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「悪女」を描いたおすすめ本3選。怖いけど魅力的?

皆さんは悪女というとどんなことを思い浮かべますか?
菜々緒さん、妖艶な微笑、放縦な欲望、男を破滅させるファム・ファタール(運命の女)、美しくも残酷な魔性の女性たち……。
こんな女性は許せないと思う人がいる反面、ちょっぴり憧れてしまうなんて人もいるかもしれませんね。
今回はそんな悪女にフォーカスを当てた本を三冊紹介いたします。


『サロメ』

サロメ (光文社古典新訳文庫)

オスカー・ワイルド

童話『幸福な王子』や『ドリアン・グレイの肖像』などで知られるオスカー・ワイルドの戯曲です。
新約聖書に由来した話で、預言者ヨカナーン(ヨハネ)から愛を拒まれた王女サロメが彼に口づけするためにその首を刎ねさせるといった筋書きの作品です。
サロメによる妖艶な踊りや、彼女が銀盆の上にのったヨカナーンの首に口づけをする場面はとても印象的で、異様なムードがあります。
「芸術のための芸術」という潮流の中で時代の寵児となったワイルド。彼によって紡がれる退廃的で唯美的な詩情溢れる表現は、作品の官能的で背徳的なムードを見事に高めています。
また、オーブリー・ビアズリーによる挿絵にも悪魔的魅力があるので、せっかくなら彼の挿絵付きの本を読むといいかもしれません。
ところで、ヨハネの首を刎ねさせた異常な悪女サロメのイメージは、ワイルド以外にもある種の感受性を持った芸術家を惹きつけるところがあるようで、古くから絵画などのモチーフとして多く取り上げられています。ギュスターヴ・モローの作品などは一見の価値がありますので、そちらも併せておすすめいたします。


『カルメン』

カルメン (岩波文庫 赤 534-3)

プロスペル・メリメ

オペラの原作としても知られる『カルメン』。
ビゼーが作曲した『カルメン』の楽曲はテレビなどでもよく用いられるため、多くの人が一度は耳にしたことがあると思います。
また、『カルメン』はファム・ファタールの系譜を代表する作品の一つでもあります。
純情な青年だったホセがロマの女性カルメンに出会ったことで恋に狂い、犯罪に手を染めるなどして人生を大きく転落させていくさまが描かれた物語です。また、本編は旅の考古学者にホセが過去を物語るという形式がとられています。
本作のヒロイン、カルメンは情熱的で気まぐれで気の強いエキゾチックな悪女です。気ままに放浪し、我を貫いて、好き勝手に生きることが彼女の信条です。
このボヘミアンな悪女カルメンと、元々が純情であったために破滅の道を突き進みながら激しくカルメンに執着するホセの関係は、やがて大きな悲劇へと向かっていきます。
オペラ版とは雰囲気も設定も異なっているので、オペラ版のファンだという方には是非読んでいただきたい一冊です。
もちろんオペラに興味のない方も、この稀代のファム・ファタールの物語を読まないのは損ですよ!


『世界悪女物語』

世界悪女物語 (河出文庫 121B)

澁澤龍彦

歴史上に実在した悪女たちを描いたエッセイ集です。
ここに登場する悪女たちは歴史の教科書で目にするようなビッグネームも沢山いますが、ときに残酷でときに淫蕩な彼女たちの物語は、私たちの日常のスケールを逸脱した規格外の悪女っぷりを見せつけてくれます。
例えば吸血鬼伝説のモデルにもなったエリザベート・バートリなどは、その残虐性に思わず背筋が凍りました。
サド侯爵を日本に紹介したことでも知られる澁澤龍彦が描き出す、これらの実在した悪女たちの肖像は、淡々とした筆致の中にも恐ろしさと美しさがあり、単にゴシップを紹介したりや半生をまとめたものとは趣を異にする一冊だと思います。
悪女中の悪女とはどのようなものか、その恐るべき世界を覗き見たいという人には特におすすめの一冊です。

 

最後に

悪女というのは、現実に関わることになったら迷惑この上ないのでしょうが、はたから見る分には魅力的な存在だと思います。
幸いなことに、本の中の悪女たちは私たちに手出しはできません。なので私たちは安心して、存分に悪女の魅力だけを味わうことが出来ます。
しかし、本の中の存在であっても強く魅せられてしまえば、彼女たちは私たちの人生に入り込み狂わせるだけの力を持っているように思います。
薬の説明書風にいうなら”容量と用法に注意して”、悪女たちの世界をお楽しみください。

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