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【ハインツ・コフートとは】自己心理学おすすめ本10選【自己愛と共感を学ぶ】

自己愛とは何か――。誰もが持つ“自分を大切にしたい”という欲求が、時に傷つき、過剰に膨らみ、他者との関係をゆがめることがある。そんな人間の根源的テーマを体系的に解明したのが、心理学者ハインツ・コフート(Heinz Kohut)だ。この記事では、実際に読んで理解が深まった自己心理学の名著10冊をAmazonで購入できる現行版から厳選して紹介する。

 

 

ハインツ・コフートとは?―自己心理学の創始者

ハインツ・コフート(Heinz Kohut, 1913–1981)は、フロイト以後の精神分析を大きく変革した心理学者だ。ウィーン出身の精神科医であり、アメリカ・シカゴ大学を拠点に活動した。従来の精神分析が“欲動”(リビドー)や“無意識の葛藤”を中心に据えていたのに対し、コフートは人間を「自己(self)」という統合的な存在として捉えた。

彼が提唱した自己心理学(Self Psychology)は、「人が他者から理解され、共感されることで自己が育つ」という発達理論に基づく。コフートにとっての治療とは、クライエントが“理解される経験”を通じて再び自己を取り戻す過程そのものだった。この「共感(empathy)」を中心に据えた考え方は、今日の心理療法・カウンセリングの基礎となっている。

代表作『The Analysis of the Self』『How Does Analysis Cure?』などでは、自己愛の発達や破綻のメカニズムを精緻に描き、フロイト理論を超えた“第三の精神分析学派”として評価されている。彼の理論は、現代の心理臨床、発達心理、そして「自己肯定感」研究にまで影響を与え続けている。

おすすめ本10選

1. 新装版 自己心理学入門―コフート理論の実践(金剛出版)

 

自己心理学の出発点をわかりやすく解説した金剛出版の定番テキスト。自己愛・共感・対象関係といったコフート理論の基本を、臨床家の視点から平易に説明している。特に「自己の崩壊」と「共感による再統合」のプロセスを豊富な事例で描き、治療場面のリアリティが伝わる。専門的だが論理の流れが明快で、コフート心理学の“全体像”を最初に掴むのに最適だ。

刺さる読者像:心理学を体系的に学びたい学生、臨床心理士志望者、共感的理解を実践したいカウンセラー。

実感:初読時は抽象的な理論に感じたが、何度か読み返すうちに“共感とは相手を変える技法ではなく、理解しようとする姿勢”だと腑に落ちた。

2. 新装版 コフート自己心理学セミナー(金剛出版)

 

 

コフートの講義録をもとに編集されたシリーズ。彼の理論がどのように形成され、従来のフロイト派と何が違うのかが明快に語られる。臨床実践の中で生まれた「自己対象」の概念や、治療者の共感の位置づけをめぐる議論は圧巻。理論書というより“思想の記録”として読むと、コフートの人間観がより深く理解できる。

刺さる読者像:精神分析学派の違いを比較したい人、理論を一次資料で学びたい研究志向の読者。

実感:講義口調の柔らかさに驚いた。難解な理論の奥に、人間への温かい眼差しを感じる。

3. ハインツ・コフート―その生涯と自己心理学(金剛出版)

 

コフートの伝記的研究として最も信頼される一冊。ウィーンからシカゴに至る歩み、フロイト派との決別、自己心理学誕生の背景を詳細に追う。単なる伝記ではなく、理論が生まれた“時代の文脈”を理解できる点が貴重。彼の孤独と信念が、自己愛理論の形成とどう結びついたのかを知ることができる。

刺さる読者像:心理学史や思想史に関心がある人、人物背景から理論を理解したい読者。

実感:コフートの理論は机上ではなく、彼自身の葛藤と痛みの記録だと感じた。

4. コフートを読む(金剛出版)  

 

複雑な理論を整理しながら、現代の臨床にどう活かせるかを論じた解説書。自己対象・共感・理想化といった概念の臨床的含意をわかりやすく説明し、症例を通じて“コフートを読む”とは何を意味するのかを提示する。学術的だが柔らかい語り口で、再読するほど理解が深まる構成。

刺さる読者像:大学院レベルの心理学を学ぶ人、心理臨床現場で理論的支柱を持ちたい人。

実感:理論の断片が線としてつながり、臨床の意味が見えてきた。

5. 精神分析学派の紹介2――自我心理学・自己心理学・関係学派・応用精神分析(金剛出版)  

 

精神分析の全体像を体系的に整理した総合テキスト。フロイト、ハートマン、コフート、ミッチェルらの理論を比較し、自己心理学の位置づけを客観的に理解できる。とくに第3章「自己心理学の展開」は重要で、臨床心理学を学ぶ学生にとって貴重なリファレンスとなる。

