人の心を理解することは、最も難しく、そして最も大切な営みだ。この記事では、「メンタライジング(心を理解する力)」に関するおすすめ本13冊を紹介する。臨床心理・発達支援・教育・子育ての現場で実際に役立つ書籍を中心に、読んで“使える”心理学を厳選した。
- メンタライジングとは?
- おすすめ本13選
- 1. 子どものメンタライジング臨床入門:個人、家族、グループ、地域へのアプローチ(誠信書房/単行本)
- 2. メンタライジングによる子どもと親への支援:時間制限式MBT-Cのガイド(金剛出版/単行本)
- 3. メンタライジングによる青年への支援:MBT-Aの実践ガイド(金剛出版/単行本)
- 4. メンタライジングの理論と臨床:精神分析・愛着理論・発達精神病理学の統合(北大路書房/単行本)
- 5. メンタライジング・アプローチ入門:愛着理論を生かす心理療法(北大路書房/単行本)
- 6. メンタライゼーションを学ぼう(日本評論社/単行本)
- 7. メンタライゼーション実践ガイド―境界性パーソナリティ障害へのアプローチ(岩崎学術出版社/単行本)
- 8. メンタライゼーションと境界パーソナリティ障害(岩崎学術出版社/単行本)
- 9. 子ども・養育者・支援者をつなぐ 複雑性トラウマへのメンタライジング・アプローチ(北大路書房/単行本)
- 10. メンタライゼーションによる家族との治療(金剛出版/単行本)
- 11. 愛着関係とメンタライジングによるトラウマ治療:素朴で古い療法のすすめ(北大路書房/単行本)
- 12. メンタライゼーションと遊ぼう 愛着外傷への支援が解き明かすこころの臨床(日本評論社/単行本)
- 13. 思春期青年期精神医学 32巻1号 ワークショップ「子どもへのメンタライゼーションの活用」(星和書店/雑誌)
- 関連グッズ・サービス
- まとめ:今のあなたに合う一冊
- よくある質問(FAQ)
- 関連リンク:心を理解する心理学の名著へ
メンタライジングとは?
メンタライジング(Mentalizing/メンタライゼーション)とは、「自分や他者の行動の背後にある“心の状態”を想像して理解する力」を指す。人間関係の中で「なぜあの人はそう言ったのか」「自分はなぜ怒ったのか」といった問いを立てるとき、私たちは無意識にこの力を使っている。
概念を理論化したのは、ピーター・フォンギー(Peter Fonagy)とアンソニー・ベイトマン(Anthony Bateman)ら。彼らはアンナ・フロイト研究所を拠点に、愛着理論と精神分析を統合し、「心を理解する力」が安全な人間関係と精神的健康の基盤になることを示した。つまりメンタライジングとは、アンナ・フロイトの「自我と防衛」の理論を現代的に発展させた“21世紀の自我心理学”ともいえる。
本記事では、理論書から実践ガイド、親子支援まで、学問と現場をつなぐ名著を紹介する。
おすすめ本13選
1. 子どものメンタライジング臨床入門:個人、家族、グループ、地域へのアプローチ(誠信書房/単行本)
メンタライジングを「子どもを理解する臨床実践」として体系化した日本語の決定版。個人療法・家族支援・学校連携・地域福祉など、多様な場面で心の理解力を育てる手法を紹介する。著者陣はアンナ・フロイト研究所の理論を背景に、愛着理論・発達心理学・社会的支援を統合。理論だけでなく、日本の教育・福祉現場に即したケースも豊富で、実践への橋渡しとして最適。
刺さる読者像:スクールカウンセラー、児童発達支援職、子育て支援NPO、教育相談員。
おすすめポイント:読後、「心を見る力」は専門家だけでなく、親や教師にも育てられると実感できる。臨床心理学と教育が自然に交わる一冊。
2. メンタライジングによる子どもと親への支援:時間制限式MBT-Cのガイド(金剛出版/単行本)
アンナ・フロイト研究所が開発した「MBT-C(Mentalization-Based Treatment for Children)」の公式実践ガイド。セッション構造、プレイセラピーの枠組み、親面接の進め方など、理論と技法を詳細に解説する。従来の行動療法や分析法と異なり、「心を読む」ことを支援者と親子が一緒に学ぶ点が特徴だ。
刺さる読者像:心理士・児童精神科医・臨床心理大学院生。
おすすめポイント:読んでいて、“支援とは相手の内面に興味をもつこと”なのだと再確認できる。臨床の原点を思い出させる書。
3. メンタライジングによる青年への支援:MBT-Aの実践ガイド(金剛出版/単行本)
