心理学を学ぶうえで欠かせないのが、アトキンソン&シフリンによる「記憶の情報処理モデル」だ。感覚記憶・短期記憶・長期記憶という三段階を通じて、私たちはどのように情報を受け取り、保持し、再生しているのか。この記事では、実際に読んで理解が深まった15冊をAmazonで買える現行版から厳選した。短期記憶の限界や、長期記憶への転送過程を“心のアルゴリズム”として捉えたい人におすすめの一冊群だ。
- アトキンソン&シフリンとは?
- おすすめ本15選
- 1. 記憶の心理学―基礎と応用(誠信書房/単行本)
- 2. 人間の記憶―認知心理学入門(東京大学出版会/単行本)
- 3. ワーキングメモリ―思考と行為の心理学的基盤(誠信書房/単行本)
- 4. 視覚と記憶の情報処理(培風館/単行本)
- 5. 記憶とは何か(筑摩書房/ちくま新書)
- 6. 自伝的記憶の心理学(北大路書房/単行本)
- 7. 記憶現象の心理学(北大路書房/単行本)
- 8. 認知心理学 (New Liberal Arts Selection)(有斐閣/単行本)
- 9. 認知と思考の心理学(サイエンス社/単行本)
- 10. 知的発達の理論と支援: ワーキングメモリと教育支援(金子書房/単行本)
- 11. 記憶と日常 (現代の認知心理学2)(北大路書房/単行本)
- 12. 認知心理学者が教える最適の学習法: ビジュアルガイドブック(東京書籍/単行本)
- 13. 視覚情報処理ハンドブック(朝倉書店/単行本)
- 14. 記憶のしくみ(講談社ブルーバックス/新書)
- 15. カンデル神経科学 第2版(メディカル・サイエンス・インターナショナル/大型本)
- 関連グッズ・サービス
- まとめ:今のあなたに合う一冊
- よくある質問(FAQ)
- 関連リンク:記憶研究の広がり
アトキンソン&シフリンとは?
心理学者リチャード・C・アトキンソン(Richard C. Atkinson)とリチャード・M・シフリン(Richard M. Shiffrin)は、1968年に「人間の記憶を情報処理の観点から説明する三段階モデル(multi-store model)」を提唱した。これは、刺激がまず感覚記憶(sensory memory)に入り、注意を受けた情報のみが短期記憶(short-term memory)へと移行し、繰り返し(リハーサル)によって長期記憶(long-term memory)へ転送されるという理論である。
このモデルは「人の心をコンピュータのように捉える」認知革命の象徴的成果として知られ、現代心理学・教育心理学・AI研究にも影響を与えた。のちのワーキングメモリ理論(バドリー)や記憶の再構成理論(バートレット)なども、この枠組みの延長線上に位置づけられる。
つまり、アトキンソン&シフリンは“心をシステムとして理解する”時代の扉を開いた研究者だ。本記事では、彼らの理論をより深く理解できる15冊を紹介する。
おすすめ本15選
1. 記憶の心理学―基礎と応用(誠信書房/単行本)
ガブリエル・A・ラドヴァンスキーによる、現代記憶研究の総合教科書。アトキンソン&シフリン以後の記憶理論を体系的に整理し、短期記憶・長期記憶・ワーキングメモリを横断的に解説する。特に「符号化・貯蔵・検索」という三過程モデルの構造を丁寧に可視化しており、情報処理モデルの基本理解に最適だ。
認知心理学・学習心理・教育現場の研究者、または記憶力トレーニングを科学的に理解したい人に刺さる。理論と応用の橋渡しが見事で、章末の実験紹介も充実している。
読後は、単なる暗記法ではなく“心の情報処理システム”を実感できる一冊。
2. 人間の記憶―認知心理学入門(東京大学出版会/単行本)
ロフタスによる名著で、心理学の学部教科書として長く定番。アトキンソン&シフリンのモデルを中心に、感覚記憶から長期記憶までの情報の流れを定量的データで説明している。特に短期記憶容量(7±2の法則)や系列位置効果などの実験が充実し、理論を裏づける実証的基盤が明確だ。
記憶研究を初めて体系的に学ぶ人に最適。研究史とともに読めば、なぜ三段階モデルが心理学の中核にあるかが理解できる。
3. ワーキングメモリ―思考と行為の心理学的基盤(誠信書房/単行本)
アラン・バドリーによる代表作。アトキンソン&シフリンの短期記憶モデルを発展させ、“作動記憶”という概念を提唱した記念碑的書籍。音韻ループ・視空間スケッチパッド・中央実行系という構成が、三段階モデルの現代版として位置づけられる。