刺さる読者像:複数学派の理論を横断的に学びたい人、精神分析の地図を持ちたい読者。

実感:各学派の思想が整理されることで、自己心理学の独自性が際立つ。

6. 共感と自己愛の心理臨床――コフート理論から現代自己心理学まで(創元社)

 

日本の臨床家がまとめたコフート理論の応用編。カウンセリング実践における「共感」の働きや、依存・境界性パーソナリティ障害への援助方法を具体的に解説している。共感を“治す技法”ではなく“存在の理解”とする視点が秀逸。実践にすぐ使える洞察が多い。

刺さる読者像:臨床心理士、公認心理師、対人支援職全般。

実感:クライエント理解の質が変わる。理論が現場で生きていることを実感した。

7. 「自己愛」と「依存」の精神分析――コフート心理学入門(PHP新書)

 

和田秀樹によるやさしい入門書。日常の人間関係や恋愛、SNS依存など現代的テーマを通して自己愛の構造を解説する。難解な理論を生活感のある例に落とし込み、コフートの思想を「生き方の心理学」として紹介している。

刺さる読者像:専門書に抵抗がある人、自己愛に悩むすべての一般読者。

実感:抽象理論が“人間らしさの心理”として理解できるようになった。

8. 壊れた心をどう治すか――コフート心理学入門2(PHP新書)

 

上記の続編。自己愛が傷ついたとき、人はどのように回復していくのかをケースで追う。「承認されたい」「見捨てられたくない」といった感情の背景に、自己心理学がどう機能するかをやさしく説く。

刺さる読者像:人間関係で疲れた人、自己肯定感を取り戻したい人。

実感:コフートの理論がカウンセリングではなく日常の人間理解に役立つと感じた。

9. 自分が「自分」でいられる コフート心理学入門(青春新書インテリジェンス)  

 

自分軸を失いやすい現代社会において、「自己の一貫性」をどう保つかをわかりやすく解説。コフート理論の中核概念“自己の連続性”を日常レベルに翻訳している。ビジネス・育児・人間関係など多様な文脈で活かせる。

刺さる読者像:自己肯定感に悩むビジネスパーソン、育児中の親、若年層。

実感:心理学が“自己を守る知恵”として機能することを実感できた。

10. How Does Analysis Cure?(University of Chicago Press/英語版)

 

コフート晩年の代表作にして、自己心理学の決定版。分析とは何をもって「治癒」と呼べるのかを根源から問い直す。翻訳されていない部分もあるが、英語で読むと理論の緊張感と知的誠実さが伝わる。自己の崩壊と再生のプロセスを思想として読むことができる。

刺さる読者像:英語原典を読みたい心理学研究者、大学院生、臨床家。

実感:理論の核心に触れると、人間理解そのものが変わる。

関連グッズ・サービス

自己理解を深めるには、書籍だけでなく実践も欠かせない。学びを生活に落とし込むツールを紹介する。

  • Kindle Unlimited:心理学書の多くが対象。夜の静かな時間に自己理解を深めるのに最適。
  • Audible:理論書を耳で聴くと新しい理解が得られる。通勤や育児中にも学びを継続できる。
  • Kindle Paperwhite:反射のない画面で長時間読書に集中できる。コフート理論の再読に最適。

まとめ:今のあなたに合う一冊

自己愛の理解は、単なる心理理論ではなく“生き方”そのものだ。自己心理学を通して、他者と自分の関係を見つめ直すことができる。

  • 気分で選ぶなら:『「自己愛」と「依存」の精神分析』
  • じっくり学びたいなら:『新装版 自己心理学入門』
  • 人物から知りたいなら:『ハインツ・コフート―その生涯と自己心理学』

自分を理解することは、他者を理解する第一歩である。

よくある質問(FAQ)

Q: コフート心理学は初心者でも読める?

A: PHP新書や青春新書の入門書は平易な表現で書かれており、初学者にも最適だ。

Q: フロイトやユングとの違いは?

A: コフートは「自己の発達」と「共感」に焦点を置き、欲動論中心のフロイト派とは異なる。ユングの個性化概念とも共鳴するが、臨床重視の立場が特徴だ。

Q: Kindle Unlimitedで読める?

A: 一部の入門書(PHP新書シリーズ)はKindle Unlimited対象のことがある。

関連リンク:自己と他者をめぐる心理学をさらに学ぶ

コフートの「自己心理学」は、フロイトからクライン、ウィニコット、ホーナイへと連なる流れの中で誕生した。 それぞれの理論をあわせて読むことで、「自己」と「他者」、「愛」と「依存」の心理が立体的に見えてくる。

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