- 感情は出来事ではなく「考え方」がつくる ― エリス心理学とは
- 第1部:エリス心理学の基礎 ― 論理療法(REBT)の考え方と実践入門
- 第2部:感情を変える技術 ― REBTの応用と現代心理への発展
- 5. REBT入門――理性感情行動療法への招待(アルバート・エリス/実務教育出版)
- 6. いやな気分の整理学――論理療法のすすめ(岡野守也/NHK出版 生活人新書)
- 7. それでも人生は変えられる――エリス博士のセルフ・セラピー(アルバート・エリス/大和書房)
- 8. 実践論理療法入門――カウンセリングを学ぶ人のために(ウィンディ・ドライデン/金剛出版)
- 9. 人生哲学感情心理療法入門(日本人生哲学感情心理学会 編/静岡学術出版)
- 10. How to Stubbornly Refuse to Make Yourself Miserable About Anything—Yes, Anything!(Albert Ellis/Citadel)
- まとめ:REBTが教える「感情を変える力」
- 関連グッズ・サービス
- よくある質問(FAQ)
- 関連リンク
感情は出来事ではなく「考え方」がつくる ― エリス心理学とは
現代のストレス社会を生きる私たちは、しばしば「出来事」に心を支配されている。
- 上司の一言で一日が台無しになる
- 恋人の反応に振り回される
- SNSの「いいね」の数で自己価値が揺らぐ
しかし、心理学者アルバート・エリス(Albert Ellis)はこう断言した。
「人を苦しめるのは出来事ではなく、その出来事についての“考え方”である。」
この思想こそが、エリスが提唱した論理療法(Rational Emotive Behavior Therapy:REBT)の核心だ。 1950年代のアメリカで、当時主流だったフロイト的精神分析に挑み、 「人は自らの思考を再構築することで感情と行動を変えられる」と説いた。 この発想はのちに認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy:CBT)へと発展し、 現代心理療法やメンタルトレーニングの基礎理論となっている。
💡 REBTが教える「感情との上手なつきあい方」
REBTが画期的なのは、単に理性で感情を押さえ込むのではなく、 感情の背後にある「~でなければならない(must/should思考)」という 非合理的な信念を見つめ直す点にある。 感情を「敵」ではなく「教師」として扱い、考え方を再構成する――それがエリス心理学のアプローチだ。
- ❌ 「失敗してはならない」 → ⭕ 「失敗しても学ぶ機会になる」
- ❌ 「人に嫌われてはならない」 → ⭕ 「嫌われても自分の価値は変わらない」
- ❌ 「完璧でいなければならない」 → ⭕ 「不完全でも人として十分価値がある」
こうした思考の再構成を通じて、 不安・怒り・落ち込みなどの背景にある「非合理的信念」を修正する―― それこそがエリス心理学(REBT)の真髄である。
📚 この記事でわかること
- REBT(論理療法)の基本構造とABC理論
- 「感情=思考の結果」という考え方の実践法
- セルフケア・教育・臨床での応用例
- 日本語で読めるおすすめ書籍10選(入門〜実践)
読めば、あなたも「感情の整理術」としての心理学に出会えるはずだ。 エリスが伝えたのは、“心を変えるのは環境ではなく、自分の考え方”――このたった一行の真理である。
第1部:エリス心理学の基礎 ― 論理療法(REBT)の考え方と実践入門
1. どんなことがあっても自分をみじめにしないためには(アルバート・エリス/川島書店)
REBT(理性感情行動療法)の核心を、最もやさしく伝える入門書。タイトルの通り、人生のあらゆる困難に直面しても「自分を惨めにしない」思考の習慣を学べる。エリスは、私たちの苦しみの大半が「出来事」ではなく「その出来事についての考え方」から生まれると説く。これが有名なABC理論(A=出来事、B=信念、C=結果)だ。
