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【今村昌弘おすすめ本】『屍人荘の殺人』から最新作まで読む順番つき代表作6選

ゾンビ×本格、予言×論理、ジュブナイル×オカルト……。今村昌弘の作品は、どれも「そんな組み合わせ、アリなのか」と驚かされながら、最後にはきっちり論理で決着がつく。その感触に一度ハマると、次の一冊を求めずにはいられない。

ここではデビュー作『屍人荘の殺人』から最新短編集『明智恭介の奔走』、ドラマ原案『ネメシス1』まで、今村作品の核がわかる6冊を取り上げる。どの本から入るか、どんな順番で読むかも含めて、体感ベースで案内していく。

 

 

今村昌弘とは?

今村昌弘は1985年生まれの推理作家。長崎県に生まれ、主に関西で育ち、岡山大学医学部保健学科を卒業後は診療放射線技師として働きながら小説を書き続けていたという。 二十代後半で職を辞し、執筆に専念して生まれたのが、のちに日本ミステリ界を揺らすことになる『屍人荘の殺人』だ。

このデビュー作で第27回鮎川哲也賞を受賞し、さらに「このミステリーがすごい!2018」「週刊文春ミステリーベスト10」「本格ミステリ・ベスト10」でそれぞれ1位、本格ミステリ大賞受賞、本屋大賞3位という “ミステリランキング四冠+α” を達成する。新人の一作がここまで各所で高く評価されるのは、国内ミステリ史の中でもかなりレアな出来事だ。

作風の特徴は、いわゆる「本格ミステリ」の鉄則を守りつつ、ホラーやオカルト、SF的な要素を大胆に組み合わせてくるところにある。ゾンビが出ようが、予言者がいようが、最後は論理で決着をつける。そのギリギリのバランスを、シリーズを重ねるごとに更新している印象がある。

また『屍人荘』シリーズだけでなく、地方都市を舞台にしたジュブナイル『でぃすぺる』、大学サークルの日常の謎を集めた『明智恭介の奔走』、ドラマと連動した『ネメシス1』など、フィールドを横に広げる動きも目立つ。いずれの作品にも共通しているのは、「不可解な出来事」を前にしても、最後まで論理と想像力を諦めない登場人物たちの姿勢だろう。

ミステリを100冊以上読み込んでから書き始めたというエピソードもあるが、その蓄積は、トリックの精度だけでなく「読者にどう驚いてもらうか」という設計のうまさに表れている。今回挙げる6冊を通して読むと、「今村昌弘ワールド」の全体像と、その進化の軌跡がかなりくっきり見えてくるはずだ。

今村昌弘のおすすめ本6選・読み方ガイド

まずは、どの本から手に取るか迷っている人向けに、ざっくりした「読み方ガイド」を用意しておく。クリックすると各レビューに飛べるようにしてあるので、気になるところから読んでほしい。

基本的には①→②→③の順で『屍人荘の殺人』シリーズを追い、そのあとで④〜⑥の単独作・スピンオフを味わうのが王道の流れになる。それぞれのレビューでは、「どんな読者に刺さるか」「どのタイミングで読むといちばん効くか」も含めて書いていく。

今村昌弘のおすすめ本6選【各巻レビュー】

1. 屍人荘の殺人

『屍人荘の殺人』は、神紅大学ミステリ愛好会に所属する葉村譲と、会長の明智恭介、そして別サークルに属する探偵少女・剣崎比留子の三人が、映画研究会の夏合宿で訪れたペンション「紫湛荘」で事件に巻き込まれる物語だ。合宿の初夜、肝試しに出かけた彼らは、想像を超える「外部の異変」に遭遇し、ペンションに立て籠もることを余儀なくされる。そして夜が明けたとき、内部では密室殺人が発生しており、そこから連続殺人の幕が開く。

この作品が「国内主要ミステリーランキング4冠」と呼ばれるほど熱狂的に迎えられた理由は、やはり “ジャンルを跨ぐ大胆さ” にある。クローズドサークルという古典的な形式に、いわゆるゾンビもののパニックホラーをぶつける。やっていることだけ聞けば悪ノリ一歩手前だが、読んでみると、ホラーとしての恐怖と、本格ミステリとしての論理的快感が、どちらも削られることなく両立している。

