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【カートヴォネガット おすすめ 名作】カート・ヴォネガットのおすすめ本3選【名言】

カート・ヴォネガットの小説の著作から三冊、「スローターハウス5」「デッドアイ・ディック」「ジェイルバード」をおすすめしたい。

 

カート・ヴォネガットについて

二十世紀のアメリカを代表する作家の一人であり、ジョン・アーヴィングと師弟関係があったことでも知られる彼の小説群に特徴的なのは、社会的な弱者やはみ出し者へのとても優しい視点です。

だがヴォネガットが高い知性を働かせて作り出した架空の登場人物に向ける「優しさ」はあまりにも社会的弱者に厳しすぎる物質主義・資本主義が暴れまわった現代社会を目をそらすことなく見つめ、弾劾する結果としてのものであり、強者に対し無抵抗で生きているだけで可愛らしい犬猫や子どもを見た目だけでかわいがってあやすような幼稚なものではなく、非常にほろ苦く、「知能を持ったゆえの憂鬱」とでも言おうか、目をそらしてしまいたくなるような現実のあれこれをぐっと飲み込んだ末の優しさである。

近年の日本で広がっている「泣ける!」「感動した!」と一言で表現して言われるような感動ポルノとまで最近は言われるようなまがい物の何かとはまるで成り立ちが違います。泣けるし感動できるが、そこには非常に複雑な概念が織り込まれており、悲劇の悲しさ、ドラマの得も言われぬ余韻が表現されています。

 

「スローターハウス5」

スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302)

ヴォネガットのことを知るものは恐らく最高傑作に挙げる人も多いであろう「スローターハウス5」は作者が二次大戦中に捕虜として実際に遭遇した広島・長崎にも匹敵した死傷者を出したというドレスデン無差別爆撃が主題として扱われています。

「広島・長崎にも匹敵する死傷者を出した無差別爆撃」がテーマです。軽かろう訳がありません。そしてヴォネガットは救いのない現実に安易に何か解決作を打ち出すということもないです。悲劇や惨劇を描写しては、この小説で繰り返される「そういうものだ。」という諦念のつぶやきを添えるだけです。

 

「デッドアイ・ディック」

デッドアイ・ディック

 

「ジェイルバード」

ジェイルバード

「デッドアイ・ディック」も「ジェイルバード」も、スローターハウス5ほどではないが物語の核には非常に大きい哀しみが描かれています。そこにヴォネガットの「重苦しい」とさえ言っていい語り口のポイントがあると私は思います。安易な泣かせや癒やしには一切走っていない作品群だが、読めば何かを得ることが出来る書物だと思う三冊です。知的に充実した書物を読みたい大学生や社会人にオススメです。

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