本書はその理論を、ユーモアと皮肉を交えながら現実的に解説する。たとえば「人に嫌われたら終わり」という思い込みを、「好かれたいが、好かれなくても価値は変わらない」と書き換える。シンプルだが、これだけで心の反応が変わる。読んでいるうちに、自分の中にある“非合理的信念”を一つずつ見つけて手放していける感覚がある。
エリスの筆致は軽妙で、心理学の理屈を超えて「生きる智慧」として響く。悩んでいる人にこそ読んでほしい、セルフカウンセリングの永遠の定番。
おすすめの読者像: 落ち込みやすい人、他人の目を気にしやすい人、感情の整理術を学びたい人。
2. 論理療法――自己説得のサイコセラピイ(アルバート・エリス/川島書店)
REBT以前に書かれた、エリス初期思想の集大成。まだ「論理療法」という名前すら確立していなかった時代に、彼はすでに「自己説得によって人は変われる」と気づいていた。心理療法の現場で繰り返された対話と観察をもとに、人間の感情を変えるための“思考の再教育”を提案する。
特徴的なのは、他の心理学者が「過去」を分析するのに対し、エリスは常に「今この瞬間の考え方」を扱う点だ。彼は患者に問いかける。「本当にそれが“絶対に起きてはならない”ことなのか?」――この問いが、思考をほぐす鍵となる。彼にとってカウンセリングとは、心の“再教育”のプロセスであり、人間が自分自身に語りかける力の発見だった。
今読んでも新鮮で、現代の認知行動療法(CBT)やマインドフルネスの源流を感じる。エリスを「思想家」として理解するための最重要書。
おすすめの読者像: 認知行動療法の理論背景を学びたい人、臨床家を志す学生。
3. 論理療法の理論と実際(國分康孝/誠信書房)
日本でREBTを紹介し、教育現場にも広めた國分康孝による決定版。理論・実践・倫理の三本柱で構成され、カウンセリングを学ぶ人にとっての“日本語版エリス入門”といえる。最大の特徴は、抽象的な理論を具体的な生活場面にまで落とし込んでいる点だ。
「子どもの反抗」「教師の怒り」「職場でのストレス」――これらを心理的にどう扱うか。REBTの視点で解くことで、「怒ること」そのものが悪ではなく、「怒りを生み出す考え方」が問題であることに気づく。 また、教育・臨床・組織それぞれの現場での応用事例が豊富で、日本社会における“感情教育”の理論的基盤を作った一冊でもある。
心理学を専門に学ぶ人だけでなく、教員・保育士・管理職など「人を導く立場」にある読者にも響く内容。
おすすめの読者像: 教育・カウンセリング・人材育成に関わる人。日本的文脈でREBTを理解したい読者。
4. 論理療法にまなぶ――アルバート・エリスとともに(日本学生相談学会編/川島書店)
エリスの来日講演と日本の学生相談現場の実践をまとめた貴重な記録集。彼の理論が単なる「西洋的合理主義」ではなく、実は“感情との対話法”であることがリアルに伝わる。 中でも注目は、エリス本人が日本の学生たちとカウンセリングを行う逐語録だ。怒り・恋愛・進路不安といった具体的な悩みを通じて、REBTの考え方がどのように実践されていくかが臨場感たっぷりに描かれる。
「感情を理性で押さえ込む」のではなく、「感情を理性と共に観察する」。エリスの姿勢が生き生きと浮かび上がる。 日本文化の中でREBTをどう適応するかを考える上でも、実践的・教育的価値が高い一冊だ。
おすすめの読者像: 学生相談・教育心理・臨床実践に携わる人。エリスの“人間味”を感じたい読者。
第2部:感情を変える技術 ― REBTの応用と現代心理への発展
5. REBT入門――理性感情行動療法への招待(アルバート・エリス/実務教育出版)
REBTを日常生活で使いたい人のための、もっとも実践的な入門書。A-B-C理論の基本から、非合理的信念の検出・論駁・行動実験の方法まで、エリス自身がセラピーで使っていた手法を具体的に紹介する。 難解な専門用語を避け、一般読者にも理解できる構成で、心理学初心者でも無理なく読める。
各章の終わりにある「セルフワーク」が特に優れている。たとえば「最近怒った出来事を3つ書き出し、それぞれの思考(B)を合理的信念に書き換える」など、実際にワークしながら学べるようになっている。 この“書きながら学ぶ”形式が、感情の整理と自己理解を深める強力なツールになる。
