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【イギリス史おすすめ本29選】入門から通史・帝国史・現代史まで【歴史の学び直しに最適】

イギリス史を学び直したいとき、いちばん困るのは「どこから読めば全体がつながるか」だ。図説で地図を作り、通史で骨格を固め、帝国史と現代史で視界を広げる。迷いにくい順で、おすすめを人気どころから並べた。

 

 

イギリス史を読み直すときに効く三つの軸

イギリス史は、年号より先に「軸」を置くと急に歩きやすくなる。ひとつ目は、島国に見えて中身は複数の国だという前提だ。イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドという差異が、政治にも宗教にも言葉にも残る。

ふたつ目は、王権と議会、国教と異端、中心と周縁が、いつも“折り合い”を探して揺れ続けることだ。革命は一回の事件ではなく、衝突の癖が制度に沈殿していく過程になる。

みっつ目は、外へ広がる帝国と、内側に積もる階級・福祉・移民・地域問題が、同じ一本の線に乗っていることだ。君塚直隆の語り口が読みやすいのは、この線を切らずに渡してくれるからだ。まずは線を引き、次に好きな地点へ寄り道する。それが学び直しの一番早い近道になる。

入口(図解・一冊読み切りで地図を作る)

1. 一冊でわかるイギリス史(河出書房新社/単行本)

イギリス史の最初の壁は、固有名詞の多さより「出来事の連結が切れてしまう感覚」だ。この本は、その切れ目を作らない。ローマ支配から近現代まで、一直線に歩かせる設計がまず強い。

王権、議会、宗教、対外戦争が、別々の棚に置かれず、同じ机の上で絡まっている。だから読んでいるうちに「政治の骨組み」が先に立ち上がる。細部の暗記をしなくても、どこで何が怖くて、誰が何を守ろうとしたかが残る。

文章に難しい節回しは少ない。学び直しの初日に、頭がまだ温まっていない状態でも進む。地図を広げ、霧のロンドンを遠景に置きながら、島の輪郭を指でなぞる感じがある。

ここで得られるのは、知識量というより「会話できる程度の背骨」だ。ニュースや映画の断片が、歴史の棚に収まり始める。まず一冊だけで体勢を整えたい人に向く。

夜に短時間で読み切って、翌朝から次の通史に行く。そういう使い方がいちばん気持ちいい。

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2. イギリスの歴史(河出書房新社/単行本)

イギリスの歴史

イギリスの歴史

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新書の速度では足りないが、専門書の重量はまだ早い。そんな“中間の体力”を持った人に、この一冊はちょうどいい。古代からブレグジットまで、同じ背骨の上に載せていく通史だ。

通史で大切なのは、どこで視点が飛ぶかを読者に知らせることだ。帝国、戦争、福祉国家、EUという近現代の宿題を、別章の特集に逃がさず、歴史の流れとして扱う。だから「いまの争点」が突然現れない。

読んでいると、石造りの制度が少しずつ増築されていく感触がある。古い部分を壊さずに新しい部屋を継ぎ足していく、あの独特のしつこさが見える。立憲君主制も福祉も、奇跡ではなく“折り合いの積み重ね”として理解できる。

気分としては、図解で作った地図に、街路名を書き込んでいく作業に近い。疲れている日に読むなら、一章ずつ区切って、線が増える快感だけを拾うといい。

読み終える頃には、別の本を読むときの「参照点」が増えている。通史の二冊目としても、一本目としても、長く使える。

3. 図説 イギリス史(東洋書林/単行本)

年号が苦手な人ほど、視覚の“目印”があると記憶が残る。図版があるだけで、時代は急に温度を持つ。王朝交代や対外関係の流れが、ただの言葉ではなく「空気」として立ち上がる。

図説の良さは、途中で迷子になっても戻れることだ。ページをめくり直すのが苦にならない。地名や人物名が頭から滑っても、絵や写真が留め具になる。学び直しでいちばん大事な「苦手意識を消す」用途に強い。

政治史の節目も、写真の衣服や建物の肌理と一緒に入る。石の重さ、湿った風、煤けた街並み。そういう触感が、出来事の順序を自然に支えてくれる。

通史の前に読むのもいいし、通史を読んでから「この時代だけ抜け落ちた」と感じた部分を補うのにも向く。勉強というより、展示を歩く感じで読める。

4. 図説 イギリスの歴史(河出書房新社/単行本)