教育心理・脳科学・AI研究に携わる読者に刺さる。自身の作業効率や集中力の課題を科学的に捉えたい人にも好適だ。読後には「短期記憶が思考を支える構造」であることを体感できる。
4. 視覚と記憶の情報処理(培風館/単行本)
視覚心理学の第一人者・平井有三による研究書。感覚記憶から知覚・注意・記憶への流れを、視覚情報処理モデルとして再構成する。アイコニックメモリ(感覚記憶)の持続時間や視覚短期記憶容量など、アトキンソン&シフリンのモデルを実験的に裏づける内容が多い。
知覚心理・デザイン・ヒューマンインタフェース領域にも応用可能。視覚情報処理と記憶の統合理解を目指す人におすすめ。
5. 記憶とは何か(筑摩書房/ちくま新書)
高橋雅延による一般読者向けの名著。記憶研究の100年史を通じて、アトキンソン&シフリンのモデルがどのように形成され、ワーキングメモリやエピソード記憶理論に発展したかを描く。脳科学・心理学・哲学の接点をわかりやすくまとめており、初学者にも理解しやすい。
「覚えるとは何か」「思い出すとは何か」を根源的に問いたい人に響く。理論的でありながら温かみのある語り口が魅力。
6. 自伝的記憶の心理学(北大路書房/単行本)
佐藤浩一・越智啓太らが編集した、自伝的記憶研究の代表的テキスト。アトキンソン&シフリンの三段階モデルを基礎に、人間の記憶が個人的経験とどのように結びつくかを探る。長期記憶の中でも「自己」や「時間的連続性」を司る領域に焦点を当て、神経心理学・臨床心理学との橋渡しを試みている。
記憶研究の応用を臨床や教育に展開したい研究者や、心理カウンセリングに携わる人におすすめ。記憶がアイデンティティを支える仕組みが理解できる。
7. 記憶現象の心理学(北大路書房/単行本)
アン・M・クレアリーとベネット・L・シュワルツによる近年の翻訳書。アトキンソン&シフリンのモデルを出発点に、想起の錯覚・既視感・想起失敗など“記憶の曖昧さ”を体系的に解説する。情報処理モデルの「検索段階」に潜む不確実性が、実験と理論の両面から浮かび上がる。
認知心理・法心理・教育分野における“記憶の信頼性”を考えるうえで必読。記憶を単なる保存ではなく「再構成」として捉える視点を与える。
8. 認知心理学 (New Liberal Arts Selection)(有斐閣/単行本)
有斐閣の定番教科書シリーズ。初版以来、国内の大学で最も広く採用されている認知心理学の標準テキストだ。感覚入力から記憶・思考・言語・判断まで、人間の知的活動を「情報処理の流れ」として描いている。アトキンソン&シフリンの三段階モデル(感覚記憶→短期記憶→長期記憶)は、記憶章の中核として詳しく解説され、他理論との比較(ワーキングメモリ・再構成モデル)も充実している。
心理学専攻の学生はもちろん、AI・教育・認知科学に興味を持つ社会人にも最適。数式を使わずに理論を整理しており、初学者でも無理なく読み通せる。知覚・注意・記憶・思考がどのように情報として処理されるかを体系的に理解したい人に強くおすすめしたい。
読後は、「人の心はどのように情報を扱っているのか」という問いに、確かな構造図を持てるようになる。
9. 認知と思考の心理学(サイエンス社/単行本)
中島義明による認知科学の古典的入門書。アトキンソン&シフリンの記憶モデルを軸に、注意・推論・概念形成などの上位認知過程を「情報処理の系列」として位置づけている。コンピュータモデルとの比較もあり、心を“計算可能なシステム”として考える出発点となる。
AI・人間工学・教育設計など、応用領域で心理学を活かしたい人におすすめ。1970年代の古典を現代的に読み返す価値がある。
10. 知的発達の理論と支援: ワーキングメモリと教育支援(金子書房/単行本)
教育心理学と認知心理学の接点を扱った専門書。バドリーのワーキングメモリ理論を軸に、アトキンソン&シフリンの短期記憶概念を教育支援へ展開している。授業中の注意・記憶保持・課題遂行を「情報処理容量」の観点から分析し、学習困難の背景にある認知的負荷を可視化する。
特に、児童・生徒の「記憶のボトルネック」に対してどのように支援を行うかという章は実践的。短期記憶から長期記憶への転送を促す「リハーサル」「構造化」「視覚的補助」の技法を科学的に示している。
教育現場・発達支援・特別支援教育に携わる人にとって、理論と実践を結ぶ貴重な一冊。記憶理論を“教える技術”へ落とし込める構成だ。
