や深い人間関係を求める高学年には、少し素朴に感じることもある。その場合は、懐かしい名作として読むより、低学年のころに出会うほうが力を発揮しやすい。物語の扉を開ける本として置くと、いちばんよく光る。

この本で冒険のリズムに乗れたら、後ろの10.デルトラ・クエストI 1 沈黙の森へ進むと、シリーズを追う楽しさが一段深くなる。短い冒険から長い冒険へ、橋が自然にかかる。

3.ふたりはともだち(文化出版局/ミセスこどもの本・単行本)

『ふたりはともだち』は、がまくんとかえるくんの短い物語が集まった本だ。大事件が起きるわけではない。手紙を待つ、ボタンを探す、気持ちを分け合う。けれど、その小ささがいい。友情を読む入口として、これほど静かで、あたたかく、押しつけがましくない本は少ない。

この本を読むと、仲よしとはいつも同じ気持ちでいることではないとわかる。がまくんは落ち込むし、かえるくんは励ます。かえるくんが正しくて、がまくんが間違っているという話ではない。二人の気分は少しずつ違い、その違いが物語になる。

文章は短く、余白が多い。低学年の一人読みにも向くし、読み聞かせにも向く。読書が得意な子にはすぐ読めてしまうかもしれないが、短さの中に残るものは意外と深い。友だちとけんかした日、何かを待っている日、自分だけがうまくできない気がする日に読むと、胸の奥に小さな灯りがともる。

向かないとすれば、派手な展開や笑いを期待しているときだ。スピード感のある冒険を読みたい子には、少し静かすぎるかもしれない。そういう時期には無理に渡さず、寝る前や、気持ちが少し疲れている日に置いておくといい。

友情の本は、説明が強すぎると急に説教になる。『ふたりはともだち』は、その手前で止まってくれる。だから子どもも大人も、安心して二人のそばに座れる。

4.くまの子ウーフ(ポプラ社/くまの子ウーフの童話集1・単行本)

『くまの子ウーフ』は、「なぜ?」が物語そのものになる幼年童話だ。ウーフは、世界を当たり前のものとして受け取らない。どうして空は青いのか。どうして自分は自分なのか。大人なら流してしまう問いが、ウーフの中ではちゃんと引っかかる。

子どもの疑問は、ときどき大人を困らせる。答えがないからではなく、急いで答えようとすると、かえって大事なものを取り逃がすからだ。この本は、問いを急いで処理しない。ウーフの考える時間に寄り添いながら、世界の手触りを少しずつ確かめていく。

低学年の子には、哲学という言葉を使わなくても十分に届く。むしろ、「それって変だな」「どうしてだろう」と思う気持ちのまま読めるのがいい。考える本でありながら、重たくない。森の匂いや、くまの子の丸い体温が残るような童話だ。

ただ、物語に強い山場を求める子には、少しゆっくりに感じるかもしれない。冒険や事件で引っぱる本ではない。質問を楽しめる時期、日常の不思議に立ち止まれる時期に読むとよく合う。

『くまの子ウーフ』が合う子は、読書を通じて「答えを知る」だけでなく、「考えている自分に気づく」ことができる。児童書の中でも、静かに深い根を張る一冊だ。

読書が苦手な子も入りやすいシリーズ児童書

次の棚は、読書の勢いをつける本だ。ここでは、文学的な深さよりも「続きが読みたい」「また同じ仲間に会いたい」という気持ちを優先したい。読書が苦手な子にとって、シリーズは頼れる足場になる。

5.かいけつゾロリのドラゴンたいじ(ポプラ社/かいけつゾロリシリーズ1・単行本)

『かいけつゾロリのドラゴンたいじ』は、読書が苦手な子を本の世界へ連れていく力がある。ゾロリは立派な正義の味方ではない。いたずら好きで、ずるいことも考える。それでも、ページをめくる手を止めさせない勢いがある。

この本で大事なのは、まじめに読ませようとしなくていいところだ。笑う。つっこむ。絵を追う。くだらないと思いながら、次の場面が気になる。いたずら心が、そのまま読書の推進力になる。活字の多さに身構える子でも、絵と会話のテンポに助けられて進みやすい。