“流れ”を手に入れたい人に、図解は強い。ブリテン島の成り立ちから帝国・戦争までを、地図と一緒に頭へ入れると、政治史の節目がただの事件にならない。

征服、宗教改革、革命。これらは単語として知っている人が多いが、線でつながっていないと使えない。この本は、線を引く作業を代行してくれる。国境線が動くたびに、制度や信仰がどう揺れるかが見える。

読み方としては、通読より“反復”が向く。最初はざっと眺め、二度目に地図を追い、三度目に人物と出来事の関係だけ拾う。そうすると、通史に入ったときの疲労が明らかに減る。

勉強の前に、机を片づけて作業台を広げる。その役目を果たす一冊だ。

5. 肖像画で読み解くイギリス史(PHP研究所/新書)

政治史の入口を、文化史の手触りで掴む。肖像画には、権力が欲しいものがそのまま描かれる。威厳、血統、信仰、そして恐怖。だから年号より先に「この時代は何を守ろうとしたか」が残る。

王の顔つき、衣装の質感、背景に置かれた象徴。それらを追うと、王権と宗教の結び目が見えてくる。宗教改革や宮廷文化が、教科書よりも“人間の都合”として理解できる。

堅い通史が合わない人にとって、ここは抜け道になる。物語やドラマを見ている感覚に近いのに、制度の変化へちゃんと接続していく。

気分が乾いているときに読むと、歴史が急に色を取り戻す。政治の話が、冷たい骨だけではなくなる。

通史の芯(新書・定番で“骨格”を固める)

6. イギリス史10講(岩波書店/新書)

イギリス史の厄介さは、単純な一本道ではなく、地域差と階級と宗教が同時に動くところにある。この本は、その“ややこしさ”を隠さず、講義型で整理する。教科書のように見えて、読み味は意外と立体的だ。

多民族、国旗の由来、英国庭園の成り立ち。そうした切り口が、ただの雑学で終わらない。制度と文化がどこでつながっているかを、毎回違う角度から見せる。すると通史の骨が太くなる。

読んでいると、ブリテン島の中にいくつも時間の層があるのが分かる。中世の宗教対立が、近代の政治思想へ影を落とし、帝国の経験が現代の社会へ染み出している。一本の線ではなく、束ねられた縄として歴史が見える。

一気読みより、章ごとに止めて、手元の地図や年表に印をつけると効く。頭の中に「参照用の棚」が作られる。

通史を“解像度高め”で作りたい人の、真ん中の一冊になる。

7. 物語 イギリスの歴史(上)古代ブリテン島からエリザベス1世まで(中央公論新社/新書)

中世が苦手な人が迷子になるのは、登場人物が増えるからではない。争いの目的が見えなくなるからだ。この上巻は、征服と王権と対仏関係を軸に、島国が「戦争と統合」を繰り返して形になる過程を追わせる。

ノルマン征服の衝撃、王権の強化、宗教と政治の結び目。出来事が“制度の変形”として描かれるので、歴史が止まらない。物語としての推進力があるのに、地に足が付いている。

読書体験としては、荒い海に沿って城壁を歩く感じがある。風が強く、足場が悪い。それでも進む理由がはっきりしている。だから中世が嫌いな人でも、途中で投げにくい。

ここを通しておくと、近世以降の革命や議会政治が「突然の発明」ではなくなる。上巻は、後の争点の根を埋めている。

8. 物語 イギリスの歴史(下)清教徒・名誉革命からエリザベス2世まで(中央公論新社/新書)

近現代は、事件が多いぶん、逆に一本の線を見失いやすい。革命、議会政治、帝国、戦争、福祉国家。これらが“争点の鎖”としてつながると、現代ニュースの背景が読書体験として落ちてくる。

名誉革命の意味は、勝ち負けより「折り合いが制度になる瞬間」にある。王権と議会が衝突し続けた末に、妥協が形になる。そのしぶい美徳と、しつこい現実主義が、イギリスという国の体温になる。

帝国の膨張や世界大戦の経験も、国内政治の延長として読める。外に出た力が、内側の階級や福祉へ反作用を起こす。その循環が分かると、EU離脱も「気分の事件」ではなくなる。