読みどころは、中盤以降の「世界の反転」だ。合宿ものの学園ミステリとして始まった物語が、ある瞬間を境にまったく違う顔を見せる。そのとき、読者は一度、「これ、本当に推理小説として成立するのか?」と不安になる。ところが終盤、比留子の冷静な推理が始まると、バラバラだったピースが一気に収束し、「ああ、やっぱり本格ミステリだったのだ」と膝を打つことになる。

個人的に印象に残っているのは、語り手・葉村の位置づけだ。彼は決して超然とした名探偵ではなく、むしろ事件に翻弄され、恐怖に震えながらも必死に生き延びようとする、どこにでもいそうな青年だ。その視線を通して描かれるからこそ、紫湛荘での一夜は、理屈抜きのパニックとして身体に迫ってくる。

一方で、会長の明智や探偵少女・比留子は、ミステリ好きにはたまらないキャラクター造形になっている。事件を求めて名刺を配り歩く自称名探偵と、冷静な推理で場を引き締める本物の探偵役。この二人のコンビが、シリーズ全体の「笑い」と「知性」を支えているのも魅力だ。

文章そのものは、軽やかで読みやすい。難解な専門用語や時代背景の予備知識もほとんどいらないので、普段はミステリをあまり読まない人でも、ページをめくる手が止まらないと思う。自分自身、最初は「話題作だし一応読んでおくか」くらいの気持ちで手に取ったのに、気付けば一晩で読み切っていた。

ホラー要素がある以上、流血やショッキングな描写がまったくないわけではないが、「残酷さ」を売りにするタイプではない。謎そのものの面白さ、極限状態での人間関係の揺れがメインディッシュだと感じた。

今村作品を一冊だけ読むなら、まずはここから、と胸を張って勧められる。ミステリ好きはもちろん、「最近少し読書から離れていたけれど、久しぶりに一気読みしたい」という人にもぴったりの一冊だ。

2. 魔眼の匣の殺人

シリーズ第2弾『魔眼の匣の殺人』は、『屍人荘』の直後からしばらくたった時期の物語。葉村と比留子は、オカルト雑誌に載った「予言記事」に興味を持つ。その記事は、大阪のビル火災や紫湛荘での事件を言い当てていたとされ、その背後には「班目機関」と呼ばれる謎の組織がいるかもしれない。二人は記事の差出人を追って山奥の施設「魔眼の匣」を訪れるが、そこには「あと二日のうちに誰かが死ぬ」という不穏な予言が待っていた。

舞台となる「魔眼の匣」は、人里離れた山の中にぽつんと建つ施設で、そこに九人の来訪者が集う。予言者と恐れられる老女、その孫娘、十代の若者たち、葉村と比留子……。誰が死ぬのか、誰が生き残るのか、そして本当に「未来が見えている」のか。読者は、登場人物たちと同じように、疑いと恐怖のあいだを揺れ動くことになる。

本作の面白さは、「予言」という一見ミステリと相性の悪そうな要素を、きちんと論理でねじ伏せているところにある。未来があらかじめ決まっている世界で、犯人当てやトリックが成り立つのか。そこにどう突破口を開くのか。ネタバレになるので具体的には書けないが、終盤の真相開示では「そう来たか」と何度もページを戻したくなった。

同時に、シリーズ全体の縦軸である「班目機関」の存在感が一気に増す巻でもある。紫湛荘の事件も、魔眼の匣での出来事も、偶然ではなく、ある大きな実験/計画の一部なのかもしれないという予感。その不気味さが、ラストでじわじわ効いてくる。

キャラクター面では、葉村と比留子の距離感が少しずつ変化していく様子が楽しい。命の危険にさらされながらも、比留子が冷静に推理を組み立てていく姿に、葉村が戸惑い、感嘆し、ときに食ってかかる。そのやりとりが、血なまぐさい事件の中に、人間味のある温度を与えている。

読者としては、「ホラー要素は『屍人荘』ほどではないが、精神的な怖さはこちらが上かもしれない」という感触を持った。誰が予言を信じ、誰が利用しようとしているのか。誰を信じていいのかわからなくなる閉鎖空間の空気は、じわじわと心を削ってくる。