11. 記憶と日常 (現代の認知心理学2)(北大路書房/単行本)
北大路書房「現代の認知心理学」シリーズの第2巻。実験室での記憶研究を、日常生活に引き寄せて再解釈する構成になっている。買い物リストを思い出す、顔と名前を結びつける、過去の出来事を思い返す――こうした身近な現象が、アトキンソン&シフリンの三段階モデルによってどのように説明できるかを平易に示す。
特に「符号化」「貯蔵」「検索」プロセスの章では、感覚記憶から長期記憶への移行を日常例で説明しており、理論の“使える”イメージがつかめる。心理学を学びながら、自分の記憶や学習を改善したい読者に最適。
専門書ながら語り口がやわらかく、読後には「記憶研究は自分の生活の中にある」と感じられる一冊。
12. 認知心理学者が教える最適の学習法: ビジュアルガイドブック(東京書籍/単行本)
イギリスの認知心理学者ヤナ・ワインスタインらによる、最新の学習科学ガイド。記憶研究の成果をもとに、「短期記憶から長期記憶へ情報を移す最適戦略」をイラストで紹介する。分散学習、想起練習、交互学習など、アトキンソン&シフリンの理論を実践的に応用した学習法が満載。
見開き構成で要点が整理されており、脳科学・心理学の知識がなくても理解できる。教育現場だけでなく、資格試験・語学学習・ビジネススキルにも役立つ内容だ。
記憶を「努力でなく構造で鍛える」という発想を学べる。勉強法の本質を心理学的に理解したい人に強く勧めたい。
13. 視覚情報処理ハンドブック(朝倉書店/単行本)
専門家向けの総合リファレンス。感覚入力から高次知覚、そして記憶への統合までを扱い、心理学・神経科学・情報科学の研究を横断する。アトキンソン&シフリンの初期モデルを、視覚系実験と脳機構の対応関係として再定義している。
研究者・大学院生・開発者に向けた本格派。情報処理モデルを“脳内でどう実装されるか”を学びたい人におすすめ。
14. 記憶のしくみ(講談社ブルーバックス/新書)
川口潤による、一般向け科学解説書。脳科学と心理学の両面から、記憶のメカニズムを軽快に語る。短期記憶・長期記憶・ワーキングメモリの違いをわかりやすく整理しており、アトキンソン&シフリンの理論の“現代版リライト”として読める。
難解な理論を避けたい人、日常の記憶トレーニングを科学的に理解したい読者におすすめ。
15. カンデル神経科学 第2版(メディカル・サイエンス・インターナショナル/大型本)
ノーベル賞学者エリック・カンデルによる脳科学の金字塔。心理学的記憶モデルの神経基盤を解明し、シナプス可塑性や海馬の役割を詳細に解説している。アトキンソン&シフリンの理論を「神経回路としてどう実現されるか」という問いに接続できる。
心理学を神経科学と統合的に理解したい研究者にとって、最終的な参照点となる一冊。
関連グッズ・サービス
記憶や情報処理を実生活で活かすには、読書後の「学びの定着」が重要だ。以下のサービスやツールを組み合わせると効果的だ。
- Kindle Unlimited:心理学書や科学系ブルーバックスが読み放題。電車内のスキマ時間で記憶モデルの復習ができた。
- Audible:聴覚記憶を活かして復習するのに最適。短期記憶→長期記憶への転送効果が実感できる。
- :夜間の読書にも集中できるデバイス。明るさ自動調整で脳負荷を減らせる。
まとめ:今のあなたに合う一冊
アトキンソン&シフリンの記憶モデルは、心理学の中でも最も重要な「情報処理の基礎理論」だ。理解を深める本は、入門から専門まで幅広い。
- 気分で選ぶなら:『記憶とは何か』(ちくま新書)
- じっくり読みたいなら:『記憶の心理学―基礎と応用』(誠信書房)
- 短時間で学びたいなら:『記憶のしくみがわかる本』(講談社ブルーバックス)
記憶を理解することは、心を理解すること。自分の思考の流れを“データ処理”として眺めると、行動も変わる。
よくある質問(FAQ)
Q: アトキンソン&シフリンの記憶モデルとは?
A: 感覚記憶・短期記憶・長期記憶という三段階で情報を処理する心理学理論。1968年に提唱された。
Q: 初学者でも理解できる本は?
A: 『記憶のしくみがわかる本』『認知心理学入門』『目で見る認知心理学』などが読みやすい。
Q: この理論は今でも使われている?
A: 現在も教育心理・AI・脳科学などで応用されており、ワーキングメモリ理論の基礎にもなっている。
