青年期の不安定な自我や対人トラブルを、「心を守る防衛」として理解し直す。反抗や無気力を“問題行動”で終わらせず、“心の防衛”として読み解く視点を提示。MBT-Aモデルに基づき、治療者・親・教師が協働で思考するプロセスを描く。
刺さる読者像:思春期支援、スクールカウンセラー、家族相談に関わる心理職。
おすすめポイント:読後、青年の「沈黙」や「反抗」がまったく違って見える。行動の裏にある“考える力”を支える視点が身につく。
4. メンタライジングの理論と臨床:精神分析・愛着理論・発達精神病理学の統合(北大路書房/単行本)
理論派必読の大著。メンタライジングの基礎概念を精神分析・発達精神病理学・愛着理論の三軸から整理し、臨床実践との架け橋を描く。フォンギー理論の深層を知りたい人には格好のリファレンス。防衛機制から心の表象・メタ認知までを統合的に扱う。
刺さる読者像:心理学研究者、精神分析・臨床心理学を学ぶ大学院生。
おすすめポイント:理論の背後にある「心を理解したい」という人間的願いが伝わる。知的興奮を感じる読書体験になる。
5. メンタライジング・アプローチ入門:愛着理論を生かす心理療法(北大路書房/単行本)
メンタライジングを「対話の心理療法」として理解できる最良の入門書。愛着理論との接点を明確にし、「安心感のある関係」が心の理解力を育てる過程を具体的に描く。図表と事例が豊富で、理論と実践をバランスよく学べる。
刺さる読者像:初学者、心理大学生、教育・看護・福祉分野で人と関わる人。
おすすめポイント:難解と思われがちなメンタライジングを「共感の訓練」として捉え直せる。読後の納得感が深い。
6. メンタライゼーションを学ぼう(日本評論社/単行本)
メンタライジング理論の基礎から、日常生活での応用までをコンパクトに解説。愛着理論や発達心理学との関連もわかりやすく、一般読者でもスムーズに理解できる。図版が多く、読後に「自分にもできそう」と感じられる構成。
刺さる読者像:心理学を初めて学ぶ人、教育や看護の実務者。
おすすめポイント:「心を理解するとはどういうことか?」を丁寧に噛み砕いて教えてくれる。入門の最初の一冊に最適。
7. メンタライゼーション実践ガイド―境界性パーソナリティ障害へのアプローチ(岩崎学術出版社/単行本)
バトマン&フォンギーによるMBT(Mentalization-Based Treatment)の実践解説書。境界性パーソナリティ障害(BPD)の治療において、感情調整と人間関係修復を両立する方法を提示。セッション構成、介入手順、失敗例と回復のプロセスまで臨場感豊かに描く。
刺さる読者像:精神科医、臨床心理士、BPD支援に関わる専門職。
おすすめポイント:理論より“人をどう支えるか”が具体的に見える。BPD理解に新しい希望を与えてくれる。
8. メンタライゼーションと境界パーソナリティ障害(岩崎学術出版社/単行本)
前項の理論編ともいえる一冊。BPDの病理を「心を理解する力の失調」として説明し、メンタライジング能力を再構築する方法を提示。感情の爆発や誤解の背景にある「誤った心の読み」を丁寧に分析する。
刺さる読者像:精神分析・愛着理論・トラウマ臨床に興味を持つ心理職。
おすすめポイント:難解な病理を“共感可能な言葉”に翻訳してくれる。BPD支援に向き合う勇気をくれる書。
9. 子ども・養育者・支援者をつなぐ 複雑性トラウマへのメンタライジング・アプローチ(北大路書房/単行本)
虐待・ネグレクトなどのトラウマを経験した子どもと養育者を支援するための実践書。支援者自身がメンタライジングを用いて関係性を再構築するプロセスを詳述。心の安全基地をどう再形成するかに焦点を当てる。
刺さる読者像:児童相談所職員、トラウマ支援専門職、臨床心理士。
おすすめポイント:「支援する人の心」も支えられていると感じる。読後に現場での共感の質が変わる。
10. メンタライゼーションによる家族との治療(金剛出版/単行本)
家族療法の文脈でメンタライジングを活用する実践書。家族システム内での誤解・投影・過剰な役割をどうほどくかを、MBTの原理で再構築する。共感と境界設定の両立を教える一冊。
刺さる読者像:家族療法士、福祉相談員、医療ソーシャルワーカー。
おすすめポイント:「家族全員が“心を理解する練習”をする」という発想が新鮮。支援の実効性が高まる内容。
11. 愛着関係とメンタライジングによるトラウマ治療:素朴で古い療法のすすめ(北大路書房/単行本)
メンタライジングの根底にある「愛着」と「安全な関係性」の力を掘り下げる一冊。トラウマ治療を“高度な技法”ではなく、“人と人が出会い、理解し合う行為”として再定義する。タイトルの「素朴で古い療法」とは、まさにアンナ・フロイト以来の“共感するまなざし”のこと。支援者の人間性を取り戻す原点的メッセージが詰まっている。