ゾロリのシリーズは、読み終えたあとに「次も読める」という安心感がある。一冊読み切った経験は、子どもにとってかなり大きい。読書が得意な子には軽く見えるかもしれないが、読書の最初の自信をつくる本としては、とても強い。

一方で、静かな名作から入ってほしい親には、少しふざけすぎに見えることもある。ただ、入口としての本は、立派であることより、子ども本人がページをめくりたくなることのほうが大切だ。笑って読めた本は、次の本を呼んでくる。

もし家庭で「ちゃんとした本を読んでほしい」という気持ちが強くなったら、一度その力を抜いてみるといい。ゾロリを読んで笑っている子は、読書から逃げているのではなく、読書の中に入る道を見つけている。

6.先生、しゅくだいわすれました(童心社/単行本図書)

『先生、しゅくだいわすれました』は、学校生活の身近さから物語へ入れる本だ。宿題を忘れた子どもと先生。設定だけを見ると、怒られる話、反省する話になりそうだが、この本はそこから少し違う方向へ進む。宿題を忘れた言い訳が、創作の入口に変わる。

子どもにとって、学校は毎日行く場所でありながら、ときどき小さな緊張を生む場所でもある。宿題、先生、友だち、発表、忘れ物。そのどれもが大人には小さく見えても、本人には一日の気分を変えるくらい大きい。この本は、その空気をよく知っている。

読みやすさもある。冒険ファンタジーほど遠くへ行かなくても、自分の教室とつながるように読める。読書が苦手な子でも、「これは自分にもありそう」と思えれば、物語の中へ入りやすい。学校の話から読む入口として、かなり扱いやすい本だ。

ただし、宿題や学校に強いストレスがある時期には、少し近すぎることもある。その場合は、無理に読ませるより、笑いや冒険の本を先に置いたほうがいい。近い題材は、気持ちが乗ると強いが、つらい時には近すぎる。

この本が残すのは、「困ったことを、物語に変えてもいい」という感覚だ。失敗をただ叱るのではなく、別の言葉で組み替える。そこに児童書らしい自由がある。

7.ルドルフとイッパイアッテナ(講談社/単行本)

『ルドルフとイッパイアッテナ』は、家を離れた黒猫ルドルフが、東京でたくましい野良猫イッパイアッテナに出会う物語だ。猫の冒険として読めるが、実際には、自立と友情の物語でもある。帰る場所を探す話であり、自分の足で世界を覚える話でもある。

ルドルフは、最初から強いわけではない。知らない土地に来て、何もわからず、怖い思いをする。そこに現れるイッパイアッテナは、ただ助けてくれるだけの存在ではない。生きるための知恵を持ち、言葉を知り、世界の見方を教えてくれる。

この本は、学校や家庭の外に世界が広がっていることを、猫の目線で見せてくれる。道路の匂い、街の音、人間の暮らしのすき間。人間の子どもが読むと、いつもの町が少し違って見える。動物ものが好きな子にも、友情ものが好きな子にも入りやすい。

一冊の読み応えは少し増すので、低学年の最初の本というより、中学年以降に合いやすい。長い物語にまだ慣れていない子には、少しずつ区切って読むといい。逆に、すでに短い童話では物足りなくなってきた子には、ちょうどいい橋渡しになる。

読後に残るのは、家に帰る安心だけではない。知らない場所で出会った誰かが、自分を変えてくれることがある。その感覚が、ルドルフの歩いた道のざらっとした手触りと一緒に残る。

8.Z1それいけズッコケ三人組(ポプラ社/ポプラ社文庫)

『Z1それいけズッコケ三人組』は、小学生の日常冒険の定番だ。ハチベエ、ハカセ、モーちゃんの三人組が、町の中で事件に巻き込まれたり、自分たちで何かを始めたりする。大人から見れば町内の小さな事件でも、子どもにとっては大冒険になる。

