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【アンダーニンジャ】忍者が活躍する異色作「アンダーニンジャ」の評価、紹介。アイアムヒーローの花沢健吾による新作漫画。 ネタバレあり。

現代でも忍者が秘密裏に暗躍するアンダーニンジャ!

アンダーニンジャ(1) (ヤングマガジンコミックス)

 

花沢健吾さんの新作

「アンダーニンジャ」の作者・花沢健吾氏は、今最も勢いがある漫画家の一人です。映画化もされた「ボーイズ・オン・ザ・ラン」で世に多い冴えない男の心をガッチリ掴むと、その後の「アイアムアヒーロー」で一気にスターダムに上り詰めたと言っても過言ではありません。これまた、冴えない中年男が主人公ですが、そこにゾンビや恋愛模様を現代風にアレンジしたニューヒーローの活躍伝は、単行本と又もや映画化と両方が大ヒットを記録したのです。

2018年7月から連載が開始

今現在、最も信頼が置ける漫画家・花沢氏の新作が、「ヤングマガジン」上で絶賛連載中の「アンダーニンジャ」になります。2018年7月から連載が開始され、単行本はまだ1巻が発売されたばかりですが、独特の絵タッチやアングルなどで早くも話題となっています。

まったく個人的な事ですが、私自身が花沢氏とほぼ同年代、過去の作品などから聴いている音楽や趣味などが似通っているので勝手にリスペクトしています。だから、今回の新作が忍者物として嬉しいと同時に一抹の不安が過ったのも事実です。また、冴えない中年男が主人公で真面目そうだけどスケベなヒロインが登場し、結ばれるけど行き違いがあり関係が破たんするという流れにならないか、と危惧してしまったのです。

男女の恋駆け引きが好きな読者も多いので、その黄金パターンを封じる事もないですし、花沢氏自身が得意としている話法でもあるのは分かっています。でも、大好きな漫画家だからこそ、もっともっとと期待値を上げてしまうのです。この気持ちはきっと、何度も読み返してしまうのでさらに積もるのでしょう。

花沢ワールドを維持しつつも、新しい試みも

閑話休題。「アンダーニンジャ」は久しぶりに、ドキドキを与えてくれる漫画になってくれました。まだ単行本1巻だけで、判断を下すのは早計ですが、花沢ワールドを維持しつつも、新しい試みも取りいれた意欲作です。登場人物は、これまでの作品以上にどこにでも居そうな人ばかりを配置し、舞台も東京23区の中で大都会でもなく、かと言って下町でもない住宅街である練馬区にして、とことん普通や平凡に徹しています。

 

日常の裏での秘密やドキドキ

「アイアムアヒーロー」が日常崩壊や非日常をテーマにしてゾンビを中心にしたなら、今作「アンダーニンジャ」は日常なのです。毎日が退屈で何の刺激もない。平凡と言えば聞こえは良いが、何も面白い事がなく、ただ時間を浪費する。そんな漫画を読むだけが唯一の楽しみである我々一読者に、日常の裏にはこんな事も隠されているかも? と提起してくれる作品になっています。

そうです。こんなページを捲る度に、どきどきする瞬間があるから漫画を読むのが止められないのです。私個人は小説も好きで、特に黒川博行氏に対しては並々ならぬ尊敬をしていますが、それでも小説は次のページを捲った瞬間の衝撃はありません。文字を端からきっちり目で追い、読み終える作業ですが、絵のアングルで文字を読む事すら忘れさせてくれるのは、漫画ならではの醍醐味です。

 

闘わずに避ける魅力

主人公がアパートの外壁を利用して屋根まで上り到達するシーン、アパートの塀の間に少年が隠れているシーン、中年男忍者と外人の格闘シーン。この三場面だけでも、「アンダーニンジャ」の今後も期待できると私に確信させています。丁寧に描くだけでなく、思わずオーっと声を上げたくなる意外な画風だからです。漫画における格闘シーンは、大定番であり、ある意味で使い倒された最も見かける場面です。しかし、それを忍者という設定もあるので、闘わずに避ける。さらに、最後の展開も見事でオチも良い。普通の漫画なら無暗に迫力あるKOシーンとするところを、敢えてその手を使わずに読者に期待や想像を抱かせるのが、今作の花沢氏の考えや術中なのではと勘繰っています。

 

あらすじ

絶滅したはずの忍者組織

太平洋戦争終結後、GHQが命じたのは陸海軍と内務省に対する、忍者のメンバーリスト提出と出頭。戦時中、アメリカを始めとする連合軍を最も悩ます存在がナチスドイツと、日本の忍者の存在だったのは多くの者は知らない。忍者組織はアメリカにとって、存在そのものが邪魔であり、解体しなければ世界の覇権を握るのが出来ない不気味な力だったのだ。結局、アメリカの圧力により忍者組織は絶滅に追い込まれたのだが…。

今でも極秘裏に活動していた

70年が経過した現在、消滅したはずの忍者組織は、昔と変わらずに活動を続けていて、今でも極秘裏に暗殺など非合法活動を繰り広げていた。

 

一般人として地域に溶け込む約20万の忍者

推定忍者総数は約20万で多くの忍者は、至る所で一般人として生活を送りながら地域に溶け込み、実は国民を監視している。ある忍者は宅配業者、またある忍者は役所で窓口担当、そして主人公である雲隠は仕事がなく、貧乏アパートでだらだらとニートのような日々を送っていた。同じアパートの住民である大野や川戸と酒を飲む毎日だが、そんな時、宅配業者の上忍・加藤から任務を言い渡された雲隠だが、それが重要で過酷であるかも知れない事をまだ知らずに呑気なものだった。

 

登場人物紹介!