刺さる読者像:トラウマ臨床に携わる心理士・精神科医、被支援者との関係性に悩むカウンセラー。
おすすめポイント:技法書ではなく、心のあり方を問う哲学書のよう。読後に「支援とは関係を信じる勇気だ」と感じさせられる。
12. メンタライゼーションと遊ぼう 愛着外傷への支援が解き明かすこころの臨床(日本評論社/単行本)
タイトルの通り、「遊ぶように理解する」ことを提案する異色の一冊。遊戯療法やグループワークを通じ、愛着外傷を抱える子どもたちの“心の語り”を取り戻す過程を描く。理論の堅苦しさを解きほぐし、楽しく読める構成で、メンタライジングを体感的に理解できる。
刺さる読者像:保育士、教育心理職、臨床心理士、発達支援を行うすべての人。
おすすめポイント:読むほどに「心の遊び場」が生まれる。難解な理論を“温かい言葉”で感じられる、現場の名著。
13. 思春期青年期精神医学 32巻1号 ワークショップ「子どもへのメンタライゼーションの活用」(星和書店/雑誌)
国内学会誌の特集号として、メンタライジングの教育・臨床応用を幅広く網羅。スクール臨床・児童精神医療・地域連携の実践報告が中心で、理論を現場でどう運用するかがリアルに分かる。現職カウンセラーや研究者による最新の討議が収録され、一次情報としての価値も高い。
刺さる読者像:実務者・研究者・臨床心理系の大学院生。
おすすめポイント:学術的でありながら現場目線。メンタライジング理論の「今」を知るための信頼できる資料集。
関連グッズ・サービス
メンタライジングの学びを日常で実践するには、「読む」だけでなく「感じ・記録する」ことが重要だ。心を理解する力は、反省と気づきの積み重ねから育っていく。以下のサービスやツールを組み合わせると、理論が生活に根づく。
- Kindle Unlimited:心理学・発達・カウンセリング関連のタイトルが多数読める。メンタライジング入門書も対応しており、紙では絶版の本を入手できるケースもある。読書習慣を通して「心の観察力」を育てられる。
- Audible:心理療法や愛着理論を扱う講演・朗読書を耳で学習。移動中や家事の合間に“心を理解する感覚”を磨ける。筆者も、声で聴くと理論がぐっと身近に感じられた。
- :自分の感情や他者との関わりを短文で記録するだけで、日々のメンタライジング実践になる。「怒った/嬉しかった」の裏にある“心の理由”を書く練習ができる。
- :心理学書の長時間読書にも疲れにくく、夜でも学べる。実際に筆者も、布団の中で“心の理解力”を磨く夜を過ごしている。
メンタライジングは「気づく」学問だ。ツールを使って自分と向き合う時間を作ることで、本の内容が現実の関係に息づくようになる。
まとめ:今のあなたに合う一冊
メンタライジングの本は、「心を理解する力」を取り戻すためのガイドだ。アンナ・フロイトが説いた“防衛機制”の現代版として、私たちの人間関係に新しい視点を与えてくれる。
- 気軽に読んでみたいなら:『メンタライゼーションを学ぼう』
- 理論を深く知りたいなら:『メンタライジングの理論と臨床』
- 実践現場で使いたいなら:『メンタライジングによる子どもと親への支援』
「心を理解する力」は、他者のためだけでなく、自分自身を大切にする力でもある。焦らず、少しずつ“心を見る練習”を始めよう。
よくある質問(FAQ)
Q: メンタライジングとは簡単に言うと何ですか?
A: 自分や他人の行動の背後にある「感情」「考え」「意図」を想像して理解する力のことです。人間関係や感情コントロールの基礎能力ともいわれます。
Q: メンタライジングの本は初心者でも読めますか?
A: 『メンタライゼーションを学ぼう』や『メンタライジング・アプローチ入門』は専門用語が少なく、心理学の初心者にもおすすめです。図表や事例で理解を助けてくれます。
Q: 臨床現場ではどんなふうに使われていますか?
A: カウンセリング、児童精神科、家族療法などで、相手の“心の状態を読み取り、誤解を修正する”ための技法として使われています。特にトラウマ治療や思春期支援に効果が高いとされています。
Q: メンタライジングとマインドフルネスの違いは?
A: マインドフルネスは「今この瞬間の自分の心」に焦点を当てますが、メンタライジングは「自分と他者の心の相互作用」を理解する点が異なります。両者は補完的な関係にあります。













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