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オススメ小説三冊、子供と大人の不思議な絆の物語

子供のうちは「大人は子供の気持ちを分かってくれない。」というスネ。大人になれば「子供のうちは大人の気持ちなんか分からない。」という諦観。時として大人と子供どうしてもすれ違うことがあります。不思議なものですよね。みんな子供から大人になって行くはずなのに。

 今回ご紹介させていただきたいのは大人と子供の不思議な関係を描いた本三冊です。大人も子供もただ対等な人間同士であるといことが感じられます。

 お子さんを持つお父さんお母さんを始め、ティーンの方々にも、人間関係に対して新たな視点を与えてくれる作品としてオススメです。

 

「給食のお兄さん」

給食のおにいさん (幻冬舎文庫)

 元シェフの佐々目は不本意ながら小学校の給食調理員として働く事になります。子供嫌いな彼は始めは高飛車で、子供に対しても給食の仕事に対しても舐めた目で見ていました。しかし、実際に給食調理員として働くうちに、子供達が抱える様々な問題を知り、また給食が子供達のために大きな役割を果たしていることを知るのです。果たして佐々目は給食で子供たちを救えるのでしょうか?

ここがおすすめ

 この本は大人る給食調理員と子供達の交流を描いたお話なのですが、なんだかとっても青春小説の様に爽やか。おそらく良い意味でも悪い意味でも佐々目という主人公が大人になりきれていないからなのでしょう。

 登場する子供達は、全員が一人一人の人間として、問題を抱えて生きています。ネグレクト、モンスターペアレンツ、保健室登校、食品アレルギー。大人であれば自分で環境を整えたり逃げたりすることはできますが、子供達にはそれができません。読み進めているといかに人にとって、自分の居場所というのが大切なのか実感します。

 そういった問題に現実では第三者が介入していくことは難しいかもしれません。しかし佐々目の性格がダイレクトに嫌なことが顔に出ちゃう様な人というか、きっとこういう人がいたら、問題にうっかり顔を突っ込んじゃうんだろうなって思えます。

 また、こうした交流や成長の物語としてだけではなく、給食業界の内情を垣間見れる作品としてもオススメです。栄養とコストを考えて毎日300人分以上の給食が提供されることがいかに

驚異的か感じられます。

 個性的な子供や変わり者の栄養士に翻弄される様や、軽快テンポの会話は面白く、するすると読み進められます。各話も程よい長さで、一冊もそれほど厚くないですし、文体も堅苦しくありません。

単純にエンターテインメントとしても面白く読めますし、給食や子供を取り巻く問題に興味がある方にもオススメの本です。

 

 

「ステップファザーステップ」

 

ステップファザー・ステップ (講談社文庫)

宮部みゆき

 泥棒の”俺”のは仕事の途中、屋根の上で雷に打たれて意識を失ってしまいます。目覚めた時そこにいたのは双子の兄弟、哲と直。彼らの両親はそれぞれ愛人を作って失踪中。2人は”俺”を警察に通報すると脅し、”俺”に「お父さん」として自分たちの生活の面倒をみることを強要します。こうして奇妙な父子関係がスタートしましたが、三人の周りでは次々に事件が起こります。度重なる事件を超えていく中で、血の繋がりのない三人の関係はいつの間にか本当の親子の様になっていきます。

ここがおすすめ

 まず単純に、オススメできるポイントとして、すごく面白いです。斬新な設定もさることながら、 個性的なキャラクターたちのユーモア溢れる会話や物語の軽快なタッチがとても良いのです。双子も泥棒もみんな魅力的で大好きになってしまいます。

 作者の宮部みゆきやんと言えば「模倣犯」「火車」などの緊張感のあるミステリーやサスペンスで有名ですが、「ブレイブ・ストーリー」をはじめ、子供やティーンを主人公とした話もいくつか書かれています。

 こちらの本もミステリーやサスペンスの要素はありつつもどちらかと言えば、コメディの要素が強く、そこにスパイスの様に謎解きが散りばめられています。

一見滑稽に感じられる設定ですが、赤の他人であるはずの泥棒が、いつの間にか本当の父親の様に双子を心配する様は、ついついほっこりしてしまいます。

難点としては、すでに25年前に書かれた本であり、いまの子が読んでポケベルとかわかるのかな・・・ということですかね(笑)

ライトで読みやすい本ですが、宮部みゆきさんの語彙の多さや文章力、謎解きの面白さというのも感じられ、質の高い本であるとも思います。

 青い鳥文庫からも、難しい漢字にルビが振られて出版されているので、親子で読める作品としてもオススメです。

 

「ゲンタ!」

ゲンタ!

風野潮

 小学五年生の蓮見ゲンタは林間学校でいったキャンプ場で高所から落下し気を失ってしまいます。同時刻、そのキャンプ場の近くでライブを行っていたバンド、ビート・キッズのボーカル、25歳のゲンタもステージから落下。気を失ってしまいます。そして、2人のゲンタが目を覚ます体が入れ替わってしまっていたのです。2人は仕方なくそれぞれの生活を守るため日々を暮らし始めますが、元に戻ろうと奮闘したり、人と交流する中で、次第に成長し自分自身の壁を超えて行きます。

 

ここがおすすめ

 この本は児童書に分類されると思うのですが、大人のはずの自分がなぜか小学生のゲンタの方に共感を覚えます。大人として社会に出て体面にを保つのにメンタルがズタボロにやられる感じとか、子供の頃に感じてた、恥ずかしさとか、そういうものを思い出して、あー、きついよねーと妙に共感してしまいます。一方、子供になった大人のゲンタは小学生としての生活が大変というよりは、早く戻らなきゃいけないという焦りの気持ちが強いのですが、小学生として生活するうちにだんだんと、新鮮な喜びを取り戻します。

最後はちゃんと感動できて、歳のせいかうっかり涙が出かけました。

それぞれが大人と子供の立場を交換して、様々なことに気づいて成長していく様は、読者である大人にも子供にもいろんなことを教えてくれると思います。

また、もともと作者の風野潮さんの著書に「ビート・キッズ」という本があり、その本のスピンオフ作品としても「ゲンタ!」は読めるのですが、またその「ビート・キッズ」がメチャクチャ面白いんです・・・。バンドメンバーみんないい奴なんです・・・。「ゲンタ!」をより楽しむ意味でもあわせてオススメの本です。

 

ビート・キッズ Beat Kids (講談社青い鳥文庫)

 

 今回ご紹介させていただいた本は、大人と子供の関係を描いた三冊でした。少しでも皆様の琴線に触れる本があれば幸いです。

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