このシリーズの魅力は、子どもだけの世界がちゃんと広がっているところだ。学校、家、商店街、友だちの家、近所の空き地。遠い異世界へ行かなくても、いつもの町には十分に物語がある。三人の性格が違うから、会話にも動きがある。

読書が苦手な子にも、シリーズものとして入りやすい。毎回同じ仲間に会える安心感があり、事件の形は変わる。小学生の生活感があるので、冒険ファンタジーよりも近い場所から読める。那須正幹の作品をさらに追いたい場合は、那須正幹おすすめ本へ進むと、ズッコケ三人組の広がりと、より重い作品の幅も見えてくる。

注意したいのは、時代の空気が今の子どもの生活と少し違うところだ。そこを古いと感じる子もいれば、逆に新鮮に読む子もいる。スマホのない町内冒険だからこそ、身体ごと動いている感じがある。

三人組の物語は、子どもだけで何かを企む楽しさを思い出させる。怒られそうで、でもやってみたい。そんな気分が、ページの端からはみ出している。

冒険とファンタジーで物語に夢中になる児童書

ここからは、物語世界に長く入る本が増える。読書の体力が少しついてきた子には、冒険とファンタジーが強い。現実から離れるのではなく、現実へ戻ったときに少し勇気が残る本を選びたい。

9.大どろぼうホッツェンプロッツ(偕成社/新・世界の子どもの本1)

『大どろぼうホッツェンプロッツ』は、海外児童文学の楽しい冒険枠として置きたい一冊だ。大どろぼう、少年たち、魔法使い、つかまる、逃げる、だます。物語の部品だけを見ると昔話のようだが、テンポがよく、どこかユーモラスな空気がある。

この本の悪役は、怖いだけではない。ホッツェンプロッツは確かにどろぼうだが、どこか憎めない。悪役までどこか憎めない、海外児童文学らしい楽しさがある。怖さと笑いが同じページの中にあり、子どもは安心しすぎず、怖がりすぎず読める。

日本の学校や家庭の話とは違う空気を味わいたい子に合う。名前の響き、道具、会話、食べ物、町の雰囲気。そうした細部が、いつもの読書とは違う窓を開ける。海外名作へ進む前の、楽しい足慣らしにもなる。

ただ、心理描写の深さよりも筋の面白さで読ませる本なので、内面をじっくり読むタイプの物語を求めていると軽く感じるかもしれない。反対に、テンポのよい事件、少しとぼけた会話、わかりやすい敵味方が好きな時期にはよく刺さる。

名作児童文学というと、つい重くて立派なものを想像しがちだが、子どもの読書には「楽しかったから次を読む」という力が欠かせない。この本は、その楽しさを堂々と持っている。

10.デルトラ・クエストI 1 沈黙の森(岩崎書店/単行本)

『デルトラ・クエストI 1 沈黙の森』は、小学生が長いシリーズへ進むときの強い入口になる。リーフたちが宝石を集め、デルトラを救うために旅をする。最初の一冊から、危険な森、謎、敵、仲間、次の目的がはっきりしていて、ページをめくる力が強い。

この本が読書の階段として優れているのは、一冊ごとの達成感と、シリーズ全体の先が気になる力を両方持っているところだ。一冊読み終えるたびに、次の扉を開けたくなるシリーズ力がある。長編に慣れていない子でも、「次はどこへ行くのか」がわかると進みやすい。

冒険ファンタジーが好きな子にはもちろん、ゲーム的な目的やアイテム集めが好きな子にも合う。地図、宝石、敵の気配、旅の仲間。物語の構造がはっきりしているので、読書に集中しやすい。既存の読む順記事へ進むなら、デルトラ・クエスト読む順で全体の流れを確認できる。

一方で、静かな文学や日常の心の動きを読みたい時には、少し展開が強く感じるかもしれない。怖い場面や緊張感もあるので、低学年に無理に渡すより、高学年へ向かう時期に置くといい。

シリーズ読書の入り口に立つと、子どもは一冊だけでなく、物語の世界に何日も住むようになる。『デルトラ・クエスト』は、その滞在時間をつくってくれる。

11.魔女の宅急便(福音館書店/福音館創作童話シリーズ・単行本)