『屍人荘』で今村ワールドの扉を開いた人にとって、『魔眼の匣』は「この世界が、この先どこまでいくのか」を見せてくれる一冊だ。シリーズを追うつもりがあるなら、間を空けずにここまで読んでおくと、後の『兇人邸』がいっそう効いてくると思う。

3. 兇人邸の殺人

シリーズ第3弾『兇人邸の殺人』は、タイトルからしてただならぬ気配を漂わせている。舞台は“生ける廃墟”として人気を集める地方テーマパーク。その園内にそびえ立つ異様な建物こそが「兇人邸」だ。比留子たちが追う班目機関の研究成果がその内部に隠されているらしく、葉村と比留子は依頼主とともに深夜の兇人邸へ潜入する。しかし彼らを待っていたのは、“異形の存在”による無慈悲な殺戮だった。

この巻は、とにかく「攻めている」。従来のクローズドサークルとは毛色の異なる、テーマパーク×ホラーアトラクション×本格ミステリという三段構え。しかも、シリーズを重ねる中でじわじわと姿を現していた班目機関の実験が、ここでかなり生々しい形で描かれる。

一方で、ただ恐怖を煽るだけの物語になっていないのが今村作品らしい。兇人邸内で起きる出来事には、きちんと「ルール」がある。なぜその順番で人が死ぬのか、なぜあの部屋だけが安全なのか、なぜ“異形の存在”はあのタイミングで現れるのか。ホラーとしての見せ場の裏側に、冷徹な設計図が隠れている。

個人的には、葉村の成長を強く感じた巻でもあった。『屍人荘』の頃の葉村は、どちらかといえば事件に巻き込まれてオロオロする側だったが、『兇人邸』では、自分の恐怖を押し殺しながらも、他人を生かすために判断し、動く姿が目立つ。その姿に、読者としても「ここまで付き合ってきてよかった」と思わされる。

また、シリーズを通して描かれてきた「日常と非日常の断絶」も、ここではかなり生々しい。テーマパークという、本来は娯楽と日常の延長にある場所が、一気に死と実験の場へと変貌する瞬間。そのギャップが、単なるホラー以上の不気味さを生んでいる。

『兇人邸』は間違いなくシリーズ中でも好みが分かれる作品だと思う。グロテスクなイメージが苦手な人にはつらい場面もある。ただ、その分、「ここまでやるか」という創作側の気迫はすさまじい。今村作品の振れ幅の広さ、本格ミステリという枠組みをどこまで押し広げるかという挑戦が、もっとも露骨に現れた一冊と言える。

シリーズを読み進めて、この巻までたどり着いた読者なら、最後のページを閉じたあと、しばらく現実に戻りたくなくなるはずだ。いい意味で、心身ともにくたびれる読書体験だった。

4. でぃすぺる

『でぃすぺる』は、一見すると『屍人荘』シリーズとはまったく違う顔をしている。舞台は衰退が進む田舎町・奥郷町。オカルト好きの小学6年生・木島悠介(ユースケ)は、2学期の始めに壁新聞の掲示係に志願する。同じく係になったのは、前期にクラス委員長を務めていた優等生・波多野紗月(サツキ)。真面目な彼女が相手では、オカルト記事など書かせてもらえないのでは……とユースケは身構えるが、サツキの口から出たのは「奥郷町の七不思議を調べよう」という提案だった。そこに転校生の畑美奈(ミナ)も加わり、三人は町に伝わる七不思議と、ユースケの従姉妹が巻き込まれた未解決殺人事件の謎に踏み込んでいく。

ジュブナイル×オカルト×本格ミステリという組み合わせは、『屍人荘』以上に「どうなるんだ?」と思わせるが、読み進めると「なるほど、こういう形に着地させるのか」と納得させられる。七不思議の噂は、単なる怪談としてではなく、町の歴史や人間関係、隠された罪と密接に結びついており、一つひとつのエピソードが後半の真相に向けてきっちり機能していく。

中盤までの読み心地は、どこか懐かしい。夏休みの探検、廃トンネル、夜の学校、秘密のノート。子どもの頃に経験した「なんでもない場所が少しだけ怖く見えたあの感じ」が、じわじわと甦ってくる。ユースケの「怖いけど知りたい」という感情は、そのまま読者の感情の動きでもある。