夜に読むなら、近代以降の章だけ先に読んで、翌日に前の章へ戻るのもいい。いまの争点から遡る読み方に耐える。

Audible

9. イギリス史(山川出版社/単行本)

新書を読んで「もう少し教科書寄りに固めたい」と思った瞬間に、この密度が効く。出来事の羅列ではなく、社会の仕組みと対外関係の変化を追える。だから“暗記のための通史”になりにくい。

山川の通史は、参照できる安心感が強い。読み物としての派手さはないが、必要なところで必要な説明が出る。学び直しで大事なのは、この安定だ。迷ったら戻れる場所があると、攻めたテーマ本にも行ける。

読み方は二段階がいい。最初は通読で全体を掴み、次に章末の要点を拾って、自分の関心(帝国、宗教、産業革命など)に印をつける。すると、この本が“土台”として働き続ける。

乾いた紙の感触が、逆に集中を呼ぶ。机に座って、鉛筆で線を引きたくなる通史だ。

近代〜現代(産業革命からEU離脱までの見通しを立てる)

10. イギリス近代史講義(講談社/新書)

「なぜ産業革命がイギリスで起きたか」は、問いが大きいぶん、答えが雑になる危険がある。この本は、都市、生活文化、世界システムの視点で追い直して、近代を“成功物語”で終わらせない。

工場や技術の話に見えて、実際は人の暮らしの話が中心に戻ってくる。街の膨張、時間感覚の変化、家族の形。産業革命が社会の作り替えだと分かると、帝国の拡張も別の角度で見えてくる。

読みながら、煤の匂いと蒸気の湿り気がまとわりつく。近代が眩しいだけではないことが、身体で分かる。だから読後に、現代の労働や格差へ視線が自然に伸びる。

通史を読んだ後の二冊目として、視点を増やすのに向く。逆にここから入って、通史へ戻るのもありだ。

11. イギリス現代史(岩波書店/新書)

20世紀後半から現在までを、政治と社会の軸で整理する現代史は、学び直しの実用性が高い。福祉国家、移民、地域問題、対欧州。これらはニュースで断片として触れるが、歴史の線がないと理解が散る。

現代史の読みどころは、過去の制度が“いまも動いている”と実感できるところだ。戦後の再建、福祉の拡大、経済の揺れ、政治の分岐。それぞれが、生活の手触りと一緒に迫ってくる。

読み終えたとき、新聞の見出しの裏側に、もう一枚の地図が敷かれる。疲れている日に読むなら、気になる争点の章だけ先に。必要なときに戻れる現代史が一冊あると、学び直しは続く。

12. チャリティの帝国 もうひとつのイギリス近現代史(岩波書店/新書)

イギリス近現代史を、国家の政策や戦争だけで追うと、どこか平板になる。この本は“善意”が社会を動かす回路になった国として、別角度から歴史を照らす。支援と統治が絡む現場が見えるのが強い。

チャリティは、温かい言葉で片付かない。誰が誰を助け、誰が選別し、何が「正しい支援」とされたのか。そこには権力がある。政治史の背後で、社会がどう自分を組み立てたかが立ち上がる。

通史を読んで事件史に飽きたとき、二冊目として効く。制度が急に立体化する瞬間がある。静かなテーマなのに、読後の視界が確実に変わる。

帝国史(世界に広げた力学をまとめて掴む)

13. 興亡の世界史 大英帝国という経験(講談社/文庫)

帝国史を「軍事と植民地」だけで語ると、道徳説教になりやすい。この本は、統治、交易、文化を含む装置として帝国を捉える。繁栄の条件と歪みが同時に見えるので、簡単に白黒を付けさせない。

帝国は、外へ広がるほど、内側の制度を変える。議会、官僚、金融、教育。そうした仕組みが、世界を扱うために整えられ、同時に矛盾を抱える。その力学が見えると、イギリス史が世界史の中心線に乗る。

読んでいると、海図の上に交易路が増えていく感じがある。線が増えるほど、争いも増える。だから最後に残るのは、栄光よりも複雑さだ。その複雑さを引き受けたい人に向く。

14. イギリス帝国盛衰史 グローバルヒストリーから読み解く(幻冬舎/新書)