『魔女の宅急便』は、魔法の物語でありながら、胸に残るのは働くこととひとり立ちの不安だ。十三歳のキキが、知らない町で暮らしはじめる。空を飛べる魔女であっても、知らない場所で自分の居場所を作るのは簡単ではない。

映画の印象が強い作品だが、ここでは原作児童文学として読みたい。原作のキキは、魔法で何でも解決する特別な子ではない。得意なことを仕事にしながら、人との距離に戸惑い、失敗し、少しずつ町になじんでいく。魔法よりも、ひとりで暮らし始める心細さが静かに残る。

高学年の子には、自立の物語として届きやすい。親元を離れるわけではなくても、学校、習い事、友だち関係の中で「自分でやる」場面は増えていく。キキの不安は、子どもにとって遠いものではない。

低学年でも読めないことはないが、働くことや町の人との関係まで味わうなら、少し成長してからのほうが深く入れる。楽しい魔女の話だけを期待すると、意外に生活感があることに驚くかもしれない。

この本を読むと、成長はまぶしいだけではないとわかる。知らない町の風、ほうきの不安定な浮遊感、誰かに必要とされる喜び。その全部が、キキの背中に混ざっている。

12.シャーロットのおくりもの(あすなろ書房/単行本)

『シャーロットのおくりもの』は、子どもと一緒に命や別れについて話す入口になる本だ。子ぶたのウィルバーと、くものシャーロットの友情を描く。動物たちの話としてやさしく始まりながら、物語はやがて、命の終わりを避けずに見つめていく。

この本が深いのは、別れを消してくれる物語ではないところだ。シャーロットの友情は、悲しみをなかったことにはしない。友情が、別れを消すのではなく受けとめる力になる。そこに、児童文学の静かな強さがある。

親子で読むなら、急いで感想を聞かなくていい。読み終えたあと、少し黙る時間があってもいい。子どもは子どもなりに、ウィルバーの寂しさや、シャーロットのしたことを受け取る。大人もまた、誰かを助けること、残していくことについて考える。

ただし、死や別れに敏感な時期には、タイミングを選びたい。悲しみを扱う本なので、明るい冒険を求めている日には重く感じるかもしれない。反対に、ペットや家族、友だちとの別れについて考え始めた時期には、無理のない言葉をくれる。

児童書は、人生の難しいことをやわらかくするだけではない。難しさを、子どもが手に持てる大きさにして渡すことがある。この本は、その大切な一冊だ。

13.モモ(岩波書店/岩波少年文庫127)

『モモ』は、高学年から中学生、大人まで読み返せる名作だ。人の話を聞く不思議な少女モモと、時間どろぼうたちの物語。ファンタジーとして読めるが、読み終えるころには、時間の使い方、人の話を聞くこと、忙しさに飲み込まれる怖さが静かに迫ってくる。

この本は、時間を奪われる怖さを、子どもにも大人にもわかる物語にしている。灰色の男たちは、子どもの読者には少し不気味な敵として映る。大人の読者には、効率や節約や忙しさの顔をした、かなり身近な存在に見える。

物語の進み方は、勢いだけで読ませるタイプではない。少しゆっくりしている。だから、短い章立ての本に慣れたあと、長い時間をかけて物語に入れるようになった時期に向く。読書体力が育ってきた子に渡すと、深く残りやすい。

一方で、すぐに事件が起きてほしい子、バトルや謎解きの連続を期待する子には、最初は少し遠く感じるかもしれない。急がない本だ。読む側にも、急がない時間が必要になる。

『モモ』を読んだあと、時計の音や、誰かの話を聞く時間が少し違って感じられる。児童文学が生活の見え方を変えるとは、こういうことなのだと思う。

14.はてしない物語(岩波書店/エンデの傑作ファンタジー・単行本)

『はてしない物語』は、長編に挑戦したい子へ渡したい大きな本だ。バスチアンが本を読み、その物語の世界ファンタージエンへ引き込まれていく。読者は、バスチアンが読んでいる物語を読みながら、いつのまにか自分も本の奥へ進んでいる。