おすすめの読者像: 感情コントロールを身につけたい一般読者、自己カウンセリングをしたい人、教育現場・企業研修に応用したい人。
6. いやな気分の整理学――論理療法のすすめ(岡野守也/NHK出版 生活人新書)
哲学者であり心理学者でもある著者が、エリスの論理療法を日本的な“情の文化”に接続した一冊。怒り・不安・劣等感・焦り――私たちが日常で感じる「いやな気分」を、感情ではなく思考の構造として見つめ直す。 タイトルの“整理学”という言葉が象徴するように、本書は「感情を抑える」でも「解放する」でもなく、「理解し、整える」アプローチを教えてくれる。
REBTのA-B-C理論をベースにしつつ、仏教・実存哲学の視点も取り入れた文章は深みがある。 「感情を受け止めながら、理性で寄り添う」――そんな穏やかなメンタルケアを実践したい人に響く内容。 心理学と人生哲学の境界を越える“和のREBT”とも言える名著だ。
おすすめの読者像: 感情に振り回されやすい人、穏やかな心の保ち方を学びたい人、東洋思想×心理学に興味がある読者。
7. それでも人生は変えられる――エリス博士のセルフ・セラピー(アルバート・エリス/大和書房)
エリス晩年の代表作にして、彼自身の生き方の書。 タイトルの「それでも」は、逆境・失敗・拒絶――あらゆる困難の中でも「人は考え方を変えることで生き直せる」という強い信念を表している。 エリスの理論が単なる心理技法ではなく、人生哲学そのものであることを実感できる。
本書では、怒り・嫉妬・孤独などネガティブ感情をどう受け止め、どう変えていくかを豊富なエピソードで解説。 「人間は非合理な存在である。しかし、理性を学ぶことはできる」――エリスの一貫したメッセージが響く。 読後、心が軽くなるのはもちろん、“自分の思考を再教育する”とはどういうことかが腑に落ちる。
おすすめの読者像: 自己肯定感を高めたい人、過去の失敗や人間関係で悩んでいる人、REBTを人生哲学として学びたい人。
8. 実践論理療法入門――カウンセリングを学ぶ人のために(ウィンディ・ドライデン/金剛出版)
エリスの直弟子であり、現代REBT理論の最高権威ドライデンによる実践的解説書。 REBTを「教える」「使う」「深める」ための13ステップが整理され、面接構造・質問技法・論駁法・行動課題の設定までを丁寧に導く。 理論だけでなく、実際のセラピスト対話例も多く、臨場感を持って学べる。
REBTの臨床を支える“セラピストの姿勢”がくり返し強調されるのも本書の特徴。 それは、「非合理的信念を壊す」ではなく、「理性的信念を一緒に育てる」という関わり方。 人を変えるのではなく、人が自分で気づくプロセスを支援する――それがエリス派の流儀だ。
おすすめの読者像: 心理学専攻の大学院生、臨床心理士・公認心理師、専門的にカウンセリングを学びたい人。
9. 人生哲学感情心理療法入門(日本人生哲学感情心理学会 編/静岡学術出版)
日本におけるREBTの公式学会が監修した基礎テキスト。 エリスが生涯追求した「人生哲学感情心理療法(LP-EPT)」の全体像を、国内の研究者・実践者が多角的に解説している。 教育・医療・福祉・産業など、あらゆる領域での応用例が収録されており、REBTの“進化版”を知るには欠かせない。
特筆すべきは、心理学だけでなく哲学・倫理・宗教の観点も織り交ぜている点だ。 「人はどうすればより理性的に、より幸福に生きられるのか?」という問いに、現代日本の現場から答える内容。 エリスの理論が単なる“個人のメンタル改善”にとどまらず、“生き方の思想”として息づいていることを感じさせる。
おすすめの読者像: REBTを専門的に学びたい大学院生、心理・教育・医療職、実践研究に携わる人。
10. How to Stubbornly Refuse to Make Yourself Miserable About Anything—Yes, Anything!(Albert Ellis/Citadel)