しかし物語が進むにつれ、「これはただの子どもたちの冒険談では終わらない」と気付かされる。従姉妹の未解決事件に関わる大人たちの事情、町の経済的な行き詰まり、子どもと大人のあいだの目に見えない境界線。オカルトめいた現象の向こう側にある「現実」の重さが、静かに積み上がっていく。

個人的には、終盤のある場面でページを閉じて深呼吸した。そこには、理不尽さややりきれなさも含めた「現実」が描かれていて、大人として読んでいる自分のほうが、登場人物の子どもたちよりもたじろいでしまったのだ。けれど同時に、ユースケたちの選択に、わずかな救いも感じた。

ミステリとして見ると、七不思議それぞれの扱い方が巧みだ。単発の怪異話として消費するのではなく、きちんと伏線になり、意味を持って回収される。怖さと論理のバランスは、『屍人荘』とは違う方向で今村らしさが出ている。

小学生が主人公だからといって、必ずしも「児童向け」とは言い切れない。むしろ、子どもの頃の感覚を半分忘れてしまった大人が読むと、一段と刺さるタイプの物語だと感じた。シリーズとは別ラインで今村作品の幅を知りたい人には、ぜひ手に取ってほしい一冊だ。

5. 明智恭介の奔走

『明智恭介の奔走』は、『屍人荘の殺人』以前に起きた五つの事件を収めた短編集だ。神紅大学ミステリ愛好会の会長にして自称名探偵・明智恭介が、事件を求めて名刺を配り歩き、その結果、大学サークル棟の窃盗騒ぎや宗教学試験問題の漏洩事件など、キャンパスを舞台にしたさまざまなトラブルへ首を突っ込んでいく。

長編シリーズを読んでいるとき、「この人たちは普段どんな生活をしているのか」と気になることがある。この短編集は、まさにその疑問に答えてくれる一冊だ。紫湛荘の惨劇に巻き込まれる前、明智と葉村がどんな日々を過ごしていたのか。彼らの「日常」の輪郭が、ユーモラスな事件とともにくっきりしてくる。

各編とも、設定自体はそこまでスケールが大きくない。旧ボックスで起きた泥棒同士の鉢合わせ事件、試験問題の流出疑惑、ちょっとした行き違いから生まれた誤解。だが、その小さな謎を、明智は大真面目に「事件」として扱い、全力で推理する。その様子を、半ば呆れつつも付き合う葉村の一人称が、なんとも愛おしい。

本格ミステリとしての読み応えも、短編だからといって薄くなってはいない。限られた状況や会話から、どうやって真相にたどり着くのか。短いページ数の中に、きちんとフェアな手がかりが仕込まれており、「なるほど、そういう見方があったか」と思わされる。

シリーズ読者にとって嬉しいのは、「あの人たち」の意外な一面が垣間見えるところだろう。『屍人荘』ではシリアスな局面が多かったキャラクターが、ここではくだけた表情を見せたり、思わぬ趣味を披露したりする。そうした細部が、長編に戻ってからの読み返しを豊かにしてくれる。

自分は『兇人邸』まで読み終えてからこの短編集に触れたのだが、正直、もっと早く読んでおけばよかったと感じた。シリーズの緊張感が続く中に、一度こうした「日常の謎編」を挟むと、キャラクターへの愛着が一段深くなる。

初めて今村作品に触れる人にとっても、ここから入るのは十分アリだと思う。キャンパスミステリ的な軽やかさがありつつ、後に待ち受ける大事件の予感も少しだけ漂っている。長編にいきなり飛び込むのは気が引けるという人は、この短編集で明智と葉村の空気に慣れておくといい。

6. ネメシス1

『ネメシス1』は、日本テレビ系で放送された探偵ドラマ「ネメシス」と連動した小説版シリーズの第1弾で、今村昌弘が完全オリジナルストーリーを含む構成を担っている。

は横浜にある探偵事務所ネメシス。お人好しの探偵・風真尚希、天才的なひらめきを持つ助手・美神アンナ、ダンディな社長・栗田一秋という三人を中心に、遺産相続をめぐる謎や遊園地の爆弾事件など、多彩な事件が展開する。

ドラマを観ていた人にはおなじみだが、風真は「ポンコツ探偵」として描かれ、実際に謎を解いているのはアンナ、という構図になっている。小説版でもこの構図は健在で、風真の空回りとアンナの鋭さの対比が、軽妙な会話とともに楽しめる。