この本の特別さは、本を読む子ども自身が、物語の中へ呼び込まれるところにある。主人公を外から眺めるだけではない。読書という行為そのものが、冒険になる。ページの厚み、装丁の存在感、物語世界の広がりが、読む時間を丸ごと包み込む。

高学年以降、長いファンタジーに入る力が育ってきた子に合う。『デルトラ・クエスト』のように目的が明快なシリーズを楽しんだあとに読むと、物語の奥行きの違いがわかりやすい。冒険だけでなく、願い、名前、自分自身の変化が重なってくる。

ただし、最初の長編としては重い場合がある。厚さに圧倒される子もいるし、途中で迷子になる子もいる。無理に一気に読ませるより、時間をかけて読む本として置くほうがいい。途中で止まっても、また戻ってこられる本だ。

読書が好きな子にとって、この本は一つの節目になる。物語を読むことは、ただ筋を追うことではない。自分の中に別の国を持つことなのだと、静かに教えてくれる。

15.長くつ下のピッピ(岩波書店/岩波少年文庫14)

『長くつ下のピッピ』は、海外児童文学へ入るなら外せない一冊だ。ピッピは、力が強く、自由で、大人の決めた行儀に簡単には収まらない。今読んでも、その自由な子ども像はまぶしいほど強い。

ピッピの魅力は、ただ元気なことではない。大人の世界の当たり前を、平気な顔でずらしてしまうところにある。学校、礼儀、家のルール、女の子らしさ。そうした枠を、ピッピは深刻な反抗としてではなく、遊ぶようにまたいでいく。

低学年にも楽しく読める場面は多いが、自由さの意味まで味わうなら中学年以降が合いやすい。おとなしい主人公より、型破りな子が好きな子には強く刺さる。逆に、落ち着いた物語や、やさしい日常を求めている時には、ピッピの勢いに少し疲れるかもしれない。

アストリッド・リンドグレーンの作品をさらに読みたい場合は、アストリッド・リンドグレーンおすすめ本へ進むといい。『やかまし村の子どもたち』など、ピッピとは違う日常の幸福も見えてくる。

ピッピを読むと、子どもは大人になる途中の未完成な存在ではなく、すでに一つの力を持った存在なのだと感じる。児童文学の自由は、ここでかなり明るく鳴っている。

16.秘密の花園 上(岩波書店/岩波少年文庫124)

『秘密の花園 上』は、孤独、家族、回復を読む海外名作だ。両親を失ったメアリが、イギリスの屋敷へ引き取られ、閉ざされた庭と出会う。上巻では、メアリの頑なさや、屋敷の暗さ、秘密の気配が少しずつ開いていく。

この物語では、庭がただの場所ではない。閉ざされた庭が開く過程と、心がほどける過程が重なる。最初のメアリは、かわいらしい子どもとして描かれない。わがままで、孤独で、人との関わり方を知らない。その描き方があるから、変化に深さが出る。

高学年以降、静かな名作を読めるようになってきた子に向く。派手な冒険ではなく、場所、人、季節、体の変化が物語を動かしていく。春の土の匂い、庭の冷たい空気、少しずつ外へ向かう気配。そういうものを味わえる読者に合う。

注意したいのは、これは上巻であることだ。この一冊だけで物語全体を受け止めるのではなく、合いそうなら続きを読む前提で置きたい。速い展開が好きな子には、最初はゆっくりに感じるかもしれない。

『秘密の花園』は、元気になりなさいと急かさない。閉じていたものが、時間をかけて開いていく。その遅さを読めるようになったとき、児童文学の名作はぐっと近くなる。

高学年から中学生へつなぐ深い児童文学

最後の棚は、少し重い。死、社会、倫理、反抗、どう生きるか。ここにある本は、低学年に急いで渡す必要はない。高学年から中学生へ向かう時期に、子どもが自分の内側で考える時間を持ちはじめたら、静かに置きたい。

17.西の魔女が死んだ(新潮社/新潮文庫)