帝国の上り坂、踊り場、下り坂を「仕組み」で見通す本は、読み終えた後に応用が利く。グローバルヒストリーの語り口は、出来事の派手さより、ヒト・モノ・カネ・情報の流れへ視線を向ける。

イギリス革命と産業革命だけで帝国化を説明しない。むしろ、帝国経営の実務、現場の変化、柔らかい統治の工夫が見えてくる。帝国史が“遠い昔の暴力”ではなく、現代の制度の祖先として触れ始める。

短時間で全体像を作りたい人に向くが、読み味は軽くない。頭の中で地球儀を回しながら読む本だ。読み終えたあと、他国の帝国史も同じ骨組みで見えてくる。

15. 大英帝国の歴史(上)(中央公論新社/単行本)

帝国史を腰を据えて読みたいなら、この上巻が“生まれ方”を丁寧に追ってくれる。帝国が外から降ってきたのではなく、国内政治と対外拡張が連動して生まれる過程が見える。

植民地の拡大は、国内の制度や社会を作り替える。外で手に入れた富や経験が、内側の政治や経済へ戻ってくる。その循環が分かると、帝国の歴史が単なる遠征の年表ではなくなる。

読書体験は、地図の余白が少しずつ塗りつぶされていく感じだ。線が引かれるたびに、誰かの日常が変わる。そこまで含めて追いたい人に向く。

16. 大英帝国の歴史(下)(中央公論新社/単行本)

帝国の解体は、“衰退”の一語で片付けると何も残らない。この下巻は、世界大戦、脱植民地化、国際秩序の変化の中で、帝国がほどけていくプロセスを追う。解体の途中で生まれた制度や意識が、現代へつながるのが見える。

崩れるとき、人は物語を作り直す。栄光を守ろうとする記憶と、現実に折り合うための実務が、同じ時間に存在する。その二重性が、戦後イギリスの肌触りになる。

上巻を読んだら、そのまま下巻へ行くのがいちばん自然だ。途中で止めると、帝国史が“作り方だけ”で終わってしまう。崩れ方まで読んで、ようやく現在が見える。

政治外交・制度(革命から外交まで、争点の根を掘る)

17. イギリス外交史(有斐閣/単行本)

戦争史を「出来事」から「政策判断」へ変えると、歴史の読み味が変わる。大陸との距離感、海洋国家としての戦略、同盟と均衡の発想。この本は、その筋肉を付ける。

イギリスは孤立していたのではなく、距離を武器にして関わってきた。どの瞬間に介入し、どの瞬間に引くのか。その判断の癖が、国内政治ともつながっている。外交を読むと、通史の空白が埋まる。

読み方は、通史で気になった戦争や条約の章から入るといい。すると、点が線になり、線が構造になる。外交史は、世界史の見取り図を同時に育てる。

18. 世界史のリテラシー イギリス国王とは、なにか 名誉革命(NHK出版/単行本)

「なぜ国王が残ったのか」を問いにするだけで、名誉革命は急に面白くなる。王権と議会が衝突し続けた末に、折り合いが生まれる。その折り合いが、制度として息をし始める瞬間を追える。

立憲君主制は、形式の話に見えて、実は感情の置き場所の話でもある。政治の正統性をどこへ預けるのか。人びとの納得が、どこで作られるのか。そこまで掘ると、現代の政治制度が遠い仕組みではなくなる。

通史の中で名誉革命がぼんやりしていた人に、刺し直しの一本として向く。短い分量で、争点の根が固定される。

19. イギリス革命と変容する〈宗教〉 1580-1688(岩波書店/単行本)

革命期を「宗教が社会を割った現場」として読み直すと、政治思想の本が急に読めるようになる。信仰、制度、共同体がどう絡むかが見えるからだ。革命を理念だけで扱わないのが、この本の強みになる。

同じ島の中で、何が許され、何が排除され、どこで妥協が成立したのか。宗教の変容は、生活規範の変容でもある。だから読んでいると、政治の争いが日常の手触りへ落ちてくる。

専門寄りに一段深めたい人向けだが、怖がらなくていい。通史で作った線の上を、より細い鉛筆でなぞり直す本だ。

社会・文化(暮らしの実感から理解を補強する)

20. イギリス文化史入門(昭和堂/単行本)