ただ、『ネメシス1』を単なるノベライズと侮ると、いい意味で裏切られる。映像作品では描ききれなかった人物の内面や、事件のロジック部分が、今村らしい筆致で補強されているからだ。特に、遺言の隠し場所を暗号と謎解きゲームに託した金持ちの話や、遊園地での爆弾事件の顛末は、小説として読んでも十分な本格ミステリの手応えがある。

シリーズ全体の縦軸として描かれる「アンナの父親の失踪」と「20年前の事件」も、この第1巻からしっかりと伏線が張られている。ドラマを知っている人であれば、「あのシーンの裏でこういう心情があったのか」とニヤリとできるし、逆にドラマ未見の読者でも、探偵事務所もののシリーズとして素直に楽しめる構成だと感じた。

今村作品として見ると、『屍人荘』シリーズや『でぃすぺる』よりもポップで明るいトーンが前面に出ている。シリアスな場面ももちろんあるが、全体としては「謎解きアトラクション」に近い。ハラハラしつつも、読後はどこか爽やかな気分になれる。

個人的には、電車の中でサクサク読み進めるタイプの一冊だった。重たいテーマをじっくり噛みしめるというよりは、休日の午後にコーヒーを片手に読みながら、ふと気になるフレーズや仕掛けに「おっ」と反応するような距離感が心地よい。

今村昌弘の「ドラマとの接点」を覗いてみたい人、本格ミステリは好きだけれどあまり血なまぐさいのは…という人には、かなり相性のよい入門書になるはずだ。

関連グッズ・サービス

本を読んだ後の興奮や余韻を、日常の中にうまく根づかせるには、生活に取り入れやすいツールやサービスと組み合わせるのがいちばん手っ取り早い。今村作品の読書体験と相性のいいアイテムを、いくつか挙げておく。

  • ミステリ読み放題に寄り添う電子書籍サービス。

    『屍人荘の殺人』シリーズや『でぃすぺる』など、講談社タイガや創元推理文庫の作品は電子版も充実している。紙で集めるのも楽しいが、「思い立ったときにすぐ続きが読める」環境があると、ページをめくるハードルが一気に下がる。

    Kindle Unlimited

    自分も、シリーズ物を追いかけるときは、ついタブレットを手に取ってしまう。ベッドの中で電気を消したあとも、こっそりラスト数ページだけ読む、あの背徳感込みで楽しい。

  • 移動中に使える音声読書サービス。

    ホラー寄りのミステリは、音声で聴くと別の怖さが立ち上がる。徒歩通勤の途中や、夜の部屋で灯りを落とした状態で聴くと、紫湛荘や兇人邸の空気が、文字とは違う立体感で迫ってくる。

    Audible

    ミステリの朗読は、声優さんの息遣い一つで印象が変わる。日中に読むときは平気だったシーンが、夜に耳から入ってくると少し背筋が寒くなったりして、その差を味わうのも一興だ。

  • 映像化作品を楽しむための動画配信。

    『屍人荘の殺人』は映画化され、『ネメシス』は連続ドラマとして放送された。小説で謎の構造を把握したうえで映像版を観ると、「このカット割りはここを伏線として見せたいのか」といった演出の意図も見えてきて、二度おいしい。

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    深夜に一人で観ると怖すぎるタイプの作品なので、できれば休日の昼間、カーテンを開けてポップコーン片手にどうぞ。

  • 夜更かし読書の相棒になるコーヒー豆やお菓子。

    「次の章まで」と思いつつ、気付けば深夜まで読んでしまうのが今村作品の危険なところ。スペシャルティコーヒーやチョコレートなど、ちょっと贅沢な一品を用意しておくと、「あの続きはコーヒーを淹れてから」と、自分なりの儀式を作れる。

    長い一夜を越えてラストの真相にたどり着いたとき、マグカップの底に少しだけ残ったコーヒーが、不思議と愛おしく感じられる。

 

 

 

 