『西の魔女が死んだ』は、思春期の入口に置きたい一冊だ。学校へ行けなくなったまいが、祖母の家で過ごす。自然の中で暮らし、生活の手触りを取り戻しながら、まいは自分の心と少しずつ向き合っていく。

この本は、死を怖がらせず、別れの後に残るものを静かに置いていく。タイトルには死があるが、物語全体に流れているのは、生活の光だ。ジャムを作る、庭を見る、洗濯をする、眠る。そうした日々の動作が、まいの心を少しずつ支えていく。

中学生に向く本としてよく挙げられるが、親子で読む本としてもいい。学校のしんどさ、家族との距離、自分をうまく説明できない感じ。そういうものを持っている時期に読むと、無理に励まさない言葉が届く。

ただし、心がかなり沈んでいる時には、祖母との関係や別れが強く響きすぎることもある。やさしい本だが、軽い本ではない。読むタイミングは少し選んでいい。

梨木香歩の作品をさらに読みたい場合は、梨木香歩おすすめ本へ進むと、自然、記憶、家族、少女の内面がどのように広がっていくかが見える。この本は、児童書から一般文学へ移る橋としても長く残る。

18.獣の奏者 1闘蛇編(講談社/講談社文庫)

『獣の奏者 1闘蛇編』は、高学年から中学生へ進む読者に向く本格ファンタジーだ。エリンという少女を中心に、闘蛇、国家、掟、命をめぐる物語が動き出す。動物を扱う物語でありながら、かわいい動物ものとはまったく違う。

この本が問うのは、動物を愛することと、支配しようとすることの境目だ。人間は獣を利用する。守ろうともする。理解したいとも願う。けれど、その気持ちはいつも純粋とは限らない。エリンの目を通して、命に近づくことの怖さと責任が見えてくる。

物語の密度は高い。国の仕組み、母との関係、仕事、差別、権力の影が入ってくる。読みやすい冒険だけを求める子には重いかもしれないが、長い物語の中で考える力が育ってきた子には強く残る。ファンタジーを通して社会を見る入口にもなる。

低学年向けではない。命の扱いも重く、緊張感もある。だからこそ、中学生に読んでほしい本の棚では柱になる。現実の社会問題を直接説明されるより、物語の中で倫理の揺れに出会うほうが深く届くことがある。

『獣の奏者』を読むと、ファンタジーは現実逃避ではないとわかる。むしろ、現実ではまっすぐ見にくい問いを、別の世界の生き物と制度に映して見せてくれる。

19.ぼくらの七日間戦争(ポプラ社/「ぼくら」シリーズ1・単行本)

『ぼくらの七日間戦争』は、仲間、反抗、社会との距離を読む本だ。子どもたちが大人に対して反乱を起こす。設定だけで、胸が少しざわつく。子どもだけの反乱が、社会を見る最初の視線になる。

この本の面白さは、反抗がただのわがままでは終わらないところにある。大人の言うことに従うだけでは見えないものがある。けれど、子どもだけで自由を手に入れることにも、危うさがある。その両方が、物語の勢いの中に入っている。

高学年から中学生に合いやすい。学校や家庭のルールに対して、「本当にそれでいいのか」と感じ始める時期に読むと、かなり近い。友情や作戦の楽しさもあるので、重い社会小説として構えずに入れる。

ただし、反抗の気分が強い本なので、低学年には少し早いこともある。大人が「反抗的になりそう」と心配するより、子どもが社会と距離を取り始める時期に、物語の中で一度試してみる本として考えるといい。

読後に残るのは、大人を倒せば終わりという単純さではない。自分たちで決めることの楽しさと怖さ。その両方を、子どもたちの熱気の中で感じられる。

20.漫画 君たちはどう生きるか(マガジンハウス/単行本)

『漫画 君たちはどう生きるか』は、児童文学の核というより、中学生への橋渡しとして置きたい一冊だ。コペル君の経験を通して、ものの見方、人との関係、社会の中で自分がどう生きるかを考えていく。