政治史の裏で積み上がった価値観の変化を、時代ごとに掴めると、帝国や階級の話が“生活の手触り”として戻ってくる。文化史は飾りではなく、制度を動かす燃料だと分かる。

食卓、住まい、余暇、宗教感覚。そうした要素が、いつの間にか政治の語彙と結び付いている。文化史を読むと、同じ事件でも見える表情が変わる。革命が単なる政変ではなく、日常の再編になる。

通史を読んで乾いた気分になったとき、この本はいい水分になる。理解が立体化する。

21. イギリス社会史 1580-1680 公的秩序と私的体験(筑摩書房/文庫)

近世の人びとの暮らし、規範、家族、共同体がどう組み上がっていたかを追うと、革命や宗教対立が日常のレベルで何を壊し、何を守ったかが見える。歴史が“人間のサイズ”に戻る。

公的秩序と私的体験という対比が、読むほど効いてくる。制度は上から降るが、受け取る側の体験が変わらなければ、社会は動かない。その摩擦の場所が、社会史の面白さだ。

静かな本だが、読み終えたあとに通史へ戻ると、同じ出来事が違う色に見える。霧の中の家々に、灯りが点く感じがある。

22. イギリス下層中産階級の社会史 1870-1914(法政大学出版局/単行本)

階級社会を抽象語で終わらせず、具体的な価値観や不安として理解できるのが、この本の力だ。産業化の後、都市生活の中で「下層中産階級」がどう形成され、何を望んだのかを掴める。

ヴィクトリア朝から第一次大戦前夜は、帝国の最盛期と、社会の緊張が同居する。上の層の華やかさだけを見ていると、この時代の本当の輪郭は掴めない。中間の層の感情が、政治を押す場面が見えてくる。

読後に残るのは、統計より、生活の焦げた匂いだ。体面、節約、教育、恐れ。そういう言葉が、階級を“現実”にする。

23. 産業革命(岩波書店/文庫)

産業革命を技術史の話で終わらせず、社会の作り替えとして捉え直すと、近代イギリスの出発点が締まる。短い分量で濃く押さえるのに便利な一冊だ。

工場と機械だけではなく、労働、都市、家族、時間。社会が別の形へ移るとき、人の身体が先に疲れる。その疲れの上に制度が作られる。そういう順番が見えると、近代が生々しくなる。

10を読んでから、この本で論点を締めると、頭の中の霧が少し晴れる。学び直しの“補強材”として置いておける。

中世〜王室(時代をピンで刺して理解を固定する)

24. イギリス中世史 大陸国家から島国国家へ(ミネルヴァ書房/単行本)

「島国らしさ」がどう作られたかを、中世の対外関係と国内統合の動きで追う。ノルマン征服以後の政治構造が、近世以降の争点の土台になるのが分かる。中世を専門寄りに固めたい人に向く。

中世は暗黒ではなく、再編の時代だ。制度が組み直され、境界が引き直され、言葉が選ばれていく。その過程を追うと、後の革命が“突然の爆発”ではなくなる。

読みながら、海の向こうが常に近いことを実感する。大陸と切れていないのに、切ろうとする。その矛盾が、中世から続く癖になる。

25. 新版 薔薇戦争(イースト・プレス/単行本)

王朝内戦は、系図だけ追うと疲れる。この本は、系図と政治状況の両方で追えるので「誰が誰を倒したか」で終わらない。権力の再編として理解が固定されるのが大きい。

薔薇戦争は、血の匂いのする事件だが、同時に制度の問題でもある。正統性とは何か、支持はどこで作られるのか。内戦を通して、国家の輪郭が削り出されていく。

中世末から近世初頭を一気に掴みたい人に向く。通史の一章が、急に鮮明な絵になる。

26. エリザベス女王 史上最長・最強のイギリス君主(中央公論新社/新書)

戦後から現在までを「女王の時間」で貫くと、政治と社会の変化が一本につながる。首相たちの時代の違いも、長い統治を軸にすると整理しやすい。近現代の入口を人物で取りたい人に合う。

王室は政治の外に見えて、実は国の自己像の一部だ。儀礼、象徴、継続。揺れる時代ほど、その象徴の意味が問われる。ここを押さえると、現代史が“制度”ではなく“感情”としても理解できる。