エリス晩年の英語版セルフヘルプ書で、世界的ベストセラー。 タイトルの「どんなことでも惨めにならない方法」は、REBTの哲学を最も端的に表している。 ABC理論をベースに、職場ストレス、対人関係、失恋、老い、死への恐怖まで、人生のあらゆる困難を“理性的に再構成する”方法を具体的に示す。
エリスが読者に直接語りかけるような文体で、ユーモアと温かさに満ちている。 難しい英語ではなく、心理英語の読解教材としても最適。 ページをめくるごとに、「自分を救えるのは、自分の考え方しかない」というメッセージが胸に響く。
おすすめの読者像: 英語で心理学を学びたい人、セルフヘルプを原書で読みたい人、エリスの“生の声”を感じたい人。
まとめ:REBTが教える「感情を変える力」
アルバート・エリスの論理療法(REBT)は、単なる心理技法ではない。 それは、怒り・不安・自己嫌悪といった感情を“敵”として抑えつけるのではなく、 「自分の考え方を見直すことで、感情を変える」ための哲学である。
エリスが提示したのは、どんな人にも共通する一つの真実―― 「人は出来事ではなく、その出来事をどう考えるかによって苦しむ」。 この一文が、現代心理学の基礎を変え、認知行動療法やマインドフルネス、セルフコンパッションなど 無数のアプローチの源流となった。
あなたの心を変えるのに、他人や環境を変える必要はない。 変えるべきは「考え方のくせ」だけ。 そのことに気づかせてくれるのが、エリス心理学だ。
- 気分を軽くしたいなら:『どんなことがあっても自分をみじめにしないためには』
- セルフワークを始めたいなら:『REBT入門』
- 哲学的に学びたいなら:『いやな気分の整理学』
- 専門的に使いたいなら:『実践論理療法入門』
- 原点から学びたいなら:『論理療法――自己説得のサイコセラピイ』
理性は感情を否定するためにあるのではない。 感情を理解し、穏やかに共存するためにある――。 REBTは、その最も実践的で、最も人間的な心理学だ。
関連グッズ・サービス
REBTを実践するうえで役立つツールやサービスを紹介する。 「読む」だけでなく「書く・聴く・考える」を組み合わせることで、学びが生活に定着する。
- Kindle Unlimited ― エリスや國分康孝の関連書が複数読み放題対象。スキマ時間の読書に最適。
- Audible ― 英語版『How to Stubbornly Refuse〜』を原著朗読で聴ける。心理英語の学習にも。
- ― 自動思考を可視化するワークノート。ABC理論の記録に。
- ― REBTワークシートやマインドマップをデジタル記録するツール。
読むだけでなく、「書いて整理する」「聴いて内省する」ことが、REBT実践の鍵になる。
よくある質問(FAQ)
Q1. REBT(論理療法)は認知行動療法(CBT)とどう違う?
A: 認知行動療法はREBTから発展したもので、構造は似ています。 ただし、REBTは感情教育と哲学的側面を重視し、「生き方の再教育」としての意味合いが強い点が特徴です。
Q2. 感情を抑え込む療法なの?
A: いいえ。REBTは感情を抑えるのではなく、「なぜその感情が生まれたか」を理解し、 その原因となる非合理的信念を合理的に置き換える方法です。
Q3. 独学でできる?
A: 可能です。『どんなことがあっても自分をみじめにしないためには』や『REBT入門』を使って セルフワーク形式で練習するのがおすすめ。慣れてきたら、ワークシートを活用すると効果的です。
Q4. 怒りや不安が強いときに、すぐ効く?
A: 即効性よりも、考え方の「癖」を徐々に整える療法です。 ただし、習慣化すれば“心の筋トレ”のように、感情に振り回されなくなります。
関連リンク
- アドラー心理学おすすめ本 ― 「目的論」で感情を再解釈する視点。
- ロジャーズ心理学おすすめ本 ― 自己受容と共感の源流。
- ベック心理学おすすめ本 ― 認知行動療法(CBT)との接続を学ぶ。
- フロイト心理学おすすめ本 ― 無意識の理解からREBTの対極を知る。