漫画版なので、文章だけの本に比べて入りやすい。けれど、扱っていることは軽くない。正しさを押しつけず、考え続ける姿勢を渡す本である。友だちとの関係、失敗、恥ずかしさ、後悔。中学生のころにぶつかりやすい感情が、わかりやすい形で置かれている。

親子で読む場合は、道徳の教材のように扱いすぎないほうがいい。「どう生きるべきか」をすぐに答えさせると、せっかくの余白が狭くなる。むしろ、読んだあと少し時間を置き、何かの会話の中で戻ってくるくらいが合う。

向かないとすれば、物語の没入感だけを求める時だ。冒険やファンタジーのように世界へ入り込む本ではなく、考えるための本である。だから、読書の楽しさが育ってきたあと、少し立ち止まりたい時に置くといい。

吉野源三郎の関連作品へ進むなら、吉野源三郎おすすめ本の棚が受け皿になる。子どもから大人へ向かう途中で、「自分で考える」ということが少し重みを持ちはじめる一冊だ。

次に進む児童書の棚

ここまでの20冊は、児童書カテゴリの入口になる本だ。ただ、全部を抱え込むと、かえって選びにくくなる。読み終えた本の感触に合わせて、次の棚へ進むといい。

絵本から童話へ進みたいなら、中川李枝子おすすめ本が自然だ。『いやいやえん』から入ると、子どもの声に近い物語がどう広がるか見えてくる。

日常の冒険や小学生の仲間ものが好きなら、那須正幹おすすめ本へ進みたい。ズッコケ三人組の楽しさだけでなく、戦争や歴史に触れる作品まで幅がある。

冒険ファンタジーに夢中になったなら、デルトラ・クエスト読む順が役に立つ。一冊目で火がついた子は、読む順が見えるだけで次へ進みやすい。

海外児童文学の自由さに惹かれたなら、アストリッド・リンドグレーンおすすめ本へ。ピッピの自由、やかまし村の日常、子どもの世界の広さが見えてくる。

高学年から中学生の心の揺れを読みたいなら、梨木香歩おすすめ本がいい。『西の魔女が死んだ』の余韻から、自然、記憶、家族へと読書が深まっていく。

関連グッズ・サービス

本を読む時間は、環境でかなり変わる。子どもの読書では、紙の本を手に取る体験も大切だが、親が候補を探したり、移動中に物語へ触れたりする選択肢があると、読書の入口は増える。

読み放題サービスは、気になった本を試しやすい。特にシリーズものや関連本を探すとき、最初の一冊にたどり着くまでの心理的なハードルが下がる。

Kindle Unlimited

音声で物語に触れる方法もある。長い本にまだ慣れていない子や、親子で移動中に物語を共有したいとき、耳から入る読書は思ったより自然になじむ。

Audible

もう一つあるといいのは、読書記録ノートだ。読んだ冊数を競うためではなく、「どの本のどこが好きだったか」を一言だけ残す。あとから見返すと、子どもの読書段階そのものが小さな地図になる。

まとめ

児童書は、年齢順に並べるだけでは選びきれない。低学年には、まず『いやいやえん』『エルマーのぼうけん』『ふたりはともだち』のように、声の近い童話や短い冒険が合いやすい。読書が苦手な子には、『かいけつゾロリのドラゴンたいじ』や『Z1それいけズッコケ三人組』のように、笑いとシリーズの勢いが助けになる。

物語に深く入れるようになったら、『デルトラ・クエストI 1 沈黙の森』『魔女の宅急便』『長くつ下のピッピ』へ進むといい。冒険、自由、自立が、子どもの中で少しずつ形を持つ。さらに高学年から中学生へ向かうなら、『モモ』『西の魔女が死んだ』『獣の奏者 1闘蛇編』が、時間、死、命、社会について考える入口になる。

  • 最初の一人読みなら、『いやいやえん』か『エルマーのぼうけん』。
  • 読書が苦手なら、『かいけつゾロリのドラゴンたいじ』からでいい。
  • 友情や学校の話なら、『ふたりはともだち』『ルドルフとイッパイアッテナ』。
  • 冒険ファンタジーなら、『デルトラ・クエストI 1 沈黙の森』『はてしない物語』。
  • 親子で深く読むなら、『シャーロットのおくりもの』『西の魔女が死んだ』。