ニュースの断片が頭の中で散らばる人ほど、この読み方が効く。長い時間が一本の糸になる。

27. ヴィクトリア女王 大英帝国の“戦う女王”(中央公論新社/新書)

帝国の最盛期を、政治判断と感情の時代として掴める。ヴィクトリア朝は、道徳と拡張、秩序と不安が同居する。女王の視点で追うと、19世紀がひとつの時代像としてまとまる。

帝国史と階級社会と価値観が、一枚の絵になるのが強みだ。教科書の“産業革命のあと”が、急に人間の顔を持つ。都市の膨張と家庭の規範が、同じ時代の空気として触れる。

19世紀をピン留めしてから帝国史へ戻ると、上り坂の眩しさと、足元の影の両方が見える。

英語で深掘り(最後の発展)

28. The Norman Conquest(Penguin/Kindle)

[ノルマン征服は、イギリス史の土台を一度ひっくり返した出来事だ。英語で読むと、人物劇と構造の両方が同時に入ってきて、中世が“暗い時代”ではなく再編の現場として見えてくる。

日本語の通史で線を作ったあと、英語で一地点を深掘りすると、理解が締まる。固有名詞の発音に慣れるだけでも、後の英語史料や映像が急に近くなる。

気分としては、同じ街を昼と夜で歩く違いに近い。知っているはずの景色が、別の表情を見せる。

29. A History of Britain, Volume 1: At the Edge of the World? 3000 BC-AD 1603(BBC/Kindle)

物語としての推進力が強い英語通史は、細部より“勢い”で全体を通したいときに役立つ。古代から近世初頭までを、読む勢いで抜けられる。概説を英語で浴びて、細部は日本語本で補う使い方が合う。

英語の通史に入門したい人向けだが、目的は語学ではなく視点の切り替えだ。日本語で作った理解が、別の言葉で再配置される。そのズレが、案外いい復習になる。

続巻へ進むかどうかは、読み終えたあとに決めればいい。まずは一巻で、中世までの空気を英語のまま吸ってみる。

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ブリテン島の地図(紙でもアプリでもよい)を一枚、いつも手元に置く。地名が“音”ではなく“場所”になるだけで、通史の吸収が速くなる。読みながら指で海峡や都市をなぞると、理解が身体に落ちる。

まとめ

イギリス史の学び直しは、まず図説で景色を作り、通史で骨格を通し、帝国史と現代史で視界を世界へ開くと、途中で息切れしにくい。出来事の多さに負けそうなときは、王権と議会、宗教と制度、帝国と国内社会という三つの軸に戻ればいい。

  • とにかく最短で全体像が欲しい:1 → 6 → 10
  • 中世〜近世を迷わず通したい:7 → 8(必要なら3や4で補助)
  • 帝国の成り立ちと崩れ方まで見たい:13 → 16 → 14 → 15
  • 生活の実感で理解を補強したい:21 → 22(余力があれば20)

一冊で完璧に覚えなくていい。線を一本引けたら、もう学び直しは成功している。

FAQ

Q1. 図説と通史、どちらから入るのが失敗しにくい?

年号や固有名詞が苦手なら、先に図説で景色を作る方が挫折しにくい。3や4で“見取り図”を持ってから、6や7・8に入ると、文章がすべりにくくなる。読書時間が短い人は、まず1で線を引いてもいい。

Q2. 名誉革命がピンと来ない。どれを読めばいい?

通史で輪郭を掴んだあと、18で「なぜ国王が残ったのか」という問いに立て直すと、制度の意味が固定される。宗教と共同体の絡みまで掘りたければ19が効く。点だった事件が、争点の連続に変わる。

Q3. 帝国史は重そうで怖い。最初の一冊は?

短時間で全体像を作るなら14が入りやすい。帝国を装置として捉える感覚を掴めたら、13で複雑さを増やし、腰を据えるなら15→16で“生まれ方”と“ほどけ方”まで通すと納得が深い。

Q4. 近現代ニュース(EU離脱や移民問題)とつなげて読みたい。

11で戦後以降の争点の骨格を掴み、10で産業革命以後の社会の作り替えを入れると、長い時間の中で現在が見える。王室という軸が欲しい人は26を挟むと、政治と社会の変化が一本につながりやすい。

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