まとめ

今村昌弘の6冊を並べてみると、「本格ミステリとは何か」という問いを、毎回違う角度から突きつけてくるように感じる。ゾンビが出ようが、予言者がいようが、小学生が七不思議を追いかけようが、最後には人間の行動と心理の積み重ねから真相を導き出す。その姿勢が、一冊ごとのバラエティを越えて、作品世界を一本の線でつないでいる。

どの本も、それぞれ違う読書の筋肉を使わせてくる。『屍人荘の殺人』ではパニックとロジックのギャップで心拍数が上がり、『魔眼の匣の殺人』では「未来」と「現在」をめぐる思考実験に頭をフル回転させ、『兇人邸の殺人』では身体感覚レベルの恐怖と対峙する。『でぃすぺる』は子どもの背中越しに大人の世界を覗き込むような視線を与え、『明智恭介の奔走』はシリーズの核となるキャラクターの素顔を見せてくれる。『ネメシス1』は、映像と文字が交錯する場所での新しい謎解きの楽しさを教えてくれる。

最後に、気分や読書の目的別に、ざっくりおすすめを並べておく。

  • まず一冊だけ読むなら:『屍人荘の殺人』
  • シリーズの奥行きを味わいたいなら:『魔眼の匣の殺人』『兇人邸の殺人』
  • 切ない余韻も含めて噛みしめたいなら:『でぃすぺる』
  • キャラクター愛を深めたいなら:『明智恭介の奔走』
  • 軽やかに楽しめる一冊を探しているなら:『ネメシス1』

ミステリは、読んでいるあいだだけ別の世界に連れ出してくれる娯楽でもあり、自分の世界の見え方を少しだけ変える装置でもある。どの本からでもいいので、一冊、手元に置いてみてほしい。ページを閉じたあと、日常の風景のどこかに、今村昌弘の物語の影がうっすら混じって見えるかもしれない。

FAQ

Q. 『屍人荘の殺人』シリーズはどの順番で読むべき?

基本的には刊行順、つまり『屍人荘の殺人』→『魔眼の匣の殺人』→『兇人邸の殺人』の順がいちばんしっくりくる。登場人物の関係性や、「班目機関」をめぐる縦軸の情報が、巻を追うごとに上書きされていく構造になっているからだ。そのうえで、明智と葉村の日常を描いた『明智恭介の奔走』をどこに挟むかは好みだが、個人的には『屍人荘』読了後〜『魔眼の匣』の前あたりに読むと、キャラクターへの理解がぐっと深まり、続巻の事件により感情移入しやすくなると感じた。

Q. ホラーやグロテスクな描写が苦手だけれど、大丈夫?

『屍人荘の殺人』と『兇人邸の殺人』には、どうしてもホラー寄りの描写が出てくる。流血やショッキングな場面が完全にゼロになることはない。ただし、作品の核はあくまで「謎」と「論理」にあり、スプラッタ的な残酷さを前面に押し出すタイプではない。どうしても不安な場合は、まず『明智恭介の奔走』や『ネメシス1』から入って、今村作品の語り口に慣れてから『屍人荘』へ向かうのもひとつの手だ。『でぃすぺる』は心理的な怖さがじわじわ来るタイプで、直接的なグロさよりも「じんわりくる不穏さ」がメインだと考えておくといい。

Q. 中高生でも楽しめる? 読むならどの作品がおすすめ?

中高生読者との相性はかなり良いと思う。とくに『でぃすぺる』は主人公が小学生とはいえ、学校や家庭、友人関係の描き方がリアルで、思春期の感覚にも寄り添ってくるはずだ。『屍人荘の殺人』も、大学サークルを舞台にした青春要素があり、「推理小説を読んでみたいけれど何から手を付ければいいかわからない」という十代にはぴったりの入り口になる。逆に『兇人邸の殺人』は恐怖描写が強めなので、ホラー耐性に自信がついてから挑むといい。

Q. 電子書籍や音声版で読むメリットはある?

電子書籍で読むと、気になった伏線や人物相関をすばやく検索できるので、複雑なシリーズものとの相性がいい。紙の本で一度読み、そのあと電子版でポイントだけ読み返す、という二段構えも楽しい。音声版が用意されている作品なら、通勤中や家事の合間に少しずつ物語を進められるので、「まとまった読書時間がなかなか取れない」という人にも向いている。声優さんの演技が乗ることで、キャラクターの印象が変わるのも、紙・電子との大きな違いだ。

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