子どもの読書は、一直線に進まなくていい。笑える本に戻っても、短い本を選んでも、途中で休んでもいい。いま手に取れる一冊が、その子の次の棚を少しだけ明るくする。

FAQ

小学生向け児童書は、学年で選べばいいのか

学年は目安になるが、それだけで決めないほうがいい。同じ学年でも、読める長さや好きな題材はかなり違う。短い話が好きな子には『ふたりはともだち』、冒険に入りたい子には『エルマーのぼうけん』、笑いで進みたい子には『かいけつゾロリのドラゴンたいじ』のように、読書段階と気分で選ぶと失敗しにくい。

読書が苦手な子には、どの本から渡すといいのか

まずは、笑える本、絵が多い本、シリーズで次が見える本がいい。『かいけつゾロリのドラゴンたいじ』は、まじめに読ませようとしなくても、いたずらとテンポで進める。もう少し物語に入れるなら、『Z1それいけズッコケ三人組』も合う。最初から重い名作を渡すより、「一冊読み切れた」という感覚を作るほうが次につながる。

中学生にも児童書は幼すぎないか

児童書には、中学生が読んで深く残る本が多い。『西の魔女が死んだ』は学校や家族、自立の揺れに触れるし、『獣の奏者 1闘蛇編』は命や国家、倫理まで広がる。『モモ』も、時間に追われる社会を物語として読める。幼い本というより、難しいことを手に持てる形にした文学として読むといい。

親子で読むなら、どんな本が向いているか

読み終えたあとに会話が生まれる本が向いている。『シャーロットのおくりもの』は友情と別れについて、『西の魔女が死んだ』は死や家族について、静かに話すきっかけになる。ただし、感想を急かさないほうがいい。子どもは、すぐ言葉にできなくても、自分の中で物語を持っていることがある。

海外児童文学はどこから入ると読みやすいか

低学年なら『エルマーのぼうけん』、友情から入りたいなら『ふたりはともだち』、自由な主人公に出会いたいなら『長くつ下のピッピ』が読みやすい。もう少し深く読めるなら『モモ』や『秘密の花園 上』へ進むといい。海外児童文学は、名前や生活習慣が違う分、最初は少し距離があるが、その距離が読書の世界を広げてくれる。

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児童書は、子どもの年齢だけでなく、いま何に惹かれているかで次の棚が変わる。物語を一人で読み始めたばかりなら幼年童話へ、シリーズに夢中になったなら冒険や日常ものへ、深い物語を受け止められるようになったら中学生向けの児童文学へ進むといい。

絵本から童話へ進みたい人へ

『いやいやえん』のように、子どもの声に近い物語が合ったなら、この棚が読みやすい。絵本の安心感を残しながら、少しずつ長い物語へ進める。

小学生の日常・友情・冒険を読みたい人へ

学校、友だち、近所の事件、ちょっとした失敗や挑戦から読みたい子には、このあたりが合う。現実の生活に近い物語は、読書が苦手な子にも入り口になりやすい。

冒険ファンタジーに夢中になりたい人へ

『デルトラ・クエストI 1 沈黙の森』や『魔女の宅急便』が好きだったなら、日常から少しふしぎへ、さらに長い冒険へ進むといい。シリーズで読む楽しさが育つと、読書の体力も自然についてくる。

海外児童文学・名作へ進みたい人へ

『長くつ下のピッピ』『モモ』『秘密の花園 上』のような海外児童文学に惹かれたら、作家や昔話、異国の物語へ広げていきたい。日本の学校や家庭とは違う風景が、子どもの読書の窓を広げてくれる。

高学年から中学生へ進む人へ

『西の魔女が死んだ』『獣の奏者 1闘蛇編』『漫画 君たちはどう生きるか』まで読めるようになったら、児童書はもう「子ども向け」という枠を越えてくる。死、学校、社会、どう生きるかを考える本へ進むと、読書が少し大人びてくる。

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