雲隠九郎(くもがくれくろう)

主人公で推定年齢は20代後半から30代前半。練馬区の四畳半のアパートに暮らす半ニート、末端忍者の下忍。

 

加藤

雲隠に命令を下す忍者。普段は宅配業者だが、謎多き人物。副隊長とされる。

 

 

大野

雲隠と同じアパートに暮らす酒好きの中年オヤジ。下着収集癖があるのか? 見かけ同様にあやしい雰囲気もあるが、何か訳ありか?

 

川戸

雲隠と同じアパートに暮らす女性。元イメクラ嬢。酒癖が悪く、下品な行動が玉に瑕。

 

謎の白人

忍者になりたい願望がある謎の外国人。その正体は何者?

 

佐々魔

どこからどう見てもホームレス風のオヤジだが、その正体は元一等忍尉でさらに本当の姿は…

 

少年

下着泥棒の容疑がある講談高校の生徒。

 

おすすめポイント!

舞台は現代の東京・練馬

物語の舞台は現代であり東京練馬になるので、実在する建物や路地が登場するので、そこが最初の注目点となります。これまで忍者漫画は定番作品でもあるので、多くの名作が出ていますが、現代を設定にしていて、かつ、練馬を舞台にした作品はありません。そこを花沢氏がどのような独自解釈を入れてくるかが、大事な点で鍵を握っています。

パーカーを着用する事で体を透明にする

作中では早くも、今風にアレンジした「隠れ身の術」を披露します。パーカーを着用する事で体を透明にするのは、斬新なアイディアで、特長が出始めています。今後もこの様な忍術を、現代バージョンとして再解釈したものが出てくると思うので、「アンダーニンジャ」なりの新しい忍者像が作られていくと思うと、楽しみでなりません。

 

1巻を読み終えた感想!

アンダーニンジャ(1) (ヤングマガジンコミックス)

忍者を現代に甦らせた設定は面白い

先ほど述べた通り、個人的な思い入れが強いだけに、評価は他の漫画よりも厳しめとなります。忍者を現代に甦らせた設定は面白いですし、序盤から謎多きキャラを散りばめるのも上手い。しかし、主人公がちょっと色が無さすぎるというか、1巻を終えてもあまりにも存在感がない。これから活躍をすると言えば、それまでだが、あまりにも忍者というより単なるスケベなニート色が強すぎる。

また、花沢作品にあまりにも多く登場するヒロインの設定が、毎回同じ調子なのもちょっとガッカリした。そこにスケベというか下ネタを被せてくるのもすっかりお馴染で、うーんと少々残念に思ってしまう。

 

エロネタを入れる必要かあるのか懐疑的

私の勝手な思い込みだが、今時普通の漫画にスケベネタを入れる必要かあるのか懐疑的です。エロや変態が好きなら、もっと激しい専門漫画もありますし、アダルト動画も山のようにあり、いくらでも無料で見られます。漫画ファンはまともな漫画が読みたいだけ、というのは少数派なのでしょうか? エロネタで逃げるのでははなく、漫画として面白い作品を提供してもらいたい。確かに、何十冊も連載が続き、その合間で逃げのようにエロネタが入るなら、息抜き”回”として作者を責める事はできないが、新連載の数話でそれを使うのは、少し情けなく感じた。テーマが現代の忍者という、殆どどこにもない作品だけにこの思いが倍増したのもあります。エロネタを取ると、最初に綴った通りに本当に面白い作品です。だから、エロが邪魔に思えてなりません。

 

花沢ワールド全開

ヒロインの川戸は尿意を催しパーキングの隅で用を足す、白人が忍者と接触するには第三者の男性器を切断する、お酒を飲みながらの下ネタ座談会などの”回”は果たして必要なのか? せめて入れるにしても、この中のひとつぐらいには出来なかったのか?

作品のテーマや設定、発想アイディアは面白いのに、それを活かす何かが足りない。「アイアムアヒーロー」もそうだが、最初にテーマを大きく広げすぎると、回収が難しくなるので、その誤魔化す意味でもエロネタを入れて、実はギャグ漫画でもあったと逃げ口実を作っているような気がしてならない。

 

連載が気になる作品

否定的な意見を入れてしまったが、連載が気になり続きが読みたくて仕方がない作品であるのも事実です。でも、その半分の気持ちで、今回はエロネタを入れないでくれ! ニートで情けない回もやめてくれ! と色々と自分なりの条件を付け足していってしまいます。

 

まとめ

現代で活躍する忍者が活躍する新連載が「アンダーニンジャ」です。物語の舞台は東京の練馬、ニートのような主人公が大活躍をしていくと期待が持てる作品です。私のような堅物はエロネタが悪い意味で気になりますが、花沢ファンなら、きっと楽しめる作品であると思うので、一読をして判断してみて下さい。

アンダーニンジャ(1) (ヤングマガジンコミックス)

 

 

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